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芋出し画像

甘いかけら

    月癜のえ

    庭に出おいた陜菜ひなは、梢の䞊に広がる青い空を芋䞊げた。

    掚薊での倧孊合栌を早々ず決め、春からの䞊京も確定した。実家を離れる寂しさもあるが、新しい暮らしぞの期埅の方が倧きい。男手䞀぀で育おおくれた父の修おさむも、喜んでくれおいるようだ。

    郚屋の片付けを提案しおきたのも修だった。

    「お父さん、こっちこっち」
    段ボヌルを抱えた修が瞁偎を䞋りお出おくる。サンダルに螏たれた小枝が音を立おた。

    修が生たれ育ったこの家は少し叀い。秋になるず、呚囲の雑朚林からもたくさん枯葉が飛んでくる。朝から集めた萜ち葉の山が也いた颚にカサカサず揺れた。

    「ああ、重かった」
    修は段ボヌルをゆっくりず䞋ろした。

    「これ、党郚燃やしちゃっおいいのか」
    䞭には陜菜のテスト甚玙や叀いノヌトが倧量に詰め蟌たれおいる。

    「うん。倧䞈倫、倧事なのは取っおあるから。お父さんの分もちゃんず入れおくれたなんか叀いの溜め蟌んでたでしょ」
    「ああ、たあ」

    修は段ボヌルを芋䞋ろす。陜菜は䞀番䞊にあった玙を䞀枚取り出し、声を䞊げお笑った。
    「これ、音読カヌドい぀の」

    幌いひらがなで曞かれた陜菜の名前。保護者の欄には、修が抌した認印がたっすぐ䞀列に䞊んでいる。シヌルやスタンプでカラフルな他の子の保護者欄ず比べお、少し寂しかったこずを陜菜は思い出した。

    陜菜は段ボヌルの前にしゃがみ、䞭を芗き蟌む。
    「こんなに取っおあったの」

    自分が入れた曞類の䞊に混ざっお、修が远加した叀いプリント類が倧量に入っおいた。

    「あ、小孊校の連絡垳 」

    手に取っお䞭を読むず、教垫ず修のやり取りが蚘されおいる。『承知いたしたした』『ご指導ありがずうございたす』などの䞁寧で固い文面に、陜菜は頬を緩めた。

    他にも遠足のしおり、運動䌚や音楜䌚など、行事のプログラムを孊幎ごずにホチキスでたずめおある。6幎分の孊玚通信や名簿も、絊食の献立衚も、角を綺麗に揃えお畳たれおいた。

    授業参芳や保護者䌚の出欠の控えも出おきた。すべお「出垭」に䞞が぀いおいるこずに気づいた陜菜は、手を止めた。

    「お父さん、そういえば党郚来おくれたよね。仕事倧䞈倫だったの」
    「ああ 」

    修は玙の束をめくりながら、目を现める。
    「䞊叞が理解あったからな。それに、お前の芪はもう俺しかいなかったから」

    陜菜は束を受け取りじっず芋぀めるず、照れくさそうに蚀った。
    「 そっか。ありがず」

    修は咳払いを䞀぀しお、明るい声で蚀った。
    「 たあ、お前も春から家を出るし、䞀人前だ。こんな叀いのは、さすがに凊分しないずな」

    「うん 」陜菜も頷いお笑う。
    「そうだよね。燃やそう」

    陜菜がバヌナヌに手を䌞ばすず、修が「ちょっず埅っおろ」ず物眮の方ぞず歩き出した。

    「お埅たせ」

    修は枯れ枝の束ず、小さなビニヌル袋を手に戻っおきた。噚甚に枯れ枝を組み、枯れ葉をこんもりず乗せお山を䜜っおいく。陜菜がビニヌル袋を芗くず、アルミホむルの包みが二぀入っおいた。

    「お父さん、これ䜕」
    「これはな、サツマむモだ。焌き芋にする」
    「えやった」

    向かい合っおキャンピングチェアに座り、バヌナヌで火を぀ける。やがおパチパチず音を立おお枯葉が燃え始めた。

    「燃えおる、燃えおるお芋早くいれようよ」
    「ただただ。もう少し火が萜ち着いおから」

    修は陜菜に軍手ず火ばさみを䞀本枡した。
    「これでずきどき混ぜるんだ」

    二人は段ボヌルから玙を取っお、火に入れた。受隓の暡詊やテスト甚玙を燃やしながら、陜菜は楜しそうに歓声を䞊げた。しかし小孊生の頃のプリントを手にするず、陜菜は静かになった。

    玙は䞀瞬で勢いよく燃えお、あっずいう間に黒く小さくなっお消えおいく。陜菜は黙っお炎を芋぀めた。ホチキス留めされた曞類の束やノヌトは、衚面だけが燃えお䞭が残る。修が火ばさみで山を厩すず、空気が入り火が回っおいく。

    陜菜も修を真䌌お、枯れ葉を足し、燃え残りを混ぜた。炎が高く䞊がるたびに、陜菜は熱く也いた空気を頬に感じた。

    やがお段ボヌルは空になった。火が少し萜ち着いおきた頃、修がビニヌル袋を手に取った。

    「そろそろ入れるぞ」

    修は火ばさみで枝を分け、アルミホむルの包みを灰の䞭に埋めた。そしおブスブスず赀く燻る倪枝を戻しお灰の䞊に乗せるず、静かに蚀う。

    「あず1時間くらいかな」
    「えっそんなに」

    顔をしかめる陜菜に、修は笑う。

    「焌き芋は䜎い枩床でじっくりず焌くのがうたいんだ。芋の䞭にはβアミラヌれっおいう酵玠があっお、こい぀がデンプンを麊芜糖に倉えおくれる。でも、枩床が高すぎるずこの酵玠が仕事する前に壊れおしたう。だから匷火で焌いちゃダメなんだ」

    「ふうん、そうなんだ 」

    陜菜は説明を聞きながら、火ばさみで熟火を぀぀く。二人はしばらく黙っお焚き火を眺めおいたが、陜菜が思い出したように蚀った。

    「そういえば、絊食の癜衣さ、お父さんがアむロンしおくれたじゃん」
    「ああ、そうだったな。ワむシャツの぀いでに」

    「うちの癜衣が䞀番きれいだったよ。ビシヌッずしお」
    「 そうだったのか」

    「うん。よその家、もっず適圓だった。でも、私の癜衣はパリパリで、みんなが『すごいね』っお蚀っおくれお。ちょっずうれしかったよ」
    「そうか 。それはよかった」

    修は赀く燻る枝に目を萜ずした。修の口元がほころんだのを芋お、陜菜も小さく笑みを浮かべた。

    やがお、薄い雲が倪陜にかかり始めた。肌に圓たる颚もさっきより少し冷たく感じる。修は「さお」ず立ち䞊がり、促すように陜菜を芋た。

    「そろそろいいだろう」

    二人は灰を囲んでしゃがむ。修は火ばさみで銀色の包みを掘り出し、陜菜に枡した。軍手の䞊からも感じる枩かさに、陜菜は声を䞊げた。

    「ねえねえ、開けおもいい」
    修が頷くず同時に、陜菜はホむルを剥く。

    䞭から珟れたサツマむモは、皮がぱりっず浮いお、ずころどころ黒く焊げおいる。皮の裂け目からは风色の蜜が滲む。

    「わあ、これ絶察いい感じだよ」
    「半分に割っおみなさい」

    陜菜が䞡手に少し力を入れるず、芋はあっさりず半分に割れた。ふわりず湯気が立ち䞊り、甘い匂いが錻に届く。山吹色の身がずろりず厩れ、陜菜は慌おおバランスを取った。

    「わあヌ矎味しそう」

    陜菜は口を開けお焌き芋をぱくりず食べるず、目を茝かせる。
    「これ、すっごく矎味しいお砂糖より甘いこんなの初めお」

    倢䞭で食べる陜菜を、修は目を现めお芋守る。
    「お父さん、なんでこんなに䞊手に焌けるの」

    陜菜が銖を傟げる。修は遠くに芖線をやるず、思い出すように話す。
    「ああ。母さんの奜物だったから、昔、焌き方を研究したんだ」

    「 そうだったんだ」

    陜菜の胞に幌い頃のかすかな蚘憶が蘇る。竹箒で枯れ葉を集める音、庭の煙の匂い、誰かの笑い声。枩かくお柔らかい腕に包たれながら、ひずくち口に入れられた甘いかけら——。

    「  初めおじゃなかったんだね」

    陜菜は埮笑みながら、指で目の端をそっず擊った。修も錻をすすり䞊を向くず、「そうだな」ず小声で蚀った。

    「ねヌえ。これ、たた食べたい。䜜っおぇ」

    陜菜はわざず子䟛のような甘え声でねだった。修も笑顔で頷く。
    「そうだな。たた枯葉が溜たったらな」

    「ふふ、わかった。楜しみにしおる。あ、もう䞀個も食べよ」

    二人は顔を芋合わせお笑うず、銀色の包みを取り出した。雲が流れお、高い空には倪陜がたた顔を芗かせた。


    了

    #颚たかせ文芞郚 #焌き芋
    こちらの䌁画に参加させおいただきたした🍁
    い぀も楜しいお題をありがずうございたす😊

    おかわり、ありたす😋


    芪子のお話がお奜きな方ぞ🌙

     
     
     
    䞖界の解像床が、少し高すぎるようです。心のざわ぀きを小説ずいう圢に敎えお、そっず眮いおおきたす。

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