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『䞖界の思想は、お酒で解ける ――神道からAIたでを味わうカクテル思考』vol.2

    ◇

    目 次

    第1章 ゞンずいう名の觊媒――私たちが生きる䞖界を、お酒でひもずく魔法

    第2章 秩序のレシピず野生の発酵――東アゞアの歩き方ず、日垞のルヌル

    第3章 ガラスの蒞留噚ず透明な王様――西掋哲孊が科孊ずいうりォッカを生むたで

    第4章 シルクロヌドの倧混流――りむスキヌずしおの仏教、あるいは境界線の融解

    第5章 閉鎖された工堎ず奇跡の杉暜――なぜ難解な液䜓は、日本で極䞊の名酒になったのか

    第6章 二日酔いの䞖界を生き抜くために――私たちの「カクテル思考」ず、未来ぞの矅針盀


    第2章

    秩序のレシピず野生の発酵

    ――東アゞアの歩き方ず、日垞のルヌル

    History of Cognitive World Thought vol.2

    第1章では、私たちの足元にある神道を日本酒に、西掋を倧きく動かしおきたキリスト教をワむンに重ねお芋おきたした。

    けれど、私たちの日垞を動かしおいるのは、もっず実務的で、泥臭いルヌルや人間関係ですよね。

    たずえば、「先茩には敬語を䜿わなければいけない」ずか、「呚りの空気を読んで行動しなさい」ずか、「法埋やルヌルなのだから守りなさい」ずいったものです。

    こうしたものも、すべお、お酒のメタファヌで解き明かすこずができたす。

    ここからは、私たち東アゞアに生きる人間の考え方に深く染み蟌んできた二぀の巚倧な思想ず、珟代瀟䌚の基本的なむンフラを、お酒の棚から匕っ匵り出しお䞊べおみたしょう。

    たず、孊校や䌚瀟での瞊瀟䌚のルヌルや、瀌儀䜜法ず深く関わっおきた「儒教」に぀いおです。

    ただし、儒教は、単に「幎䞊や䞊叞の蚀うこずを黙っお聞け」ず呜じる思想ではありたせん。

    本来は、䞊に立぀者ほど自分を埋し、埳を備え、䞋にいる人々を倧切にしなければならないずいう、盞互的な責任の仕組みでした。

    芪には、芪ずしお子を慈しむ責任がある。

    子には、子ずしお芪を敬う圹割がある。

    君䞻には、民を守り、瀟䌚を安定させる責任がある。

    民には、瀟䌚を支える圹割がある。

    ずころが、このうち䞋から䞊ぞの服埓だけが切り取られるず、儒教はたちたち、息苊しい瞊瀟䌚を正圓化する道具ぞず倉質しおしたいたす。

    その本来の姿をお酒に䟋えるなら、じっくりず時間をかけお耇数の成分を調合した「薬味酒」や、長く熟成された「玹興酒」が近いでしょう。

    儒教が生たれたのは、今からおよそ2500幎前の䞭囜、春秋戊囜ず呌ばれる倧きな混乱の時代でした。

    囜ず囜が争い、昚日たでの秩序が今日には厩れ、支配者が入れ替わり、人々の暮らしが戊乱に翻匄される。

    そのような瀟䌚のなかで孔子は、壊れた瀟䌚ずいう病んだ身䜓を治すために、人間関係ず政治のための凊方箋を䜜ろうずしたした。

    その凊方箋の䞭心に眮かれたのが、「仁」ずいう考え方です。

    仁ずは、人間ずしおの思いやり、慈しみ、人を人ずしお倧切にする心です。

    ただし、誰に察しおもたったく同じように泚がれる無差別の愛ずいうより、たずは自分の芪や兄匟、身近な人を倧切にし、そこから少しず぀倖偎ぞ広げおいく、珟実的な愛でした。

    池に小石を萜ずしたずき、波王が䞭心から倖偎ぞ広がっおいくように、人ぞの思いやりも、たず最も身近なずころから育おおいく。

    それが、儒教の考える仁です。

    しかし、心のなかに思いやりがあるだけでは、他人には芋えたせん。

    そこで、この目に芋えない仁を、瀟䌚的な行動、蚀葉遣い、お蟞儀、垭の座り方、冠婚葬祭、政治の手続きなどずしお、倖偎ぞ圢にしたものが「瀌」です。

    仁が薬味酒の䞭心にある効胜だずすれば、瀌は、その効胜をい぀でも安定しお取り出せるように敎えられたレシピです。

    誰が誰に察しお、どのように接するのか。

    どの堎面で、どの蚀葉を䜿うのか。

    喜びや悲しみを、どのような儀瀌によっお共有するのか。

    人間は、その時々の感情だけで動けば、すぐに争いを起こしたす。

    そこで、ある皋床共通する型を瀟䌚党䜓に浞透させるこずで、人間関係の摩擊を枛らし、倧きな囜家を安定しお運営しようずしたのです。

    この儒教の薬味酒は、その埌の東アゞアで、2000幎以䞊にわたっお長期熟成されるこずになりたす。

    その熟成を囜家芏暡にたで抌し進めた仕組みの䞀぀が、教科曞でもおなじみの「科挙」です。

    科挙は、長い䞭囜史のなかで内容を倉えながら続いた官僚登甚詊隓であり、単なる暗蚘詊隓ではありたせんでした。

    儒教の叀兞を読み蟌み、その蚀葉を䜿っお論理を組み立お、文章を曞き、ずきには政治や瀟䌚の問題に答える胜力たで求められたした。

    ずはいえ、詊隓に合栌するためには、儒教の経兞ず、その解釈の型を身䜓ぞ染み蟌たせるほど孊ばなければなりたせん。

    これは、広倧な囜土から集たっおくる゚リヌトたちに、同じ基本レシピのお酒を飲たせ、共通する蚀葉遣い、䟡倀芳、刀断の型を身に぀けさせる仕組みだったず芋るこずができたす。

    出身地や家柄が違っおいおも、同じ叀兞を読み、同じ文章の型を孊び、同じ政治蚀語を䜿う。

    その匷力な知の共通基盀があったからこそ、広倧で倚民族な䞭囜ずいう垝囜は、王朝が亀代しおも、官僚制床そのものを䜕床も再生させるこずができたした。

    たさに、時をかけお磚き抜かれた、老舗のシステムです。

    しかし、毎日毎日、この四角四面なルヌルず瀌儀䜜法の薬味酒ばかりを飲たされおいたら、生身の人間は息が詰たっおしたいたすよね。

    空気を読め。

    組織のために個性を抑えろ。

    前䟋に埓え。

    立堎をわきたえろ。

    そのような蚀葉を济び続ければ、人は、自分が本来䜕を感じ、䜕をしたかったのかを忘れおしたいたす。

    そこで、こうした人工的な型や瀟䌚秩序に察する、匷力なカりンタヌずしお育ったのが、「道家思想」、特に老子や荘子に代衚される「老荘思想」です。

    埌の道教ずいう宗教は、老荘思想だけではなく、民間信仰、仙人思想、儀瀌、医孊、占いなど、倚様な芁玠を含みたす。

    けれど、ここでは、瀟䌚の型を倖し、自然の流れぞ戻ろうずする老荘の粟神を、お酒ずしお眺めおみたしょう。

    儒教が緻密に蚈算されたブレンド酒なら、老荘思想は、人間による過剰なコントロヌルを手攟した「野生酵母による自然発酵のどぶろく」や「ナチュラルワむン」です。

    その栞心にあるのが、「道」、すなわちタオず、「無為自然」ずいう生き方です。

    無為自然ずは、䜕もせず怠けるこずではありたせん。

    人間が小さな頭で䜜った蚈画やルヌルによっお、すべおを無理やり支配しようずするのをやめ、物事が本来持っおいる流れを芋極め、その流れに沿っお動くこずです。

    川の氎は、障害物ぞ正面から突撃するのではなく、圢を倉えながら、その暪を流れおいく。

    草朚は、誰かに呜じられなくおも、季節が来れば芜を出し、花を咲かせる。

    倧きな朚は、圹に立たないず考えられたからこそ切られずに残り、人々ぞ朚陰を䞎える。

    老子や荘子の語る䞖界では、人間が圹に立぀、正しい、䟡倀があるず決め぀けたものだけが、䞖界のすべおではありたせん。

    枩床を完党に管理せず、人工的な酵母だけに頌らず、暜のなかに眮かれた葡萄や米が、その土地の埮生物ず出䌚い、プツプツず泡を立おながらお酒ぞ倉わっおいく。

    その予枬しきれない発酵のなかに、老荘思想の魅力がありたす。

    ルヌルばかりで疲れただろう。

    少し力を抜いお、倜の星空を芋䞊げおみよう。

    自分が䞖界を党郚動かさなければならないず思い蟌むのをやめお、もっず倧きな流れぞ身䜓を預けおみよう。

    そう語りかけおくるお酒です。

    東アゞアの歎史、そしお私たちの粟神は、この儒教ずいう瀟䌚秩序の薬味酒ず、老荘思想ずいう野生のどぶろくのあいだを、振り子のように行き来しながら、絶劙なバランスを保っおきたした。

    仕事では瀌を守る。

    けれど、䌑日には山ぞ入り、自然ぞ垰る。

    瀟䌚では圹割を果たす。

    けれど、家では肩曞を倖し、ただの䞀人の人間に戻る。

    この二぀は、どちらか䞀方だけが正しいのではありたせん。

    薬味酒だけでは息が詰たり、どぶろくだけでは倧きな瀟䌚を安定しお運営できない。

    䞡方があるこずで、人間は秩序を持ちながら、生呜の柔らかさも倱わずに枈むのです。

    そしおここに、もう䞀぀、私たちが日垞のなかで最も頻繁に接しおいる「瀟䌚の共通蚀語」を加えおおきたしょう。

    それが、近代的な法埋、瀟䌚芏範、公共のマナヌずいったシステムです。

    これをお酒に䟋えるなら、よく冷えた「ビヌル」です。

    ビヌルは、神聖な神の血ずしお扱われるワむンのような宗教的階玚性を、必ずしも必芁ずしたせん。

    たた、杜氏の暗黙知によっお䞀点物の味を䜜る日本酒のような神秘性も、䞭心ではありたせん。

    この法什は「䞖界最叀の食品法」ず玹介されるこずもありたすが、倧切なのはその叀さではありたせん。

    ビヌルが、職人だけの神秘的な秘䌝にずどたらず、明確な芏則によっお「誰もが安心しお飲める品質」を保蚌し、倧衆文化ず結び぀いおきたこずです。

    ワむンが宮廷や教䌚の掗緎された知ず結び぀いおきたのに察し、ビヌルは、パブや居酒屋で、身分や立堎を超えた䞀般の人々が同じ堎所を共有するための、日垞のリンガ・フランカ、぀たり共通蚀語ずしお機胜しおきたした。

    「ずりあえずビヌルで也杯」ずいうあの明るい開攟感こそが、近代的な公共性の本質です。

    高床な哲孊を語れなくおもいい。 同じ神を信じおいなくおもいい。

    ずりあえず「也杯」ず蚀い、暎力を振るわず、店の決たりを守り、隣の人の垭を奪わない。

    誰もが守るこずのできる最䜎限のルヌルさえあれば、芋ず知らずの他人ずも、その堎で小さな秩序を䜜るこずができたす。

    儒教の薬味酒が持぀「重々しい儀瀌」ずは察照的な、この軜やかで民䞻的な「也杯」の粟神。それが、ビヌルずいうシステムの偉倧さです。

    どうでしょう。

    こうしお芋るず、私たちが日々盎面しおいる組織の面倒くささは、儒教の薬味が匷すぎる状態なのかもしれない。

    すべおを投げ出しお、音楜に合わせお螊ったり、自然のなかで䜕も考えずに過ごしたくなる衝動は、老荘思想のどぶろくを身䜓が求めおいるのかもしれない。

    SNSで「ルヌルを守れ」ず互いに叩き合うギスギス感は、日垞の秩序を保぀ためのビヌルを、盞手の喉ぞ無理やり流し蟌もうずしおいる状態なのかもしれたせん。

    問題は、どのお酒が正しいかではありたせん。

    自分のなかで、どの味が匷くなりすぎ、どの味が䞍足しおいるのか。

    そのブレンド比率なのです。

    あなたがこれから䞖界ぞ出おいくずき、どの堎面で、どのボトルを開けば、自分自身の心ず、呚囲の瀟䌚ずのバランスを調えられるのか。

    その具䜓的な調合のヒントが、少しず぀芋えおきおいるはずです。




     
     
    IQ、EQを超えた第3の指暙、「認知リテラシヌLQ」で䞖界を読み解きたしょう。自分を取り戻す堎所ずしお、路地裏から䞖界を歩む智慧を玡いでいきたすね。お䟿り、お問い合わせ、コメントはどしどしお寄せください。党お目を通しお、出来る限りご返事いたしおおりたす。

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