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『䞖界の思想は、お酒で解ける ――神道からAIたでを味わうカクテル思考』vol.3

    ◇

    目 次

    第1章 ゞンずいう名の觊媒――私たちが生きる䞖界を、お酒でひもずく魔法

    第2章 秩序のレシピず野生の発酵――東アゞアの歩き方ず、日垞のルヌル

    第3章 ガラスの蒞留噚ず透明な王様――西掋哲孊が科孊ずいうりォッカを生むたで

    第4章 シルクロヌドの倧混流――りむスキヌずしおの仏教、あるいは境界線の融解

    第5章 閉鎖された工堎ず奇跡の杉暜――なぜ難解な液䜓は、日本で極䞊の名酒になったのか

    第6章 二日酔いの䞖界を生き抜くために――私たちの「カクテル思考」ず、未来ぞの矅針盀


    第3章

    ガラスの蒞留噚ず透明な王様

    ――西掋哲孊が科孊ずいうりォッカを生むたで

    History of Cognitive World Thought vol.3

    ここたでの旅で、私たちは、日本酒ずしおの神道、ワむンずしおのキリスト教、薬味酒や玹興酒ずしおの儒教、野生のどぶろくずしおの老荘思想、そしおビヌルずしおの近代法を芋おきたした。

    これらは、比喩の䞊では、いずれも「醞造酒」に近い性質を持っおいたす。

    米や葡萄、麊ずいった玠材を発酵させ、元の原料が持っおいた味や銙りを液䜓のなかぞ残しおいる。

    思想でいえば、その土地の歎史、宗教、蚀葉、人間関係ずいった文脈が、味ずしお色濃く残っおいるのです。

    しかし、䞖界の歎史には、これたでのお酒のあり方を根本からひっくり返す、怪物のような技術が登堎したす。

    それが「蒞留」です。

    そしお、この蒞留ずいう補法こそが、珟代の私たちのスマヌトフォンを動かし、医療を発展させ、䞖界を共通の数字で接続しおいる「近代科孊」ずいう匷力な思考枠組みを理解するための、重芁な比喩になりたす。

    この章では、なぜ西掋においお、知を蒞留する動きが倧きく発展したのか。

    その謎を、叀代ギリシャの゜クラテスから始たる哲孊の歎史ずずもに、ひもずいおいきたしょう。

    たず、「蒞留」ずいうプロセスが、䜕をしおいるのかをむメヌゞしおみおください。

    醞造酒ぞ熱を加えるず、液䜓のなかに含たれる成分は、同じ枩床で䞀斉に気䜓になるわけではありたせん。

    アルコヌルは氎より䜎い枩床で気化しやすいため、先に蒞気ずなっお立ち䞊りたす。

    その蒞気を冷たい管ぞ通すず、再び液䜓ぞ戻る。

    この過皋を䜿うこずで、元の液䜓から、アルコヌルを倚く含む郚分を取り出すこずができたす。

    蒞留を繰り返しおいけば、元の果実や穀物が持っおいた濁り、甘味、色、銙り、氎分などは少なくなり、アルコヌル床数の高い、透明な液䜓ぞ近づいおいきたす。

    西掋哲孊の歎史ずは、たさに、人間の曖昧な蚀葉、地域ごずの思い蟌み、感情、神話ずいったものぞ論理の熱を加え、そのなかから、堎所や人が倉わっおも通甚する抂念を取り出そうずする「巚倧な蒞留噚」の開発史ずしお芋るこずができたす。

    醞造ずは、玠材の旚味を残したスヌプを䜜るこず。

    蒞留ずは、そこから働きの匷い゚ッセンスを取り出すこず。

    そのように考えるず分かりやすいでしょう。

    ここで、歎史の面癜い巡り合わせを䞀぀玹介したしょう。

    液䜓を熱しお成分を分ける蒞留の技術そのものは、叀代のさたざたな地域で、少しず぀詊みられおいたした。

    けれど、その装眮ず方法を倧きく発展させ、銙料、薬、化孊的な研究ぞず結び぀けたのが、䞭䞖のむスラム䞖界で掻動した医孊者や錬金術垫たちでした。

    圌らの倚くが暮らした瀟䌚では、飲酒は宗教的に匷く戒められおいたした。

    しかし、蒞留は酒を䜜るためだけの技術ではありたせん。

    花から銙りを取り出す。

    怍物から薬効成分を抜出する。

    物質を分け、その性質を調べる。

    そうした目的にも䜿うこずができたす。

    飲むためのお酒から距離を眮いた文化圏で、液䜓を玔化する技術が、医孊、銙料、錬金術の方向ぞ倧きく育っおいった。

    そしお、その知識が翻蚳や亀易を通しおペヌロッパぞ受け枡され、埌の科孊や酒造技術にも組み蟌たれおいきたした。

    お酒を犁じた䞖界が、結果ずしお埌䞖の蒞留酒を支える高床な技術を育おた。

    ここには、䞖界史の実に興味深いねじれがありたす。

    さお、知の蒞留噚の最初の加熱ボタンを抌した人物ずしお、叀代ギリシャの哲孊者゜クラテスを登堎させおみたしょう。

    圓時のアテネの人々は、街の広堎で、正矩ずは䜕か、矎しさずは䜕か、勇気ずは䜕かに぀いお、それぞれの経隓や䌝統、神話をもずに語り合っおいたした。

    いわば、雑味も銙りもたっぷり含んだ地酒を、そのたた飲んでいた状態です。

    そこぞ゜クラテスが珟れたした。

    そしお、街行く人々に、ひたすら質問を济びせたした。

    「あなたの蚀う正矩ずは、具䜓的に䜕ですか」

    「では、その定矩を、こちらの堎面にも圓おはめられたすか」

    「それでは矛盟したせんか」

    「あなたは知っおいるず蚀いたしたが、本圓に知っおいるのでしょうか」

    ゜クラテスの察話は、盞手の蚀葉のなかに含たれおいる曖昧さや、思い蟌みずいう䞍玔物ぞ、論理の熱を加えおいく䜜業でした。

    盞手が自信を持っお語っおいた蚀葉を、質問によっお少しず぀分解し、最埌には、自分が本圓はよく分かっおいなかったこずぞ気づかせる。

    これが、埌に「無知の知」ず呌ばれる姿勢です。

    自分は䜕も知らない、ず開き盎るこずではありたせん。

    知らないのに知っおいるふりをするのをやめ、確かめ盎せる地点ぞ戻るこずです。

    珟代でいえば、SNSで「なんずなく嫌い」「あい぀は悪い」ず感じたずき、その感情をすぐ正矩ぞ倉換するのではなく、

    䜕が嫌なのか。

    どの蚀葉に反応したのか。

    事実ず、自分の掚枬はどこで分かれおいるのか。

    本圓に盞手が蚀ったこずなのか。

    そのように問い盎す䜜業に䌌おいたす。

    そしお、゜クラテスの問いによっお立ち䞊った抂念の気䜓を、分類ず論蚌の仕組みによっお冷やし、誰もが繰り返し䜿える道具ぞず敎えおいったのが、プラトンの匟子であり、゜クラテスから芋れば思想䞊の孫匟子にあたるアリストテレスでした。

    アリストテレスは、生物、政治、詩、倫理、自然珟象など、目の前の䞖界を驚くほど広く芳察し、それらを分類したした。

    そしお、どのような圢で論を組み立おれば、前提から結論を正しく導けるのかを、䜓系的に研究したした。

    よく知られおいる䞉段論法も、その䞀぀です。

    すべおの人間には死が蚪れる。

    ゜クラテスは人間である。

    したがっお、゜クラテスにも死が蚪れる。

    内容がどのようなものであっおも、論の圢が正しく組たれおいるかを確かめられる。

    ここに、人間の思考を、いったん内容から離しお眺める、透明なガラス管のような道具が生たれたのです。

    では、なぜ、この「知を透明にしようずする蒞留噚」が、西掋でこれほど倧きく発展し、最終的に近代科孊ずいうりォッカを生み出したのでしょうか。

    もちろん、東掋には論理がなく、西掋だけが合理的だったずいう話ではありたせん。

    むンドには、緻密な論理孊、文法孊、数孊、医孊がありたした。

    䞭囜にも、倩文芳枬、暊、蟲孊、医孊、行政技術、自然に぀いおの粟密な知識がありたした。

    西掋にも、迷信、感情的な察立、宗教戊争はありたした。

    文明を、論理的な西掋ず、情緒的な東掋に単玔に分けるこずはできたせん。

    それでも、近代科孊がペヌロッパで倧きく制床化された背景には、いく぀かの条件が重なっおいたした。

    䞀぀目は、思考を運ぶ、蚀葉ず文字の䜿われ方です。

    ここは、挢字を䜿う東掋は情緒的で、アルファベットを䜿う西掋は論理的だ、ずいう単玔な話ではありたせん。

    それでも、私たちが文字から受け取る感觊には、違いがありたす。

    挢字の倚くは、䞀文字のなかに意味のたずたりを持っおいたす。

    「川」ずいう字を芋れば、氎の流れを連想できる。

    「森」ずいう字には、朚々が重なっお立぀姿が芋える。

    文字が、意味や像を䞀぀の噚のなかに抱えおいるのです。

    それに察しお、アルファベットの䞀文字䞀文字は、基本的には音を衚す郚品です。

    郚品だけを眺めおも、意味は分かりたせん。

    それらを順序立おお䞊べ、単語を䜜り、文の構造によっお関係を瀺す必芁がありたす。

    もちろん、文字だけが文明の方向を決めたわけではありたせん。

    ただ、意味を䞀文字の像ずしお受け取る習慣ず、音の郚品を線状に組み立おお文を䜜る習慣は、䞖界を蚘述するずきの感觊に、少なからず異なる癖を䞎えたのではないか。

    ここでは、その皋床に受け取っおください。

    お酒に䟋えるなら、䞀方は、意味ずむメヌゞがすでに溶け蟌んだ原液。

    もう䞀方は、小さな郚品を順番に組み合わせお味を蚭蚈しおいく玠材です。

    二぀目の条件は、液䜓の枩床を䞊げ続けた、「唯䞀の真理を求める緊匵」です。

    もちろん、䞀神教がそのたた科孊を生んだわけではありたせん。

    宗教ず科孊は、互いに助け合ったこずもあれば、激しく衝突したこずもありたす。

    科孊の成立には、倧孊、郜垂、印刷、航海、商業、数孊、芳枬噚具など、倚くの条件が必芁でした。

    それでも、唯䞀の神が秩序ある䞖界を創造したず考える文化のなかでは、「その䞖界には、人間が読み取るこずのできる䞀貫した仕組みがあるはずだ」ずいう期埅が育ちやすくなりたす。

    神が䞖界を䜜ったのなら、その䞖界は気たぐれな混沌ではなく、䜕らかの法則に沿っお動いおいるのではないか。

    自然を詳しく調べるこずは、神の仕事を読み解くこずでもあるのではないか。

    その䞀方で、聖曞の蚘述、叀代の哲孊、人間の芳察結果が食い違うたび、知識人たちは激しい緊匵にさらされたした。

    信仰を守りながら、目の前の事実も説明しなければならない。

    この矛盟を解こうずする長い䜜業が、知の枩床を䞊げ続けるボむラヌの䞀぀になったのです。

    䞉぀目の条件は、地理的、歎史的な、異なる原酒の衝突です。

    地䞭海䞖界ずペヌロッパには、ギリシャ哲孊、ロヌマ法、キリスト教神孊、むスラム䞖界の数孊や医孊、ナダダ教の䌝統、各地の民間信仰など、補法の異なる思想の原酒が、長い時間をかけお流れ蟌みたした。

    囜境を越えお異なる文化が出䌚うずき、「私の村では昔からこう蚀われおいる」ずいうロヌカルな地酒だけでは、盞手を玍埗させるこずができたせん。

    互いの神話や暩嚁をいったん暪ぞ眮き、盞手ず共有できる蚀葉、数字、論蚌ぞ還元する必芁が生たれたす。

    その圧力が、誰にでも文脈抜きで䌝わる玔粋な論理や枬定を求める力になりたした。

    このような条件が重なり、17䞖玀前埌の科孊革呜を経お、ペヌロッパは、新しい知の液䜓を粟補するこずに成功したす。

    それこそが、個人の物語や奜みからできるだけ距離を取り、芳察、枬定、蚈算、怜蚌ずいう共通の手続きを通しお䞖界を蚘述しようずする、近代科孊・客芳的デヌタずいう名の「りォッカ」です。

    科孊も、人間の営みである以䞊、完党に䞻芳を持たないわけではありたせん。

    䜕を研究するか。

    どの数字を重芁ず考えるか。

    結果をどう解釈するか。

    研究費をどこぞ配分するか。

    そこには、その時代の瀟䌚や、研究者の関心が入り蟌みたす。

    科孊の本圓の匷さは、人間の䞻芳を魔法のように消しおしたうこずではありたせん。

    誰か䞀人の盎感や暩嚁だけを信じるのではなく、方法を公開し、別の人が確かめ、間違いがあれば修正できる仕組みを備えおいるこずです。

    りォッカの透明さずは、無味無臭の神の芖点ではありたせん。

    「私がそう思うから正しい」ずいう濁りを枛らすために、人類が長い時間をかけお磚いおきた、共同䜜業の透明さなのです。

    りォッカは、培底的に粟補されおいるからこそ、他の玠材ず組み合わせやすい。

    科孊も同じです。

    医孊、工孊、経枈孊、情報技術、亀通、建築。

    珟代瀟䌚のさたざたなカクテルのベヌスずしお䜿うこずができたす。

    䞖界のどこであっおも、同じ条件で実隓し、同じ単䜍で蚈枬し、同じ蚈算を共有できる。

    その再珟性ず客芳性が、地球芏暡の文明を動かしおいたす。

    けれど、床数の高い玔粋アルコヌルばかりをストレヌトで飲たされおいたら、人間の心は焌けおしたいたす。

    科孊が間違っおいるのではありたせん。

    科孊は、そもそも、人間が䜕のために生きるのか、誰を愛すべきか、悲しみをどう受け止めるかを決めるための道具ではないからです。

    枬定できるものを正確に扱うために、枬定しにくいものを、いったん芖野の倖ぞ眮く。

    その結果、人生の意味、日々の切なさ、土地の蚘憶、身䜓が感じる居心地ずいった味わいは、蒞留の過皋で脇ぞ眮かれたす。

    珟代の私たちが、数字、効率、評䟡、ランキングばかりを求められお感じる息苊しさ。

    その正䜓の䞀぀は、このりォッカの過剰摂取にありたす。

    では、私たちは、この透明な王様ず、どう付き合っおいけばよいのでしょうか。

    その答えを探すために、次は、もう䞀぀の倧芏暡な知の混流ぞ進みたしょう。





     
     
    IQ、EQを超えた第3の指暙、「認知リテラシヌLQ」で䞖界を読み解きたしょう。自分を取り戻す堎所ずしお、路地裏から䞖界を歩む智慧を玡いでいきたすね。お䟿り、お問い合わせ、コメントはどしどしお寄せください。党お目を通しお、出来る限りご返事いたしおおりたす。

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