
小説|再会⑤
あれから私は友達から返って来ない事になっていた卒業アルバムを実家に取り行った。
見返せないけれど、捨てられなかった写真達を取りに行った。
賢斗はあの写真を私にくれなかった。
実家のクローゼットの奥のダンボールに詰め込まれた写真はまるでタイムカプセルのようだ。
「すっげー。美咲超可愛くなったじゃん。」
「何それ。昔が不細工って言いたいの?」
私達は顔を見合わせて笑っている。
「んなわけないじゃん。この写真の子は俺が一目惚れした子ですよ?」
クローゼットの奥のダンボールは、過去を忘れる為ではなく、いつかもう一度出会うためのタイムカプセルだったのかもしれない。
中学の卒業アルバムをそっと開いてみる。
私が自分を見つけるより先に賢斗がはしゃぎだす。
「あった!わはは!美咲がお芋ちゃんだ!」
「お芋…?芋っぽいって言いたいの?!」
「いやーいいねぇ。これは芋芋しくて可愛いわ」
「自分だって薩摩芋みたいだったくせに。」
「あ?俺は薩摩芋だけど、周りじゃがいも、いや里芋だったから。俺の圧勝。」
「何その勝負。誰が判定してんのよ。」
「俺しかいねぇだろ。」
笑いながらアルバムをめくる。
体育祭。
文化祭。
修学旅行。
ページに映る自分を見つけるたび、まだ欠点を探してしまう自分に気づく。
華やかとは言えない奥二重の目。
鼻も低い。
輪郭だってぼんやりしている。
いつもなら、ここでページを閉じていた。
でも、もう違う。私は箱を開けたんだ。
「ねぇ、私も圧勝の薩摩芋かな?」
「自分がそう思えばそうなのよ。まあ、俺的には美咲だけ紅はるかだけどな。」
アルバムの私は笑っている。
何も知らない顔で。
この先、容姿に悩む事も、整形して顔を変える事も知らない。
今隣に賢斗がいる事だって、全部知らずに笑っていた。
「この無防備な笑顔。俺この美咲好きだわ。」
「賢斗、見つけてくれてありがとね。…2回も。」
「あ、でもコンビニでも見かけてたから3回だぜ?」
私は笑う。
アルバムの中の私も、今ここで笑っている私も、どちらも誰にも書き換えられない私だった。
ページを閉じる。
もう居場所はクローゼットの中じゃない。
私は卒業アルバムを、部屋に入ってすぐ目に入る本棚へ並べた。
完
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