
集客の舞台裏③|「もうたたむしかない」と言われたサロンで、私がやったこと——サロン集客はGoogleマップ(MEO)から立て直す
「うちのお客さん、Googleで来る人ほとんどいないんですよ」
茨城県古河市。駅から少し歩いた場所に、エステとネイルのサロンがある。もともと普通の一軒家だった建物を改装した、こぢんまりとした店。エステティシャン2人、ネイリスト2人。大手チェーンでもなければ、SNSでバズっているわけでもない。
私はこの店の集客を支援することになった。飲食店で結果を出した。全国展開の買取チェーンで結果を出した。次はサロンだ——Googleマップを最適化すれば、ここも伸ばせる。そう思っていた。
オーナーの一言で、その前提が崩れた。
店舗ビジネスの集客支援を行う会社を経営しています。MEO(Googleマップ最適化)を軸に、飲食店・サロン・買取店など業種をまたいで「お店を見つけてもらう」仕事をしています。前回の記事では全国展開の買取チェーンを6年間支援した話を書きました。
今回書くのは、3業種目で初めて「自分の武器が効かない」と気づいた話です。
第1章:茨城のサロンで黙った日
このサロンとの出会いは紹介だった。以前MEOを担当していたお客さんから「知り合いのサロンが集客に困っている」と連絡をもらった。
オーナーは、このサロンの下の階で美容室と理容室を経営されている方だった。「美容室のお客さんをエステにも連れていけたらいいな」という想いで作った店だと聞いた。美容業界のマーケティングに詳しいタイプではなく、お金を出してあとはスタッフに任せている。そういうオーナーさんだった。
聞いた話はこうだ。ホットペッパービューティーの最高プランを使っている。でも集客が減っている。5年前まではホットペッパーさえやっていれば集客できていた。最近はそれだけじゃダメなのかもしれない。でも具体的にどうすればいいかわからない——。
前回の記事で書いた買取チェーンは、全国展開の大手だった。経営陣20人の前でプレゼンし、マーケティング部と毎週会議をしていた。今回は真逆だ。一軒家を改装した1LDKの空間に、スタッフ4人。それだけの規模の店。
でも、悩みの本質は同じだった。「お金をかけているのに、お客さんが来ない」。
私はいつものように提案した。「Googleマップを最適化しましょう」。
1ヶ月やった。インサイトを開いた。
——誰も見ていなかった。
どんな業種でも、Googleビジネスプロフィールのインサイトがまったくゼロということはほとんどない。飲食店でも買取店でも、最低限の閲覧数はある。でもこのサロンに関しては、ほぼなかった。「見られていない」というレベルですらない。存在していないのと同じだった。
めちゃくちゃ衝撃だった。
第2章:サロンの客はどこから来るのか
冷静にデータを見直した。このサロンのお客さんは、どこから来ているのか。
答えは明確だった。100%ホットペッパービューティーから。
飲食店なら、Googleマップで「ランチ 近く」と検索して店を探す人がたくさんいる。買取店なら「金 買取 近く」で検索して、マップに表示された店を比較する。どちらもGoogleが入口だった。
サロンは違った。
考えてみてほしい。あなたが美容室を変えたいとき、Googleマップで探すだろうか。それともホットペッパービューティーを開くだろうか。
多くの人は、ホットペッパーを開く。
理由はシンプルだ。サロンを探す人は、そもそもホットペッパービューティーの中で探している。Googleで検索して、大丈夫かどうかもわからないサロンに行くくらいなら、ホットペッパーに掲載されている安心できるお店の中から選びたい。ネイルやエステに行こうと思ったら、Googleを開くのではなく、ホットペッパービューティーのアプリを開く。それがこの業界の当たり前だった。
特にエステはクーポン文化が強い。初めてのお客さんの90%くらいはクーポンやポイントを使って初回お試しで来る。ホットペッパーにはその導線が完成している。検索して、クーポンを選んで、そのまま予約。Googleマップにはこの流れがない。
しかも、飲食店とは一回あたりの金額が違う。サロンは自分のために行く場所で、1回5,000円〜10,000円かかる。だからお客さんの目はシビアだ。口コミ、写真、ブログ——全部しっかり見てから予約する。
ここで業界のデータも見てみる。ホットペッパービューティーアカデミーの調査によると、2025年のエステ市場は前年比14.9%減。市場自体が縮んでいる。一方でネイル市場は4.7%増だが、ライバルも増えている分、平均価格が下がり差別化が難しくなっている。
ただ、エステの市場が縮んでいるからといって、ニーズがなくなったわけではない。肌に悩んでいる人は必ずいる。問題は、その人に見つけてもらえるかどうかだ。
MEO屋として認めたくなかったが、このサロンの主戦場はGoogleマップではなかった。
第3章:ホットペッパー最高プランなのに、なぜ集客が落ちるのか
主戦場がホットペッパーだとわかった。でも、そのホットペッパーで最高プランを使っているのに集客が落ちている。なぜか。
オーナーの言葉が頭に残っていた。「5年前まではホットペッパーさえやっていれば集客できていた」。
つまり、かつては最高プラン=上位表示=お客さんが来る、という方程式が成り立っていた。でもそれが崩れた。
最高プランを使えば、ホットペッパーの検索結果で上位には表示される。でも、表示されることと、選ばれることは違う。
お客さんはホットペッパーの中で複数の店を比較している。上位に表示されたとしても、口コミが弱ければスルーされる。写真が古ければ不安になる。ブログが更新されていなければ「この店、ちゃんとやってるのかな」と思われる。
エステ市場そのもののパイ自体が縮んでいる中で、同じやり方を続けていたら集客が落ちるのは構造的に当然のことだった。
ネイルの方は市場が伸びている。でもそれはライバルも増えているということだから、価格競争が起きやすく差別化が難しくなっている。
エステは市場が縮んでいる。でも、肌に悩んでいる人は必ずいる。市場にニーズがある人自体はいるのだ。問題は、その人たちがホットペッパーの中でこのサロンを見つけたとき、「ここにしよう」と思えるかどうか。
プランにお金をかける時代から、プランの中身で勝負する時代に変わっていた。
第4章:MEO屋がホットペッパーを立て直した話
私はMEO屋だ。Googleマップの最適化が専門で、それで結果を出してきた。
でもこのサロンに必要なのはMEOではなかった。ホットペッパーの運用を根本から変えることだった。
変えたのは大きく4つ。
1. ブログ
これが一番効いた。
ホットペッパービューティーにはブログ機能がある。多くのサロンはこれを放置しているか、なんとなく更新している程度だ。このサロンのブログの内容と頻度を大きく変えた。
どんな内容にしたかは、ここでは詳しく書かない。でも結果だけ言う。このサロンのブログ閲覧数は4桁。同じ地域の他のサロンは3桁。桁が一つ違う。
ホットペッパービューティーの担当者にこう言われた。
「僕、10年くらいこの仕事してますけど、閲覧数が4桁なんて見たことないですよ。最初見た時、システムがバグってるのかと思いました」
ホットペッパーの中でブログを読む人は、「このサロン、ちょっと気になるな」と思っている段階の人だ。つまりブログは予約の最後のひと押しになる。他のサロンがブログを放置しているから、ちゃんとやるだけで圧倒的な差がついた。
2. 口コミへの向き合い方
サロンの口コミは、飲食店や買取店とは根本的に性質が違う。
ホットペッパービューティーの口コミは、Googleの口コミ以上にシビアに見られている。女性が使うサイトだからなのか、悪い口コミを書かれる場合、かなり具体的に書かれる。それが理由で客足が減ることもざらにある。
だから口コミ戦略は「集める」ではなく「悪い口コミを書かれない」が最優先だ。同じ★5でも、Googleの★5とホットペッパーの★5では重みが違う。ホットペッパービューティーで★5をつけてくれる人は、本当にその店を気に入ってくれている。
お客さんが口コミで一番見ているのは、清潔感だ。トイレ、スリッパ、店内の見た目、机や道具の綺麗さ。施術のうまさや会話の面白さも大切だが、清潔感が一番書かれるし、一番見られる。
あとは、お客さんのニーズにどれだけ柔軟に対応できたか。応えられない場合でも断り方が上手でないと悪く書かれてしまう。わがままなお客さんもいる中で、スタッフにとっては結構難しいところだと思う。
清潔感の徹底、お客さんへの対応の質、断り方——口コミに書かれるポイントを一つずつ潰していった。
3. 写真とクーポンの出し方
写真の撮り方、クーポンの見せ方を大きく変えた。1回5,000円〜10,000円を払うお客さんが、ホットペッパーの画面で何を見て判断しているか。そこから逆算して設計し直した。
4. ホットペッパー担当との関係
ホットペッパービューティーにはサロンごとに担当者がつく。このサロンは半年に1回しかミーティングをしていなかった。これを月1回に変えた。
前回の記事で書いた買取チェーンでは、マーケティング部の人が「僕のところで見ます」と手を挙げてくれたのが転機だった。今回は、ホットペッパーの担当者との距離を縮めたことが転機になった。外部のパートナーを味方につけるという意味では、同じ構造だ。
スタッフの反応は、正直に言えば最初はめんどくさそうだった。でも「売上が上がるならやるべきだ」という方向に持っていった。メリットを説明して、一緒に途中までやったり、簡単なやり方を紹介したりして、なんとか行動に移してもらった。
前回の買取チェーンでは、経営陣20人の前で冷や汗をかきながらプレゼンした。今回は4人のスタッフにめんどくさがられながら、一緒に手を動かした。規模は全然違う。でも「現場を動かす」という仕事の本質は同じだった。
第5章:数字はこう変わった
さまざまな施策を続けた結果、数字はこう変わった。
まず、同じ地域のライバル店との比較。
新規で見つけてくれた数:ライバル店より137.7%アップ
興味を持って予約までしてくれた数:ライバル店より114.7%アップ
「見つけてもらう」だけではなく、「予約までしてもらう」の両方で競合を上回った。
そして新規のお客様の来店数が、1年で2倍になった。
これはホットペッパービューティーのプラン想定の2倍にあたる数字だった。ホットペッパーの担当者も驚いていた。
そして今。このサロンには、ホットペッパービューティーのプラン想定の4倍の新規のお客様が来ている。
前回の記事では、買取チェーンの「マップ経由の閲覧数1,603%アップ」「口コミ56,000件超」という巨大な数字を書いた。今回の数字はスケールが全然違う。全国チェーンと4人のサロンでは、そもそも比較にならない。
でも、「プラン想定の4倍」という数字は、この小さなサロンにとっては途方もない変化だ。月35件の予約のうち、30件はリピーター。新規5件が着実に積み上がり、リピーターに変わっていく。小さな店だからこそ、一人ひとりのお客さんの重みが違う。
数字を報告した日、オーナーにこう言われた。
「もうたたむしかないと思ってたんです」
最高プランにお金をかけても集客が減り続け、どうすればいいかわからなかった。あの時相談していなかったら、本当に店を閉めていたかもしれない——そう言われた。
前回の記事では、買取チェーンの経営陣から「売上の20%はMEOのおかげ」と言われた話を書いた。あの言葉は数字の評価だった。今回の「たたむしかないと思ってた」は、もっと重い。一つの店が続くか終わるかの話だ。
まとめ:3業種やってわかったこと
シリーズ3本を通じて、3つの業種を書いてきた。
①飲食(歌舞伎町のダイニングバー):Googleマップが主戦場。「見つけてもらう」勝負
②買取(全国展開のチェーン):Googleマップが主戦場。「信頼してもらう」勝負
③サロン(茨城県古河市の4人の店):主戦場はGoogleマップじゃなかった
3業種やってわかったのは、大事なのは「どのツールを使うか」ではないということ。
お客さんがどこから来ているかを見ること。
MEO屋だからMEOを売る、ではない。その店に本当に必要なことをやる。飲食店にはGoogleマップが必要だった。買取チェーンにもGoogleマップが必要だった。サロンにはホットペッパーの立て直しが必要だった。
業種によって武器は変わる。変わらないのは、「お客さんの導線を理解する」という原則だけです。
サロンの集客で大事なことをまとめておきます。
お客さんの導線はホットペッパービューティーの中にある
プランの高さではなく、ブログ・口コミ・写真の運用で差がつく
口コミは「集める」より「悪い口コミを書かれない」が最優先
清潔感は口コミで一番見られるポイント
MEO屋の私が言うのもおかしな話ですが、正解はいつもツールの側ではなく、お客さんの側にあります。
今後も、業種ごとの集客実践記を書いていく予定です。よかったらフォローしてもらえると嬉しいです。
質問があればコメントでどうぞ。サロンの集客に悩んでいるオーナーの方の話も聞いてみたいです。
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📖 集客の舞台裏シリーズ
① 「夜の街でデリバリー?」と笑われた店が、前年比400%成長するまで
https://note.com/real_abelia2156/n/n8b9cce01175f
② 売上の20%はMEO|全国買取チェーンの6年
https://note.com/real_abelia2156/n/nee78ab766787
⑤ 口コミ返信は「1件1分」で終わる|コピペOKテンプレ5選
https://note.com/real_abelia2156/n/nff57dab5d217
✍️ 書き手について
銀行員を辞めて14年。なぜこの仕事をしているのか
https://note.com/real_abelia2156/n/n2a19ffdc1321
テレビに出た会社が、傾いた瞬間に切られた──銀行を辞めた日の話
https://note.com/real_abelia2156/n/n52f8b95317d6
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