第一回ゴーストライティン絵画祭
本記事は、
「第一回ゴーストライティン絵画祭」エントリー作品の展示会場です。
ご応募いただいた作品を、開催期間中こちらに展示いたします。
エントリーは1アカウントにつき1作品とし、本記事に掲載された作品を正式なエントリー作品といたします。
なお、9月23日24時まで作品の変更を受け付けております。
変更をご希望の方は、DMまたはコメントにてご連絡ください。
また、展示にあたり、作品には主催者より題名を付けさせていただいております。
題名の変更をご希望の場合も、どうぞ遠慮なくお申し付けください。
それでは、
三人の作家が描き出した作品の数々を、どうぞごゆっくりご覧ください。
第一回 ゴーストライティン絵画祭、開館いたします。
特設サイトへはこちらから💁

アプリ本体はこちらから💁
鑑賞及び投票アプリ 金持ちタマネギ美術館はこちら💁
面白応援アプリゲームはこちら


◾️消えゆく命の記録者

ななみ紗名 sana_nanami 様
題名:沼明かりの三客

四十歳の夏、アッシュダウンは保護区の夜間調査で、沼のほとりに淡い光が浮かぶのを見た。近づくと、大きな切り株の上で、三人の小さな妖精が眠る前の紅茶を囲んでいたという。
娘を寝かしつけた夜の静けさに似た、束の間の安らぎだった。
彼は家へ戻るなり、母にならって続けてきた観察帳を開いた。水彩のにじみは穏やかに抑えられているが、翅の輪郭には乾くのを待てず走らせたペンの跡が残る。
失われる前に描き留めたいという焦りと、その夜だけは急がず眺めていたいという喜びが、一枚の中で静かに隣り合っている。
AIU(アイユ)様
題名:まだ、ここにいる

十八歳で親元を離れ、自然保護区の調査助手になったR. Ashdownは、毎日、小さな手帳を持って森へ入った。ある湿った朝、崖の縁で虹色のキノコを食む奇妙な生き物を見つけた。エノキの頭、長い耳、光を透かす薄い羽。驚かせぬよう遠くに座り、母がしていたように、まず姿を記録した。
宿舎へ戻ると、その日のうちに筆を取った。にじみすぎた墨も、乾いた筆跡も直さなかった。森の広さに比べれば、生き物はひどく小さい。それでも金色の光の中で、ほんのひととき安心して食事をしていた。その静かな「楽」を、消える前に紙へ残しておきたかった。
Labo. 様
題名 : 水底に弾む赤

六十一歳の春、母の家に戻って三度目の冬を越したアッシュダウンは、調査帰りに水没した古い競技場へ立ち寄った。
揺れる光の底で、黒と赤の服をまとった少女が、ひとり楽しげにボールを運んでいた。
妻を失ってから喜びを描くことを避けてきた彼は、その足取りに幼い娘の笑い声を思い出す。若いころのように筆を急がせず、乾いた墨と余白を選び、消えかける光の中に弾む一瞬だけを残した。
画面の静けさは円熟の証であり、抑えた線の奥には、間に合ってほしいという昔の熱がまだ息づいている。
ひよこまめプリン 様
題名 : 最後の舞踏会

母の遺した観察日記に、一枚だけ奇妙な落書きがあった。
幼い鳥たちがドレスをまとい、シャンデリアの下で踊っている。
その中央には、ひときわ立派な冠羽を持つ一羽。
「鳥たちにも、晴れの日があればいいのに」
余白には、母の字でそう書かれていた。
彼は長い間、動物を正確に描くことだけを自分に課してきた。羽根の数も、嘴の形も、決して嘘をつかないように。
けれどこの夜だけは、母の嘘を描いてみようと思った。
消えていく命を記録するのではなく、
消えなかった世界で、彼らが迎えたかもしれない祝福の日を。
完成した絵を眺めながら、彼は小さく笑った。
「母さん。たまには、こういう図鑑も悪くないな」
ママ薬剤師HONO 様
題名 : まだ、紙の上にいた

五十八で母の遺した家に戻ってから、R. Ashdown は、森や川だけでなく、町から静かに消えていくものにも目を向けるようになった。
閉じられる前の古い病院で、薬剤部の机に残された紙の束を見たとき、彼は幼いころ地図から消えていった生き物たちと同じ気配を感じたという。
若い日の彼なら、失われる前にと勢いで刻んだだろう。
だが六十一の手は、皺、折れ、擦れの一つひとつを急がず拾えるほど落ち着いていた。
もう、消えるものを追いかけようとはしなかった。
ただ、そこにあったことだけを残した。
(闇)ぱぐぱぱん 様
題名:海をたどって、君と食べる

六十一歳の冬、R. Ashdownは母の遺した家で、机の隅にある娘との写真を長く眺めていた。
森や海から消えていく命を追ううち、自分にも会いに行ける時間が無限ではないと気づいたのだ。
彼は旅支度の代わりに、まず一枚の未来を描いた。雪原のたこ焼き屋で、産地の分かるタコを使った一皿を娘と囲む場面である。店長の闇落ちぱぐぱぱん、その羽根に忍ばせた海の記憶、二人の串から立つ湯気。
若い頃なら喜びを色で塗り重ねただろう。だが円熟した彼は、白い余白を残し、娘と目を合わせる瞬間にだけ金色を置いた。
それは願望ではなく、まだ動けるうちに実現させるための静かな旅程だった。
お父さん猫(ししょー)様
題名:『配給』

母の遺した家に戻って三年、六十一歳になったAshdownは、開発で削られ続ける故郷の森へ分け入った。
青白い月光が照らし出していたのは、見覚えのあるスーパーの袋を破る手負いの母狼と、何も知らず残飯に夢中な子だった。
記録者を射抜く母の険しい警戒。
かつてのような若さに任せた荒々しい筆勢はもうない。だが、長い孤独の果てに極まった円熟した手つきが、押し殺した激しい怒りを、冷徹な明暗の輪郭へと定着させた。
手遅れになる前に、この痛ましい現実を誠実に留めること。
老いた画家の筆先は、一度も迷うことなく夜を刻んだ。
紬(つむぎ) 様
題名 : 月が沈む前に、手紙を一通

27歳の頃、Ashdownは海辺で一匹のラッコを見つけた。
波に身を任せ、仰向けになって空を見ていた。
あまりに穏やかで、この命がいつか消えてしまうなど想像もできなかった。
その夜、彼は奇妙な夢を見る。
砂漠の真ん中に置かれた古い浴槽。
巨大な月の下で、ひとりの女性とラッコが静かに水に浮かんでいる。
女性の手には、封をされた一通の手紙があった。
「誰に渡すんだ?」
Ashdownが尋ねると、彼女は月を見たまま答えた。
「まだ、この子を知らない人へ。」
翌朝、彼は夢の光景を一気に描き上げた。
命は、死んだときだけ消えるのではない。
誰からも思い出されなくなったとき、もう一度消える。
だからAshdownは描く。
まだ見ぬ誰かの記憶へ、この小さな命を届けるために。
一枚の絵を、未来へ宛てた手紙のように。
たかっちP 様
題名 : 最後に残ったもの

モデルによるストーリー
四十歳の春、彼は、長いあいだ身につけてきたものについて考え始めた。
仕事。 肩書き。 責任。 人からどう見られるかという意識。
そして、いつの頃からか、それらと同じように「服」もまた、自分を形づくるものだと思っていた。
人は服を着る。
それは寒さを防ぐためだけではない。
社会の中で、自分が何者であるかを示すためでもある。
会社員としての服。 父親としての服。 一人の男としての服。
役割が増えるたびに、身につけるものも増えていった。
しかしある日、彼はふと思った。
「もし、すべてを脱ぎ捨てたら、自分には何が残るのだろう。」
その問いに答えるように、彼は一枚ずつ手放していった。
上着を脱いだ。 シャツを脱いだ。 ズボンを脱いだ。
肩書きも、見栄も、世間体も、少しずつ置いていった。
そして最後に残ったものを、彼はしばらく見つめていた。
パンツだった。
彼は思った。
「、、これも、脱ぐべきなのだろうか。」
長い沈黙のあと、彼は首を横に振った。
すべてを手放すことが、自由なのではない。
最後まで残したいものがあるからこそ、人は自分でいられる。
そう考えた彼は、パンツ一枚の姿で静かに立った。
たくさんのことを学んできた彼にとって、それは恥ずかしい姿ではなかった。
余計なものを削ぎ落とした、ひとつの「型」だった。
構える必要もない。 飾る必要もない。
ただ、立つ。
何も持たず、何も隠さず、しかし最後の一枚だけは大切に守る。
それが、彼がたどり着いた「自分自身」の姿だった。
この作品を描き終えたあと、彼はしばらく画面を眺めていた。
そして、小さく頷いた。
「、、、うん。これ以上は、無理だ。」
彼にとってこの作品は、衣服を脱いだ男の肖像ではない。
人生の中で身につけてきたものを一つずつ手放し、最後に残ったものと向き合った、一人の人間の記録である。
ただし、本人は最後まで真顔だった。
nagi 様
題名 : 最後の記憶

61歳。母の遺した家に戻り、ひとりで暮らすようになって二年。
森から消えていった生き物を記録してきた彼は、ある夜、画面に並ぶ無数の記事を眺めていた。似た言葉、似た夢、似た成功談。その光景が、かつて調査地で見た「生き残りを待つ森」と重なった。
若い頃なら、もっと激しい線で孤独を描いただろう。だが今の彼には、怒りを抑え、残ったものだけを静かに刻む技術がある。
「最後に残ったものは、本当に幸せなのか」
その問いを、壺の中にひとり残った影として描いた。
◾️静かな絵本作家

しげちーSS 様
題名:黒翼を従えし者

22歳のMomoは、大学のアトリエで一枚の絵に向かっていた。幼い頃、母に読んでもらった動物絵本には、いつも優しい結末ばかりではなかった。その夜も、胸の奥に残る「奪われていくもの」への怒りを、どう描けばいいのか分からなかった。
そこで彼女は、羽を広げる黒いカラスと、必殺技を放つ小さな海老フライを描いた。技名まで大真面目に考え、勢いのまま筆を走らせる。線はまだ時々揺れ、構図も少し欲張りだった。それでも、その未完成さごと熱かった。
「怒りだって、誰かを守りたい気持ちになるかもしれない」
そう呟いて、最後に小さく「Momo」と記した。
惰眠がしたい赤猫さん 様
題名:水没した街で、巫女は物語を踊る

Momoが描いた「哀」の一枚
制作エピソード
結婚して一年ほど経った頃、Momoは母が昔読んでくれた絵本を、久しぶりに箱から取り出した。
悲しい結末の本ほど、母の声だけは不思議にあたたかかった。
いつか自分も、まだ見ぬ子に物語を読むのだろう。
そう思った夜、彼女は水没した街の上で、ただ一人踊り続ける巫女を描き始めた。
かがり火の橙と月の青を慎重に重ね、袖の模様には細かな物語を忍ばせる。
落ち着いた筆運びの合間に、若い頃のような速い線が一本だけ走った。
完成した水面には、終わった世界よりも、消えずに残る声の気配が揺れていた。
ちろるとちょこ 様
題名 : 忘れられた森の神々

幼いころ、森の奥にある廃墟となった神殿で、二匹の犬を見た。
茶色のチロルは、大地と家族と森を守る神。
白いチョコは、月と花と幸せな夢を守る女神だった。
長いあいだ忘れていたその姿を、絵本作家として歩み、結婚を迎えた34歳のある夜、夢の中で再び見つけた。
目覚めても消えなかった光景を、彼女は絵筆に託した。落ち着きを増した筆致の奥には、記憶を逃がすまいとする若い焦りが残っている。
忘れられた神々は、霧の向こうで静かにこちらを見つめていた。
はるまき大臣 様
題名 : ミライト

三十四歳になったMomoは、結婚して初めて迎えた春、子どものころ母に読んでもらった絵本を久しぶりに開いた。
悲しい結末まで読み終えたあと、母はいつも「おしまい」と笑った。
その声だけは、物語が終わっても残っていた。
Momoは和紙を裂き、タチの鋏から散る光と、それを受け取るツギを夜明けまで貼り続けた。
十年を越えた仕事で手つきは静かになったのに、色とりどりの糸だけは、少し急ぐように空を駆けた。
最後の一片を貼ると、思いがけず笑みがこぼれた。
いつか自分も、誰かに「おしまい」の続きを渡せる気がした。
sophie 様
題名:朝陽の中の花乙女

三十四歳の春、Momoは朝まだきの草原へ出かけた。
結婚して一年、まだ見ぬ子どもにいつか読んで聞かせる絵本を、ふと考えるようになっていた。
幼いころ、母がどんなに悲しい結末の物語でも最後まで読んでくれた、その夜の声を思い出しながら、彼女は一輪のたんぽぽを少女の姿に置き換えた。
大学や編集の仕事、独立を経て、手つきはもう迷いが少ない。
けれど朝陽の色だけは、紙を重ねる指が少し急いだ。
草原の向こうで微笑む少女に、失わずに持ってきた喜びと、これから誰かへ渡していく喜びを重ねるように。
右下には、小さく「Momo」と記した。
アリゼロ 様
題名:~~?~~~~!「♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪」

34歳の時、MOMOはアリ達が水溜まりを見つめている光景を目撃する。
そこには楽しそうに歌っているアリ達の姿が、水面に映されていた。
本当はいつでも、歌って踊って楽しく生きたいのだろう。
だが、そうする事が出来ない。その当たり前が出来ない。
その光景は、アリ達にとって触れてしまえば、揺れて消えてしまうほど儚いものなのだ。
なんでこんなに近くにあるのに、掴むことができないのか。
アリ達は暗くなるまで、その様子をジッと見ていた。
近いようで遠いもの。
MOMOはこの光景を、忘れる事が出来なかった。
だから絵に残した。
未桜、AIと暮らす 様
題名:隠者はまだ、事情を知らない

三十四歳の冬、Momoは、読み聞かせる相手のいる未来を
ぼんやり思い描くようになっていた。
けれど描きたいのは、立派な主人公ではなかった。
理由もわからないまま雪山に立たされ、
星と月のパジャマの上からローブを着せられ、
ランタンまで持たされた小さな人物だった。
本人は茫然としているのに、灯りだけが妙にあたたかい。
若い頃なら勢いで塗り重ねていた雪や布の形を、
今は少しずつ残し、直しすぎない。
落ち着いた筆の奥に、まだ消えない衝動がある。
そんなアンバランスさを、Momoは少し嬉しく思っていた。
ゆきぽ🦥🌿 様
題名 : ひだまりの檻

31歳の春、Momoは森の奥で古びた檻を見つけた。
中にいたナマケモノは、逃げようともせず、ただ木漏れ日の中でぼんやりしていた。
「……楽そうだな」
それだけ思って、スケッチブックを開いた。
幼いころ、母に読んでもらった動物絵本の余白へ、夢中で絵を描いていた頃の熱はまだ残っている。けれど、絵本の仕事を経て独立して五年。筆はずいぶん静かになった。檻の金属や草花を丁寧に描きながら、ときどき勢い余って塗り直す。
完成した絵を眺めて、Momoは少し笑った。
ナマケモノは、相変わらず何も考えていなかった。
それが、なんだかちょうどよかった。
しれネコ 様
題名 : 夜がはしゃぎすぎる前に

二十八歳の秋。
独立して二年、Momoは仕事の絵なら描けるのに、「自分の絵」が何なのかはまだうまく言えずにいた。
そんな夕暮れ、ハロウィーンの支度に忙しい町を眺めていると、どう見ても別の物語と勘違いしている飾りが、しれっと混ざっていた。
思わず笑って、その夜のうちに描き始めた。遠近も光もまだ少し危なっかしく、線には若い勢いが残る。
それでも、楽しそうなものを全部画面へ詰め込みたかった。
子どもの頃、母と読んだ絵本のように、少し寂しい夜ほど灯りはあたたかく見える。
Momoは最後の一灯まで、楽しんで描いた。
マイキー🐣 様
題名:君が熟れるまで

二十歳の初夏、街角で黒いレースを纏った年上の女性を見かけた。
少女のための服だと思っていたフリルが、その人には不思議なくらいよく似合っていた。
甘さの奥に、長く生きた人が持つ静けさがあった。
大学のアトリエへ戻ると、まだ覚えたての絵具を惜しげもなく重ね、何度も輪郭を描き直した。
上手く描けない部分ほど、手を止められなかった。
その頃のMomoの絵は、まだ誰にも求められていない。けれど彼女は、いつか絵にも人にも、似合う季節が来るのだと信じていた。
迷探庭ふろんた 様
題名 : 三十八歳の一年生

三十四歳の秋、Momoは結婚後の家へ、母が毎晩読んでくれた古い動物絵本を運び込んだ。
悲しい結末の物語でも、母の声だけは不思議と温かかった。
いつか自分が誰かに読むなら、始めるのが遅かった人の物語を描きたい。
そう考え、黒い衣装の新入生たちの間へ、一人の大人を歩かせた。
筆は以前より静かになったが、長く流れる裾だけは乾くのを待てず、一息に描いた。
塗り直した跡も消さなかった。その一歩を、入口の狼だけが何も疑わず見守っている。
カボス 様
題名:海の街を駆ける

二十歳。
美術大学に入って二年目の春、Momoは授業の合間に、巨大な海上都市の絵を描き始めた。
きっかけは、図書室で見つけた古い未来都市の画集だった。
高層建築の足元を、小さな少年たちが手をつないで走っている――そんな場面が、なぜか頭から離れなかった。
明るく走る姿なのに、胸の奥には消えそうな寂しさがあった。
構図や遠近にはまだ粗さが残る。それでも筆を止めず、勢いのまま海と空を塗り重ねた。
完成した隅に、小さく「Momo」と記した。
うんちゃん 様
題名:進化する猫とパンツ

十八歳の春、風に揺れる洗濯物を眺めていた。
生活の中では何でもない布なのに、陽を透かすと少しだけ特別なものに見える。
その夜、Momoはノートいっぱいに、大きな猫の毛並みへ花や鳥やパンツを紛れ込ませた。細かな模様だけは夢中で描き込み、背景の筆は勢い余ってところどころ粗い。
それでも、見つけた人がふっと笑えばいいと思った。うまく描くことより、楽しい気持ちを逃したくなかった頃の絵である。
雪詠 様
題名 : ひかりを、つないで

三十四歳の春、彼女は夜ごと机に向かい、まだ見ぬ子どもにいつか読んであげたい物語を考えていた。
幼いころ、悲しい結末の夜にも母が本を閉じず、最後まで読んでくれた記憶が、ふとよみがえる。そこで生まれたのが、深海で小さな光を受け取り、次の誰かへ渡してゆくユキツムギクラゲだった。
和紙をちぎり重ねる手つきは、若いころよりずっと静かになった。それでも細い触手を何本も足し、光の道を広げてしまうところには、まだ抑えきれない衝動が残る。
完成した夜、彼女は少し離れて絵を眺めた。暗い海いっぱいにつながった光が、なんだか楽しそうに見えた。
ぱっちー 様
題名 : 花冠の祝福

※ ストーリーはリンク参照
みっちぃ 様
題名:月夜に、力を

24歳のMomoは、絵本編集プロダクションで働きながら、帰宅後も小さな絵を描き続けていた。
ある夜、仕事帰りに見上げた月が、子どもの頃に母と読んだ動物の絵本を思い出させた。
その頃の彼女にとって、筋トレをする女性は「明日へ進むために、自分の力を確かめる人」だった。
月夜の城という少し寂しい景色に、楽しそうにダンベルを持つ姿を置いたのは、そのためだった。
紙をちぎる手つきも、人物の輪郭もまだ少し不器用。それでも、描きたい気持ちだけは迷いがなかった。
完成した絵を眺めながら、Momoは小さく笑った。
くみっきー 様
題名 : 金木犀郵便

31歳の彼女は、祖母のそばでようやく織りや染めを覚え始めた頃だった。
布には、言葉にしなくても残るものがある。祖母の手元を見ながら、そんなことを考えるようになっていた。
この絵で描きたかったのも、届いた言葉そのものではない。遠くにいる誰かの言葉を受け取って、「あいつなら大丈夫か」と少しだけ肩の力を抜いた、その一瞬だった。
だから人物を包む夜も、金木犀も、手紙も、布を重ねるように切り重ねた。左下には、あえて一枚だけ裂いたままの布端を残した。きれいに整えなくても、残るものは残ると、この頃の彼女はまだ半分だけ信じ始めていた。
ネロ王子 様
題名:月のいなくなった夜

34歳の冬、Momoは結婚したばかりの小さな部屋で、まだ見ぬ子どもに読んであげる絵本のことを考えていた。
幼い頃、母が悲しい結末の物語も最後まで読んでくれた夜を思い出し、「消えてしまうもの」を描こうと思ったという。
月は幻のように砕け、世界も静かにほどけていく。筆運びは以前より落ち着き、光と闇の置き方にも迷いが少ない。
けれど赤い絵具だけは何度も重ねられ、そこに若い頃から残る焦りがにじんだ。
完成後、彼女はしばらく月のない空だけを眺めていた。
まき 様
題名:灯りの待つ森

34歳の冬、Momoは結婚して初めて迎える静かな夜に、子どものころ母が読んでくれた絵本を思い出した。
悲しい物語のあとにも、最後には必ず残っていた小さなぬくもり。
その記憶をたどるように、雪深い森と丸太小屋を描いた。
独立して八年、光や雪の描き方には迷いが減った一方、ランタンの明かりだけは何度も塗り直した。
いつか自分も誰かに物語を読む夜を思い浮かべながら、冷たい森の奥に、帰っていける場所のような灯りをそっと残した。
あいさん 様
題名 : 言葉になる前に

※ ストーリーはリンク参照
ミュリン 様
題名 : 森の妖精

美大へ進むため古いアパートにひとり暮らしを始めて半年、二十歳の夏を迎えた夜のこと。
母が毎晩枕元で読んでくれた動物の絵本たちの温もりが、今も胸の奥の静かな痛みを包み込んでいた。
✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️
「まだ自分の声がわからない」
という焦燥と、夜が明けるまでの
限られた時間にすべてを懸けるような
瑞々しい勢いが、手元の絵筆を狂おしく
走らせた。
キャンバスには、
夜明け前の湖畔を舞台に、
光り輝く妖精たちが青く幻想的な衣を
まとい、無心に遊ぶ姿が描かれていく。
✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️✨️
技術的にはまだ未熟で青一色という制限の中で理想を追い求める筆致にはどこか危うさがあった。
だがその青の深さに吸い込まれそうになるほど、この瞬間にしか描けない純度と確かな喜びが画面全体に満ちあふれていた。
スズラン 様
題名 : 生きとし生けるもの

※ ストーリーはリンク参照
◾️森のために怒る版画家

江田島獄長 様
題名:水底の小さな祝祭

45歳を迎えた。
漁業と林業で栄えた故郷がひと世代で崩壊し、妻と別れ、息子とも疎遠になった今、手元に残るのは版木だけだ。かつての激しい怒りは、完全に円熟した手つきと深い抑制へと変わり、
今の自分には最も落ち着いた確信がある。
なぜ今、
メキシコの絶滅危惧種であるアホロートル3人組を描いたのか。
それは、失われていく世界の中で、
ふと見出した微かな生命の喜びと温もりを画面に留めたかったからだ。
ギャラリーの壁よりも大切な、
どこか遠い場所へとこの刷りが届く日を夢見ながら、
静かに彫刻刀を走らせた。
けー虎 様
題名:ゆるっと吉原

45歳の冬、K.V.は久しぶりに、怒りではなく「楽」を彫ろうと思った。
17歳で故郷を出て版画工房に入り、結婚、息子の誕生、離婚、そして息子との別れ。34歳からは失われていく森や海に声を上げ続けてきた。けれど、かつて漁と木で栄えた村の風景は、もう戻らない。
その夜、工房の窓から差す夕焼けを眺めていると、ふと江戸の遊郭を描いた古い錦絵が目に入った。華やかな灯りの下で笑う人々。その一瞬だけは、誰も未来を恐れていないように見えた。
若い頃なら勢いのまま刻んだだろう。だが45歳の今、刃は静かだった。迷いのない手で、三人の姿と夕暮れの街を一刀ずつ刻む。完成した版木を見つめ、K.V.は小さく息を吐いた。
「こういう時間が、あってもいい」
そして最後に、赤い印を押した。
びわ 様
題名 : 草原の海を見つめて

45歳の冬、K.V.は、故郷の村が消えていく記憶と、40歳から疎遠になった息子のことを、ひとりの少女に重ねてこの版画を彫った。
16歳の少女は、草原の向こうを眺めながら、もう会えない母を思っている。かつてなら怒りのまま一気に刻んだ線を、この頃のK.V.は、深く息を吐くように一本ずつ選んだ。
熟練した手には勢いよりも静かな抑制があり、それでも失われゆくものへの痛みだけは、尾を引く線の動きに残った。
冷えた画面のなか、湿地から立ちのぼる淡い赤い光だけが、少女の孤独をそっと照らしていた。
あまね〘ฅ՞•ﻌ•՞ฅฅ^•ﻌ•^ฅ〙 様
題名:影だけが残る

四十五歳のK.V.は、失われた森を記録する現場で、死んだマンディブラリスフタマタクワガタを掌に乗せ、黙って泣く少年を見た。
その背中に、長く会っていない息子の幼い頃がふと重なる。
昔なら怒りのまま黒を刻んだだろう。
けれど今は、刃を走らせる速ささえ自分で止められる。
少年の伏せた顔と両手は必要な線だけで残し、代わりに雪上の影を深く、大きく彫った。
消えたものほど、あとから巨大になる——そんな感覚だけが、版の上に静かに残った。
ろくねこ 様
題名 : 音の中では、まだ泳ぐ

二十歳の夏、K.V.は工房の仲間に連れられ、初めて野外LIVEへ行った。身体を突き抜ける音と、波のようにうねる人の群れ。その夜だけは、減っていく森や、魚の戻らなくなった海のことを忘れて腕を上げた。
翌朝、まだ耳の奥に音が残るうちに版木へ向かった。彫りは荒く、色の重なりも危うい。それでも勢いを殺したくなくて、何度も刀を走らせた。
舞台から伸びる赤い布は波になり、その上には小さな魚を彫った。
失われたものまで、あの夜だけは一緒に跳ねていたような気がした。
ヤザワ屋 様
題名 : 追うもの、追われるもの

二十六歳のK.V.に息子が生まれた春、彼は久しぶりに、森を「失われていくもの」ではなく、遊び場のように眺めた。
そこで彫ったのが、赤い頭巾の少女と大狼の追いかけっこだった。
いつもなら怒りに任せて刃を走らせるところを、この一枚では狼の毛並みや少女の衣装へ執拗なほど線を重ねている。
それでも若い手は時折深く食い込み、版には荒い傷が残った。
刷り上がった紙を見て、K.V.は珍しく声を立てて笑ったという。
森にはまだ、怖がるだけではない物語が残っていた。
カワウソくん 様
題名 : 夕映え、ひとり旅

二十七歳の夏、画家は久しぶりに仕事を離れ、川沿いの古い町を歩いた。
家には幼い息子が待っていたが、その日はなぜか、笠をかぶって飄々と歩く一匹のカワウソに自分を重ねた。
口には草、胸には赤い鯛。夕焼けの町を急ぎもせず進む姿が妙に愉快で、宿へ戻るなり版木を彫った。線はまだ荒く、空も水面も少し彫り込みすぎている。
それでも、迷いより先に刀が走る若さがあった。
故郷で森や魚が減っていく光景を見てきた彼にとって、ただ「楽しい」と思えた夕暮れを刻むこともまた、失くしたくないものを残す仕事だった。
Ejii✦3(えじー)様
題名 : 森が笑う日

四十五歳の秋、K.V.は森で、枝からこぼれ落ちる木の実を拾う子どもたちを見かけた。
失われる森ばかりを刻んできた彼には、
その笑い声が妙に新鮮だった。
豊かさとは、蓄えることではなく、
こんなふうに惜しげもなく落ちてくるもの
かもしれない。
そう思い、長い裾に木の実や葉をまとわせた
女神を彫った。若い頃のように怒りを刃先へ
叩きつけることは、もうしない。
円熟した手で黒を残し、赤を遊ばせ、
女神の裾だけを大胆に森へ這わせた。
刷り上がった一枚は、彼の作品には珍しく、
風まで楽しそうに見えた。
ゴーストライティン絵画祭支援者様をご紹介いたします。
にわとり 様
AIU(アイユ) 様
ぱぐぱぱん 様
けー虎 様
惰眠がしたい赤猫 様
Labo. 様
ノッ友 様
はるまき大臣 様
蛍 様
