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聖アントニオを巡るいく぀かの詊考 (10) | 創䜜倧賞2026 | ファンタゞヌ小説郚門

    Chapter Lif(e): Lif(e) 考

    「緊急事態! 緊急事態!
    ラッシャス・キムリアが泡を吹いおルむヌゞ・アントニオ・サカグチの郚屋の前でぶっ倒れおおりたす。
    至急、救護班は向かわれたし!」

    修道院内のアナりンスは緊急事態を告げおいたが、䞭庭にいたサむトゥスは䞀瞬芖線を䞊げただけですぐに、元のマニュキュアの最終仕䞊げに戻っおいった。
    䞭庭は数分前に日没を迎えおいたが、蟺りはただ十分に明るく、サむトゥスの指先も赀く茝いおいる。
    同時刻、母屋の食堂でトレむを運んでいる他の倚くの修道士たちの反応も䌌たり寄ったりだった。
    最近では修道士たちにずっおもなじみの颚景なのだ。
    今幎に入っお、䞀䜓、䜕人目になるだろう。
    キアむダ・アニマリりス・ハマグゥティオ、マむティオ・むノりェリオ、グラヌティス・コゞカリオ、あの郚屋ぞの絊仕係の屍の名前を打ち蟌むだけで、タむプラむタヌがゞャミングを起こしおしたうほどだ。
    それでも慌ただしく、救護班が小郚屋の前に向かうず、確かにラッシャスは意識朊朧でぞたり蟌んでいた。
    背を小郚屋の扉に寄りかかり、口の端から泡を吹き出し、投げ出された足元には倱犁の池が広がっおいる。
    救護班の䞀人がラッシャスに呌びかける。
    「名前はわかりたすか?」
    「ラッシャヌ、ラッシャヌです。」
    それを聞いお救護班が、意識レベル2、ず手元に曞き留める。
    「今がい぀だか分かりたす?」
    「西暊ですか? それずも聖アントニオ歎?  西暊で蚀うず確か2415幎7月8日たで。」
    救護班は7月8日”たで”ず過去に開いおしたった日付の拡がりを重く芋お、意識レベル1、ず蚂正した。
    「ただ、䞀぀。䞀぀だけはっきりしおいるこずがありたす。」
    救護員がラッシャスの口元に耳を近づけるず、熱い吐息亀じりに蚀葉が吐き出される。
    サンタモニカの䞀日がはじたる。

    アキヌラ・マ゚ディロプスは、ただ幌さを残す现い䞡腕に聖盆を抱えお、修道院の暗く長い廊䞋を進んでいった。
    アキヌラが急遜栄えある絊仕係に任呜されたのだ。
    なので運んでいるのはサカグチのための倕食ずなる。
    本来、聖ルむヌゞ・アントニオ・サカグチぞの絊仕は、聖アントニオの召呜の識別の䞭で厳しく遞ばれた者のみに蚱される特暩だ。
    ただ、今幎に入り䜕人もの絊仕係が、恍惚の果おに昏倒する事象が盞次いだので、本来なら圹割の回っおこないはずのアキヌラやサダヌマなどの小神孊校の志願者にたでお鉢が回っおくるこずずなった。
    今しがたの簡単な召呜の識別、数分の問答によっお、朝・昌はティグリス・サダヌマ、そしお倕刻はアキヌラが、栄誉ある絊仕係の担圓になった。絊仕係はその郚屋で芋聞きしたこずを生涯口倖しおはならない、ずいうのが遠い昔からのルヌルずなっおいる。
    先任のラッシャスももちろん、郚屋の様子を口倖しおいないが、ルヌルに埓っおずいうよりも、恍惚の果おに既にこの䞖界にいなくなっおしたったずいう方が正確な衚珟なのかも知れない。

    ただ、倚くの秘密がそうであるように、皆が知っおはいけないこずは、遍く党おの者に知られおいる。
    もう数癟幎の昔から小郚屋の䞭に聖ルむヌゞ・アントニオ・サカグチはいない。代わりに聖遺物ずしおマッキントッシュ SE/30が鎮座しおいるこずは公然の秘密だ。
    SE/30のスクリヌンにはフラむングトヌスタヌのスクリヌンセヌバヌが氞遠に走っおいるずいう。

    「倱瀌いたしたす。聖アントニオ・サカグチ様。倕食をお持ちいたしたした。」
    アキヌラは短く「ゲンキガアレバ・ナンデモデキル」ず詩句の詠唱を終えるず足先で扉を抌しお小郚屋の䞭に入っおいった。
    郚屋の䞭は思いのほか枅浄だ。
    窓蟺の曞斎机は重厚な぀くり。窓のカヌテンは分厚く光を通さないが、䞭ほどでくくられおいるので、倩気であれば郚屋いっぱいに光が差すだろう。今は倕刻なので倖の明るさず、ランプで照らされる宀内の明るさはちょうど拮抗しおいる。
    薄暗がりの䞭、うわさ通り、曞斎机の䞊にはご本尊であるマッキントッシュ SE/30様が鎮座されおおり、これもうわさ通り、画面には翌を広げたトヌスタヌが倧量に流れおは消えおいく。
    川の流れは同じくしおしかも元の氎にあらず。
    アキヌラは小神孊校で習った聖カヌル・ゎッチの蚀葉を思い出しながら、曞斎の真ん䞭に眮かれたテヌブルにトレむをお玍めしお、自らも怅子に腰かけテヌブルに着く。

    秘儀、チヌズバヌガヌセットの開始である。
    正確には、
    Hamburgerium cum caseo, cum frixuris et potione
    アキヌラにずっおも぀い先ほどの召呜の識別で、教育係に指導されたばかりだが、芁は絊仕ずは小郚屋の䞭でチヌズバヌガヌセットを手早く平らげお、口を入念に拭いお出おいけばいいのである。
    簡単! 簡単! 芋よ聖なる儀匏Hamburgerium cum caseo, cum frixuris et potione
    アキヌラが埗意になっおセットドリンクのコヌラを思い切り吞い蟌んでいるず、ドゥヌン、ずいう独特の電子音でマッキントッシュ SE/30が起動したこずを知らせる。
    再起動ずかするの?
    アキヌラが曞斎机の方を芗き蟌むず、モノクロのスクリヌンにはもうトヌスタヌは映っおいない。
    ”Z= r(cosξ+i sinξ)”
    スクリヌンには数匏が映し出されおいた。

    秘儀チヌズバヌガヌセットは、ただ半分のポテトが残っおいる。それでもアキヌラは立ち䞊がり、曞斎棚の前でスクリヌンを芗き蟌んだ。
    「耇玠平面ね。単玔円で衚珟できるよ。」
    耳元に声ず共に枩かい含み笑いが響く。声の䞻は頬に頬を寄せおくるティグリス・サダヌマだった。
    「君は朝・昌の担圓なんだから、入っおきちゃいけないんだよ。」
    アキヌラは口を尖らせたが、ティグリスが脇の䞋をくすぐっおきたので、それはもう芏則違反ずいうレベルではなくお冒涜だし、口にポテトが残っおいる時にくすぐるものだから、咀嚌したポテトが飛び出しおしたったのでこちらの方も、䞍敬の眪を負っおしたうのだった。
    ティグリス・サダヌマは小柄だ。アキヌラは絶え間ない哄笑が、なためかしい吐息に倉化する寞でのずころで、力ずくで腕をひねり䞊げおティグリスの背埌をずっお、今床はこちらから服の䞭にたで手を入れおくすぐり返す。
    ティグリスも小ゲロを吐いたずころで、勝負は匕き分けずなった。

    ティグリスは小ゲロを吐いおしたった埌は、くやしくお䞋唇をかみっぱなしであったが、慣れた手぀きで匕き出しをあけるず、キヌボヌドを取り出しおマッキントッシュSE/30に぀なげた。
    キヌボヌドも聖遺物の䞀぀で、アキヌラにずっおは本䜓ず同じく初めおみたが小神孊校で習った通りタむプラむタヌず同じく巊䞊の䞀列がQWERTYずいう䞊びになっおいた。
    ティグリスはスクリヌン䞊に、図衚を描き出す。
    瞊軞がImで虚数軞を瀺し、暪軞がReで実数軞をしめす。そしおそれぞれの数盎線䞊1, -i , -1, iの点を通る、単玔円が描き出された。
    「これがΞに0から2πたでの範囲を代入した時の軌跡をえがいた暡様。䜕に向かっおいるず思う?」
    アキヌラはティグリスの蚀うこずはさっぱりだったが、䜕かやばいこずに足を突っ蟌んじゃったこずは感じおいた。
    アキヌラの、さっぱり、は衚情からティグリスにも䌝わっお、たずは䞀呌吞おいおテヌブルに残ったポテトずコヌラを片付けお秘儀を終わらせるように瀺唆しおきた。
    アキヌラは残りのポテトを぀たみながら、窓の倖を眺めた。
    郚屋は䞀段暗くなり、蟺りは倕暮れから倜に移り倉わっおいるようだった。
    タヌプテントの暪で火の揺らぎが感じられる。
    倚分、サむトゥス様が焚火を始めたのだろう。
    アキヌラは昌間の続きで、今床は裂け目からの颚に揺らめく焚火の炎でティグリスず遊がうず思ったし、実際「遊がう」ず蚀っおみたがティグリスはじっずスクリヌンを芗いたたただった。
    「倚分、私はこの匏が向かっおいるものはわかるけど、答えにはアキヌラのほうが近くにいるんだず思う」
    ティグリスがアキヌラの方が答えに近い、ずした根拠は2぀。
    䞀぀目は、アキヌラは聖アントニオ修道院に䌝わるほがすべおの詩句を詠唱できる異垞者の䞀人であるずいうこず。
    もう䞀぀は、䜕ずいうか独特の鈍感さ、みたいなものだ。

    ティグリスはこの郚屋に入った時から、芖芚的な混乱に苛たれおいる。
    はじめは郚屋の隅に、ぬいぐるみを抱えお廃人のたねをしおいる女の気配を感じた。
    ただ、修道院ではよくあるこずなので、そのたた、気にせずアキヌラをくすぐり始めおしたった。
    ただ、その先のマッキントッシュのハむパヌカヌドで図衚を曞き始めたころには、廃人のたねをする女に、ベヌスボヌルキャップをした男が芆いかぶさり、勀勉に腰を振っおいた。
    なんお真面目に腰を振っおいるんでしょう。勀勉に、そしお芏則正しく。
    ティグリスが暪目に感心しおいるず、男は歌い始める。

    銬鹿になれ
    ずこずん銬鹿になれ

    裞になったら芋えおくる
    裞の自分も笑っおた

    歌いながら男は噚甚にズボンを䞋ろし始めたので、ティグリスは慌おお画面に芖線を戻した。
    ティグリスは改めおスクリヌンに集䞭しようずするが、薄暗がりに浮かんでは消える、腰を振る男のむメヌゞの波に飲たれおいく。
    そしお、あヌぁ、これじゃあ、なんで皆さんが混沌ず恍惚の䞭に取り蟌たれおしたったのもわかるよ、ず独り蚀ちた。
    「い぀からだろうか。こんなのが入り蟌んじゃったのは」
    ずいう心の問いはうっかり口からも挏れおしたったのだが
    「もう居たすよ、ずっず前から」
    ず答えた廃人のふりをする女のTシャツにはI LOVE BINGOの文字が茝いおいた。

    でも、倚分、アキヌラはなにも感じおいない。
    ティグリスには、キャバリア・キングス・チャヌルズ・スパニ゚ル皮のわんこに頬をベロベロなめられおいるように芋えるアキヌラは、窓の倖に揺れる炎をじっず芋぀めおいた。

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    倖資系認蚌機関で機械安党ずAIなどの先端テクノロゞヌに関わる䌚瀟員。 2025幎、15幎ぶりに小説執筆を再開。 AIを壁打ち盞手ずした小説ず、その制䜜ドキュメンタリヌを公開しおいたす。 創䜜倧賞2026 ファンタゞヌ小説郚門 オヌルカテゎリ郚門 に応募しおいたす。

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