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今月読んだ児童文学を語る【2026年1月】


今年のもくひょうの一つが「児童文学をいっぱい読む」です。

すぐに飽きる可能性があるので、少しでも持続可能性を高めるために、一か月ごとに読んだ児童文学の感想をかるくまとめる記事を書くことにしました。

順位付けもノルマもありません。たとえその月に読んだのが一冊でもOK、月一冊も読まなかったら読みたい本を書きます。続くかはわからんけど、始めるだけ損はねぇ。それではレッツゴー

※肯定的な感想とは限りません
※ネタバレにはそんなに配慮しません。未読なひとに興味持ってもらえるような紹介を心がけはします
※だいたい読んだ順です
※今回は厳密には1月以前──昨年12月とかに読んだ本も含みます
※「児童文学」の定義は問いません。明らかに児童文学ではないものも(私が語りたければ)取り上げます





村上雅郁『きみの話を聞かせてくれよ』

2023年、フレーベル館文学の森

ひとつの中学校を舞台にしたオムニバス形式の群像劇。

とても素朴ながら優しく、悩める中学生に寄り添ってくれる良い連作短編でした!
最初の話「シロクマを描いて」はド王道の友情百合で、しょっぱなからボロ泣きしました。こういうのがいいんだよ……
かと思ったら、男子たちがふざける話(4章)のようなコミカルなものもあって楽しかったです。

ただ、すべてのエピソードに登場してはおいしい働きをする「黒ノラ」というキャラが私はちょっと苦手でした。こういうファンタジックなトリックスター/狂言回し/完璧超人/名探偵、嫌いなんだよな…… オムニバスの構造から阿津川辰海『午後のチャイムが鳴るまでは』を連想しました。(同じ年に出てる)

ともあれ、ヤングアダルトの青春群像劇に飢えている人にはぜひオススメです。お気に入りキャラクターは杉谷夏帆(ニカ)さん。



長谷川まりる『杉森くんを殺すには』

2023年、くもん出版

強烈なタイトルで、Twitterとかでも評判を目にはしていたのですが……

めっっっっちゃ面白かったです。まごうことなき傑作。今月のベストといっていいです。

露悪的でセンセーショナルなタイトルと導入から、切実で真摯なテーマに向き合ってゆくところ、重い内容に比して真顔コメディをやる文章、悩める子とそれをケアする側の疲弊という現代的な要素、これぞ児童文学!!!と快哉を叫びたくなる出来でした。読んで損はしないと思います。超オススメ

児童文学には、主人公たる子供にとって頼りになる「大人」枠の登場人物が出てきがちですが、そんなポジションの人間もまた自身の過去の行いを悔やんでいる、という弱さと葛藤を描いてくれたのがよかったです。

唯一引っかかったのは、打ち上げ花火を見る赤ん坊を「生の祝福」の象徴として配置するくだりだけでした。流石にあそこはナイーブというか都合が良いというか、ベタな記号に頼りすぎではないかとも思ったので。しかしそれは翻せば、そういうある種「無敵」なモチーフを動員しない限りは生の肯定はできない/難しい、というシビアな現実をこの上なく示してしまってもいるか~~とも。『映画 けいおん!』のイギリスの赤ちゃんも思い出した。




宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』

2023年、新潮社

※児童文学ではありません! 「こんなの実質 "子ども向け" だよな」みたいな他意はこれっぽっちもありません、マジで!! せっかく読んだからかさ増しで入れときたいだけで……

成瀬シリーズの2巻は1年前に親に読まされていたのですが、3巻出て完結したことだしそろそろ1巻から読みたいな~~~とかぼんやり考えていたら、年末帰省先に都合よく置いてあったので拝読しました。

やっぱ読み易いのがいいですね~~ 読み易さは正義。ほんとうに。ふつうに面白かったです。
島崎との幼馴染百合がさすがに強いのはそうなんですが、ヘテロ中心主義者/差別主義者のワタクシとしては西浦クンの話にめっちゃトキメいちゃいました。。


宮島未奈『成瀬は都を駆け抜ける』

2025年、新潮社

で、完結巻も流れで読みました。大学生編。
舞台が滋賀じゃなくて京都に移ってしまって、作中で思い切り森見登美彦に言及しているように、ありふれた「京都小説」になってしまったかなぁとやや残念に思いながら楽しく読んでいたのですが、ラストの琵琶湖疎水=溯上エピソードで、そういう立地と小説のジャンル構造そのものを見事に回収されて唸りました。

みんな言ってますが、これで完結なのは残念ですね。どんな大人になるのか期待してしまう……からこその完結なのだろうけれど。



いとうみく『空木の庭』

2025年、静山社

いとうみくさんは数年前に読んだ『あしたの幸福』がめちゃくちゃ素晴らしくて、1冊しか読んでないのにもう「好きな作家」カウントしているくらいでした。

そんな氏の新刊が出たらしく、何やら物々しい表紙にも惹かれて読んだのですが……今作はちょっと拍子抜けしちゃいました。

なんというか、おもしろい/つまらない以前に、これは「小説」なのか? 「物語」になっているのか?と首をかしげてしまうほどに、練れていない作品だと感じました。いとうみくさんが様々なかたちの「家族」の在り様を題材にして真剣に児童文学を書いているのは承知していますが、ちょっとこれは、あまりにも、扱いたいテーマを加工せずにそのまんまゴロンと提示していて面食らってしまう。しかも1つではなく2つも! その2つの「問題」の物語上での絡み合わせ方がまた上手くないというか、そもそも組み合わせようとすらあんまり思っていなさそうな有り様でした。

肝心の中身がこれだから、サスペンス/ホラーめいた表紙と導入がまた悪いようにしか思えなくなってくる。センセーショナルな引きから切実な現代社会の問題に誘っていく構成は『杉森くんを殺すには』などとも似ていますが、どうしてこれだけの違いが出るのか…… 理由のひとつにはおそらく、そのショッキングな導入部が、子どもの主観のなかだけで成立しているものか、大人も含めた現実世界で起きてしまっているものか、という違いはありそう。

ともあれ、かなり期待しただけにギャップから酷評を乱射してしまったので、後ろめたさ?から以降いとうみく作品を立て続けに読んでみたのでした。


倉知淳『ほうかご探偵隊』

2017年、創元推理文庫

創元推理文庫での、児童向けミステリシリーズの一環らしいです。

正直あんまりおもしろくありませんでした!
わたしの勝手な主観だと、これは「児童文学」ではない、「児童文学」っぽくないから楽しめなかったんだと思います。普段大人向けのガチミステリを書いてらっしゃる方がいきなり小学生を主人公に小学校を舞台に描こうとしても、あまりに言葉遣いが小学生じゃなかったりと、余計なところが気になってしまう。プラス、単純にわたしがミステリに厳しい(苦手がち)という問題がある。それってほんとにロジック成立してるの? 都合がいいなぁと思ってしまった。



いとうみく『よそんちの子』

2022年、ほるぷ出版

小学校低~中学年向けくらいの、字がデカいすぐ読める本。

「よそんちの子」を一定期間預かることになって、一人っ子からいきなり「姉」になってしまった子の成長の話。よかったです。
挿絵が漫画家の池辺葵さんで、この人こういう仕事もやるんだ~~~と驚きながら、めちゃくちゃ雰囲気あって素晴らしかった。



いとうみく『あたしデイズ』

2023年、新日本出版社

仲いいと思っていた高カーストの友だち集団から突如ハブられた小4女子の話。児童文学読んでると死ぬほど見る類型ですが、それだけ実際に「あるある」なんでしょうね。コワイ・・・

カースト外の新たな友達2人の出番をもっとみたかったかな。ちょっと尺が足りなかった印象。



いとうみく『おねえちゃんって、もうたいへん!』

2012年、岩崎書店

『よそんちの子』と似た、こっちは親の再婚で実際にできた「妹」との関係に悩むお姉ちゃんの話。児童文学と絵本の中間くらい?の字の大きさ。

つじむらあゆこさんの描くナッちゃんの「かいじゅう」っぷりが可愛くてたまりません。

神話でいう貴種流離譚のような、児童文学における王道のイニシエーションなのでしょうね、「姉(兄)になることの葛藤」というのは。




知念実希人『放課後ミステリクラブ2 雪のミステリーサークル事件』

2023年、ライツ社

なんか今の小学生に大人気らしい、児童ミステリのシリーズ。
かつてはやみねかおる(や松原秀行)で小説の面白さを知った世代の大人としては、どんなもんじゃいと謎のプライドと気負いを引きずりつつ読んでしまいました。

ゆいいつ借りられていなかった2巻だけ読んでみたのですが、うーむ…… 少なくとも今の私にはあんまりおもしろく、ない…………。キャラ設定とか、「子供はどうせこういうの好きなんでしょ」と大人が考えた初期案そのまんま過ぎる、というか…… ミステリとしてはまぁある程度ちゃんとはしているんでしょうけれど、児童ミステリってのはそれだけじゃあいかんのですよ(何様)

とはいえ、現役の子供たちがこれを楽しく読んで、わたしがかつて『パスワード』シリーズの小海マコトの影響で小学校図書室のシャーロック・ホームズを読んだように、ここからミステリの広大な世界へ足を踏み入れる子供たちが少しでもいるなら、それは掛け値なく偉大で尊いことなので、もう「世代」ではないあとは老いるだけの我々は大人しく微笑んでるしかないんですよね。かなしいぜ・・・

※作者の知念実希人氏の著作を読んだのはこれが初なのですが、氏のネット上での振る舞いやトラブルの噂から、かなり悪印象を持っており、それが本作を楽しむうえでも邪魔になった可能性は排除しきれません…… まぁしゃーないっすね。「本を読むこと」も世界のなかで起こる出来事なので。



わたしが育ったふるさと=児童ミステリたち




石川宏千花『保健室には魔女が必要』

2022年、偕成社ノベルフリーク

わたし自身は小中高と特に保健室には縁のない学生生活を送っていた(もっぱら図書室とか人通りの少ない踊り場とかで過ごしていた)のですが、それはそれとして、児童文学における「保健室」というのは、悩める子供たちにとっての一種のセキュアベース/サードプレイスであって、「保健室モノ」と名指せるであろうそれらには、いまだに己のことを「悩める子供」だと思い込んでいる中年のわたしも、心が洗われるような、救われるような、ときめくような気持ちになります。要するに好きです。

保健室の先生(養護教諭)が主人公なタイプの「保健室モノ」だ!と興味を持って読み始めたのですが・・・・これがめちゃくちゃ面白かった! 自分好みでした。

ゴリゴリのフェミニズム児童文学なんですよね。
そもそも最近の児童書はジェンダーやセクシャリティ、児童虐待などといった広義のフェミニズム的テーマを扱うものが大量にある(まったく扱っていないほうが珍しい)のですが、そういった現環境のなかでも本作は飛びぬけてしっかりフェミニズムをやっていて興奮しました。

保健室の「魔女」──というタイトルから、そういう比喩なのかと思ったら、マジで空を飛べちゃうタイプの(非人間らしい)魔女でまず驚きました。「魔女」というのも昨今のフェミニズム潮流のなかで重要な概念ですよね。

しかも、その魔女絡みのファンタジー設定がどれもこれも非常に魅力的でした。「おまじない」をより多く流通させた者が「七魔女」に選ばれる。それゆえに、おまじないを求める十代の女子がターゲットにされやすい……とか。
なかでも最高なのが「他の魔女の作ったおまじないを無効にするためには殴り合いの決闘をおこなう」という設定! 物理的に殴り合う魔女、最高じゃありませんか??

かなり大真面目なフェミニズム的な物語のいっぽうで、上のように、ファンタジー設定のところでめちゃくちゃ遊びがある。遊んでいる。その気の抜け方、ふざけ方のバランスがとっても心地よく、信頼できました。

「大真面目なフェミニズム的な物語」の一端をご紹介します。
本作も、よくある「主人公の大人が、子供たち(生徒たち)のお悩み相談を受けて、解決したりしなかったりする」タイプの話です。

で、こういう「お悩み相談」連作短編モノって、どうしても、その解決のために、相談者=悩める子供の内面や個人的な境遇にフォーカスしていって、解決の糸口を見出すことが多いです。でも、本作の第2話「胸が小さくなるおまじない」で、大きな胸を男性たちからからかわれることに悩む生徒に対して、主人公の魔女はどうしたか。「胸が小さくなるおまじない」を教えてあげようかと思うも、それはやめて、加害者(になり得る)側の男子生徒を集めて体育館で性被害啓発ビデオを見せたのです。その手があったか!というか、当然そうすべきだよなぁというか、感心しました。目の前の「悩み」を無くすのも大事だけれど、そもそもそれが「悩み」として生じてしまっている原因である周りの環境を変えることのほうが大事かもしれない。いじめられている子に心を砕いて変化せよと促すのではなく、いじめている側がまず変わるべきである。その労力を払うべきである。

悩んでいる個人に向き合いながらも、社会構造の変革・訴えかけという大局的な視点をも大事にしているのがとても良かったです。個人的なことは政治的なこと。
反ルッキズムとフェミニズムを完璧に体現している児童向け短編でした。

と、同時に、「ハッキングとおまじない考案は似ている」とか、あっけらかんとテキトーなオモロい設定を語るところがいい。きわめて真面目な物語でありながら、同時に心地よいおふざけの風も入っている。

登場する魔女にはそれぞれ「魔女名」があって、たとえば《知らせずの砂》。かっこいいでしょう?

わたしが好きな、ゆるい現代ファンタジーとラディカルなフェミニズムがかけ合わさった最強最高の児童文学でした。『杉森くん~』と並んで今月ベストといってもいいです。

1年前に榛野なな恵に出会ったときのような嬉しさがありました。「少女漫画/児童文学にこんなにもちゃんとフェミニズムを貫いて表現している作品があったなんて!」と。


で、単巻モノかと思ったらシリーズ続編が出ていた!
そう知ったときの喜びといったらもう・・・

石川宏千花『保健室には魔女が必要 MMMの息子』

2024年、偕成社ノベルフリーク

1巻の登場人物をそうやって展開させていくのか~~と、現代魔女ファンタジーとしても何やらしっかりドラマを作っていくようで、つまりシリーズが続きそうで、とても嬉しかったです。

あと、「先生」ふたりの腐れ縁関係がめちゃくちゃキャラ人気・カップリング人気を爆発させるポテンシャルあってずるいんですよね。キャラ小説としても強いってまじで死角がない。



松素めぐり『保健室経由、かねやま本館。』

2020年、講談社

「保健室モノ」第2弾! こちらは『魔女』と違って、主人公が保健室に通う子供(中学生)のパターン。

こっちも現代ファンタジーなんですが、もっと露骨に、保健室から異世界(の湯治場)に繋がっていて、悩める中学生の心と体を癒すサードプレイスになってくれる、というストレートな設定。『かがみの孤城』とかの仲間ですね。

こちとら心はいつまでも悩める中学生なので「かねやま本館」にほんとうに行きたいのですが、こうした児童向け現代ファンタジーが大好きな一方で、これは現実世界のなかにファンタジックな要素が入り込んでくるというよりは、ファンタジックな「異世界」へと行き来する物語なので、その異世界の情景描写にちょっと乗れない(頭に情景を思い浮かべにくい/めんどくさい)面もありました。雑にいえば、わたしはどこまでもローファンタジー好きな人間で、少しでも「別世界」のようなハイファンタジー寄りのものは読みづらさを覚えてしまうのでしょう。つくづく想像力が乏しい人間だこと!

あと

むしろ本物の休息がとれるのは、子どもだけだってこと。

p.208

ここで「大人」のわたしは絶望しました。サーマたちと一緒に心地よく温泉に浸かっていたと思ったらいきなりシャットアウトされた~~泣泣

……

児童文学よ、それでいい。
「大人」を突き放すくらいがちょうどいいんだ。わたしは児童文学のそういうところが好きなんだ。

・ ・ ・

こちらもシリーズがすでに8巻くらい続いているらしく、少しずつ読み進めるのが楽しみです!

あと、モデル?となった山形県の銀山温泉にも行ってみたい。



~~~~~~


というわけで今月はおよそ13冊でした~

冊数に大した意味はないですが、国内作家だけだったのと、最近(ここ数年)の本に偏っていたのは心残りですね~

でも今の自分はそういうのを読みたい時期らしいので、とくに無理はせず、意識も可能な限り低く保って、読みたい本を2月も読んでいきます。

それではまた来月!
おもろい児童文学あれば教えてください!!



謝辞

いつも面白そうな児童文学を面白そうに丁寧に紹介されている、偉大なブログです。めちゃくちゃ参考にしてます



翌月


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