人生初の大腸カメラを受けてみた 〜月刊・体内カメラ生活、ついに大腸編〜
人生初の大腸カメラに行ってきた。
今年に入ってから検査続きで、胃カメラはすでに2回。
気づけば、月刊誌のようなペースで体内にカメラを入れている。
採血、検便、検尿、胃カメラ、CT、エコー。
これだけ検査を重ねると慣れそうなものだが、不思議なことに毎回ちゃんと不安になる。
そして今回は、大腸カメラだ。
検査前から何人もの人に言われていた。
「大腸カメラは前準備がつらいよ」
さらに少し前には、友人から
「鎮静剤が効かなくて激痛だった」という話まで聞いてしまった。
だから今回は、これから受ける誰かの参考になればと思い、体験記を残しておこうと思う。
検査を受けることにした理由
ここ半年ほど、いくつもの病院を回った。
けれど、どこも大きな異常は見つからない。
最後には、
「精神的なものかもしれませんね」と言われることもあった。
それでも、泌尿器科の先生が最後にぽつりと、
「後は、消化器かなぁ」とつぶやいた。
聞き流そうと思えば聞き流せた。
「気のせいだったのかもしれない」
そう思うこともできた。
でも、自分でもわかっていた。
残っているのは、大腸だけだということを。
この際、全部調べてしまおうと思う日もあれば、
「こういう体質なんだ」と受け入れようとする日もあった。
原因を知りたい気持ちと、
もう終わりにしたい気持ち。
その間を何度も行ったり来たりしていた。
そこで私は、友人たちに不調や検査のことを話し始めた。
すると、
「大腸は見てもらった方がいいよ」
と背中を押してくれる人もいた。
中には、私の話を聞いて、自分の方が先に大腸カメラを受けた友人までいた。
そうやって私は、自分が大腸カメラを受けるための外堀を、じりじりと埋めていった。
そして、ようやく決心した。
病院探し
大腸カメラのできる病院を探し始めた。
家から徒歩20分。
そこで出会った先生は、私の話を10分近くほとんど遮らずに聞いてくれた。
触診とレントゲンのあと、
「ガスだまりが原因かもしれませんね」
と説明してくれた。
そして、
薬で様子を見る方法もあること、
大腸カメラで確認する方法もあること、
どちらも選べるように話してくれた。
一瞬、「薬で様子を見ようかな」と揺らいだ。
けれど、
「実は今日、予約もできたらと思って来ました」
と伝えた。
すると先生は、
「そうだね。それがいいかもね。これを逃すと、また来るのが嫌になっちゃうかもしれないからね」と言った。
そして最後に、
「半年間、検査続きで、本当に大変でしたね」
そう声をかけてくれた。
その一言だけで、この病院にしてよかったと思えた。
検査前日は、白い食卓
大腸カメラは、前日から準備が始まる。
消化の良いものだけを食べる。
朝は、バナナとヨーグルト。
昼は、素うどん、目玉焼き、鶏ささみ。
夜は、お粥と豆腐、プリン。
当日迷わぬように、ホワイトボードに書いておいた。
消化に良い食べ物って、白い。
白いものばかり食べる一日だった。
次女からの注意書き
前日の夜には、排便を促すため、下剤(ピコスルファートナトリウム)を飲む。
翌朝から飲む本格的な下剤(サルプレップ)は、冷やしておいた方が飲みやすいと聞いたので、夜から冷蔵庫に仕込んでおくことにした。
ただ、この下剤。見た目がほぼ水。
私は娘たちに、「これは絶対飲んじゃだめだよ」と説明した。
ほら、ここにも「これは、おくすりです」と書いてあるでしょ。
そう言ってラベルを見せた。
それでも心配だったのか、次女が突然、「書く!」と言い出した。
ペンを渡すと、ペットボトルにこう書いた。
『これは おかあさんしか のんじゃダメ うんちぶりぶりくすり(ぜったい)』

完璧な注意書きだった。
いよいよ下剤スタート
娘たちに「今日は、頑張ってね」と声をかけてもらい、学校へ送り出した後、いよいよ下剤開始。
正直、私はここが一番怖かった。
大腸カメラ経験者の話を聞くと、
「検査より下剤がつらい」
という人が本当に多い。
だからAmazon Primeで観るドラマまで準備していた。
長期戦になると思っていたのだ。
ところが、実際には撮りためていたドラマを一本観たくらいで終わってしまった。
下剤の「サルプレップ」。
味は濃いポカリスエットのような感じだった。
これを飲むために、私は規定量が入るコップを探し始めた。
「確か、計量メモリ入りのちょうどいいコップがあったはず!」
そう思って、引き出しから取り出したカップ。

それには、なんとカルピス原液用のメモリしかなかった。
私の記憶の中では「計量カップ」だったのだが、現実はただのカルピス専用機だった。
記憶とは恐ろしいものである。
結局、計量カップで測り、120ml用と250ml用のコップを準備した。
テレビの前には、
サルプレップ。
午後の紅茶(無糖)。
コップ2つ。
タイマー。
テレビのリモコン。
ちょっとした漫画喫茶のような空間が出来上がった。
看護師さんおすすめの午後の紅茶(無糖)は、大正解だった。
下剤をひと口飲んだあと、すぐに午後の紅茶を飲む。
すると不思議なことに苦味が消えて、まるで砂糖入りの午後の紅茶を飲んでいるような感覚になる。
開始から50分ほどで最初の便が出た。
その後何度かトイレへ。
そしてついに、
「カスのない水」
が出た。
ここで初めて気づいた。
私は人生で、お尻から水を出した経験などほとんどない。
だから力加減がわからない。
想像以上の勢いで出る。
催したら最後。
のんびり歩いている暇はない。
一刻も早くトイレへ向かわなければならない。
それに気づいてから、私は、
トイレの電気は消さず、
扉も蓋も閉めず、
いつでもすぐ座れる状態を確保することを最優先任務にした。
そして、もう一つ。
動画より必要だったのは、「手拭きタオル」だった。
何度もトイレに行き、そのたびに手を洗うので、あっという間にびしょ濡れになるのである。
結局、下剤開始から約2時間。
便は完全に水になった。
検査直前まで続くと思っていた下剤タイムは、想像よりずっと早く終わった。
用意された下剤は、2本だったが、私は1本飲み終えたところで検査可能な状態になった。
病院へ行く準備をしながら、ふと思った。
今の私は、人生で一番空っぽなのではないか。
気になって体重計に乗って記録に取る事にした。
私の最小単位を知るために。
前回より2.2kg軽かった。
人生で初めて、
「中身のない私」を数字で見た気がした。
検査本番
心配だった病院までの道のりも、無事にクリアした。
血圧を測り、個室へ案内される。
検査着に着替え、点滴の準備が始まった。
ここで事件が起きる。
看護師さんが、
「チクッとしますよ」
と言ったあと、
「3、2、1」
とカウントダウンを始めたのだ。
なぜだ。
針そのものより、カウントダウンの方に緊張した。
気を紛らわせようとしていたのか、私の頭の中には種子島から飛び立つロケットの映像が流れていた。
採血でカウントダウンは、ちょっと心臓に悪い。
その後は個室で待機した。
静かな病院だった。
前回の胃カメラの時のように検査中の声も聞こえない。
静かすぎて、逆に緊張する。
そんな時に思い出したのが、検査前に読んでいた”さくらももこさん”のエッセイだった。
「ももこさんなら、この状況をどう書くだろう」
そんなことを考えながら、ゆっくり呼吸を繰り返した。
やがて呼ばれ、検査室へ。
左向きに横になると、先生が聞いた。
「昨日は眠れましたか?」
「いつもよりぐっすり眠れました」
「下剤も大丈夫でしたか?」
「午後の紅茶のおかげで」
先生は笑いながら、
「それはよかったですね」
と言った。
そして、
「後は寝ていたら終わりますからね」
そう言って、子どもを寝かしつけるように肩をトントンと叩いた。
「大きく吸って、吐いて」
その声に合わせて深呼吸する。
今回は眠れないかもしれない。
そう思った。
だが、4回目の深呼吸以降、記憶がない。
気づいたら終わっていた。
うっすらと、
「体内を通って、お尻から何か出たような気がする」
「自分で歩いて個室に戻った気がする」
そんな断片的な記憶だけが残っている。
とりあえず確かなのは、検査は終わっていて、私は個室で目を覚ましたということだった。
検査結果
その後、点滴の針を抜き、元の服に着替えて診察室へ向かった。
先生は検査中の写真を見せてくれた。
毎回思うことだが、眠っている間に、こんなにも自分の体内の写真が撮られていることに驚く。
気づけばファッション誌のモデル並みに撮影されているのである。
しかも今回は人生初の大腸。
自分の腸をこんなにじっくり見たのも初めてだった。
写真を見ながら先生が言った。
「きれいな腸でしたよ」
大きな病気ではなさそうだった。
それは素直に安心した。
けれど、その直後、
「ああ、また異常なしなんだ」とも思った。
私はこの半年近く、不調の原因を探して病院を回ってきた。
異常がないのは嬉しい。
でも、その一方で、原因もわからないままだった。
これでまた、
「精神的なものかもしれませんね」
という話になるのだろうか。
そんな考えが頭をよぎった。
ただ、今回は先生がそれ以上を言わなかった。
「少し赤い部分があるので、念のため組織検査に出しておきますね」
そう説明され、
「結果までは食事と水分に気をつけてくださいね」
とだけ告げられた。
それ以上の言葉がなかったことが、少しだけ救いでもあった。
安心と拍子抜けと、小さな置き去り感。
そんな気持ちで腸の写真を眺めていた。
結果は2週間後。
もう少しだけ続く。
診察室を出て、ようやく空腹に気づいた。
19時間ぶりの食事。
人生で初めて、お腹の中が空っぽのままでも、むしろ少し軽くて悪くないと思えた日だった。
終わってみて思ったこと
大腸カメラを受ける前は、本当に怖かった。
検査そのものより、むしろ下剤の方が怖かった。
経験者からは、
「前準備が一番つらい」
と何度も聞いていたからだ。
けれど終わってみると、
「思ったより大丈夫だった」
というのが一番正直な感想だった。
前日の食事制限も、当日の下剤も、自分との約束を一つずつ守っていくような感覚だった。
何度もトイレに行ったし、お尻から水も出た。
それでも、想像していたほど苦しくはなかった。
むしろ、
「ちゃんと受けられた」
という達成感の方が大きかった。
原因については、まだ組織検査の結果待ちだ。
だから、この話はまだ終わっていない。
それでも、半年近く続いた検査ロードは、ひとまず一区切りついた気がしている。
胃も見た。
婦人科も行った。
泌尿器科も行った。
そして、大腸も見た。
ここまで来たのだから、中を見るのはこれで十分だと思っている。
そして今回、一つだけ予想外だったことがある。
人生で初めて、お腹の中を空っぽにした。
あれほど怖かった大腸カメラよりも、
「何も入っていない自分」
の軽さの方が、妙に印象に残っている。
月刊・体内カメラ生活。
ついに大腸編まで来てしまった。
できれば次号は休刊にしたい。
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