三崎亜記おすすめ小説15選|不条理と幻想が交錯する世界にときめきが止まらない
現実と非現実のあわいを描き続ける作家である三崎亜記さん。『となり町戦争』で鮮烈なデビューを飾って以来、少し、不思議な世界観で多くの読者を魅了してきました。目に見えない戦争、静かに消える町、奇妙な社会制度。そのどれもが、私たちが生きる現代をどこか鏡のように映しています。
今回は、三崎亜記さんの作品の中から特に読んでいただきたい15作品を厳選!不条理と幻想が交錯する世界に飛び込んでみてください。気になった作品はぜひ、手に取ってくださいね。

『となり町戦争』
現代的戦争の恐怖。
ある日、突然に始まった隣接する町同士の戦争。公共事業として戦争が遂行され、見えない死者は増え続ける。現代の戦争の狂気を描く傑作。文庫版のみのボーナストラック短編を収録。小説すばる新人賞受賞作品。
三崎亜記さんのデビュー作にして代表作。2004年に、第17回小説すばる新人賞受賞、第18回三島由紀夫賞候補、第133回直木賞候補となった作品です。戦争を「公共事業」として描いた発想は斬新で、現代社会の無関心や形骸化した制度を鋭く映し出します。
『失われた町』
ある日、突然にひとつの町から住人が消失した――三十年ごとに起きるといわれる、町の「消失」。不可解なこの現象は、悲しみを察知してさらにその範囲を広げていく。そのため、人々は悲しむことを禁じられ、失われた町の痕跡は国家によって抹消されていった……。残された者たちは何を想って「今」を生きるのか。消滅という理不尽な悲劇の中でも、決して失われることのない希望を描く傑作長編。
2006年、第136回直木賞候補、第28回日本SF大賞候補、第4回本屋大賞9位となった作品です。理不尽な運命と向き合う人間の強さを描く不条理ファンタジー。
『鼓笛隊の襲来』
赤道上に発生した戦後最大規模の鼓笛隊が、勢力を拡大しながら列島に上陸する。直撃を恐れた住民は次々と避難を開始するが、「わたし」は義母とともに自宅で一夜を過ごすことにした。やがて響き始めたのは、心の奥底まで揺らす悪夢のような行進曲で…(『鼓笛隊の襲来』)。ふと紛れ込んだ不条理が、見慣れたはずの日常を鮮やかに塗り変えていく。著者の奇想が冴えわたる、驚異の傑作短編集。
2008年、139回直木賞候補になった作品。『小説宝石』に掲載された8編と書き下ろし1編が収録れています。表題作をはじめ、「覆面社員」「彼女の痕跡展」「校庭」「欠陥」住宅など、ちょっぴり笑ってしまうコメディからホラーテイストまで幅広いジャンルで展開している短編集です。
『廃墟建築士』|世にも奇妙な物語「七階闘争」原作小説を収録
いつか崩れて自然へと回帰していく姿に魅せられ、「私」は廃墟を作り続けてきた。時の経過によって醸成される廃墟こそが、その国の文化的成熟度を表すのだ。だがある時、「偽装廃墟」が問題となり…。(「廃墟建築士」)。七階での事件が多発し、市は七階の撤去を決定した。反対する市民は決起集会を開くが…(「七階闘争」)。意識を持つかのような建物に現実と非現実が同居する、不思議な4編の物語。
「七階闘争」「廃墟建築士」「図書館」「蔵守」など4編を収めています。2025年秋の「世にも奇妙な物語 35周年SP 秋の特別編」で「七階闘争」が伊藤淳史さん主演でテレビドラマ化されています。建物がテーマのちょっと不思議な中編集。『バスジャック』に収録されている「動物園」に出てくる日野原柚月さんも登場します。
『ニセモノの妻』
「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」妻と思ってきた女の衝撃的な一言で始まったホンモノの妻捜し。けれど僕はいったい誰を愛してきたのだろう(「ニセモノの妻」)。ある日、仲睦まじい夫婦の妻だけが時間のひずみに囚われてしまった。共に明日を迎えられない彼女のために夫がとった行動は――(「断層」)。その他、非日常に巻き込まれた4組の夫婦の、不思議で時に切なく温かな短編集。(解説・中江有里)
「自分が偽物だと思い込む妻」との奇妙な日々を描く表題作をはじめ、「終の筈の住処」「坂」「断層」など4編を収録した短編集。現実の裏側に潜む違和感をテーマにした、人間ドラマとしても読み応えのある作品です。
『みしらぬ国戦争』
私たちは見えない「敵」と戦っている――。
国名も位置も分からない未確認隣接国家〈UNC〉の侵略で、「交戦状態」となったこの国。2年間続く戦争に人々は飽き飽きし、数字だけで伝えられる戦況を他人事のように感じていた。海岸の漂着物を確認するという徴集業務に従事するユイも、そんな「日常」を送る1人。ユイの目的はただ1つ、両親の形見に刻まれた謎の文字を解明し、幼い頃失った記憶を取り戻すことだ。その文字の記された漂着物を拾い集める男性、文字と同じ言語の歌を歌う少女らと交流を深めながら、その秘密に迫ろうとするユイだったが――。
みしらぬ敵、みしらぬ文字、みしらぬ歌、みしらぬ戦争。全てが繋がるとき明らかになる、戦争の“真実”とは?
コロナ禍で蔓延した「自粛」が、執筆のきっかけになったという本作。国家規模に拡大した見えない戦争を通し、情報操作や無関心社会への警鐘を描いています。
『名もなき本棚』
5分後、あなたの日常は非日常になる。
中学・高校の教科書に採用された「私」「ゴール」「公園」も収録! 非常階段に置いてある不思議な本棚。自由に自爆する権利のある社会……。想像を超える驚きに満ちた傑作掌編集。いきなり文庫!
デパートのショーウィンドウの中で暮らす一人の女性。いつしか僕は、そのディスプレイの前で時間を過ごすのが日課になり……。(「スノードーム」)ゴミ集積所に座り込むサラリーマン。回収日ではない日に捨てられたその男は、近所の主婦には迷惑な存在でしかなく……。(「回収」)5分後には、あなたの日常が足元から揺らぎだす! 幻想、シュール、不条理、感動。刺激的な読書体験を約束する全19編。
19編の短編が収録されたショートショート集。どこかゾワリとする奇妙で刺激的な短編が集められています。幻想的でシュールな三崎亜記さんらしい世界観を楽しめます。
『バスジャック』
三崎亜紀はやっぱり天才だ!
いかに美しくバスを乗っ取るか。いかに多くの大衆の支持を獲得できるか。それが問題だ……。バスジャックがブームになった社会を描く表題作ほか、三崎亜記の天才を実感できる傑作短編集。
第59回日本推理作家協会賞短編部門候補になった作品。『小説すばる』に掲載された「二階扉をつけてください」、「しあわせな光」、「送りの夏」、「動物園」など全7編の短編集です。どの物語も現実とほんの少しずれた世界が描かれ、不思議な読後感に包まれます。
『刻まれない明日』
開発保留地区――10年前、街の中心部にあるその場所から理由もなく、3095人の人間が消え去った。今でも街はあたかも彼らが存在するように生活を営んでいる。
しかし、10年目の今年、彼らの営みは少しずつ消えようとしていた。
大切な人を失った人々が悲しみを乗り越え新たな一歩を踏み出す姿を描く。
失われた人と町をめぐる静かな再生の物語。喪失をテーマにした美しい幻想譚。『失われた町』の世界を描く作品なので、『失われた町』を先に読む方がより楽しめます。
『手のひらの幻獣』
心の中に作り出した動物のイメージをあやつる異能力を持つ「表出者」の日野原柚月。十万人に一人といわれる彼らが集まる企業に勤めて早くも十年。孤独を感じながらも安定した日々を送っていた。そんなある日、できたばかりの新研究所を警備する業務を任される。しかしそこには表出者のパワーを増幅する禁断の存在が隠されていて……。日常化した非日常を緻密に描く“三崎ワールド”全開!
研究所や遊園地を舞台に、人間と“幻獣”の関わりを描く短編集。『廃墟建築士』収録の「図書館」、『バスジャック』収録の「動物園」に関わる物語なので、そちらを先に読んでおくとより楽しめます。
『メビウス・ファクトリー』
町の住民のほとんどが働く巨大工場。
しかし、そこで何が作られているのか、
実は、誰も知らない――。
妻子を連れて地元の町にUターン就職し、街一番の工場に就職したアルト。
完璧な管理システムを持った工場は、町民の誇りと憧れの存在だったが、
アルトは働き続けるうち、徐々に工場の“秘密"に気づきはじめ――。
閉鎖的な企業城下町を舞台に、現代日本を照射するSF長編。
とある工業製品を作り続ける工場にまつわる物語。町の人が関わる工場の秘密を暴く過程を見ていくうちに、今、自分たちが見ている世界、信じているコトは本当なのかと不安になるような作品です。
『逆回りのお散歩』
地方都市A市とC町の行政統合を目前に控え、聡美はネット掲示板で、陰謀説まで飛び交う激しい議論が起こっていることを知る。「統合反対派」による市役所への抗議電話や無許可のデモ行進。平穏に過ぎる日常の裏で、無関心に見えた人々が静かに動き出し、反対運動は他を巻き込み激しさを増していく……。日本の現在を想起させる表題作ほか、ベストセラー『となり町戦争』のスピンオフ短編も併録。
市町村合併をめぐるネット世論と抗議活動を描いた作品。平穏な町が、静かに狂気を帯びていく過程は、SNSに踊らされる現代の日本を見ているかのようなリアリティを感じます。
『玉磨き』
ルポライターの私は、取材のために全国を訪ね歩いていた。どこへも辿り着かない通勤用の観覧車、ただひたすらに玉を磨く伝統産業、すでに海底に沈んだ町の商店街組合……。そこで私が出会ったのは、忘れ去られる運命にあるものを、次に受け継ぐために生きる人々だった。今、この瞬間にも、日常から消えつつある風景を描いた、6つの記憶の物語。
現実には現実にはありえないモノやコトについて取材するルポライターの視点で綴る連作短編集。巻末の架空の参考文献を眺めると、これはどこかで実在するコトなのかと錯覚しそうになります。
『ターミナルタウン』
静原町はターミナルタウンとして鉄道と共に発展してきたが、乗り換え路線の廃止により、ほぼ全ての列車がこの駅を通過するようになってしまった。鉄道と共に衰退しつつあった町にある時再興の兆しが現れる。見えないが「ある」タワー、不思議な「隧道」の存在――誰も見たことのない「町興し」がいま始まる。
衰退していくターミナルタウンを舞台に、「象さんすべり台」や消失した列車「451列車」、「隧道」、「影無き者」、「見えないのにあるタワー」など三崎さんワールド全開の長編小説。三崎さんの短編小説を読んでいる人なら分かるワードが散りばめられ、世界観がぐんと深まります。
『チェーン・ピープル』
「いつでも、誰でも人格者になれます」。名前 も年齢も異なるのに、同じ性格をもち同じ行 動をする人達がいる。彼らは、チェーン店な らぬ「チェーン・ピープル」と呼ばれ、品行 方正な「平田昌三」という人格になるべくマ ニュアルに則り暮らしていた。そんな時、4 29人目の平田昌三が、殺人事件を起こす。 温和なはずの彼は、なぜ人を殺めたのか――。
ライターによる取材というかたちをとった連作短編。三崎さんらしい特殊設定の世界の中で、現実世界への皮肉が効いた作品。どこかにこの状況があり得るのではないかという不思議な感覚に陥ります。
まとめ
三崎亜記さんの小説は、奇抜な設定や不条理な出来事を通して、「日常の中に潜む異世界」を描き出しています。見えない戦争に巻き込まれる人々、消滅していく町を見送る者たち、崩れゆく建物や社会制度に抗う市民。不思議で、少し怖くて、でもどこか優しい三崎亜記ワールド。
三崎さんの作品を読むと、あなたの中の「現実の輪郭」も、少しだけ変わっているかもしれません。気になる作品があったら、ぜひ、手に取ってみてくださいね。
