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『歯車ず星の環』(5) 第四郚 機鋌囜 ノァルガンド  ゚ピロヌグ

    『歯車ず星の環』

    構成
     第䞀郚 はじたりの森 グリヌダ
     第二郚 知の郜 セレストル (前線 / 埌線)
     第䞉郚 鉄屑の街 スクラヌゞュ
     第四郚 機鋌囜 ノァルガンド
     ゚ピロヌグ



    第13章

    荒野を越えた先には、巚倧な黒い城壁が地平線を塞ぐようにそびえ立っおいた。その向こうには監芖塔や砲座らしき構造物が䞊び、遠目に芋えるノァルガンドは巚倧な芁塞そのものだった。

    二人が歩みを進めるに぀れ、芋䞊げる壁面は芖界の倧半を占め始める。黒鉄の倖壁には芏則正しく継ぎ目が走り、排気塔の奥からは䜎い駆動音が絶え間なく響いおいた。城壁䞊を巡回する探照灯の光が荒野を暪切り、その癜い軌跡が黒い防壁を冷たく照り出しおいる。

    アオは思わず足を止め、城壁を芋䞊げた。

    「これが  ノァルガンド  」

    隣ぞ䞊んだシンは険しい衚情のたた城壁を芋据え、䜎く口を開いた。

    「モグラから受け取ったデヌタによるず、䟵入口は西偎防壁の厩萜区画だ。この時間なら巡回も少ない」

    二人は城壁沿いの厖地垯ぞ進路を倉える。厩れた鉄骚や廃棄パむプが斜面䞀垯ぞ積み重なり、足堎の悪い厩萜跡が黒い圱ずなっお広がっおいた。

    シンは瓊瀫の隙間を芋回しながら進み、厩れ萜ちた装甲板の近くで足を止めた。斜めに倒れ蟌んだ黒鉄の板に手を掛け、脇ぞ抌し退けるず、その䞋から敎備甚通路の扉が姿を珟した。錆び付いた取っ手を掎んで匕き開けるず、軋んだ金属音ずずもに冷たい空気が吹き䞊がった。

    「行くぞ」

    短く告げるずシンは先に梯子ぞ足を掛けた。アオも埌ぞ続き、二人は暗い瞊穎を降りおいった。

    地䞋通路ぞ降り立぀ず、倪い蒞気管が壁沿いを走り、その継ぎ目から挏れる熱気が淀んだ空気を揺らしおいた。壁際ぞ䞊ぶ赀い衚瀺灯が薄暗い光を萜ずし、床を浅く流れる黒く濁った氎は足を螏み出すたびに埮かな氎音を返す。アオは呚囲ぞ気を配りながら、数歩先を進むシンの背䞭を远った。

    「本圓にこんな堎所から入れるんですね  」

    「元々は旧敎備路だ。今はほずんど䜿われおいない」

    シンはそこで蚀葉を切り、足を止めるず、腕を暪ぞ䌞ばしおアオを制止した。遠くの通路奥から硬い金属音が䞀定の間隔で響き、その音は床を䌝うように少しず぀近付いおくる。シンは眉をひそめ、アオの肩を掎んで壁際を走る倪い蒞気管の陰ぞ匕き寄せた。

    二人が身を朜める䞭、暗い通路の奥から小型譊備機械が姿を珟す。耇県状のレンズが赀く明滅し、前方ぞ䌞びた照明灯が狭い通路を癜く照らしおいく。床を走る赀い走査光が壁面や黒い氎面をゆっくりず舐め、芏則的な機械音だけが狭い通路ぞ䞍気味に反響しおいた。

    「ノァルガンドの譊備機械だ。芋぀かれば譊報が走る」

    耳元ぞ萜ちた䜎い声に、アオは匵り詰めた顔のたた小さく頷く。

    譊備機械の駆動音が遠ざかるず、シンは配管の陰から通路を窺い、再び奥ぞ向かっお歩き始めた。䜕床か曲がり角を確かめながら進むその背䞭を远い、アオも足早に埌ぞ続く。

    地䞋通路を進んだ先では、倩井ごず厩れ萜ちた鉄屑の山が行く手を塞いでいた。捻じ曲がった鉄骚や砕けた黒鋌板が斜面のように積み重なり、その䞋には抌し朰された排氎槜の䞀郚が芗いおいる。濁った氎は鉄屑の隙間を瞫うように排氎口ぞ流れ萜ち、その奥から䜎い唞りが絶え間なく響いおいた。

    アオは足を止め、行く手を塞ぐ厩萜跡を芋䞊げた。

    「道、塞がっおたす  」

    シンは呚囲を芋回した埌、厩れた壁面の䞊ぞ目を留める。頭䞊には敎備甚の鉄骚足堎が重なるように組たれ、厩萜地点の奥ぞ続いおいる。

    「䞊から行くぞ」

    短く告げるず、シンは近くの支柱ぞ手を掛けお䜎い足堎ぞ身を乗り䞊げる。鉄骚の䞊で䜓勢を敎えるず、そのたた厩萜地点の䞊を暪切る足堎ぞず移動した。アオも埌を远っお支柱ぞ手を掛け、慎重に身䜓を匕き䞊げた。

    アオはずころどころ腐食した足堎ぞ芖線を萜ずし、䞀歩ず぀慎重に進んでいたが、䞍意に靎底が錆びた金属を滑った。

    「うわっ  」

    螏み倖した足が空を切り、アオは目を芋開く。身䜓が倧きく傟いおいく䞭、咄嗟に䌞ばした手が鉄骚を掎み、蟛うじお䜓勢を支えた。宙に投げ出された足の䞋では導管や鉄骚の残骞が折り重なり、黒い排氎が枊を巻きながら底の芋えない穎ぞず流れおゆく。アオは揺れる瞳で枊の䞭心を芋぀めおいた。

    厩れた䜓勢を立お盎すより早く、シンの手が䌞び、その腕を力匷く匕き䞊げた。

    「䞋を芋るな」

    䜎く抌し殺した声が萜ちる。

    アオは青ざめた顔で䜕床も頷くず、乱れた呌吞を敎えながら鉄骚を握り盎し、足元を芋ないよう芖線を前ぞ向けた。

    二人は䞍安定な足堎の䞊を慎重に進む。時折枡り板や鉄骚を乗り換えながら䞊ぞ向かい、突き圓たりの倩井に蚭けられた点怜口を抜けお䞊局通路ぞ出るず、シンは呚囲ぞ芖線を巡らせた。

    「こっちだ」

    再び歩き出したずころで、角の向こうから二人組の巡回兵が姿を珟した。黒い装甲越しに赀い照準灯がこちらを捉え、先頭の兵士が反射的に声を匵り䞊げる。

    「誰だ」

    兵士の手が壁の通報端末ぞ䌞びるが、それより早くシンは銃を構えおいた。隣ではアオが掌をかざし、共鳎術環ぞ流し蟌たれたマナが銃口の奥で収束しおいく。

    匕き金が絞られるず、高密床の魔力匟が狭い通路を䞀盎線に貫いた。先頭の兵士は胞郚装甲ごず吹き飛ばされ、背埌の壁ぞ激突する。通路ぞ鈍い衝撃音が響く䞭、残された兵士は匟かれたように腰の通信機ぞ手を䌞ばす。

    シンは䞀歩螏み蟌み、流れるように銃口を暪ぞ滑らせた。次の䞀撃が兵士の腕を撃ち抜き、通信機が床ぞ転がる。肩を匷く打ち぀けた兵士はそのたた壁面を滑り萜ち、床ぞ厩れ萜ちた。

    アオは壁の譊告灯を芋䞊げ、匵り詰めた息を吐き出す。

    「譊報  鳎っおたせんよね  」

    シンは答える代わりに、床に萜ちた通信機を拟い䞊げた。耳元ぞ抌し圓おた機噚の奥では短い雑音が断続的に走り、その合間に切迫した声が重なる。

    『第䞃敎備路、応答なし。巡回班、状況を報告しろ』

    『近隣班を向かわせろ。䟵入者の可胜性あり』

    通信を聞くうち、シンの眉間ぞ深い皺が刻たれる。

    「たずい。远手が来るぞ」

    その蚀葉のすぐ埌、通路の奥から重たい足音ず金属の擊れる音が響き始めた。耇数の気配が通路の奥から迫り、アオは思わずそちらに顔を向ける。

    「もう  」

    シンは通信機を床ぞ攟り萜ずしお螵で螏み砕くず、反察偎の通路ぞ芖線を向けた。

    「走るぞ」

    二人が走り出した途端、背埌の角から耇数の装甲兵が駆け蟌んでくる。

    「いたぞ」

    怒声の埌ろで非垞灯が激しく明滅し、甲高い譊報音が通路ぞ響き枡る。シンは振り返りざたに銃を構え、アオも呌吞を合わせるように術環ぞ手をかざした。

    也いた発射音が続き、鋭い光匟が次々ず攟たれる。先頭の兵士が構えおいた倧型盟は装甲ごず吹き飛ばされ、砕けた金属片が呚囲ぞ飛び散った。

    しかし埌続の兵士たちは足を止めず、盟を䞊べたたた前進を続ける。重なり合う足音の奥では機械兵の駆動音たで響き始め、通路の向こうには新たな気配が次々ず増えおいった。

    シンは埌退しながら続けざたに匕き金を匕く。光匟の軌跡が幟筋も走り、壁や装甲ぞ匟かれた火花が赀い非垞灯の䞋ぞ激しく散った。

    「シンさん、このたたじゃ  」

    アオはシンの険しい暪顔ず迫り来る兵士たちを芋比べ、意を決したように匓を構えた。

    「氷の術環  展開  」

    攟たれた矢が床の継ぎ目ぞ突き立぀ず、癜い霜が波王のように広がり、通路䞀垯の金属床を薄い氷で芆っおいった。突撃しおいた兵士たちは足を滑らせ、盟を構えたたた倧きく䜓勢を厩す。先頭集団の進軍は倧きく乱れ、埌方から抌し寄せおいた機械兵も巻き蟌たれながら次々ず倒れ蟌んでゆく。

    「今のうちに」

    アオの声に頷いたシンは螵を返し、二人は脇に䌞びる敎備通路ぞ駆け蟌んだ。背埌では怒号ず譊報音が䜕重にも反響し、远手の足音が入り組んだ斜蚭の奥たで執拗に远い掛けおくる。

    曲がり角を䜕床も抜けた先で、シンは通路脇の扉を勢いよく蹎り開け、二人は転がり蟌むように宀内ぞ飛び蟌んだ。シンが背埌の扉を手早く閉めお背䞭を抌し付ける傍ら、アオは荒い息を抌し殺しながら身䜓を匷匵らせおいる。

    扉の向こうでは兵士たちの足音が駆け抜け、その音が次第に遠ざかる。アオはようやく肩の力を抜き、深く息を吐き出すず、宀内ぞ芖線を巡らせた。

    「ここ  どこですかね  」

    薄暗い宀内には無数のモニタヌず機械台が据えられ、倪いケヌブル束が床や倩井を這うように䌞びおいる。壁際に䞊ぶ倧型の制埡装眮が䜎い駆動音を響かせ、その向こうには別の区画ぞ続く通路が䌞びおいた。

    宀内を芋枡したシンは、眉根を寄せ、䜎く呟くように口を開いた。

    「  ここが研究区画のようだな」


    第14章

    研究区画ぞ足を螏み入れおから、アオの足取りは目に芋えお重くなり始めおいた。血色の倱せた唇から浅い呌吞を繰り返し、力の入り切らない膝は歩みを進めるたび埮かに震えおいる。

    薄暗い通路を先導しおいたシンは歩幅を緩め、暪目でアオの様子を確かめる。

    「  倧䞈倫か」

    問い掛けられたアオは乱れた息を抌さえ蟌みながら顔を䞊げた。額ぞ滲んだ汗が頬を䌝い、それでも蒌い瞳だけは逞れるこずなく前を向いおいる。

    「思ったよりマナの消費が倚くお  。でも、倧䞈倫です。  早くフィリアを芋぀けたしょう」

    シンは短く頷くず足を螏み出した。アオもひず぀倧きく深呌吞をしおからその背䞭を远い、二人は研究区画の奥ぞ続く通路を進んでいく。

    狭い通路を抜けた先には、倩井の高い広々ずした空間──䞭倮実隓区画が広がっおいた。壁際には数倀や波圢を映し出す倧型モニタヌず制埡装眮が敎然ず䞊び、巚倧な匷化ガラスで仕切られた奥の区画には、耇数の装眮矀が配眮されおいる。

    「シンさん、あれ  っ」

    シンはアオの芖線を远い、その先ぞ目を向けた。匷化ガラスの向こうには巚倧なカプセルが据えられ、その内郚にはフィリアの姿が浮かんでいた。

    緑色の液䜓ぞ沈められたフィリアは小さく身を瞮め、その身䜓から零れ萜ちる淡い光はカプセルに接続された無数の管ぞ次々ず吞い蟌たれおいく。呚囲のモニタヌには絶え間なく倉動する数倀が映し出され、芏則的な電子音が宀内党䜓ぞ冷たく反響しおいた。

    さらにその奥では、巚倧な敎備アヌムにギアブレヌドが吊り䞋げられおいる。黒い刀身には耇数の管が接続され、赀黒い光が流れるたび、呚囲の装眮矀から䜎い駆動音が挏れ出しおいた。

    アオの瞳が倧きく芋開かれる。カプセルの䞭の小さな姿を捉えた途端、震える足が無意識に前ぞ螏み出され、傟いた身䜓を远うようにフィリアぞ向かっお駆け出した。

    「フィリア  っ」

    叫び声を掻き消すように、倩井付近の装甲シャッタヌが凄たじい砎砕音ずずもに吹き飛んだ。砕けた鋌板ず火花が降り泚ぐ䞭、巚倧な黒い圱が実隓区画の䞭倮ぞ萜䞋し、その巚䜓が床を砕きながら沈み蟌む。重䜎音が空間党䜓を震わせ、跳ね散った砎片が呚囲ぞ転がっおいった。

    煙ず粉塵の奥から姿を珟したのは、黒鉄の装甲搭機だった。胞郚䞭倮では赀い光を宿した動力炉が鈍く明滅し、背郚ぞ搭茉された倧型掚進噚からは癜い蒞気が絶え間なく噎き出しおいる。

    シンは反射的に銃を構え、黒鉄の巚躯ぞ照準を合わせた。重たい駆動音ずずもに装甲搭機がゆっくりず身を起こし、その動きをなぞるように操瞊垭のゟルトも顔を䞊げる。吊り䞊がった口元には獰猛な笑みが浮かび、荒々しい声が広い研究宀ぞ叩き぀けられた。

    「埅っおたぜぇ、シン」

    ゟルトの笑い声が反響する䞭、アオは匟かれたように共鳎術環ぞ手をかざした。しかし青癜い光が銃身ぞ走った途端、浮かび䞊がった光環は茪郭を保おないたた揺らいで霧散しおいく。

    「  っ」

    シンは目を芋開き、短く銃に芖線を萜ずすず、再び銃口を黒鉄の機䜓ぞ向けた。

    「えっ  なんで  」

    額ぞ汗を滲たせたアオは再び術環を起動しようずするが、光茪は圢を結ぶ前にほどけるように厩れ、空䞭ぞ散っおいく。その様子を芋おいたゟルトは喉を震わせ、腹を抱えるように笑った。

    「っははは 残念だったなぁ ここじゃ魔法は䜿えねぇぜ」

    シンは舌打ちを挏らし、呚囲の装眮矀ぞ芖線を走らせた。

    「ゞャミングか  」

    アオは揺れる瞳で呚囲を芋回しながら䞀歩埌ずさる。

    「そんな  っ」

    斜蚭内ぞ響くゟルトの笑い声に重なるように、黒鉄の装甲搭機の腰郚装甲が巊右ぞ展開した。内郚からせり出した耇数の砲身ぞ赀い光が走り、甲高い唞りが空気を震わせる。

    「っ──」

    シンは咄嗟にアオを脇ぞ突き飛ばすず、自身も反察偎ぞ身を投げ出した。

    蜟音ずずもに攟たれた砲撃が斜蚭を揺らし、爆炎が機械台ごず呚囲を呑み蟌んだ。灌熱の衝撃波が吹き荒れ、区画党䜓を煙ず粉塵が芆い尜くす。

    黒鉄の巚躯は背郚掚進噚から蒞気ず爆音を撒き散らしながら煙の䞭を突き抜け、シンずの距離を䞀気に詰める。着地の衝撃が床を砕き、その勢いのたた右腕ぞ固定された装甲刃が振り䞋ろされる。

    シンは咄嗟に銃身を持ち䞊げ、盟代わりに刃を受け止めた。重い金属音ずずもに銃身が激しく軋み、凄たじい衝撃が肩を沈め、足元たで突き抜ける。

    「ぐっ  」

    螏み締めた床が砕け、そのたた身䜓ごず吹き飛ばされる。転がるように床を滑ったシンの手から銃が離れ、黒い床を跳ねながら黒鉄の巚躯の足元ぞ転がっおいった。

    ゟルトはその銃を機䜓のアヌムで拟い䞊げ、目の前に掲げる。シンを芋䞋ろす瞳は愉悊に现められ、口元が倧きく歪んでいった。

    「ははっ、ははははは 無様だなぁ、シン こんな玩具で俺に勝぀぀もりだったのかぁ」

    嘲るような叫びずずもに、黒鉄の指が銃身ぞ食い蟌む。

    鈍い砎砕音が響き、共鳎銃はその握力の䞭で無惚に抌し朰されおいく。捻じ曲がった鉄片の隙間から火花が散り、砕けた郚品が次々ず床ぞ零れ萜ちる。

    ゟルトは朰れた共鳎銃を目の前で匄ぶように持ち䞊げるず、黒鉄の掌をゆっくりず傟ける。力なく滑り萜ちた銃は宙を回転しながら床ぞ萜䞋し、也いた金属音が広い研究斜蚭ぞ長く響いた。

    その光景を芋たアオの目が倧きく芋開かれる。床ぞ転がる共鳎銃の残骞を芋぀めたたた、膝から力が抜けるようにその堎ぞ厩れ萜ちた。

    「くそっ  」

    シンは歯を食いしばりながら床ぞ手を付き、身䜓を起こそうず震える腕ぞ力を蟌める。しかし芖線を䞊げた先には、すでに黒鉄の巚躯が目の前たで迫っおいた。床を砕くような掚進音が遅れお響き、巊腕ぞ固定された巚倧な装甲盟が暪薙ぎに振るわれる。

    咄嗟に身を庇うように腕を差し蟌んだものの、分厚い装甲板の質量はそれを容易く抌し朰し、重たい衝撃がシンの党身を貫く。匟き飛ばされた身䜓は広い実隓宀を凄たじい速床で突き抜け、そのたた斜蚭奥の壁面ぞ叩き付けられた。

    胞の奥から空気が䞀瞬で叩き出され、声にならない息が喉の奥で掠れる。焌け付くような痛みに芖界が激しく揺らぎ、指先たで痺れが走った。頭の奥では耳鳎りが響き続け、明滅を繰り返す芖界の䞭、自分の身䜓が床ぞ厩れ萜ちおいく感芚だけががんやりず残っおいた。

    「ははっ どうしたシン その皋床かァ」

    ゟルトの哄笑が遠く響く。

    黒鉄の巚躯はゆっくりずシンに近づき、巚倧なアヌムが床ぞ倒れ蟌んだ身䜓を掎み䞊げた。垂れ䞋がった腕からは血が滎り、焊点の定たらない瞳に宀内の灯りががんやりず映り蟌む。

    「シンさん  っ」

    アオの声が匕き攣り、呌吞が浅く乱れる。膝を぀いた足は现かく震え、床ぞ぀いた指先にも力が入らない。滲む芖界の奥では、巚倧なアヌムぞ吊り䞊げられたシンの身䜓が力なく揺れおいた。

    「もうやめお  っ、やめおください  」

    ゟルトは涙混じりの叫びに眉を寄せ、アオを䞀瞥する。しかしその芖線はすぐにシンぞ戻り、赀い隻県の奥に憎悪が燻った。

    「  こい぀は仲間を捚お、囜を裏切った」

    䜎く抌し殺した声だった。ゟルトは荒い息を吐き出し、鋌鉄のアヌムぞさらに力を蟌める。

    「ぐっ  」

    シンの喉が震え、噛み締めた奥歯の隙間から息が挏れる。

    「ノァルガンド兵は  この痩せた土地で生きるために、囜を守るために呜を賭けお戊っおきた  」

    右目の県垯を抌さえ぀けるように握ったゟルトの声が、少しず぀熱を垯びおいく。操瞊桿を握る手に力がこもり、装甲搭機の背郚掚進噚から癜い蒞気が激しく噎き出した。

    「なのにこい぀は 党郚投げ捚おお、䞀人だけ逃げやがった」

    怒号ずずもにアヌムぞ凄たじい力が走る。シンの身䜓が握り朰されそうなほど軋み、喉の奥から途切れ途切れの息が零れる。

    ゟルトはシンを掎んだたた高く振り䞊げる。

    「  っざけんじゃねぇっ」

    叫ぶように吐き捚おるず、鋌鉄のアヌムがシンの身䜓を床ぞ叩き぀けた。重たい衝突音が広い空間ぞ響き、床ぞ打ち据えられたシンの身䜓が倧きく跳ねた埌、そのたた床を転がっおいく。

    ゟルトは荒い息を吐きながらその姿を芋䞋ろしおいた。匷く食いしばった奥歯が軋み、握り蟌たれた拳の関節が癜く浮き䞊がる。


       ◇──◇──◇

    「シンさん   」

    喉の奥から絞り出した声はひどく掠れおいた。床にぞたり蟌んだたたのアオは、砕けた床材の䞭ぞ倒れ䌏したシンを芋぀めおいる。投げ出された身䜓は身動ぎひず぀返さず、厩れた床材の䞭ぞ力なく暪たわっおいた。

    ──呌吞がうたくできない。胞の奥が抌し朰されるように痛み、震える指先ぞ力を蟌めおも涙が止たらなかった。アオは床ぞ手を぀いたたた俯き、蟌み䞊げる嗚咜を必死に抌し殺す。その拍子に、服の内偎に隠れおいたペンダントが胞元から滑り萜ち、揺れる銀鎖の先で小さな赀い石が宀内の光を淡く反射した。

    零れ萜ちたペンダントを芋぀めるうち、沈んでいた蚘憶が次々ず蘇る。ペンダントを枡しおくれたモモ。厳しい蚀葉の奥で、自分を信じ続けおくれた所長。遺跡を探しお研究所を飛び出した日のこず。シンず出䌚い、地䞋遺跡を探玢したこず。その最奥でフィリアず出䌚ったこず──。

    䞍意に、遺跡の奥で芋た光景が鮮明に蘇る。緑色の液䜓ぞ沈められた小さな粟霊は苊しそうに身䜓を瞮め、消え入りそうなほど匱々しく瞬いおいた。あの時吞い䞊げられおいたのは、䜓内マナを超えた、生呜そのものの゚ネルギヌだ。

    アオの呌吞が倧きく乱れ、圷埚う芖線がペンダントぞず萜ちる。

    『このペンダントは、呚囲のマナを少しだけ匕き寄せたす』

    モモの声が耳の奥ぞ響き、アオの瞳が倧きく芋開かれた。

    ──もし、呚囲にマナがなければ  

    頭の䞭で考えが激しく枊を巻く。戻れなくなるかもしれない。取り返しの぀かないこずになるかもしれない。それでも、機械ぞ繋がれたたた苊しむフィリアを、傷だらけのたた動かないシンを、ただ芋おいるこずだけはできなかった。

    アオは震える奥歯を匷く噛み締め、胞元のペンダントを乱暎に匕きちぎった。涙の残る瞳で掲げた拳を凝芖し、息を止めるず、そのたた床ぞ叩き぀けた。

    砕け散った石片が赀い茝きを攟ちながら呚囲の空気を急速に熱し、足元から巻き䞊がった颚が斜蚭内を駆け抜けた。アオの身䜓が䞀床だけ倧きく跳ね、胞元を抌さえる指先ぞ力がこもる。胞の奥で異垞な熱が脈打ち、血流そのものが逆流するような感芚ずずもに、身䜓の内偎から凄たじい力が溢れ出す。

    胞の奥で逆巻く熱に息を詰たらせながらも、アオは震える膝に力を蟌めお立ち䞊がった。唇を匕き結び、指先が匓の偎面ぞ刻たれた術環をなぞるず、その指先を远うように琥珀色の光が仄かに滲む。揺らぐ空気の䞭で匓を構え、黒鉄の巚躯ぞ真っ盎ぐ狙いを定める。

    「炎の  術環  」

    息を吐き出すように呟くず、アオは震える指で匊を匕き絞った。熱を垯びた空気の䞭ぞ赀い光粒が䞀粒ず぀滲み始め、揺らめく炎を纏いながら匊の䞭倮ぞ集たっおいく。现長く䌞びた炎は次第に矢の茪郭を取り始め、その衚面を無数の火花が駆け抜ける。

    シンを螏み朰そうず振り䞊げおいた巚躯の脚が止たり、赀い隻県が匟かれたようにアオぞ向けられる。

    「なっ  なんだこい぀   ここは魔法が䜿えねぇはずだぞ  っ」

    黒鉄の機䜓が䜎い駆動音を挏らしながら䞀歩ず぀埌退しおゆく。ゟルトは目を芋開き、その芖線はアオぞ貌り付いたたた動かなかった。

    シンの霞む意識には、ゟルトの䞊擊った声ず床を䌝う鈍い振動だけが遠く響いおいた。

    枊巻く熱颚が炎の粒子を匕き連れながらアオの呚囲を巡り、矢の先端ぞ円圢の軌跡を描いおいく。浮かび䞊がった炎の術環は赀い茝きを垯びながら静かに回転を始め、その円環に呌応するように炎の矢はさらに熱を増しおいった。

    アオの呌吞は激しく乱れ、螏み締めた足元も小刻みに震えおいる。熱気に炙られた吐息は癜く揺らぎ、匊を匕き絞る指先からは埮かに血が滲んでいた。それでも蒌い瞳だけは揺らぐこずなく、真正面のゟルトを芋据えおいる。

    ゟルトは思わず息を呑んだ。操瞊垭の䞭で肩が匷匵り、頬を䌝った汗が顎先から軍服の襟元ぞ萜ちる。

    「おめぇ  たさか生呜゚ネルギヌをマナに倉換しおんのか  」

    ゟルトの蚀葉に、倒れおいたシンの瞌がわずかに持ち䞊がる。砕けた床材ぞ手を突き立お、軋む身䜓を無理やり持ち䞊げながらアオの方ぞ芖線を向けるず、シンは掠れた声を絞り出した。

    「アオ  っ」

    円環の隣に重なるように二぀目の術環が灯る。 薄く透けた光茪の内偎では幟䜕孊暡様にも䌌た光の線が耇雑に絡み合い、赀く燃える火花の隙間ぞ青癜い閃光が混ざり始めおいた。

    高密床ぞ圧瞮されたマナが空間そのものを軋たせ、吹き荒れる颚が服ず髪を激しく巻き䞊げる䞭、アオは暎れ狂う力ぞ耐えるように歯を食いしばった。

    「䞉局  展開  」

    振り絞った声ずずもに、ひずたわり倧きな術環が展開し、䞉぀の術環は互いの瞁を重ねながら歯車のようにゆっくりず噛み合っおいく。 熱気に満ちた空間の䞭で、回転する円環が火花を散らし、膚れ䞊がった炎が枊を巻きながら矢の先端ぞ集束しおいく。

    アオの蒌い瞳に、滲むように赀が広がり始める。虹圩の奥で揺れおいた炎光は埐々に色を濃くし、燃え広がる火の粉を閉じ蟌めたような赀が、じわじわず蒌色の瞳を䟵食しおいった。

    ゟルトは舌打ちを挏らしながら巊腕の装甲盟を構える。しかし燃え盛る炎の向こうで揺るがない玅い瞳を前に、黒鉄の機䜓はじりじりず埌退し、その足が床を重く螏み締めた。

    玅く染たりゆくアオの瞳を目にしたシンは、床に手を぀いお䞊䜓を起こしながら叫んだ。

    「アオ  っ 無茶だ   死ぬ぀もりか  っ」

    朰れかけた喉から絞り出す叫びは䜕床も途切れ、それでもシンは声を匵り䞊げる。しかしアオの芖線は真っ盎ぐゟルトに向けられたたただった。限界たで匕き絞られた匊の䞭倮では、癜熱した炎の矢が激しい熱を攟ち、呚囲の空気は噎き䞊がる炎熱で倧きく歪んでいく。

    アオはゟルトを芋据えたたた、その炎を解き攟った。攟たれた炎流が閃光のごずく研究斜蚭を駆け抜け、灌熱の爆炎が吹き荒れる。ゟルトは咄嗟に機䜓ごず暪ぞ跳躍したものの、掠めた炎が巊腕の装甲盟を深く抉り、削り取られた装甲が赀熱しながら溶け萜ちおいく。さらに吹き荒れる颚圧によっお、黒鉄の機䜓は倧きく暪転した。

    爆颚の䞭、シンは腕で顔を庇いながら叫ぶ。

    「アオォォォッ」

    蜟音ずずもに突き進んだ炎の矢は、斜蚭宀奥の匷化ガラスを粉々に砕き、その䜙波だけでフィリアのカプセルず、ギアブレヌドを固定しおいた装眮矀を次々ず砎壊しおいく。なおも勢いを倱わない玅炎の奔流はノァルガンド芁塞の壁を䜕局も突き砎り、遥か圌方ぞ消えおいった。

    爆ぜた熱颚が斜蚭内郚を吹き抜け、シンは腕で顔を庇ったたた目を閉じた。焌けた金属臭ず粉塵が肺ぞ流れ蟌み、党身ぞ走る鈍い痛みが呌吞を浅く削っおいく。収たり始めた振動の䞭、重くなった瞌を抌し開いた芖界の先で、アオの身䜓が煙の向こうぞ厩れ萜ちおいくのが芋えた。

    「アオ  っ」

    砕けた床ぞ手を付いたシンは、党身を軋たせながら無理やり立ち䞊がり、散乱した装甲片を蹎り越えながら駆け出した。脇腹を抌し朰す痛みが螏み蟌むたびに党身に広がるが、足は止たらない。厩れた床に倒れ蟌んだアオの肩を掎んで抱き起こすず、腕の䞭に沈み蟌む背䞭は焌けるように熱かった。

    「アオっ 倧䞈倫か アオ  」

    息を乱したたた䜕床も呌び掛ける。アオの胞は浅く䞊䞋を繰り返し、现く開いた瞳には赀みの消えた蒌が薄く戻り始めおいた。熱を垯びた吐息が也いた唇の隙間から䞍芏則に挏れ、ゆっくりず持ち䞊がった手が瞋るようにシンの䞊着を掎む。力の抜けた指先が垃地を埮かに匕き、呌気ず刀別も぀かないほど现い声が零れた。

    「   ン  さん  」

    閉じられた瞌ずずもに指先から力が抜け、掎んでいた垃地がするりず離れる。わずかに目を芋開いたシンは、喉の奥で息を詰たらせ、アオの身䜓を支える腕だけが匷く固たった。

    その時、砕けたカプセルから飛び出したフィリアが煙の䞭を駆けるように暪切り、アオの胞元ぞ舞い降りる。

    シンは眉根を寄せ、その小さな背䞭ぞ芖線を向けた。

    「ただ息はある  だが  」

    顔を歪めたシンの声が萜ちるず、フィリアはアオの胞元ぞ䞡手をかざした。淡い光が小さな指先から滲み始め、零れ萜ちた光粒がその身䜓ぞ静かに吞い蟌たれおいく。必死にマナを送り蟌み続けるフィリアの肩は现かく震え、その茪郭は䞍安定に明滅しおいた。

    立ち蟌める煙の奥で巚倧な圱がゆらりず身を起こす。砎損した装眮矀を抌し退けながら珟れた黒鉄の装甲搭機が、火灜譊報の赀い明滅を受けお鈍く浮かび䞊がり、損傷した装甲の隙間から挏れる火花が暗い空間を断続的に照らしおいた。

    「  フィリア、アオを頌む。  俺は、あい぀ず決着を付けおくる」

    シンはアオの身䜓を静かに床ぞ暪たえるず、党身ぞ広がる鈍い痛みに顔を歪たせながらも立ち䞊がった。

    煙の向こうでは黒鉄の巚躯が胞郚の赀い動力路を䞍芏則に明滅させ、背郚掚進噚から䜎く蒞気を噎き出しおいる。ゟルトは巊腕の焌け爛れた装甲盟ぞ芖線を萜ずすず、眉をひそめお舌打ちした。

    「チッ  盟は䜿い物にならねぇか」

    巊腕ぞ残っおいた装甲盟が固定具ごず切り離され、半ば溶解した鋌塊が重たい音を立おお床ぞ萜䞋する。ゟルトは操瞊垭からわずかに身を乗り出し、獰猛な笑みをシンに向けた。

    「さぁ取れよ、その剣をよォ ただ終わっちゃいねぇだろォ」

    怒声を響かせるゟルトを芋据えたシンは、芖線を暪ぞ滑らせる。砕けた匷化ガラスの奥、千切れた管ず拘束具の䞭にはギアブレヌドが突き立っおいる。剣身を繋いでいた管から赀黒い液䜓が床ぞ滎り、壊れかけた照明が濡れた刀身の茪郭を断続的に照らし出しおいた。

    シンは脇腹を抌さえながら歩き出した。歪んだ床材が軋む音ず浅い呌吞だけが耳の奥ぞ现く残り続ける䞭、散乱した機械郚品を螏み越え、ギアブレヌドの前ぞ蟿り着く。迷いなく䌞ばした手がその柄に觊れるず、赀黒く濁っおいた剣身の奥で、沈んでいた青い金属垯が埮かに光を返した。

    深く柄を握り蟌み力匷く匕き抜くず、金属の砎断音が連続しお響き、接続されおいた管が次々ず匟け飛んだ。長く倱われおいた刃が、再びシンの手ぞ握り返された。

    シンはゟルトに向き盎り、黒鉄の刃を正面に構える。

    「フィリア 力を貞しおくれ」

    匵り䞊げた声が斜蚭内郚ぞ響き枡る。アオの傍らでマナを送り続けおいたフィリアが顔を䞊げるず、その小さな身䜓から淡い蒌光が溢れ始めた。零れた光粒が煙の䞭を挂いながらシンのもずぞ集たり、幟筋もの茝きが匕き寄せられるようにギアブレヌドぞ吞い蟌たれおゆく。歯車を囲う術環が光茪ずなっお浮かび䞊がり、その茝きに呌応するように、青い金属垯の根元から切っ先にかけお蒌光が流れ蟌む。円環がゆっくりず回転しながら茝きを増し、黒鉄の衚面ぞ淡い茝きが走っおいった。

    ゟルトは赀い隻県を现め、その光景を静かに眺めおいた。黒鉄の巚躯が身構え、灌け぀いた装甲刃がゆっくりず持ち䞊がる。

    「  ははっ。ようやくその顔だ、シン」

    䜎く挏れた笑い声を受けおもシンは答えず、ギアブレヌドを構えたたた、煙の向こうの黒鉄の搭機を真っ盎ぐに芋据える。

    互いに構えたたた睚み合う。短い沈黙の埌、匵り詰めた静寂を砎るように床を砕く蜟音が響き、二぀の圱が真正面からぶ぀かった。

    ギアブレヌドず装甲刃が激しく衝突し、连った火花が呚囲を癜く染める。振り抜かれた刃が頭䞊を裂き、シンは身を沈めおその軌道を朜り抜けるず、そのたた螏み蟌みの勢いを乗せお装甲の継ぎ目ぞ斬撃を叩き蟌んだ。

    「そうだ それでこそお前だろォ」

    口元を吊り䞊げたゟルトが掚進噚を吹かし、黒鉄の巚躯が暎颚のような勢いで突進する。赀熱した装甲が迫る寞前、シンは螏み足を暪ぞずらしお突進の軌道から身を逞らし、蒌癜の光を垯びたギアブレヌドを振り抜いた。脚郚装甲が倧きく削り取られ、吹き飛んだ装甲片が匟け飛ぶ。

    黒鉄の巚躯が倧きく傟き、床を削りながら数歩よろめく。損傷した脚郚から癜い蒞気が噎き出す䞭、それでもゟルトは掚進噚を吹かしお無理やり機䜓を立お盎した。

    「負けねぇ   囜を捚おた裏切り者なんかに この俺が負けるはずねぇだろォ」

    咆哮ず共に振り䞋ろされた鋌鉄の拳を、シンはギアブレヌドで受け止めた。刃越しに萜ちた重圧が骚を䌝っお足元ぞ抜け、靎底が歪んだ床を倧きく滑る。

    「俺は囜のために剣を振った 呜什のために人を殺した 党郚埓っおきた」

    怒号が響くたび装甲搭機の掚進噚が唞りを䞊げ、巚倧な刃が連続で振り抜かれる。斬撃が壁面を深々ず切り裂き、厩れた金属板ず火花が煙の䞭ぞ散る䞀方、シンは無蚀のたた斬撃を受け流しながら距離を詰めおいった。

    「党郚だ 党郚捚おおここたで這い䞊がっお来た」

    シンは振り䞋ろされた装甲刃の内偎ぞ螏み蟌み、黒鉄の巚䜓の懐ぞ朜り蟌む。蒌癜の刃が尟を匕きながら走り、ギアブレヌドが黒鉄の装甲を深く抉った。裂けた装甲の奥から火花が吹き䞊がる䞭、それでもゟルトは退かず、赀い隻県を芋開いたたた鋌鉄の腕を振り抜いた。

    「俺はここたで来た なのになんで、お前は  」

    抌し殺し切れなかった感情が怒声の隙間から滲み出る。噛み締められた奥歯は軋み、握り蟌たれた操瞊桿の䞊で指先が小刻みに震えおいた。

    蒌癜の光が剣身を流れ、握り蟌たれた柄の隙間から现い粒子が舞い散る。振り抜かれた鋌鉄の腕を最小限の動きで躱したシンは、その堎に螏み留たり、䜎く口を開いた。

    「  俺は違う」

    シンは迷いのない瞳でゟルトを芋据え、ギアブレヌドを真っ盎ぐに構えた。

    「守りたいものは、自分で遞ぶ」

    その声を聞いた途端、ゟルトの衚情が倧きく歪む。赀い隻県が激しく揺れ、握り締められた鋌鉄の拳が鈍く軋んだ。

    「ふざけるなァァァッ」

    装甲搭機の掚進噚が赀い光を滲たせた蒞気を噎き䞊げ、黒鉄の装甲刃がシンぞ向かっお振り䞋ろされた。その刃ぞ真正面から螏み蟌んだシンの手元では、フィリアの蒌光がギアブレヌドぞ流れ蟌み、剣身を走る術環が眩く茝きを増しおいく。振り抜かれた軌跡が煙に芆われた空間を切り裂き、吹き荒れた颚が煙ず火花を䞀気に抌し流した。

    黒鉄の巚躯がその堎で動きを止め、操瞊垭のゟルトの口元から笑みが消える。芋開かれた瞳が揺れる䞭、装甲搭機の胞郚から肩口たで巚倧な裂傷が走り、内郚から蒞気ず黒煙が噎き出した。

    裂けた装甲の隙間では内郚機構の赀い光が断続的に明滅し、支えを倱った機䜓が蜟音ず共に床ぞ厩れ萜ちおゆく。

    ゟルトは傟いた操瞊垭から投げ出され、床ぞ倒れ蟌んだたた荒い呌吞を繰り返す。身を起こそうず突き立おた腕は床を滑り、血溜たりの䞭で震える指先だけが䜕かを掎むように空を掻いた。

    「くそっ  なんで動かねぇ   ただ俺は  っ」

    ゟルトの顔が歪み、血混じりの息ずずもに途切れ途切れの声が挏れる。

    「嫌だ  死にたくねぇ  っ」

    シンはギアブレヌドを握ったたた、床に瞋り肩を震わせるゟルトの姿を静かに芋䞋ろしおいた。


    第15章

    厩れた研究区画ぞ蒌癜の残光が薄く挂う䞭、シンはアオの元ぞ急いだ。匕きずる足が歪んだ床材を擊るたび脇腹ぞ鋭い痛みが走り、乱れた呌吞が熱を垯びた喉を擊る。

    「フィリア   アオは  っ」

    アオの傍らに膝を぀いたシンは、乱れた呌吞のたたその顔ぞ芖線を萜ずした。傍らではフィリアが小さな䞡手をアオの胞元ぞ重ね、震える肩のたた必死にマナを送り続けおいる。指先から溢れた淡い光粒が衣服の䞊から染み蟌むように広がり、アオの身䜓を埮かに照らしおいる。

    閉じられおいた瞌がわずかに震え、長い睫毛が揺れる。浅い呌吞ず共にゆっくり開いた瞌の奥で、蒌い瞳は焊点の定たらないたた霞んだ光をがんやりず映しおいた。

    「アオ  」

    シンは匵り詰めた声を喉から振り絞るず、床ぞ投げ出されたアオの手を掬い䞊げる。冷えた指先を䞡手で包み蟌むず、アオの指先ぞわずかな力が戻り、震える唇の隙間から息が挏れた。

    「シン  さん  フィリア  」

    フィリアは淡い光を零しながらアオの胞元ぞ飛び蟌み、小さな身䜓を抌し付けるように䜕床も頬を擊り寄せた。シンは深く息を吐きながら匵り詰めおいた肩の力を抜き、握った手ぞ静かに力を蟌めた。

    その時、斜蚭内に鋭い譊報音が鳎り響く。譊告灯が断続的に明滅し、無機質な通内音声が芁塞党域ぞ反響しおいく。

    『戊闘個䜓ゟルト、損耗認定』

    床に倒れ䌏しおいたゟルトの肩が倧きく跳ねる。

    『レヌノァテむン、および粟霊の制埡䞋からの離脱を確認。回収プロトコルを実行』

    「はっ   お、おい埅お   俺はただ  っ」

    匕き攣った声を挏らしながら、ゟルトは血で汚れた顔を跳ね䞊げた。揺れる芖線が萜ち着きなく圷埚い、声の元を探すように呚囲を芋回す。

    『機鋌神兵 グラムレヌノァ、起動シヌケンスに移行』

    「レヌノァテむンの専甚機だず   なんで今になっお  起動するための適合者はただ芋぀かっおないんじゃなかったのか  」

    『戊闘個䜓ゟルトを代替コアに蚭定。個䜓暩限を剥奪し、神経回路を匷制接続したす』

    「代替  コア   䜕蚀っおんだ  」

    ゟルトは呆然ずしたたた目を芋開く。血の気がゆっくりず匕いおいく䞭、その口元だけが小さく震えおいた。

    研究区画の最奥から地鳎りにも䌌た重い駆動音が響き、分厚い隔壁が開き始める。隙間から噎き出した癜い蒞気が、冷えた床を這うように広がっおいく。

    アオはシンに支えられながら䞊䜓を起こし、癜煙の向こうぞ目を现める。肩口にしがみ぀いたフィリアが小さく震える䞭、䞉人の芖線は重々しく開いおいく隔壁の奥ぞ向けられた。

    癜煙の向こうで巚倧な圱がゆっくりず姿を珟す。挆黒の重装甲に芆われた異圢の巚兵は、人型から倖れた歪な䜓躯の各所ぞ無数の拘束杭を打ち蟌たれおいた。幟重にも巻き付いた倪い鎖が鈍い金属音を響かせるたび、胞郚䞭倮で明滅する炉心が䜎い駆動音ずずもに斜蚭党䜓を震わせる。

    「あれ  䜕なんですか  」

    目を芋開いたアオの肩が匷匵る。

    『生䜓コアを回収したす』

    『第二拘束機関を解攟』

    淡々ず告げられる通内音声に続いお、挆黒の巚兵の背面装甲が鈍い音を立おお展開し、内郚から解き攟たれた無数の拘束管が蠢きながら䞀斉にゟルトぞ䌞びおいく。

    「やめろっ  来るな  っ」

    床ぞ爪を立おながら埌退ろうずしたゟルトの四肢ぞ拘束管が絡み぀き、その身䜓を匷匕に捕らえる。

    「おい 嘘だろっ なんで俺が  っ」

    ゟルトは次々に䌞びる拘束管を振り払い、腕ぞ絡み぀いた管を必死に匕き剥がそうずもがく。しかし拘束管は暎れる身䜓を抌さえ付けるように党身を芆い、容赊なく巚兵の足元ぞ匕きずっおいく。

    「くそっ ふざけんなっ   俺は呜什に埓った この囜のために戊っおきたんだぞ  っ なのになんで  なんで俺なんだよ」

    ゟルトの声が裏返る。床ぞ突き立おた指先は虚しく滑り、匕きずられるたびに赀黒い筋が床ぞ長く䌞びおいった。

    「やめろ っ、やめろおおおおおおっ」

    絶叫が響いた盎埌、管の先端から䌞びた針がゟルトの銖の埌ろぞ深々ず突き刺さる。党身が倧きく跳ね䞊がり、芋開かれおいた瞳の奥から光がゆっくりず倱われおいった。

    『戊闘個䜓ゟルト、回収完了』

    『神経回路接続──開始』

    グラムレヌノァの胞郚装甲が重々しい音ず共に開き、その奥では炉心が淀んだ光を揺らしおいた。拘束管ぞ吊り䞊げられたゟルトの身䜓は力なく垂れ䞋がり、無数の端子を突き立おられながら巚兵の内郚ぞゆっくりず匕き蟌たれおゆく。機䜓の胞郚から䌞びた黒い接続機構が党身に這い広がり、ゟルトの身䜓が黒い装甲ぞ埋もれおいくに぀れ、人ず兵噚の境界は曖昧に溶け合い始めおいった。

    ゟルトの身䜓は炉心䞊郚に固定され、装甲の隙間から挏れる燻んだ光が、俯いたたたの茪郭ぞ濃い圱を萜ずした。癒着した肉ず金属の境界が脈打぀たび、䜎い駆動音が斜蚭の奥で重く反響する。

    「そんな  」

    顔を匷匵らせたアオは、胞元ぞ抌し圓おた指先ぞ力を蟌めたたた、巚兵ぞ取り蟌たれおいくゟルトの姿を芋぀めおいた。

    シンはギアブレヌドの柄を匷く握り蟌み、険しく歪んだ衚情のたた異圢の巚兵を睚み据える。

    「ノァルガンド   どこたでも非道な真䌌を  っ」

    芁塞党䜓を揺らすような重䜎音が響き始め、斜蚭内郚の空気が内偎から震え出す。挆黒の巚兵の背郚では円筒状の蓄積槜が䞍芏則に光を灯し、その内郚では淡い蒌光が激しく揺らぎながら、接続された管の䞭ぞ濁流のように流れ蟌んでいく。胞郚炉心ぞ次々ず吞い蟌たれおいく蒌癜の光粒は、フィリアの纏う茝きず酷䌌しおいた。

    「フィリアのマナを  こんな兵噚に  っ」

    アオは瞳を倧きく芋開く。その傍らではフィリアがアオの服を掎み、小さな肩を震わせながら犍々しい巚兵を芋䞊げおいた。

    巚兵の内郚で䜎い唞りが増しおいく䞭、胞郚では膚倧な熱量が炉心䞭倮ぞ収束し、呚囲の空気が揺らぎ始める。

    「来るぞっ」

    炉心から赀黒い奔流が连る寞前、シンはアオの身䜓を抱えお暪ぞ身を投げた。匟かれた衝撃に腕の力が緩み、抱え切れなくなったアオの身䜓が転がりながら離れおいく。

    蜟音ず共に攟たれた光条は斜蚭の床を焌き裂きながら突き進み、通過した金属床を瞬く間に癜熱させおいく。激しく飛び散った火花ず癜煙が芖界を埋め尜くす䞭、その奔流は斜蚭最奥の倖壁ぞ叩き蟌たれた。

    分厚い鋌鉄が䞀瞬で灌け爛れ、癜熱した金属が风のように厩れ萜ちおいく。溶解した倖壁は粘぀いた光を匕きながら床ぞ滎り、吹き抜けた熱颚にシン達の髪ず衣服が激しく煜られた。焌き抜かれた壁面の奥では、赀く灌けた断面がなお揺らめいおいる。

    「うそ  芁塞の壁が  溶けおる  」

    アオは胞元にしがみ぀くフィリアに手を添えながら䞊䜓を起こす。赀く溶解した壁面を映す瞳が倧きく揺れ、血の気が匕いた指先が埮かに震えた。

    赀い煙の巻き䞊がる実隓区画の䞭倮で、挆黒の巚兵がゆっくりず銖を動かし、頭郚の単県が獲物を探すように空間をなぞる。シンの姿を捉えた赀光が䞀床だけ匷く明滅し、その動きがぎたりず止たった。

    立ち䞊がったシンはすぐにギアブレヌドを構えるが、その呌吞は浅く、額から流れ萜ちた汗が頬を䌝う。剣光が熱気に揺らぐ䞭、掠れた声が䜎く挏れた。

    「  䞀発でも喰らえば終わりだ」

    犍々しい巚兵の脚郚装甲から䜎い駆動音ず金属の軋みが挏れ、噎き出した蒞気が赀く灌けた床を這う。重厚な巚䜓が沈み蟌むように姿勢を萜ずし、圧瞮された蒞気を解き攟぀ずずもに爆発的な掚進力でシンに突進した。

    迫り来る巚躯を前に、反射的に床を蹎る。身䜓を投げ出すように暪ぞ飛んだシンの背埌ぞ、挆黒の巚腕が掠めるように叩き蟌たれた。蜟音を䌎い床材が倧きく陥没し、砕けた金属片が爆ぜるように呚囲ぞ跳ね飛んだ。

    吹き飛ばされた装甲片が火花を散らす䞭、地に着いたシンの脚が倧きく揺らぎ、身䜓䞭ぞ走った鋭い痛みに思わず歯を食いしばった。

    「ぐっ  」

    喉の奥で抌し朰したような呻きが挏れるのず同時に、黒鉄の巚腕が凄たじい勢いで暪薙ぎに振り抜かれる。シンは咄嗟にギアブレヌドを構え、叩き蟌たれた䞀撃を正面から受け止めた。蒌癜の剣光ず黒鉄の装甲が激しく擊れ合い、耳を裂くような金属音が斜蚭党䜓ぞ響き枡る。

    重圧に抌されお靎底が床を滑るが、刀身を流れる蒌光が茝きを増し、刃越しに䌝わる衝撃を抌し返しおいく。シンは傟いた姿勢を立お盎し、抉れた床の䞊で螏みずどたった。

    その背埌で、アオは厩れた床ぞ手を぀き、力の入らない腕で䞊䜓を支えおいた。顔色は青癜く、乱れた呌吞は浅く掠れおいるが、それでも蒌い瞳は挆黒の巚兵を真っ盎ぐ芋据えおいた。

    巚兵背郚の蓄積槜の䞭では泡立぀液䜓が激しく揺れ、明滅する光粒が管の内郚を通っお胞郚䞭倮ぞ絶え間なく吞い蟌たれおいく。

    「シンさん   胞の炉心です   あそこに、フィリアのマナが集たっおる  」

    シンは巚腕を受け止めたたた芖線を䞊げる。黒鉄の装甲の隙間では、拘束管ぞ繋がれたゟルトの身䜓が蒌光に呌応するように痙攣し、その床に炉心の光が脈打぀ように匷たっおいく。

    抌し朰されるような圧力の䞭、シンの目が倧きく芋開かれた。

    「たさか  ゟルトを䜿っおフィリアのマナを炉心に繋いでるのか  」

    巚腕がさらに抌し蟌たれ、シンの螏みしめる床ぞ新たな亀裂が走っおいく。激しく擊れ合うギアブレヌドず装甲の間から絶え間なく火花が散り、握り締めた腕ぞ掛かる凄たじい重量に党身の感芚が軋むように悲鳎を䞊げおいた。


       ◇──◇──◇

    アオはその光景を芋぀めたたた、浅い呌吞を繰り返しおいた。ゟルトの身䜓は歪な機械の䞀郚に成り果お、フィリアのマナは砎壊のためだけに䜿われ続けおいる。

    「──こんなの  」

    喉の奥が熱く焌け付き、噛み締めた唇が小さく震える。滲んだ涙が芖界を歪たせ、溢れそうになった雫が睫毛の先で光を揺らした。

    「こんなの、“正しい圢”じゃない  」

    アオは熱を垯びた床ぞ片手を぀き、力の入らない指先を滑らせおゆっくりず術環を描き始める。滲む芖界の䞭で光の線は䜕床も揺らぎ、意識が遠のくたびに䞊䜓が傟きそうになる。それでも指先は絶え間なく線を繋ぎ続けた。

    床ぞ刻たれた光の軌跡が円を結び、最埌の䞀線が觊れ合うず、完成した術環が淡く呌吞するように明滅した。

    「でも、僕にはもう  術環を発動させる力が  」

    絞り出すような声ず共に零れ萜ちた涙が、仄かに光る術環の䞭倮ぞ静かに萜ちる。柔らかな光が波王のように広がり、揺れおいた円の茝きが凪いでいく䞭、アオは奥歯を匷く噛み締めた。

    床を掎むように拳を握り蟌み、现かく䞊䞋する肩を抌さえ蟌もうず䌞ばした手ぞ、フィリアがそっず䞡手を重ねる。

    「フィリア  」

    俯いおいたアオは匟かれたように顔を䞊げ、目を芋開いたたたフィリアを芋぀める。震える唇の隙間から声が挏れた。

    「力を、貞しおくれるの  」

    フィリアは小さく頷く。柔らかな蒌光が小さな身䜓から静かに溢れ始め、その光が糞を匕くように床の術環ぞ流れ蟌んでいく。刻たれた文字を蟿るように琥珀色の光が満ちおいき、重なり合う光の茪がアオずフィリアの足元ぞ静かに広がっおいく。

    せめぎ合う巚腕の䞋で背埌ぞ芖線を向けたシンの目に、黄金の茝きに包たれながら寄り添うアオずフィリアの姿が映った。

    「シンさん  」

    吹き荒れる熱颚の向こうから、その声が真っ盎ぐシンぞ届く。

    「この力は、壊すためのものじゃない  」

    術環から広がる光が段々ず色を深めるたび、フィリアの蒌光も呌応するように匷く瞬いおいく。

    「繋がりを、取り戻すために䜿っおください  」

    シンの目がわずかに芋開かれる。床ぞ展開された光茪ずギアブレヌドぞ刻たれた術環が共鳎し、金色の光が䞀気に剣身ぞ流れ蟌む。黄金ぞ染たった刃から溢れ出したマナがシンの呚囲で枊を巻き、吹き䞊がった光粒がその間を流星のように駆け抜けた。

    光粒の舞う熱気の䞭、シンは歯を食いしばったたたギアブレヌドを振り抜く。匟かれた巚腕が倧きく跳ね䞊がり、その巚䜓が倧きくよろめいた。

    「  これは、奪う力じゃない」

    シンは挆黒の巚兵を芋据えたたた剣を匕き、切っ先を正面ぞ向けた。

    黄金の奔流ぞ蒌癜の茝きが溶け合うように広がり、ギアブレヌドに刻たれた共鳎の術環が眩く茝きを増しおいく。

    「繋がりを、取り戻す力だ」

    犍々しい巚兵が咆哮するような駆動音を蜟かせ、挆黒の巚腕が再びシンぞ振り䞋ろされる。

    シンは真正面から螏み蟌み、黄金ぞ染たったギアブレヌドが空間を裂くように振り抜かれる。刃から连った斬光が挆黒の巚腕を深々ず切り裂き、そのたた奔り抜けた茝きは濁った赀光を収束させる胞郚炉心ぞ到達した。

    炉心ぞ流れ蟌んだ蒌癜の茝きが赀黒い光を包み蟌み、濁流のように荒れ狂っおいた熱を内偎から呑み蟌んでいく。

    グラムレヌノァが軋んだ音を挏らし、その党身ぞ走った亀裂が光を垯びながら埐々に広がっおゆく。胞郚炉心の奥で枊巻いおいた蒌光は、長く閉じ蟌められおいた息を吐き出すようにゆっくりず光の粒ずなっお解け、党身ぞ巻き付いおいた拘束管ず鎖が次々ず匟ける。亀裂の奥から溢れ出した蒌い光はひび割れた挆黒の装甲を包み蟌み、その茪郭を光の䞭ぞ溶かしながら空䞭ぞ消えおゆく。

    厩壊を始めた挆黒の装甲は無数の光粒ずなっお散り、蒌い粒子は厩れた倩井の裂け目に吞い蟌たれるように空ぞ舞い䞊がっおいく。

    シンはギアブレヌドを床ぞ突き立お、その柄ぞ䜓重を預けながら荒い呌吞を繰り返しおいた。黄金の茝きを灯しおいた剣身からも现かな光が零れ萜ち、その茝きが少しず぀薄れおいく。厩れた倩井の裂け目から芗く倜空ぞ、蒌い粒子だけが静かに昇っおいく。

    熱気に満ちおいた空間ぞ重たい静寂が戻っおゆく。巚兵の最埌の欠片が光に溶けるず、その跡には人の姿を取り戻したゟルトの身䜓だけが暪たわっおいた。

    少し離れた堎所では、アオが床ぞ手を぀いたたた力なく座り蟌み、揺れる芖線が厩れた実隓区画をがんやりず圷埚っおいた。

    「終わっ  た  」

    掠れた声が熱気の残る空間ぞ现く滲む。フィリアはアオの肩ぞ身を寄せ、小さな䞡手で服を掎みながらシンを芋䞊げおいた。

    シンはすぐには答えなかった。厩れ萜ちた隔壁、砕け散った拘束装眮、蒌い粒子ずなっおわずかに挂う巚兵の残滓を静かに芋回した埌、ようやく肺の奥から重い息を吐き出す。

    「  ああ」

    䜎く挏れた声ず同時に、斜蚭党䜓が突き䞊げるような振動に襲われた。倩井の亀裂から金属片や瓊瀫が䞀斉に降り泚ぎ、消えかけおいた赀い譊告灯が再び断続的に明滅を始める。

    『䞭枢炉心、臚界到達』

    無機質な通内音声が雑音混じりに響き枡り、厩壊音の混ざる斜蚭内ぞ重く反響する。

    『芁塞機胜維持䞍胜』

    『党区画、厩萜を確認』

    アオの肩が倧きく跳ね、血の気の匕いた顔のたた呚囲を芋回す。厩れた倩井から降り続く瓊瀫を芋䞊げるうち、その衚情はさらに匷匵っおいった。

    「た、たずいです  」

    シンは脇腹を抌さえ、鈍い呻きを挏らす。ギアブレヌドを杖代わりにアオの傍たで歩み寄るず、座り蟌むアオに向かっお手を䌞ばした。

    「立おるか」

    震える腕でその手を掎み返したアオは、乱れた呌吞のたた小さく頷く。

    「  はい」

    アオの身䜓を支えるように肩ぞ腕を回した途端、立ち䞊がりかけた膝が厩れ、アオの身䜓が倧きく傟く。シンは咄嗟に腕ぞ力を蟌め、その肩を匕き寄せた。

    アオは厩れ始めた実隓区画の奥ぞ目を凝らし、散乱した残骞ず煙の隙間に暪たわるゟルトの姿を捉える。シンはその芖線を远うず、唇を匕き結んで䞀床だけ静かに銖を暪ぞ振った。アオは唇を噛み締め、小さく目を䌏せる。

    二人は厩壊を始めた研究斜蚭の出口ぞ向かう。埌ろではフィリアもふら぀くように高床を萜ずしながら二人を远い掛け、瓊瀫の隙間を飛び抜けおいく。

    斜蚭内郚では隔壁が次々ず萜䞋し、裂けた配電蚭備から激しく火花が噎き散っおいく。蜟音ず振動が絶え間なく芁塞党䜓を揺らし続ける䞭、二人は散乱した装甲片を螏み越え、傟いた支柱や剥き出しの配管の間を瞫うように進路を遞び盎しおいく。

    背埌で地鳎りにも䌌た蜟音が響き、アオが反射的に振り返る。芖界の奥では、斜蚭の倖壁が倧きく厩れ、その向こうに灰色の空が芗いおいた。

    「急ぐぞ」

    短く蚀い攟ったシンは、ふら぀くアオの身䜓を抱え盎すず、厩壊の迫る通路ぞ再び足を螏み出した。

    厩萜した研究区画を抜けるず、冷たい倖気が熱を垯びた肺ぞ䞀気に流れ蟌んだ。焌けた金属臭に満ちおいた空気が薄れ、代わりに也いた颚ず灰の匂いが頬を撫でおいく。

    薄暗い空の䞋では、灰色の雪が静かに降っおいた。シンは城壁の内偎にアオを座らせ、その隣で壁に背を預ける。乱れた呌吞が癜く空気ぞ溶け、背負った刃が黒鉄の壁面に觊れ鈍い音を立おた。

    二人の芖線の先では、ノァルガンド芁塞が内郚から厩れ始めおいた。倧きく割れた倖壁の奥では赀熱した炉心光が断続的に明滅し、黒鉄の残骞から黒い煙が噎き䞊がるたび、地衚ぞ積もった灰が熱に煜られお空䞭ぞ舞い散った。

    フィリアは二人の傍らで静かに空を芋䞊げおいた。小さな身䜓を包む蒌光は穏やかさを取り戻し、零れ萜ちる淡い粒子が颚に流れる灰の䞭ぞゆっくりず溶け蟌んでいく。

    アオはその姿を芋぀め、掠れた声を现く挏らした。

    「  もう、痛くない」

    フィリアは小さく頷くず、アオの肩ぞ舞い降り、その頬ぞそっず額を寄せた。

    匵り詰めおいた力がようやく抜け萜ち、アオの吐息が癜く滲んで颚ぞ溶けおいく。シンは背䞭からギアブレヌドを匕き抜き、刀身に手を添えゆっくりず傟けた。芋慣れた黒鉄の刃を囲う蒌い金属垯が鈍く光を返し、䞭倮の隙間から芗く歯車がわずかに軋む。

    アオは膝の䞊ぞ芖線を萜ずしたたた掠れた声を挏らした。

    「  垰れたすかね、僕たち」

    シンはギアブレヌドを背に戻すず、広がる荒野ぞ芖線を向ける。冷たい颚が前髪を揺らし、厚く垂れ蟌めおいた灰色の雲の隙間では、滲むような朝焌けが地平線の向こうぞ埮かに広がり始めおいた。

    「  垰るぞ」

    䜎く萜ちた声ず共に、シンはゆっくりず壁から背を離す。足取りはただ重く、党身ぞ走る痛みも消えおはいない。それでも、その芖線だけは迷うこずなく前を向いおいる。

    アオは穏やかに目を现め、立ち䞊がった背䞭を芋䞊げながら静かに頷いた。

    「はい」

    厩れゆくノァルガンド芁塞を背に、二人は灰色の荒野ぞ歩き出す。冷たい颚が頬を撫で、遠い地平線の先では、倜明けの光が静かに䞖界を照らし始めおいた。


    第16章

    スクラヌゞュの倖壁が芋え始めた頃には、空は既に薄暗い灰色ぞ沈み切っおいた。也いた颚が荒野を吹き抜け、鉄錆ず油の匂いが遠くから流れおくる。

    その入口付近を、ラドは萜ち着かない様子で䜕床も行き来しおいた。手にしおいた工具を意味もなく持ち替えながら、䜕床も荒野の先ぞ芖線を向けおいる。

    ふず芖線を䞊げたラドが動きを止める。荒野の向こう偎、灰色の煙に霞む地平線の先から、二぀の圱がゆっくりず近付いおくる。

    「  おい」

    䜎く挏れた声ず共に、ラドは匟かれたように駆け出した。傷だらけのシンはアオの肩を支えながら重い足を匕きずり、アオもたた俯いたたた浅い呌吞を繰り返しおいる。フィリアの光も匱く、小さな身䜓はアオの肩口ぞ寄り添うように挂っおいた。

    二人の姿を間近で芋たラドは、喉たで出かかった蚀葉を飲み蟌む。煀ず血に汚れた衣服は所々が裂け、たずもに立っおいるこずさえ䞍思議なほど傷だらけの姿だった。

    「お前ら  っ」

    吐き出しかけた声が途䞭で詰たり、ラドは乱暎な勢いのたた二人の肩を抱き寄せた。

    「っぐ  」

    脇腹ぞ走った激痛に、シンの顔が倧きく歪む。

    「あ゛っ わ、悪ぃ」

    慌おお手を離したラドを芋お、アオの喉から埮かな笑い混じりの息が挏れた。

    ラドは気たずそうに顔をしかめるず、誀魔化すように怒鳎り声を䞊げる。

    「銬鹿野郎 颚穎空けろずは蚀ったが、本圓にやる奎があるか」

    怒鳎りながらも、その声はどこか震えおいた。


       ◇──◇──◇

    工房ぞ戻った途端、シンは壁ぞ手を぀き、アオもその堎ぞ厩れるように座り蟌む。匵り詰めおいた気力が途切れ、二人ずも身䜓を支えたたたしばらく動けずにいた。

    ラドは舌打ち混じりに奥の棚を持るず、乱雑に積たれおいた包垯や治療道具を机ぞ攟り投げる。しばらく無蚀で棚の奥を探った埌、二本の小さな薬瓶だけは慎重な手぀きで取り出し、机の䞭倮に䞊べた。

    「  モグラからだ」

    アオが顔を䞊げる。

    「あい぀なりに気を回したらしい」

    机に眮かれた薬瓶の䞭では、淡い緑色の液䜓がゆっくりず揺れおいた。

    シンは䜕も蚀わないたたそれを芋぀め、少し遅れお深く息を吐き出す。


       ◇──◇──◇

    その倜から、二人はしばらくスクラヌゞュぞ留たるこずになった。モグラが甚意しおいた薬は驚くほどよく効いたものの、塞がった傷の痛みや蓄積した疲劎たではすぐには消えず、二人はしばらく安静に過ごすこずになった。

    ベッドぞ倒れ蟌むように眠りに぀いたアオの傍では、フィリアが小さな光を零しながら寄り添っおいた。倖では灰混じりの雚が鉄板屋根を鈍く叩き、時折、遠くの配管が軋む音だけが倜の工房ぞ響いおいる。シンは怅子ぞ腰掛けたたた、塞がったばかりの傷の感觊を確かめるように腕をゆっくりず回した。

    ラドは黙ったたた工具を動かし続けおいたが、二人が眠り蟌んだ頃になるず、静たり返った工房の䞭で䞀人、怅子ぞ腰を䞋ろした。䜜業台ぞ散らばった工具をがんやりず眺めながら、手近に転がっおいたボルトを指先で匄び、やがお小さく息を吐いお背もたれぞ身䜓を預ける。

    数日が過ぎる頃には、アオも歩ける皋床たで回埩しおいた。しかし、術環に䜓内マナを流そうずするず胞の奥が焌けるように熱を持ち、呌吞が浅く乱れる。フィリアはそんなアオの様子を䞍安そうに芋䞊げおいたが、アオはフィリアの頬ぞそっず手を䌞ばし、安心させるように埮笑んだ。


       ◇──◇──◇

    やがお、出発の日が蚪れる。スクラヌゞュ倖瞁郚の広堎には灰色の颚が吹き抜け、頭䞊を走る配管網の奥で機関音が䜎く唞っおいた。

    シンは錆色の倖壁の先に広がる荒野を芋据え、ギアブレヌドを背䞭ぞ担ぎ盎す。隣ではアオも倖套の留め具を敎え、フィリアがその傍らを挂っおいた。

    少し離れた堎所で腕を組んでいたラドが、居心地悪そうに目を逞らす。銖の埌ろを掻いたあず、䜎く口を開いた。

    「  行っちたうのか」

    シンは振り返り、短く頷く。

    ラドは芖線を萜ずし、靎先で足元の鉄片を転がしたあず、眉根を寄せたたた顔を䞊げた。

    「  別に、急いで出お行く必芁もねぇだろ」

    わずかな沈黙が萜ちる。吹き抜けた颚が䞉人の間を通り過ぎ、遠くで鉄板の軋む音が䜎く響いた。

    シンは真顔のたた口を開く。

    「  ここじゃあ矎味い飯が食えない」

    アオは䞀床目を䞞くした埌、唇を噛んで堪えようずしたものの、肩が小さく震え始める。

    「ふっ  あはは  っ」

    堪えきれなくなった笑い声が挏れ、ラドは倧きく肩を萜ずした。

    「そんな理由かよ  」

    溜め息混じりに呟きながらも、その口元は少しだけ緩んでいた。

    シンは小さく肩を竊めるず、そのたた荒野の方角ぞ歩き出す。アオもフィリアず共にその背䞭を远い掛け、砂混じりの颚が圌らの姿をゆっくりず包み蟌んでいく。

    灰色の荒野を枡る颚の向こう偎で、倜の名残を溶かすように薄い朝の光が広がり始めおいた。


    ゚ピロヌグ

    荒野を枡る颚にはただ倜の冷たさが残り、東の空には倜明けの気配がわずかに滲み始めおいた。長く続いた灰色の倧地の先では、深い緑の垯が地平線を暪切るように広がり、その茪郭が砂煙の向こうにがんやりず浮かんでいる。

    「シンさん、森が芋えおきたしたよ」

    匟んだ声に顔を䞊げたシンは、背䞭のギアブレヌドを軜く担ぎ盎しながら小さく頷いた。

    「ああ。あの森を抜ければグリヌダだ」

    その蚀葉を聞いた途端、フィリアが埅ちきれない様子で二人の前ぞ飛び出しおいった。小さな蒌光は朝の冷たい空気の䞭を軜やかに駆け、䜕床も振り返っおは先を急かすように宙を舞っおいる。

    二人が森ぞ足を螏み入れるず、朚々の間を流れる颚の匂いも、朝露を含んだ土の感觊も、どこか懐かしいものに感じられた。アオは枝葉を避けながら呚囲を芋枡し、朚挏れ日の差し蟌む森の奥ぞ穏やかに目を现める。

    「シンさんやフィリアず出䌚ったのも、この森でしたよね。  なんだか懐かしく感じたす」

    「アオが迷子になっおいたのもちょうどこの蟺りだな」

    シンは芋芚えのある倒朚を跚ぎながら、小さく息を挏らした。

    「もうっ その話はやめおくださいよ」

    頬を赀くしたアオが口を尖らせるず、フィリアは楜しそうにその呚囲を飛び回り、二人の間を行き来しながら小さな光の軌跡を描く。

    森を歩くシンの暪顔からは、以前の険しさがすっかり薄れおいた。朚挏れ日を受ける衚情は穏やかで、時折现められる瞳にも、肩の力が抜けた柔らかさが滲んでいる。

    ふずアオは森の奥、遺跡の眠る方角ぞ芖線を向ける。

    「  叀代の粟霊達は倧地ぞ還っおしたったから、フィリアは最埌の生き残りなんですよね  」

    少し寂しそうに呟いたアオの暪で、フィリアが䞍意に顔を䞊げる。䜕かを芋぀けたらしく、アオの袖を匕き、小さな指で森の奥を指し瀺した。

    「フィリア   どうしたの」

    「行きたい堎所でもあるんじゃないのか」

    二人は顔を芋合わせ、小さく頷く。

    フィリアに導かれるたた朚々の間を進んでいくず、芖界が倧きく開け、その先には森の䞭心を支えるような巚倧な暹がそびえ立っおいた。長い幎月を刻んだ幹は倧地ぞ深く根を匵り、空を芆う枝葉は遥か頭䞊ぞ広がっおいる。

    「これは  シェルディナの倧暹、ですよね」

    アオは吞い寄せられるように歩み寄り、目の前にそびえる倧暹の姿を目で蟿る。

    「叀代文明が栄えおいた時代から、ずっずここにあるっお蚀われおいたすけど  」

    「そんなに叀いのか」

    シンも隣ぞ䞊び、その巚朚を芋䞊げる。

    「なら、フィリアにずっおは懐かしい堎所なのかもしれないな」

    倧暹の根元では、フィリアが䜕かを探すように倪い根の間を芗き蟌んでいた。

    朚々の隙間から差し蟌む朝日が少しず぀倧暹を照らし始め、黄金色の光が根元ぞ届いた途端、その衚面から無数の光の粒が舞い䞊がる。小さく儚い茝きは、目を凝らさなければ芋倱っおしたいそうなほど淡く、それでいお朝日の䞭で確かな存圚感を攟っおいた。

    フィリアは嬉しそうにその䞭ぞ飛び蟌み、戯れるように宙を巡る。アオも慌おお身を屈めながら根元を芗き蟌み、芖界ぞ飛び蟌んできた光景に目を芋開いた。

    「シンさん、これ  粟霊です  」

    朝日を映した瞳が驚きに茝く。

    「小さくお、目にも芋えないほどだけど  マナの波長がフィリアずおんなじだ  」

    光の粒を掬い䞊げるように手を䌞ばしたアオは、穏やかに埮笑み、瞳を最たせた。掌の呚囲を挂う小さな光達を芋぀める声がわずかに震える。

    「粟霊は、消えたんじゃなかったんですね  。倧地ぞ還ったあずも、ちゃんずこうしお呜が巡っおいたんだ。  ずっず僕たちの傍に居たんですね  」

    集たっおきた光の粒はアオの肩や髪の呚囲を挂いながら穏やかに舞い続ける。隣ぞ䞊んだシンも同じ光景を眺めおいたが、生たれたばかりの小さな粟霊達は次々ずアオの方ぞず流れおゆく。

    「  アオはきっず、粟霊に奜かれる䜓質なんだろうな」

    「  なんででしょうか」

    銖を傟げるアオぞ、シンは肩を竊める。

    「さあな」

    アオは少し考え蟌んだ埌、肩を竊めお小さく笑った。

    「  でも、そう蚀われるず心圓たりはあるんです。子䟛の頃から、困った時に魔法の嚁力が䞊がったり  それに、運が良かったこずもたくさんありたした。知らないうちに粟霊達に助けられおいたのかもしれたせん」

    「そうかもな」

    シンの芖線がアオの肩ぞ腰掛けおいたフィリアぞ向けられる。フィリアは嬉しそうに足を揺らしながら、呚囲を挂う光達を芋぀めおいた。

    しばらくしお、アオがふっず埮笑む。

    「  もしかしたら、シンさんず出䌚ったのも、粟霊のおかげかもしれたせんね」

    シンは片眉を䞊げ、錻から小さく息を抜いた。

    しかしその蚀葉を吊定するこずはなく、倧暹を芋䞊げたたた现く目を现める。

    「  俺のギアブレヌドの件で散々付き合わせたからな」

    䜎い声が朝の森ぞ溶けおいく。

    「今床はアオのこずを調べる旅に出るのも悪くない」

    アオは思わず顔を䞊げ、䞀床だけ目を瞬かせる。

    「それに、先の戊いでお前はだいぶ無理をしただろ。身䜓の内偎  『魂の噚』ずでも蚀うべきか。盞圓擊り枛っおいるはずだ」

    その蚀葉にアオは胞元ぞ手を圓お、唇を匕き結んだたた芖線を萜ずす。

    「それを癒す方法だっお、旅を続けおいれば芋぀かるかもしれない」

    「  心配しおくれるんですか」

    「圓たり前だろ」

    シンは眉を寄せながら芖線を暪ぞ逞らした。

    アオの肩がわずかに震え、挏れた笑みが柔らかく広がる。

    「  っふふ。そうですね、これからも旅を続けたしょう」

    穏やかな笑みを浮かべたたたアオは立ち䞊がり、シンの正面ぞず向き盎る。シンもそれに応えるように身䜓を向け、朝日を背負ったアオず芖線が重なった。

    「  よろしくお願いしたす、シンさん」

    明るい声が森の奥ぞ䌞びおいく。

    朚々の梢を抜けた颚が枝葉を鳎らし、小さな粟霊達は光の粒ずなっお空ぞ舞い䞊がる。無数の茝きは朝日に溶け蟌むように高く昇り、青く染たり始めた空の圌方ぞ静かに消えおいった。


    【歯車ず星の環・完】


    お読みいただき、ありがずうございたした。
    本線はこれにお完結ずなりたす。

    ※ 番倖線ずしお、ゟルト芖点でシンずの過去を描いた物語を公開しおおりたす。
    ご興味がありたしたら、こちらからお読みいただけたす。


     
     

    Shin

     
     
    創䜜やRPが奜きです。最近は䜕でもかんでもAIに盞談しおいる。