
集客の舞台裏②|「売上の20%はMEOのおかげ」とクライアントに言われるまでの6年間——店舗集客におけるMEO対策の費用対効果
「金 買取 近く」
スマホの検索窓にこの6文字を打ち込む人は、もう売ると決めている。迷っているのは「どこに持っていくか」だけだ。
Googleマップに表示された数件の店。口コミの星の数、件数、最新の口コミに目を通す。写真を見る。営業時間を確認する。——このわずか数十秒の比較で、行く店が決まる。
私はこの「数十秒の勝負」を、ある買取チェーンの裏側で6年間やってきた。
店舗ビジネスの集客支援を行う会社を経営しています。MEO(Googleマップ最適化)を軸に、飲食店・サロン・美容室・病院・不動産など、業種をまたいで「お店を見つけてもらう」仕事をしています。前回の記事では歌舞伎町のダイニングバーのデリバリー施策について書きました。
今回書くのは、全国展開している買取チェーンの話です。支援に入って6年。口コミは荒れ放題、スタッフは非協力的、経営陣からは「本当にMEOに金をかける意味があるのか」と詰められる——そんなスタートから、「売上の20%はMEOのおかげ」と言われるまでの話です。
第1章:「売りに来る客」を集めるMEOは、飲食店と何が違うのか
この買取チェーンの支援に入る前、私は飲食店やサロン、美容室、個人病院、車屋、不動産屋のMEOをやっていました。だから買取店も同じようにやればいいと思っていた。
でも、入ってみると見せ方が全然違った。
飲食店なら「美味しそうな写真」を載せれば人が来る。買取店の写真は何を見せればいいのか?答えは**「この店は商品を大切に扱ってくれる」という安心感**でした。
手袋をして商品を触っている。付属の箱も一緒に丁寧に扱っている。机にじかに置くのではなく、専用のケースに入れて写真を撮る。——お客さんが見ているのは商品そのものではなく、店の誠実さです。
口コミも違います。飲食店なら味と雰囲気。買取店の口コミで人が見ているのは、丁寧に見てくれるか、待ち時間はどうか、予約はできるのか、金額は他の店と比べてどうか。
面白いのは、口コミを読んでいると「金額は他社の方が高かったけど、スタッフが誠実だったのでこの店に売りたいと思った」という声が結構あること。金額がどこよりも高いから選ばれるわけではない。
検索キーワードも飲食店とは構造が違います。飲食店なら「中華」「和食」とカテゴリーが分かれていて、その中で勝てればいい。でも買取店は「○○専門」というわけではなく、どの店も何でも買い取る。差別化が難しい。「金 買取 高い」「ブランド 買取 近く」「ロレックス 売りたい」——金買取に関わるキーワード全般で上位に出す必要がありました。
最初は「飲食店と逆のことをしなきゃ」と思っていたけど、やっていくうちに気づきました。見せ方は違うけど、基本は同じだ。 お客さんが不安に思っていることに、Googleマップ上で先に答える。それだけです。
第2章:「金 買取 近く」で検索する人の頭の中
6年やってきて見えてきた、買取店を検索する人の心理。大きく3つあります。
① 不安
買取店に初めて行く人は、行くこと自体が不安です。「だまされないかな」「押し買いされないかな」。査定額を聞いたあと、「他の店でも聞いてみたいんですが……」とは言いづらい。行く前から緊張している人が多い。
② 比較
「他の店ならもっと高く売れるんじゃないか?」——これは全てのお客さんが思う心理です。1店舗目で即決する人は少ない。だからこそ、Googleマップ上で「ここが一番よさそうだ」と思わせる必要がある。
③ 手軽さ(と、その裏切られ感)
ここが買取店ならではの難しさです。お客さんは「入ったらすぐ見てもらえて、10分15分で終わる」と思っている。でも実際は、本物かどうかの確認があり、買取市場の金額は時間単位で変わっている。昨日提示された金額が今日はもう使えない。それくらい目まぐるしく動いている。
お客さんからすると「思ったより待たされた」になる。この待たされ感が、悪い口コミの温床になります。
想像してみてください。あなたが祖母から譲り受けた指輪を売りに行くとして、Googleマップで何を見ますか?
口コミです。それも1件2件ではなく、何件も読む人が増えています。6年前と比べて明らかに増えた。
そして厄介なのが、「査定額に納得いかなかった」という口コミ。これは買取店である以上、どうしても入ります。でも口コミをよく見ていると、純粋に金額だけが不満な人は実は少ない。待たされた、接客態度が悪かった、そのイライラの上に査定額の不満が乗っているというパターンが多い。
つまり、査定額の口コミ問題は、査定額だけの問題ではないんです。
第3章:最初は1店舗だった——口コミ★1の嵐からのスタート
この買取チェーンとの出会いは、1本の営業電話でした。
大手企業だと知らずに電話をかけた。オペレーターに「MEO対策の件でネット関係の担当者に繋いでほしい」と伝えたら、担当者に繋がった。いつものように個人店に架電しているつもりで話したら、こう言われた。
「うちは大手で何店舗もありますが、いいですか?」
正直、大手の経験はなかった。でも「できると思います」と答えた。商談の機会をもらえた。
指定されたオフィスに行って驚いた。ビルの入口にはロボットがいて要件を聞いてくれる。高層階のオフィスは眺めがよく、会議室はスケルトン、緑があふれている。ドラマの撮影で使われるような場所だった。おしゃれすぎてどこで待っていいのかわからず困ったのを覚えている。
商談は10分で終わった。商品説明をしたら、その場でサインをもらえた。しかも一番売上が高い店舗の契約。「この店の売上を上げられるなら、いいよね」と言われた。衝撃だった。
——でも、そこからが地獄だった。
その店舗の口コミは荒れていた。「接客態度が悪い」「待たされた」。悪口サイトに名前を出されてしまうレベルで、店の評判は底だった。今では考えられないけれど、当時は悪口以外の口コミがもらえない店だった。
店舗スタッフに「口コミをお願いしてもらえませんか」と伝えても、動かない。会社が大きいから、営業部の人に話しても現場まで通達がいかない。そもそも6年前は口コミの重要性が理解されていなかった。「そんなに大事なの?」という雰囲気。ひどい時は「うちの対策が悪いんじゃないの?」と言われた。
口コミを集めるノウハウもない。協力してくれる人もいない。悪い口コミだけが増え続け、それを見た人がさらに悪い印象を持つ。完全な負のループだった。
でも、この負のループを問題だと認識していたのは、たぶん私だけだった。相手の会社はそこまで深刻に捉えていなかったと思う。
第4章:経営陣が動いた日——1店舗から全店舗へ
転機は、最悪の形でやってきた。
「本当にMEOにお金をかける必要があるのか?」
経営陣の会議に呼ばれた。社長、専務、理事——約20人の前にたった一人で立った。冷や汗が止まらなかった。
会議室に座って、すぐにわかったことがある。この人たちは、それぞれの専門分野で物凄いスキルと経験を持っている。MEOが売上に繋がっているかを証明するには、来店数、売上、天候、テレビCMの放送時期、キャンペーンの有無、競合他社の動向と売上——そういうものを全部ひっくるめて説明しなければならない。MEOの知識だけでは全然歯が立たないと、初日で悟った。
そして何より、マーケティングの用語がわからなかった。
会議は日本語のはずなのに、最初の1ヶ月は英語に聞こえた。何の話をしていて、何を指摘されているのかすら把握できない。
ある日、こう言われた。「アップルトゥアップルじゃないね」。
りんごのわけないだろう、とは頭では思った。さすがにギャグではないだろうから、こっそりスマホで調べた。「複数のものを比較する際に、同条件で比べるという意味のビジネス用語」とある。同条件で比べるって言えばいいじゃん。 本気でそう思っていた。
それ以外にもマーケティング用語や考え方が次々に出てきた。今では感謝しかないけれど、当時は会議に行くたびに言われている意味すらわからない。だから会議を録音した。全部のセリフをメモした。会社に持ち帰って、一つずつ意味を調べて、資料を作った。今みたいにAIもない時代だから、全部自分の頭で考えて形にするしかなかった。
毎日ドキドキしていた。全然落ち着けない3ヶ月だった。
この会議は毎週続いた。
当時のMEOでは、Googleビジネスプロフィールから出せるインサイトは限られていた。ルートの照会が増えた、通話が増えた——それくらいしかわからない。でも経営陣が知りたいのは「それが売上に繋がっているのか?」だった。 その証明がなければ、契約は終わる。
証明する方法を見つけるまで、息もできない気がしていた。
毎週、前回指摘された数字を出すところからやった。本来なら簡単には出せない数字を、工夫して、毎週持っていった。MEOが売上に繋がっていることを、一つずつ証明していった。
3ヶ月くらい経った頃、会議を聞いていたマーケティング部の人が手を挙げてくれた。
「僕のところで見ます」
この一言で、すべてが動き始めた。
マーケティング部の会議に入れてもらえるようになった。「売上を上げるために何が必要か」「どういう数字があれば経営陣が判断できるか」——マーケティングそのものを教えてもらえた。あの3ヶ月間、意味もわからず必死にメモしていた言葉が、ここでようやく繋がり始めた。
何より大きかったのは、マーケ部の人が会議の内容を各部署にシェアしてくれたこと。なぜ口コミが必要なのか、なぜMEOに投資する価値があるのかが、現場まで伝わるようになった。そこから口コミの獲得体制が動き出し、全店舗への展開が決まった。
全店舗展開は全店舗展開で大変だった。当時はGBPごとに契約書が必要で、100枚以上の契約書を手書きで用意してもらうわけにもいかない。全店舗の住所と店舗名を自分で記入した契約書を作成・印刷して、押印してもらった。
キーワード選定には1ヶ月近くかかった。どのキーワードが適切か、検索ボリュームが大きいものを優先すべきか、店舗の強みに合わせるべきか。エリアごとに競合環境が違うから、対策も変わる。1店舗ずつ決めていった。毎週3回くらい先方のオフィスに通った。
第5章:数字はこう変わった
6年で、数字はこう変わった。
口コミ 悪い口コミしかなかった状態から、総数56,000件超。★5率91%。月2,000件ペース。 目標達成率は129%を超えている。
来店に繋がる数字(支援開始時との比較)
マップ経由の閲覧数:1,603%アップ
ルートの照会数(「この店に行こう」と道を調べた人):184%アップ
ウェブサイトへのアクセス数:155%アップ
通話数:144%アップ
そして、この記事で一番伝えたい数字がある。
マーケティング部とのミーティングを1年ほど続けた頃、「今日この後、経営陣への説明会議がある。その資料を見せるね」と言われた。
資料に書いてあったのは、こうだった。
「MEOからの売上は全体の20%」
この会社はSEOもやっている。テレビCMもやっている。SNSもやっている。そのすべてのチャネルの数字を知っているマーケティング部が、自分たちで調べた結果として出した数字が、20%だった。
まとめ:買取店のMEOで大事なこと
お客さんが「売りに来る」店では、信頼感と安心感がすべて。 写真も口コミ返信もプロフィールも、そこに向けて設計する
口コミは放置すると悪いものだけ溜まる。 仕組みで良い口コミを増やす体制を作る
1店舗で結果を出してから全店舗。 順番を間違えると現場がついてこない
数字で証明し続ける。 感覚ではなく、データで経営陣を動かす
前回の記事では歌舞伎町の飲食店の話を書きました。今回は買取チェーン。業種が違っても、共通していることが一つあります。Googleマップの上で「この店にしよう」と思ってもらう戦いは、どの業種でも同じだということ。
今後、口コミを仕組みで増やす具体的な方法や、他業種での集客実践記なども書いていく予定です。よかったらフォローしてもらえると嬉しいです。
質問があればコメントでどうぞ。買取・リユース業界で集客に悩んでいる方の話も聞いてみたいです。
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📖 集客の舞台裏シリーズ
① 「夜の街でデリバリー?」と笑われた店が、前年比400%成長するまで
https://note.com/real_abelia2156/n/n8b9cce01175f
③ 「もうたたむしかない」サロンを立て直した話
https://note.com/real_abelia2156/n/n80ff29dba167
⑤ 口コミ返信は「1件1分」で終わる|コピペOKテンプレ5選
https://note.com/real_abelia2156/n/nff57dab5d217
✍️ 書き手について
銀行員を辞めて14年。なぜこの仕事をしているのか
https://note.com/real_abelia2156/n/n2a19ffdc1321
テレビに出た会社が、傾いた瞬間に切られた──銀行を辞めた日の話
https://note.com/real_abelia2156/n/n52f8b95317d6
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