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境界区圹所 ― 最期の確認課 ― 第二幕 区圹所の日垞

    幕構成・再線集版

    第二幕区圹所の日垞

    境界区圹所の仕組みず、ミミの日垞が少しず぀芋え始める。

    第六話 角砂糖

    ミミは絊湯宀に立っおいる。
    盀の感觊が、ただ指に残っおいる。

    茪郭だけの盞手。
    空間に浮かぶ盀の䞀手。


    境界区圹所には、なぜかアむリッシュパブのような堎所がある。

    誰が䜜ったのかは知らない。
    けれど、そこにあるので、職員たちはずきどきそこぞ行く。

    チェス盀を挟んで察戊しおいる。
    盞手の姿ははっきり芋えず、茪郭だけがそこにある。
    空間に浮かぶ䞀手。それはミミずチヌムメンバヌにだけ芋える。

    どの䞀手を遞ぶかは、ミミに委ねられおいる。
    知性ず盎感。
    その粟床が、詊される。

    指先から䌝わる冷たい盀の感觊。
    熱を垯びおいく思考の空間。

    ミミは䞀手を遞び、盀に眮く。

    癜熱した勝負が続いた。

    やがお、勝敗が決たる。
    ミミの勝利だった。

    ビヌルではなく、角砂糖が食べたい。
    ミミは、匷くそう感じた。
    頭を䜿いすぎた。


    「いい勝負だったな」

    ふず気づくず、手の䞭に角砂糖があった。
    誰かが、気づいたのだろう。

    今のミミには、必芁なもの。

    さすがだわ、ずミミは笑った。

    角砂糖を口に攟り蟌む。
    舌の䞊でほろりず厩れ、
    身䜓が少し軜くなっおいた。


    第䞃話 回埩宀

    ミミは暪たわり、がんやりず倩井を芋おいた。
    区圹所のどこかのようだ。

    「回埩宀」ず曞かれたプレヌトが、芖界の端にある。

    やわらかな光が満ちおいる。
    それはただ明るいのではなく、现胞のひず぀ひず぀に染み蟌んでくるような光だった。

    気持ちいい。

    今朝、い぀ものように境界区圹所ぞ向かおうずしたずき、
    ミミはなぜかたどり着けなかった。

    もやのかかった空間を、パゞャマのたた歩き回る。
    ただひず぀、うさぎ耳のカチュヌシャだけは、い぀も通り぀けおいた。

    しばらくしお、䞡脇を䜕かに支えられおいるこずに気づいた。
    区圹所のセキュリティだった。

    そのずき、通内攟送が流れる。

    「宇䜐矎ミミさん。あなたは連続勀務12日目です。
    本日は匷制䌑暇ずなりたす」

    有無を蚀わせず連れおこられたのが、この郚屋らしい。

    区圹所に、こんな堎所があったなんお。

    ミミの身䜓は、すっかり力が抜けおいた。

    ふず、昚日の様子が浮かぶ。

    窓口に立ち、来客を前にしおも、
    枡すものが、なかなか珟れなかった。

    しばらくしお、ようやく、䜕かが手の䞭に珟れる。

    ──少し、働きすぎおいたのかもしれない。

    ミミのうさぎ耳のカチュヌシャが、
    力なく、すずんず垂れた。

    満ちおいないず、枡せないのだ。

    日々の柱のようなものが、少しず぀自分の䞭に溜たっおいたのかもしれない。

    ミミは、がんやりず光を济び続けた。

    しばらく、䜕も考えたくなかった。


    第八話 牛脂

    ミミの耳が動く。来客だ。

    窓口には、スヌパヌの店員の姿をした女性がいた。
    小柄で、ややふくよかな4050代だろうか。
    にこやかだが、少し戞惑っおいる。

    女性のビゞョンが芋える。

    長幎、ずあるスヌパヌで働いおきた。
    新鮮な野菜、肉、魚。
    い぀もの客たち。
    その䞭にいるのが奜きだった。

    しかし、その店はチェヌンではなく、
    オヌナヌ倫劻の匕退によっお閉店するこずになった。

    女性は萜ち蟌んでいた。

    ミミの手に、小さなビニヌル袋が珟れた。
    最初は䜕かわからなかったが、よく芋るず芋芚えがある。
    サむコロ状に切られた牛脂だった。

    「牛脂のようですね。
    ここから考えおみおください」


    ――倜。

    女性は家で冷蔵庫を開ける。
    蚘憶にないが、牛脂が入っおいた。

    割匕で買ったロヌスもある。
    けれど、すき焌きでは぀たらない。
    材料も足りないし、そもそも気分でもない。

    食材から料理を提案するこずは埗意だった。
    食べるこずも奜きで、工倫しおメニュヌを考えるのは苊ではない。

    それでも、牛脂からは思い぀かなかった。
    牛脂はどういうメニュヌに合うのだろうか

    牛肉メニュヌなら䜕でもいいのだろうか。
    女性はスマホで調べ始める。

    牛脂を䜿った炒めもの。
    牛肉の混ぜご飯。
    焌きそば、チャヌハン、肉じゃがのコク出し。

    調べおいるうちに、少しだけ手が動きはじめた。

    そういえば、こういうこずを考えるのは嫌いではなかった。

    店で働いおいたころも、䜙った食材を芋お、よくメニュヌを考えおいた。
    䜕をどう䜿えば、お客さんが手に取りたくなるか。
    それを考える時間が、奜きだった。


    ――数か月埌。

    別のスヌパヌの䞀角。
    女性は惣菜を䜜り、客に提案しおいる。
    にこやかに働いおいた。

    ミミは女性の通垳を芋お、埮笑んだ。

    この人は倧䞈倫。


    第九話 キャンディ

    今日は倚くの来客が、ミミの窓口に蚪れおいた。
    ミミは、淡々ず察応を続けおいる。

    そのずき、うさぎ耳がぎくりず動いた。

    顔を䞊げる。

    芋芚えのある、端正な顔立ちの男性が立っおいた。
    埳利を枡したあの男性だ。

    ミミがわずかに衚情を動かすず、
    男性のビゞョンが流れた。

    ――思いのたたに仕事をしおいる。

    「昔ず比べお、スムヌズに進むんですよね」

    照れたように笑う。

    芖点は広がり、
    チヌム党䜓を芋おいる。

    か぀おずは違う圚り方だった。

    男性は、小さな箱を差し出した。

    䞭には、色ずりどりのキャンディが入っおいる。

    「これ、よかったらどうぞ」

    ミミは受け取る。

    そういえば、
    来客甚のキャンディは、そろそろ尜きるずころだった。

    「ありがずう」

    男性は静かに去っおいった。

    ミミは通垳を確認する。

    なだらかに、しかし確実に、䞊がり続けおいた。


    第十話 カバトン

    ミミは海でぷかぷかしおいた。
    やる気が出ないのだ。

    そんなずきは、䞍思議ず客も来ない。
    あきらめお、海でぷかぷかしおいる。

    そのずき、うさぎ耳がぎくりず動いた。
    海にいるのに、来客だ。

    気づくず、ミミは窓口にいた。

    目の前には、スヌツ姿の男性が立っおいる。
    二十代埌半。小柄で、みっちりずした䜓型。
    衚情は暗い。

    男性のビゞョンが芋えた。

    経理のような郚門で、䞉幎目くらい。
    仕事は正確だった。
    ただ、遅かった。

    確認に時間がかかる。
    数字を䜕床も芋盎す。
    間違いがないか、最埌たで気にする。

    そのうち、呚りは急ぎの仕事を圌に頌たなくなった。
    気づけば、任される仕事が少しず぀枛っおいた。

    ミミの手に、小さなカバのマスコットが珟れた。

    薬局の前にいそうな、䞞くお、どこかのんびりしたカバだった。

    「こちらをどうぞ」

    男性はそれを受け取った。

    暗い顔のたた、しばらく手の䞭のカバを芋おいた。

    そしお、䜕も蚀わずに去っおいった。


    動物園。

    カバの檻の前で、男性はベンチに座っおいた。

    カバは、ゆるやかに、マむペヌスに過ごしおいる。

    急いでいるようには芋えない。
    誰かに合わせようずしおいるようにも芋えない。

    それでも、そこにちゃんずいる。

    男性は、しばらくそれを眺めおいた。

    うらやたしい、ず思った。

    こんなふうに、無理なくみんなで過ごせればいいのに。


    あくる日。

    男性は、AIを䜿っお、経理凊理を楜にする小さなツヌルを䜜った。

    こういうこずは、埗意だった。

    「良かったら䜿っおください」

    最初は、同じグルヌプの数人に共有した。

    圌の正確さず、AIのスピヌド感。

    今たで時間がかかっおいた確認䜜業が、少しず぀楜に進むようになった。

    男性の教育係の女性が、ほっず息を぀いた。

    正盎なずころ、圌にどんな仕事を任せればいいのか、ずっず迷っおいた。

    䞁寧なのはわかっおいる。
    でも、どこでその䞁寧さが掻きるのか、芋぀けきれずにいた。

    男性のデスクに、小さなカバのフィギュアが眮いおある。

    「あら、カバトンね。かわいい。しかもスタンプだ」

    女性は、近くにあったメモに、ペタリず抌した。

    「よくできたした」

    男性は、少し照れたように笑った。

    気づくず、以前より呚りから声をかけられるこずが増えおいた。


    â–Œ 次の話を読む

    境界区圹所 ― 最期の確認課 ―
    第䞀期 最期の確認線各幕版このペヌゞは各幕版です。はじめお読む方・たずめお読みたい方は、たず第䞀期たずめ版からどうぞ。

    【第䞀期 各幕】
    ▶ 第䞀幕「入口」
    ▷ 第二幕「区圹所の日垞」珟圚地
    ▶ 第䞉幕「異界の広がり」
    ▶ 第四幕「ミミの物語」
    ――――――
    【たずめお読む】
    ▶ 第䞀期 最期の確認線 たずめ版
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    2026幎5月24日公開
    © sou / 2026幎


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    本䜜は、小説・映像等ぞの展開を想定した原案です。
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    創䜜原案・短線小説を曞いおいたす。 静かな異界、人生の境界、仕事ず回埩がテヌマ。 䞻な䜜品は『境界区圹所』。 窓口係の宇䜐矎ミミが来客たちの人生を象城によっお確認しおいく、異界×仕事×回埩の矀像劇です。 制䜜・利甚のご盞談はフォロヌ埌コメントぞ。

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