今月読んだ児童文学を語る【2026年6月】
こんにちは!
つづきです。
高畑勲「赤毛のアン」
1979年、日本アニメーション
いきなり本(文芸)ではなくTVアニメですが、モンゴメリの大古典児童文学のアニメ化なので紹介しないわけにはいきません。
今年(2026)1月から少しずつ観ていき、全50話を半年かけて完走しました。今年の前半は赤毛のアンと共にあったといってよいでしょう。
原作は読んでいないので、まずはアン・シャーリーのあまりにも魅力的な感性と性格に衝撃を受け、ダイアナとの友情に涙し、ギルバートとの軋轢に大喜びし、マリラとマシュウとの家族愛に胸があたたかく苦しくなりました。
詳しくは以下の記事に書きました。
なんとしてでもモンゴメリの原作を読み、アニメになっていない続きを追いたいですが、逆に恐ろしくて見たくない気もしています・・・
結城浩『AIと生きる』
2026年、SBクリエイティブ

『数学ガール』シリーズの著者が書いた、対話型生成AIとの付き合い方にかんする小説です。「児童文学」に割り振られてはいないものの、中身は明らかに中高生が読んで理解できるように書かれています。
日々の勉強にAIを使うことを、全否定せず、かといって「ズル」をするのでもない。学習の本質を丁寧に確認しながら、人間とAIとの関係や距離感をともに考えていく……という、非常に教育的かつ "人間的" な本です。
ぜひとも全国の学校図書館には置いてほしいな、本書から大きな学びを得る若者が増えたらいいな、と思っています。
↑数学ガールと結城浩さんのオタクとして
熱が入りすぎてだいぶ空回りしている感想文はこちら↑
吉野万理子『雨女とホームラン』
嶽まいこ 絵、2020年、静山社

占いやおまじない、怪談などはいつの時代も小学生に大人気であり、その「見えないもの」への憧れを児童文学ではファンタジーやホラーとして描いてきました。
ところが、この『雨女とホームラン』では反対に、そうした信仰に水を差します。釘を刺します。「生きているひとを傷つけることもあるから気をつけなければいけない」と警句的なかたちで。
子どもの無自覚な残酷さをよく描いているし、その上で希望を優しく提示するのもうまかったです。
小山先生のキャラが抜群にいい。クールで科学的なだけの先生かと思ったら後半でちょくちょく人間味だしてくるのずるいって。
雨女はなかなか出てこないし、章ごとに語り手が変わる構成だし、序盤は何の話なのかイマイチ掴みづらくて正直ノれませんでした。
ただ、文字は大きくて易しい文章なのでそれほど問題ではなく、読み終わる頃には納得感と満足感を得られました。
長谷川まりる「リピート」
2026年、文藝春秋
1月からずっと、今年のわたしの児童文学作家のベスト1であり続けている長谷川まりるさんの新作web短編。書籍化されておらず、↑のnoteにて全文無料公開されています。
厳密には児童文学ではなく、一般向けの小説らしいですが、長谷川まりる作品なのでこのnoteで紹介させてください!
で、内容ですが・・・・・・
初見で読んでほしいので、多くは語れません。
(以下ネタバレ注意!)
衝撃作でした。
うわーー…………ええ…………
なるほど?……と。
『杉森くんを殺すには』の花火シーンや『花売り姫』で描いていた生殖主義・妊娠出産へのオブセッションと、『お絵かき禁止の国』でのリアルな同性愛者の描写が長谷川まりるのなかでどのように結びついているのかこれまでわからなかったのですが、本短編を読んで腑に落ちた部分はあります。
両方の要素を直接に結合させているから。
〈キャラクター〉の唯一性と画一性(量産可能性)について批評しているともとれるし、それは2次元のキャラだけでなく現実に生きるわれわれの尊厳の問題でもあると問いかけていると感じました。
さすがにこの設定をそのまま受け入れるには無理があります。
思考実験パズル的な短編ゆえの乗れなさはあるけれど、最終的には思考実験パズルをやる価値を認めざるを得ないところまで持っていかれました。
同性愛の欲望の、そのもっともグロテスクな側面を抉り出しているように思えました。
(勿論それは単なる同性愛差別……異性愛に比べて同性愛は気持ち悪くて"不自然"だ、とかそういう次元の話ではありません。異性愛と生殖主義の醜さをとことん突き詰めた上で、同性愛の無謬さを謳うのではなく、異性愛には出せない類の気色悪さがあるよね、といっているのだと読みました)
長谷川まりるこわくなってきた〜〜
この人に児童文学の未来を託していいのか?……いや逆に託すべき気もしてきた……
まはら三桃『日向丘中学校カウンセラー室』
めばち 装画、2020年、アリス館

先生のように近くなく、友達ほど深くもない。けれどもいつもそばにいる存在。
その名前を生徒たちは、親しみをこめて "さんづけ" で呼ぶ。
読む前は保健室の先生(養護教諭)モノかと勘違いしていたが、それとは別のカウンセラーの先生(相談員)の話でした。
全5章で相談員の谷川綾(26歳)がいろんな生徒の相談に乗っていく構成。
物語を貫くのは、綾がメールで相談をしている謎の人物と、「ゴウスケさん」と呼ばれる学校で噂されている幽霊の存在です。
章ごとに焦点化する人物が異なり、叙述形式(一人称や三人称)も章によってさまざまで、あんまり何が書きたいのか掴めないまま読み進めましたが、終盤でそれらの正体が明かされた途端に得心して、泣きました。
オーソドックスなYAのようで、意外と独特な内容の児童文学でした。
約130ページで字も大きく、中編小説といって差し支えないと思います。
シリーズ化しているようなので続きも借りてきました。
~~ここから絵本~~
ユリ・シュルヴィッツ『ゆき』
ポーランド, アメリカ、1998年(邦訳初版 1998年)、あすなろ書房


先月は代表作の『よあけ』を紹介したシュルヴィッツの他の絵本です。
雪によろこぶ子ども&動物に対して、雪を無視しようとする大人たち。
子どもは幻想と戯れて雪とともにただ踊ります。
ページ下部のテキストの枠が、徐々に雪が積もるごとにその境目を曖昧にして、上の絵と溶け合っていくのがよかったです。
谷内こうた『なつの おんがく』
1985年、講談社

図書館で「夏の絵本」特集で並べられていたうちの一冊。
これはぜひ実際に開いて見てほしいのですが、雲のかたちや、木の輪郭や色づかいがおもしろかったです。
それから、見開きの迫力!!
谷内こうたさんの絵本は『なつのあさ』も読みましたが、塗り重ねられただだっ広い風景のなかで、ぽつんと登場人物が存在して、風景-世界と関わっていくところに情感を揺さぶられます。
7月はいっぱい夏の児童文学を読もうと思いま~~す!!
