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Photo byhiropon339593

初恋 vol.5 -完-|from 24 to 29 :残像と、残熱と。或る断面のエッセイ

    彼は、完全に酔っ払っていた。
    友人二人は、彼のために飲み物を買いに行った。

    酔い果てているくせに、
    二人きりになったのはわかるらしく、
    彼は私の額に唇を寄せた。

    キスのお返しは、しなかった。


    肩を貸してやっと辿り着いた私の家。
    まだ、お酒の飲み方を知るには若すぎた。


    酔っ払った彼は、
    介抱する私の手を求める。

    他の二人の手前、
    仕方なく、を装い彼の手を握り返す。


    気がつくと、みんな眠っていた。

    私は、彼の手を握ったままだった。
    起こさないように、そっと手を離そうかとも思う。

    でも、
    私は朝までその手を離すことはできなかった。


    一本の細いロープの、
    ギリギリの所をつたっているようだった。


    突き放すことはしたくない。
    でもすべてを受け入れることもできない。
    どちら側にも、落ちたくなかった。


    一夜の、仮初の恋。


    初恋は、
    本棚の片隅に飾られたガラスの貯金箱のように、
    触れずにそっと心の奥に眠らせておきたい。

     
     
    24歳から29歳。 戻れないあの季節の、 誰にも言えなかったかけがえのない時間たち。 傷つきながらも前へ進もうと もがき続けていたあの頃の私と、 同じ狭間を生きるあなたへ届きますように。 ※不定期更新

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