フィンランド、日本、フランス。旅する毛糸で編む、Saguaro Cardigan
「旅の記念」といえば、街の土産屋で手に入るマグネットやポストカード、マグなどの雑貨が定番だろう。かくいう我が家も、旅に出るときまって、冷蔵庫に貼るマグネットを蒐集している。

こういうことをしているからいつまでもミニマリストにはなれそうにないことは自覚している。
お気に入りはオスロのオコボーイとサンセバのチャコリ。
編み物がライフワークとなって以来、「旅の記念」のひとつに毛糸が加わった。若かりし頃は何をとっても食・食・食。旅立つ前にレストランリストを作って、旅行中にそれを制覇するのが楽しみだったけれど、今の私が一番に調べるのは、毛糸屋さんないし手芸屋さん。旅の間でそのお店を訪れ、できれば現地のブランドの毛糸を記念に買う。今の時代、フランスにいても大抵のものはネットで注文できるけど、旅中で買うことに意義がある。その毛糸を通して、その土地の空気や色、そのときの自分の感情などといったものを思い出すことができるから。
遡ること1年前の8月。今は亡き俺🐶こと愛犬みるぅと夏休みに訪れたフィンランド。ここで買ったのが、色にひとめぼれしたシルクモヘア。色名Purple Rain。この記事の2番目に紹介しているお店、Sunday Knitting Clubのオリジナルシルクモヘアだ。



ほかにも毛糸、たくさん買ってますがね
フィンランドからフランスに戻って以降、2025年の秋から冬にかけてはまあそれは色々とありまくって、人生最大の傷心のなか訪れた年末年始の一時帰国。フランスからパープルレインのシルクモヘアをひと玉、持参していた。お空に行ってしまった俺🐶の代わりで、私とともに旅する毛糸である。
日本でこのシルクモヘアと合わせる糸を買おう、そう決めて、地図を片手に東京・原宿のWalnut Tokyoを訪れた。なおこの日は、朝から山手線が始発から8時間も止まるという歴史的事象に遭遇したわけですがね。
フィンランド→フランス→日本と旅してきたこのパープル・シルクモヘア。せっかくだからこの毛糸の相棒はこのお店のオリジナル手染め糸がいいかなあ。手染め糸は編んだことがないから、これはいい機会だと店員さんにも相談して見つけたのが、メリノの細糸、Twirl Handdyed。
パープルのグラデーションのなかにたまにブルーやピンク、黄色のぽつぽつが出てくる感じで、店員さんいわく、このシルクモヘアと合わせたらすごくかわいいと思いますとのこと。手染め糸との引き合わせ、どんな編み地になるのだろう。ワクワクしながらお店をあとにした。


季節は巡る。北フランスで遅い春を迎えたころ、だんだんと気持ちも落ち着いてきたので、この思い出の糸たちを編むことにした。編むことに決めたのはいいんだけども、何を・・・??そういえば私、何を編むのか決めないまま毛糸だけお迎えしていたのであった。
いつも編みたいパターンありきで糸を選んでいたので、毛糸から編みレシピを見つけるといういつもと逆のパターン。料理では材料ありきで何を作るかなんてお茶の子さいさいだけど、編み物ともなると、編み地と模様のバランスとか、サイズ感とか、細かいところを合わせてから始めないといけない。

どんなのがいいかなあと考えを巡らせながら、とりあえず日本で買ってきたメリノの手染め糸を先に編める状態にしてしまおう。日本で買ってきた玉巻き器、簡単に綺麗な糸玉が作れるので大変重宝しております。

ちなみに、カセくり器?というものは嵩張りそうだったから買わなかった。その代わりに、「百均の平干し器で代用する」というネットで流れていたTipsを半分信じて、スリーコインズで買ってきた平干し器を使ってみたらば、ことのほか使えたので思わず笑ってしまった。

普通に本来の用途でも使っているので、お値段以上

手染め糸とシルクモヘアの引き合わせでどんな編み地がでるもんじゃ?と、ひとまずスワッチを編んでみる。思った以上に、素敵!

・なるべくいろんなシーズン着られて(やっぱ羽織系)、
・カジュアルすぎず(色的に、カジュアルよりはシック寄りかな)、
・手染めの綺麗な色の移り変わりも楽しめて(レースなどの模様はないほうがよさそう)、
・シンプルだけどでもひと技効いている感じが、いい。
その条件で選んだパターンが、南仏デザイナーCamilleのSaguaro Cardigan。
ブリオッシュ編みでつくる縦ラインとフェミニンな形がフレンチシックな感じで、長らくRavelryのお気に入りに入っていたパターンだ。ためしにスワッチでこのブリオッシュライン入りを編んでみると、思わず声をあげるほどにいい感じ。
何よりも、フィンランドと日本の思い出が詰まった毛糸で、フランスのエスプリが入った1着を編む。なんと粋なことか。よし、このパターンを採用することに決めた。


最初の最初、襟の部分だけ編んだのが実は5月のこと。そこからしばらく夏物モードに入ってしまったのでしばらく寝かせておいて、本格的に戻ってきたのがちょうど、下の記事でまとめたMay Be Lily Tankをもって夏物を編み終えた8月中頃。編み急ぎモード全開で、ここから完成までおそらく10日もかかっていない。

ゆえに楽しい






シルクモヘア4玉は計算上足りるのだけどかなりギリギリになりそうな予感がしたので、ほどよく胴体部分が編めたら先に両袖を仕上げてしまおう。



季節先取り

「人生あとどれくらい編めるのだろうか…」編み急ぎモード全開で早く編み上げたい私と、もっとじっくり、俺🐶やフィンランドの思い出に浸りながら編みたい私のジレンマ。でも結局、明日何が起こるかわからないし俺のようにいつ病に倒れるかわからないんだから、編めるだけ編もうという結論にいたる。ってことで、フィニッシュまでダッシュ継続!

そして2日後の8月16日。「明日から13度気温が下がるらしい。相変わらず極端だぜ…!」とのつぶやきを残しながら、編み部分が仕上がった。
走り切った達成感にひたる一方で、フィンランド旅のことや、傷心の東京旅のこと、色々と考えながら、丁寧に糸始末をした。

特筆すべきは、ギリギリと思われたシルクモヘア、本当にギリッギリでフィニッシュ。ニッターの方にならこの達成感を共感していただけるに違いない。


白毛は永遠にパーフェクトだけど、黒毛の良さも知る

完全に乾いたら、いつものようにメルスリーで仕入れてきたボタンを丁寧に縫い付ける。今回は毛糸と同じパープルのボタンを選んだ。
そして最後に、タグも縫い付ける。Agnete Cardiganでも最後にタグを付けて、なんだか仕上がりが一段階UPしたような感覚を覚えたので。

左が妹へのプレゼントで、右が私のAgnete Cardigan

こうして、フィンランド、日本、フランスと3国をまたにかけた、Saguaro Cardiganが完成。





実際に着てみると、着心地が非常にいい。モヘア特有のチクチク感がほぼしないので、袖なしのインナーでも問題なし。よって今のような秋口にはもってこいというわけで、ここ数日はいろんなボトムやワンピースに合わせて着こなしを楽しんでいる。


この秋といわず、冬も春も、できれば夏も。ずっと着ていたいと思える一枚になった。これを纏えば、大好きな俺🐶といつも一緒な気さえ覚えることができるから。
フィンランドでひとめぼれした毛糸が、日本で新しい相棒を見つけ、フランスでカーディガンになる・・・こうして思い返すと、毛糸もなかなかの旅をしている。俺🐶ともたくさん旅をしたものだなあ。
俺🐶がいたときに旅で買った毛糸は、これで終わりだ。
俺を思い続けるように、ずっとずっと大切に着たいし、そしてまた次の旅にはこれを着て、俺と一緒に旅をしよう。

