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妻へ捧ぐ|口腔多発がん|雪国回想

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    扉を開けると長い雪国であった。

    国境は白く夜へ解けた。


    まずは

    診療記録。
    同意書。
    説明書。
    領収書。

    彼方
    此方
    置きます。


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    全部、保管していました。

    どのくらいの
    量だったか。

    どのくらい
    闘っていたか。

    視覚的に
    分かりやすく、
    部屋全体に。

    ぽつん

    ぽつん。

    1枚

    1枚。

    置いて

    置いて

    置く――

    あっという間

    部屋全体。

    いや、
    廊下まで

    埋まりました。

    4年8カ月。

    妻の
    長い雪国。
    無限城。

    軌跡。

    いま、

    ここに――



    妻は生前、

    口腔多発がんは
    希少がんゆえ、

    公(おおやけ)のために――

    そう、
    考えていたようです。

    「疫学調査_口腔がん登録」
    にも登録していました。

    Xでも、
    ペンネーム「里緒」の名で
    闘病の記録を発信していました。

    それを現在は、
    僕・風志が
    静かな創作供養物語として
    引き継いでいます。

    妻は、
    このような形での発信を
    望んでいないのかもしれません。

    ただ。

    ここは
    風志節。

    ご勘弁を(笑)。

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    僕は自営業です。

    当初は、
    自身のWebサイトなどへ
    繋げようとも
    考えていました。

    でも。

    違うなと。

    里緒もペンネームだし。
    すべて匿名で。

    と、しました。

    そんな
    開かれていた頃に
    寄せられた
    温かい御言葉を
    紹介いたします。


    Mさま

    心よりお悔やみ申し上げます。
    一方的にフォローさせていただいてる者です。
    頑張って治療されてる姿に励まされておりました。
    とても残念で、悔しいです。
    もうつらい症状に悩まされることもなく、
    ゆっくり休めていることと思います。
    里緒さん、ありがとうございました。

    ――
    💐
    こちらこそ、ありがとうございました。
    温まる御言葉に心より感謝いたします。by 風志


    その他、
    LINEやメールなどでも
    おくやみの御言葉。

    また、
    たくさんの
    御花
    お気持ち
    も
    頂戴しております。

    併せて、
    厚く御礼申し上げます。


    それでは本題。
    口腔多発がん|闘病回想
    失礼いたします。

    この綴りにあたり
    かなり悩んだ点が、

    ――
    顔をどこまで晒すか。
    ――

    部分のみか。
    全景か。

    ただ
    部分のみだと
    公に開く記録としては
    弱かったため、

    ――
    顔全景。
    目周辺のみモザイク。
    ――

    以下、
    置きます。





    奥尻の地にゐる
    とある漢おとこ。

    長く付き合いある友人。
    御年82歳。

    「死んだあとの墓守を頼む」

    僕へと託された。

    その下見に、
    奥尻の地へ出向く。

    5月10日。
    月命日。

    未練と執着の洗礼も兼ね
    ちょうど良いなと。

    洗礼の旅。

    削ぎの旅

    へ。


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    その帰りの船。

    海、眺める

    と、

    ふと。

    真っすぐで
    平らな
    此これ地球に。

    何処までも
    広がる
    海原の幕に。

    里緒との
    十年の刻ときが
    投影され始めた。


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    出逢い。

    日常。

    そして。

    闘病。


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    食べて。

    出掛けて。

    踊って。
    踊る。

    里緒
    と
    風志

    ふたりで踊子。


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    2020年10月16日。

    劇場版
    「鬼滅の刃 無限列車編」
    公開。

    妻は大ファン。

    なかでも、
    鬼殺隊最高位「柱」の一人――
    炎柱・煉獄杏寿郎。

    いちばんの推し。

    その彼が
    壮絶な最期を遂げる
    無限列車編。

    当然のように、
    公開初日、
    並んで観に行った。


    奇しくも
    この頃より異変。

    2020年春頃。
    右舌縁の咬傷。
    違和感。

    年末、
    再び
    粘膜炎を自覚。

    症状が進行。

    2021年3月3日。
    地元の歯科
    受診。

    歯科医
    すぐに
    異常と判断。

    口腔腫瘍専門病院
    紹介され。

    翌日、
    その病院へ。

    CT。
    精密検査。

    舌癌。

    確定。

    ――

    📷 発症から初診までの経過が記載された診断書

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    早朝4:29。

    1枚。

    自身を撮影している。

    死去時刻4:28。
    撮影時刻4:29〔2021年2月7日〕

    2+0+2+1+0+2+0+7=14。

    この写真が
    当初1枚目の遺影原本となった。

    葬儀からしばし。
    都合により差し替え。

    2枚目。
    これも偶然超える共鳴。

    最期の入院日
    9月17日〔2025年〕
      ||
    別な遺影原本撮影日
    9月17日〔2018年〕

    2+0+1+8+9+1+7=28。

    ――

    📷 2枚目の遺影(妻形見のスマホ越しに撮影)

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    発生部位は
    舌の裏側付近。

    T1N0Mx。

    ・原発腫瘍は2cm以下(T1)
    ・リンパ節転移なし(N0)
    ・遠隔転移の有無は評価不可(Mx)

    初期/ステージⅠ。

    2021年3月12日。
    舌部分切除術。

    ――

    📷 舌部分切除術説明書

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    此処より

    長い国境

    つづく――

    トンネル
    抜けるも。

    また
    トンネル。

    抜ける。
    トンネル。

    また
    トンネル。

    いつしか
    国境は白く深く沈んだ。


    病気遍歴

    2021年3月
    舌癌により舌の右側面部分切除

    2022年8月
    右頸部リンパ節郭清

    2022年9月
    抗癌剤(シスプラチン)
    放射線治療

    2023年1月
    右奥歯横の歯肉癌切除

    2023年12月
    抗癌剤(PCE)

    ――

    📷 右頸部リンパ節転移_術前説明書

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    📷 右頸部リンパ節術後

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    治療途中より、
    希少がん
    難治がん

    口腔多発癌

    確定。

    口腔がんの元となる

    白板症
    口腔扁平苔癬

    併発。
    難病指定も受ける。

    同時に
    これまた難病。

    橋本病。

    見つかる。


    2024年2月
    左下顎歯肉癌切除(肩甲骨+皮弁移植)
    左頸部リンパ節郭清

    2024年4月
    抗癌剤(シスプラチン)
    放射線治療

    2024年10月
    頬部腫瘤摘出

    2024年11月
    キイトルーダ投与開始

    2025年2月
    キイトルーダ5回目投与で一旦中止

    ――

    📷 肩甲骨皮弁移植術_術前説明書

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    📷 肩甲骨皮弁移植術後_全景

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    📷 肩甲骨皮弁移植術後_顎部分

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    📷 数倍に腫れているのが分かる写真

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    📷 並行して行われた抗がん剤治療による脱毛

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    ~ 後に再建される(🪷の写真) ~

    📷 光免疫療法術後
    ※左側が口腔内が水疱で塞がる副作用の様子
     右側が口腔内と皮膚が交通した様子

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    ※3カ月ほどで、表面上はとりあえず交通が塞がった

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    📷 肩甲骨皮弁&光免疫療法回復後(2025年6月撮影)🪷

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    2025年3月
    左頰部
    光免疫治療(アキャルックス)

    2025年9月
    舌、歯茎、両耳下腺光免疫治療(アキャルックス)

    2025年10月23日
    再度、キイトルーダ投与。

    効かず。
    悪化。

    緩和ケア治療へ。

    ――

    📷 最後の頼みの綱_キイトルーダ投与前説明書

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    📷 心肺蘇生法を実施しないこと(DNAR)に関する説明書

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    📷 医療用麻薬説明書

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    ※DNAR・麻薬説明書から
    キイトルーダが延命目的の投与であることが伺える。




    病の踊子。

    ――

    踊りは
    つづく。

    止まらない。

    ――

    そして。

    いつしか――

    踊り
    は
    止まる。


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    2025年10月31日
    夕方。

    容態悪化。

    病室が
    4階475号室
    から
    4階460号室
    ナースセンター前。

    移動。


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    475号室
     ||
    460号室

    その距離
    約50メートル。

    もう、
    歩けない。

    ベッドごと
    460号室へ。

    ベッド下
    ローラー
    ストッパー解除。

    一畳ほどの大きさ。

    看護師さん
    二人で。

    押す。
    押す。

    ゴロゴロぉー

    車輪は動く。

    廊下へ。

    ゴロゴロぉー

    この病院。
    立て替えたばかり。
    まだ3年ほど。

    廊下は新しい。

    時折、
    キュウっ…キュウっ…

    滑る音
    木霊する。

    ゴロゴロぉー

    ゴロ。

    停。

    一時停止。

    ――

    キュキュキュ
    キューー

    460号室
    行くには、
    一度、
    直角に曲がらねば
    ならない。

    曲がる。

    曲がった。

    再び
    ゴロゴロぉー
    ゴロゴロぉー

    左側より
    やたらと強い白が差す。

    光。照明。

    そこは
    ナースステーション。

    この
    目の前に。

    4階460号室。

    どこか
    底が深く白い。


    奥の遠い

    ――遥か。


    国境亡き

    長い雪国。

    ――着。


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    11月3日

    意識
    薄れる。



    11月5日

    余命3日
    宣告。


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    -


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    雪は、

    もう

    解けなかった。


    無限城

    に

    埋まる。


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    🌄ここまで此岸🌄




    🪷ここより彼岸🪷



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    (参考)

    川端康成「雪国」(新潮文庫)

    川端康成「古都」(新潮文庫)

    川端康成「伊豆の踊子」(新潮文庫)


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    我が妻、口腔多発がん 4年8カ月闘病 2025年11月10日4:28 旅立つ 西洋医学を信じた妻(土) 自然療法寄りの僕(風) 価値観の違い越え 「解き」の先で 「結び」を魅る 亡き妻と紡ぐ供養物語 CC0 1.0 Universal 月まで👀 ぶっ飛び自由 🌕🌙

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