
一生愛す、あの夏を編み込んだAgnete Cardigan
昨年秋、最愛の俺🐶こと私のニッティングアシスタントがまだ元気な頃。彼とともに編み上げた大作が、PetiteknitのAgnete Cardigan(アネットカーディガン)。
編み上げてから随分と時差ができてしまったけれど、昨年末から今にかけて、一番身にまとう機会の多かったこの赤いカーディガンのことを今日は書こうと思う。
ニッター歴が長くなるにつれ、使う針や糸の素材、編み方、作り目や綴じ目の方法などなど、自身のクセ、そして好みもはっきりしてきた。
なかでも、編みたくなるパターンについては基本的に、No Frills Sweaterのような一見して既製品にもみえるシンプルミニマムな形の1枚だ。その時の気分で、Accessory Vestのようなフリッフリなものを編みたくなったりもするけれど。気まぐれにシンプルとフリフリを行ったり来たりしている。
上質な糸で編んだシンプルなニットに、オリジナリティをちょこっとのせられたら、最高。「えー!お店で売られてるやつかと思った!」なんて黄色い声を上げられた日には、わたしゃうれしくて飛び上がっちゃうね。

さて、このAgnete Cardiganを選んだ理由は、まさにこのベーシックなデザインにある。Point Brioche(ブリオッシュ編み)で編まれたVネック型のカーディガン。カーディガンというよりもジレ寄り?に見えるから、(真夏の数日を除いて)年がら年中肌寒い北フランスの港町で活躍してくれること間違いなし。
2月にはパターンを、その翌月には毛糸を仕入れた。
糸は、No Frills SweaterやAccessory Vestの本体部分でも使った、FilcolanaのArwetta(メリノメイン)とTilia(シルクモヘア)の引き合わせに決めた。編みやすいしあったかいし編み地が綺麗で丈夫だから。

色はパターンでも採用されていた、鮮やかなレッドにしよう。昔から、冬はなんとなくパキッとした赤いニットが着たくなる性分。パターンで使われている黄味の強めな赤よりは、青みよりの赤をチョイス。ブリオッシュ編みは糸を食うので、余裕を持ってArwettaを8玉、Tiliaを6玉用意。

さらに、夏のフィンランド旅行では、俺🐶とのヘルシンキ市内冒険中に出会った素敵な毛糸屋さん(Sunday Knitting Club)で、キラキラの美しいボタンを買って戻った。

こうして着々と準備を重ね、編み始めたのは、フィンランドから戻ってすぐの2025年8月末。まずはじめに仏語のパターンをさらっと読んでみるけど、これは大作になりそうな予感しかしない。さすが難易度5/5。見知らぬ技法の名前もさらっと出てきて、勉強になりそうだ。
準備:ブリオッシュ編みのゲージをとる
技術の向上とともに糸にお金をかけるようになってからは、編み始める前に必ずゲージを取るようにしている。指定糸を使ったとしても、私はどうやらキツめに編んでしまう傾向があるので、針を上げること多々。特に今回使うブリオッシュ編みは、水通し前後でもサイズが変わるので、ここをちゃんとしておかないと。
2パターン編んで、指定針から一段上げた3.5mmで指定ゲージ(19m*56rgs)がとれた。ほっ。

リブがふわっと浮き上がって見える、このブリオッシュ編み。
感覚的には、糸をかけながら表と裏を行き来して、ひと目を二重に育てていくような編み方だ。
そのぶん、生地にはしっかりとした厚みと立体感が生まれるのだけど、当然ながら進みはゆっくり。メリアス編みが10cmあたり28段くらいなのに対して、ブリオッシュ編みはその倍の56段。つまり、体感的にはほぼ半分のスピードで進んでいく。
というわけで、編み始める前から修行僧になることをここに決意。

1、首元の小さなバンドから、背中へ
ゲージができたら、ようやくキャストオン。作り目からJudy's Magic Cast-onという技を習得し、Double Knittingで首後方のバンドを編む。

この小さなバンドを起点に、最終的にあのカーディガンが出来上がると思うとワクワクが止まらない。ここから背中部分を編み、面積を増やしていく。







編み始めてから5日目で、背中の上部分が完成。

2、左右の前身頃
次に、背中の両脇の部分からニョキっと左右の前身頃部分を増やしていく。
右前身頃から取り掛かるも、若干、バンドの切り替え部分が凹んでしまったのが反省点。どこか間違えたのか?流石に作り目からやり直すのは冗談もよし子ちゃんなので、そんなに目立たないから見逃すことにした。




編み始めてから8日目。右の前身頃を編み終えて、左の前身頃に取り掛かる。

左は右身頃と対称に編んでいけばいいので、場所を変えて気分転換しながら背中と同じ長さになるまで編む。




こうしてひたすらブリオッシュ修行を重ね、編み始めから11日目。9月の頭に左右の前身頃(上部分)が編み上がった。


3、胴体
次に、背中部分と左右の前身頃をつなぎあわせて、往復編みで胴体部分を編み進めていく。均等にボタンホールをつけていくことを忘れずに、最新の注意を払いながら。



日光に映える綺麗な赤

いつにも増して細かい


長さは調節できそうだけど、今回はボタンホールもあるのでパターン通り、リブを編んで、胴体が完成。胴体の裾を閉じたのは、9月の下旬だった。この時点でかなりの達成感。

4、左右の袖
袖は胴体よりも編む面積が少ないから、胴体が編み終わるといつも8割型終わった気になるものだが、今回はブリオッシュ編みだけにそうもいかない予感。

そうそう、シルクモヘアを引き合わせると、シルクモヘアのみ編み飛ばしてしまうことが結構ある。あるあるですよね?とニッターの方に問いたいくらい。特にブリオッシュ編みはこの現象が多発した。
私といえば完璧主義野郎なもので、気づいた時点で戻って編み直すか、かなり前の段なら一度ほどいてやり直すかしているのだけど、そのたびに時間ロス。ブリオッシュ修行中にほどかないでやり直すコツも見つけたのだけど、それでもどうにもならなそうな場合はこのように解いてやり直した。

それでもめげずに、ラストスパート。アシスタントの応援を受けながら、左右の袖を編み進めた。



そして10月も中盤に差し掛かる頃。両方の袖が完成して、形になった!


5、水通しと仕上げの大仕事
今回も俺のお風呂を借りて、水通しをする。ゆっくりとぬるま湯につけて、しっかりすすいだのち、バスタオルでくるんでこれでもかと水分をとって、平置きで乾かす。

きちんと乾くまで数日待って、よし!できあがり。といきたいところだけど、今回は最後の最後に大切な大仕事が控えている。そう、このカーディガンに欠かせない、ボタン付け。俺と過ごしたあの夏のフィンランドの思い出をあしらわないと。


ボタンをひとつひとつ、丁寧に縫い付けて、ようやく私のAgnete Cardiganが完成。いつも隣にいてくれた俺🐶と編んだ最後の作品だ。


安心と信頼のPetiteknit。パターンがちゃんとしているのと、私がそれに忠実に従ったおかげで、初めてボタンホールとボタンの大きさがぴったり合うカーディガンが編めた。これまで編んできたボタン付きのカーディガンは、私の技術不足もあいまってか、パターン通りに編んだはずなのにボタンがするっと抜けてきてしまうことが多かったりしてストレスだったので・・・。
この特別な1枚には後日、背中にタグもつけた。


フィンランドの空気、愛する俺🐶と過ごした瞬間の積み重ね、ひと針ひと針にいろんな思い出がたっぷり詰まったこの赤いカーディガン。これからの人生、一生大切に着ていこう。

🧶まとめ🧶
使用パターン:Agnete Cardigan @Petiteknit
使用糸:Filcolana Arwetta & Filcolana Tilia (col. 218)
ゲージ:19目 * 56段 (ブリオッシュ編み、3.5mm針)
サイズ:S
使用量:Arwetta 331g(6 pelotes + 31g) Tilia 122g (4 pelotes + 22g)
かかった日数:38日(糸始末、水通し、仕上げ除く)
難易度:5/5