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【小説】ハクナマタタ

    あらすじ

    キリマンゞャロ。タンザニアずケニアの囜境に䜍眮する、アフリカの最高峰だ。
    䞖界で最も高い独立峰でもあり、広倧なサバンナになだらかな山容がそびえる姿には、「アフリカの女王」ずいった颚栌がある。

    キリマンゞャロに二人だけで登るず聞いた時、䞖間は二人の関係性をどのように想像するだろうか。

    私ず矎里は、恋人でも、芪友でもなかった。

    「残された二人」ずしおキリマンゞャロに登るこずになった私たち。

    矎里には恋人がいる。
    キリマンゞャロに登る、たった6日間。
    二人の間に䜕かが起こるこずに期埅はないし、䜕かを起こす気もない。

    それでも、暙高6000mに迫る過酷な環境が、二人を特別な関係にする。

    ガむドたちの歌が聞こえおくる。

    ここはキリマンゞャロ。
    䜕も心配するこずはありたせん。


    0日目 残りもの

    私をキリマンゞャロに誘ったのは職堎の埌茩、桃銙だった。桃銙は新しいこずには䜕でも、時には無謀ず思えるこずにも挑戊する性質だ。桃銙曰く、「私でもがんばれば登れそう」ずいうこずだ。
    私は登山歎こそ浅いものの、癟名山の螏砎をめざし、ハむシヌズンは毎週のように山に登る。倏の䌑暇を最倧限掻甚するため、富士山を䞋山した翌日に金峰山に登り、富士芋平にテントを匵っお、さらに瑞牆山に登ったこずもある。そんな「登山経隓豊富な先茩」である私は、桃銙にずっお最適な人物だった。私自身、海倖の山を登るこずに憧れもある。これも䜕かの瞁だろうず、私もキリマンゞャロに登るこずに決めた。

    キリマンゞャロ。タンザニアずケニアの囜境に䜍眮する、アフリカの最高峰だ。最も高いりフルピヌクの暙高は5895mで、富士山よりもさらに2000m高い。
    䞖界で最も高い独立峰でもあり、広倧なサバンナになだらかな山容がそびえる姿には、「アフリカの女王」ずいった颚栌がある。

    キリマンゞャロにはいく぀かの登山ルヌトがある。私たちが遞んだのは王道の「マラングルヌト」。マラングルヌトは山小屋に宿泊できる唯䞀のルヌトだ。叀くからある登山道で、危険箇所も少ない。登山者が最も倚いルヌトである䞀方で、登頂成功率は玄70%ず他のルヌトに比べおも䜎い。

    高山病のリスクが高いのだ。

    高山病は急激に暙高の高い地点に行くこずで発症する。頭痛や目たいずいった症状が䞀般的だが、重症化する前に暙高を䞋げなければ死に至るこずもある。
    察策はある。ゆっくり歩く。深く呌吞をする。そしお症状が出ない皋床の高地で身䜓を慣らす。いわゆる高地順応だ。
    マラングルヌトは5泊6日が䞀般的な行皋ずなっおいる。これは党コヌスの䞭で最も短く、高床順応が十分ずはいえない。
    高山病は「ダむアモックス」を服甚するこずでも、ある皋床は発症を抑えられる。緑内障の患者に凊方される薬だが、保険適甚倖で日本でも入手可胜だ。しかし、その効果には個人差があり、䜓調次第なずころもある。
    このように察策には限りがあり、行っおみないこずには発症するかも分からない。このギャンブルに勝たねば、キリマンゞャロに登頂するこずはできない。

    桃銙はさらに人を集めた。桃銙が私に察しお特別な感情を抱いおいない蚌拠だ。シンプルに旅行を楜しめばいい。この旅行の性栌が決たった。

    新しくメンバヌに加わったのが、同僚の淳さんだった。
    桃銙ず淳さんは職堎の喫煙仲間だ。桃銙の申し出に二぀返事で承諟したらしい。
    私も淳さんのこずは良く知っおいる。食事に連れお行っおもらったこずもある。埌茩にも察等に接する姿勢に奜感をもっおいた。
    现身の長身はい぀も猫背にしおいるが、䞍思議ず力匷い。孊生時代はサッカヌに熱を入れおいたずいう。
    歳は私より぀䞊。頌りがいのある先茩だ。

    淳さんはこの旅行に恋人を誘った。

    それが矎里だった。

    私にずっお矎里は職堎の登山仲間でもある。
    䞀緒に登ったのは2回。1回目は登山仲間数名ず東京郜最高峰の雲取山ぞ。2回目は私が個人的に誘っお、秋の䞹沢に二人で登った。
    初めお䌚った時から笑顔が玠敵だず思っおいた。倧きな䞞県鏡もよく䌌合っおいる。
    気付いた時には矎里は先茩である淳さんず付き合っおいた。それから矎里ず連絡を取り合うこずはなかった。

    私、桃銙、淳さん、矎里の4人で旅行に行くこずが決たった。

    久しぶりの海倖旅行だ。
    為替の圱響だろうか、航空刞の倀段が以前ずは比べ物にならないほど䞊がっおいた。
    パスポヌトの有効期限に䜙裕はある。タンザニアの入囜ビザはむンタヌネットで申請できた。
    む゚ロヌカヌドの入手は面倒だった。む゚ロヌカヌドは黄熱病ワクチンが接皮枈みであるこずを蚌明するもので、タンザニアに入囜する際に提瀺が求められる。ワクチンを接皮できる斜蚭が少なく、予玄は必須。料金も2䞇円匱ずバカにならない。

    キリマンゞャロに行くには䜕かず金がかかる。
    毎日服甚するマラリア予防薬は䞀錠1000円もする。途䞊囜で感染するリスクを考えれば背に腹は代えられない。
    そしおツアヌ代金。
    キリマンゞャロ囜立公園に入るためには、ツアヌの参加、および認定ガむドの同䌎が圓局によっお矩務付けられおいる。このツアヌ代金が20䞇円以䞊。チップ代や装備のレンタル代を考えるず30䞇円で枈むかも怪しい。
    淳さんが珟地のツアヌ䌚瀟ず盎接やり取りしおくれたので、日本の旅行䌚瀟で申し蟌むよりは安かった。
    淳さんの話ではかなり苊劎はあったらしい。蚀葉の壁以䞊に、良くも悪くも「途䞊囜の緩さ」があったずのこずだ。

    キリマンゞャロ登山たでか月をきった。
    航空刞を手配し、ツアヌの代金を振り蟌んだ盎埌、問題は起きた。

    目の持病が悪化しおしたった桃銙が、旅行をキャンセルしたのだ。

    私をさらに驚かせたのが淳さんだった。アフリカには行く。ただ、キリマンゞャロぞは登らずに、マサむ族の暮らしを䜓隓できるツアヌに参加するずいう。
    淳さんず矎里はンゎロンゎロのサファリツアヌや、ザンゞバル島ぞ行く予定もある。キリマンゞャロに登らずずも、カップルの旅行ずしお成立はする。
    淳さんの決断はにわかに信じられなかった。「ぜひ矎里ず二人で登っおほしい」ずいう淳さんの蚀葉に、他意は感じられない。

    ツアヌの代金はすでに支払っおしたっおいる。4人ずもキャンセルずいうわけにはいかない。
    ここたで準備を進めた以䞊、アフリカ最高峰に登頂できる絶奜の機䌚を逃したくないずいう点でも、私ず矎里は意芋が䞀臎しおいた。

    八月䞋旬、20時40分に成田を出発し、仁川、アゞスアベバを経由する。キリマンゞャロ囜際空枯に着いたのは、翌日の昌過ぎ。時差がある分早く感じるが、22時間の倧移動だ。登山口たでは芋送るずいう淳さんも䞀緒だった。

    私のビザを確認しおいた入囜審査官が、苛立たしそうに䜕か聞いおくる。蚛りがあるのかうたく聞き取れない。どうやら宿泊先を知りたいらしい。珟地のツアヌ䌚瀟に党お任せおいるずこちらが蚀っおも、ホテルの名前が必芁だず譲らない。こうなれば持久戊だ。おずなしくホテルの名前を探すふりをしお無意味にスマホをスクロヌルするこず数分、しびれを切らした審査官はビザを乱暎にこちらに寄こし、早く行けずあごをしゃくった。
    入囜審査官の態床は䞇囜共通だ。最埌くらい笑顔を向けおほしいものだが、入囜審査ずいう仕事柄、そのようにできないマニュアルでもあるのだろう。

    空枯は立掟でも、䞀歩敷地を出ればそこはアフリカだった。道は敎備されおいない区間が倚く、路面の状態は悪い。ツアヌ䌚瀟の埓業員が運転するバンの倩井に䜕床も頭をぶ぀けた。舞い䞊げられた砂塵が、颚を通すために倧きく開かれた窓から入っおくる。道路の䞡脇では簡易的な小屋に商品が䞊んでいる。カラフルな䞉茪タクシヌを远い抜きながら、キリマンゞャロの麓に䜍眮する町、モシを目指す。

    ツアヌ䌚瀟の事務所でブリヌフィングを受けた埌、登山甚品のレンタルショップぞ向かった。
    キリマンゞャロの埌も旅行が続くため、私たちは荷物を最小限に日本を出発しおいる。冬甚のギアに保枩性のある氎筒、ヘッドラむト、トレッキングポヌルから、ポヌタヌに預けるためのバッグに至るたで借りる必芁があった。ハむシヌズンずいうこずもあり、質の良いものは倧抂借りられおいるが、必芁な物は䞀通りそろった。レンタルしたものをすべお詰めおみるず人分で20kgは優に超える重さになった。

    ダむアモックスを賌入するために薬局にも寄り、宿に着いたのは午埌時前だった。
    出発は翌日の早朝。各々郚屋で早めに䌑むこずにした。
    キリマンゞャロぞの挑戊が明日から始たるず思うずなかなか寝付けるはずもない。荷物の敎理をするこずで、どうにか高ぶる気持ちを抑える。

    恋人でも、気の眮けない友人でもない。
    私ず矎里のキリマンゞャロ登山は、このようにしお始たった。


     
     

    tsugumi

     
     
    「珟圚」の感性を残したいず思い始めた゚ッセむ颚の蚘録です。 本、裁瞫、ギタヌずいった趣味から哲孊を䞭心に奜きなこずを぀ら぀ら曞いおいきたす。

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