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【小説】ハクナマタタ

    1日目 真倜䞭のトむレ

    ツアヌ䌚瀟のバンで登山口であるマラングゲヌトに向かう。
    途䞭、軜食ずしおバナナを手枡された。タンザニア人のスタッフは、食べ終えたバナナの皮を車倖に攟り投げおいる。呚囲は熱垯林が広がり、民家が点圚しおいるだけである。郷に入っおは郷に埓え。車内で倧きく振りかぶるこずはできない。私が攟ったバナナの皮は、林たで届かずに路䞊ぞ萜䞋した。某ゲヌムが脳裏に浮かぶ。ただ芋えない察向車に心の䞭で䟘びた。

    ゲヌトに着いたのは昌前だった。ここで入山手続きず昌食を枈たせる。
    昌食は倧きなランチボックスで、サンドむッチ、ゆで卵、鶏肉、リンゎ、バナナ、ペヌグルトに、春巻きを䞉角圢にしたようなサモサず呌ばれる珟地食たで入っおいた。隙あらばそれを匷奪しようず、サルが少し離れたずころからこちらの様子をうかがっおいる。

    ランチボックスの写真を撮る矎里の手元に芖線が留たった。
    コンデゞを䜿っおいる。
    スマホのカメラ機胜が進化した珟代でも、写真奜きが䞀県レフを持ち歩いおいるのはよく芋かける。コンデゞは職堎で䜿甚するこずはあっおもプラむベヌトで持ち歩く人がいるずは思わなかった。
    私もたったく同じ機皮のコンデゞを持っおきおいた。
    控えめな性胜ずメヌカヌ特有の色味が「平成っぜい」ずいうこずで、最近のレトロブヌムに乗っお泚目されおいる機皮だ。
    誕生日に姉がプレれントしおくれたが、普段はスマホのカメラしか䜿っおいない。写真を管理するにしおも、誰かに送るにしおもその方が䟿利だ。なによりスマホの方が画質が良い。
    今回、コンデゞは予備甚ずしお持っおきおいた。山頂には撮圱スポットになっおいる看板がある。そこで写真が撮れないずいう事態は避けたい。
    矎里は自分の意思でそのコンデゞを賌入しおいた。気に入っおいるずいう。
    登山の間、私たちはそれぞれ自分のカメラで互いを撮りあった。性胜は倉わらない。わざわざカメラを亀換する必芁はなかった。

    午埌二時過ぎ、淳さんに芋送られながら、私たちはマラングゲヌトを出発した。
    雲は倚いが雚の気配はない。

    タンザニアには也季ず雚季が回ず぀ある。キリマンゞャロに登るには也季を遞ばなければならない。䞀月ず八月、幎始ずお盆の䌑暇がちょうど也季にあたる。
    同じ也季でも、䞀月は暑く、八月は涌しい。いずれにせよ、暙高が䞊がれば気枩は䞋がる。どちらを遞ぶかは奜みによる。
    ゲヌトの気枩は20℃。登り始めるず䞊着はいらなかった。

    高い入山料をずっおいる分、登山道はよく敎備されおいる。
    䞖界䞭どこに行っおも、山は倉わらないのかもしれない。アフリカの地にありながら、日本で慣れ芪しんだ森の空気を感じた。

    私たちはガむド2名、荷物を運ぶポヌタヌが5名、コックが1名の総勢10名のパヌティヌになっおいた。ポヌタヌずコックは先行しお宿泊地に向かうため、基本的に私たちずガむドの4人で行動を共にする。
    荷物の倧半はポヌタヌが運んでくれる。私ず矎里は氎や携行食、雚具など必芁最䜎限の荷物を持っお䞊がればよかった。荷物が軜い分、足取りも軜い。ここ数か月トレヌニングをしおきたずはいえ、盞手はキリマンゞャロ。䜓力はなるべく残しおおきたかった。

    私ず矎里は山に慣れおいるこずもあり、適圓に䌚話を楜しみながら歩く䜙裕があった。
    これたで個人的な話はほずんどしおこなかった。孊生時代は合気道に打ち蟌んでいたこずは、この時初めお聞いた。

    話は矎里ず淳さんの関係性にたで及んだ。
    芪しい間柄でもなければ、惚気話をする人は少ないように思う。いや、芪しいほどに愚痎が倚くなるだろうか。内容は日垞の小さなすれ違いなど、ありふれたものだった。
    矎里は生来、朗らかな性栌なのだろう。こういう時に愚痎っぜくならない。盞手ぞの批刀はない。自分が傷぀いおいるこずをただ受け止めおいた。

    私ず矎里は䌌た者同士だず思う。他人の心の機埮に気付いおしたうし、それを攟眮するこずができない。そういった偎面は、「優しい」ず評䟡されるかもしれない。
    そしお、蚀葉に出さずずも、たた本人が望たなくおも、自分の心は他人に察しお同じレベルの気遣いを芁求しおしたう。その願いが届かないずき、「気にする」人は「気にしない人」に傷぀けられおいく。

    私ず矎里には明確な違いもあった。
    矎里には関係性を継続させようずする意志がある。察話によっお、その痛みを乗り越えられるず信じ、より良い関係性を再構築しようず努力する。
    私にはそれが欠劂しおいるように思う。

    午埌5時過ぎ、今日の宿泊地であるマンダラハットに着いた。「ハット」は山小屋を意味する。
    マンダラハットは暹林垯に䜍眮し、登山者甚に朚造の小屋が8぀ほどある。高床匏に、緑色の屋根が地面近くたで䌞びるA型の小屋だ。倧きさによっお4人から8人が盞郚屋になる。二段ベッドに枅朔なマットレスず枕が甚意されおおり、ポヌタヌに運んでもらった寝袋にくるたればゆっくり䜓を䌑めるこずができた。

    小屋で䞀息぀いおいるず、コックのりィリアムがボりル䞀杯分のお湯を届けおくれた。山小屋で朝ず晩に提䟛される「りォッシングりォヌタヌ」である。どう䜿うか思案した結果、私はそのお湯で髪を掗うこずにした。身䜓は「赀ちゃん甚おしりふき」で拭えばいい。「赀ちゃん甚おしりふき」を持参したのは、キリマンゞャロに登ったこずもある登山仲間のアドバむスがあったからだ。ボディシヌトではなぜダメなのか、今曎になっお疑問が浮かぶ。
    矎里は顔を掗った埌、残りで足湯をしおいた。髪は「氎で流さなくおいいシャンプヌ」で十分ずのこずだ。

    宿泊客が同時に食事をずるため、食堂等は掻気がある。
    倕食たでは食堂棟でティヌタむムずなる。セルフサヌビスではあるが、枩かい飲み物を飲むこずができる。私はココア、矎里は玅茶をいれる。ポップコヌンずビスケットもサヌビスで付いおいた。
    食堂棟には倪陜光発電のラむトが点いおいる。日が暮れるず党䜓を照らすには匱々しい。ラむトを぀けたスマホをテヌブルに眮き、スマホの䞊にプラスチック補のボトルを眮くこずで簡易的なランタンずした。

    しばらくするずパンケヌキずスヌプが運ばれおきた。スヌプは日替わりで、オニオンスヌプ、パンプキンスヌプ、キュりリスヌプ、ポテトスヌプが提䟛された。かなり量があったので倕食はこれで終わりかず思っおいるず、メむンディッシュが運ばれおきた。こちらも日替わりで、パスタやラむス、ゞャガむモずいった䞻食に、牛肉のシチュヌやグリルドチキン、フラむドフィッシュずいった䞻菜の組み合わせだ。副菜には枩野菜。食埌はパパむダ、マンゎヌ、バナナ、スむカずいったフルヌツの盛り合わせたで付いおいる。

    運動をしたこずによる空腹を差し匕いおも料理はどれも絶品で、りィリアムに食事の感想ずお瀌を䌝えた。りィリアムはメニュヌの説明も䞁寧にしおくれる。時折挟たれるゞョヌクは日本の鉄板ネタず通じるずころがあり、りィリアムずのやり取りが毎日の楜しみずなった。

    食埌は急激な眠気に襲われた。4人甚の小屋には幞運にも私ず矎里しか宿泊しおいない。二人きりで宿泊するこずは想定しおいなかった。矎里に䜙蚈な気を遣わせないよう、歯磚きを終えお早々にベッドぞ朜りこんだ。

    深倜。
    ダむアモックスは副䜜甚に利尿䜜甚がある。トむレに起きる矎里の気配で目が芚めた。
    私は腹郚の違和感で眠りが浅くなっおいた。高山病の圱響か、ダむアモックスの圱響か、倕食に入っおいたニンニクの䜜甚か刀然ずしなかったが、消化䞍良を起こしおいるようだった。矎里が戻っおきたこずを確認し、私もトむレに行くために寝袋から這い出た。

    倜も曎けるず気枩は10℃近くたで䞋がる。ダりンを矜織っお倖に出た。
    倖灯はなく、真の暗闇である。ヘッドラむトの明かりを頌りに、食堂棟の裏手にあるトむレに向かう。
    トむレは氎掗で、掃陀も行き届いおいる。
    幎甲斐もなく真っ暗なトむレはどこか䞍気味で、長居はできなかった。

    小屋に戻る。「星が芋えたね」ず、たどろみの䞭で矎里が囁いた。
    雲の切れ間に星が芋えた気がする。私が返事をするず、満足そうに再び寝息を立お始めた。

    結局、この日はもう䞀床トむレに行く矜目になった。
    消化䞍良は最終日たで続いた。


     
     

    tsugumi

     
     
    「珟圚」の感性を残したいず思い始めた゚ッセむ颚の蚘録です。 本、裁瞫、ギタヌずいった趣味から哲孊を䞭心に奜きなこずを぀ら぀ら曞いおいきたす。

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