
「海ね。」
海やな。
「あなたの意識が海を引き寄せた。」
いや、普通に車で来たけどな。海を引き寄せたんなら、それは津波やんけ。
「そうね。」
そうさ。ほんで自分、何でそんな巫女さんみたいな格好してるん。
「巫女だったから。二千年前かな。」
そうか。
「村に災いがあって、神様を鎮めるために殺された。」
ほんまか。痛そうやな。
「そこ。」
ん?
「すぐに人の痛みを自分の痛みのように、無意識に感じてしまう。下手をすれば、自分が犠牲になっても助けようとしてしまう。」
そうかの。
「悪い癖。」
だってあんた、俺なんやろ。前世が生け贄になった巫女さんなら、そういう風になるやろ。
「そうね。」
自分、中国地方の出とちゃうか。岡山とか広島。あのあたり。
「当たり。」
俺が死ぬ日とか、分かる?
「2027年の、5月。」
遠いな。
「そう?もう時間がないけど。」
いや遠いわ。何やったら来週木曜の午後二時くらいでもええわ。
「二十六年前に一回死んだのに、ちっとも変わってないんだね。」
逆に倍生きたがな。自分では既にアディショナルタイムや思てるけどな。
「怖くないの?」
いや、痛そうなんが嫌ってだけで。死はないやんか。あんたもこうやって生きてるし。
「肉体はないけどね。」
ところでさっき、隣のベンチのおっさん、思っきし屁こいたよな。
「次は何に生まれたいとか、ある?」
海やな。
「海?」
そう、海。
「それは...塩分ってこと?」
何でやねん。海言うたら海やんけ。何でそこミクロな視点を持ち込むねん。海全体。波とかも含めて全部海。全部俺。
「あなたの来世は、ワカメよ。」
...海に、近いな。
「うん、惜しかったと思う。」
ワカメを経由してからは?
「フランスパンね。」
海からちょっと離れてもうてるし、しかもパンて。生き物ちゃうやん。
「物体も含めてみんな波動だから。」
最後はどうなんねん。
「光、よ。」
光て...宇多田ヒカル?
「そうじゃなくて、光。」
光て、光か...結局みんなそうなんのか。
(終わり)
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