メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ある彼女の冒険5

    =====
    ※私的な宗教的解釈を含みます。敬虔なキリスト教信者さんはここで回れ右して読み進めないことを強くお勧めします。
    =====

    シナイ山の山道から抜けて最寄りの村に差し掛かったところで私はへたり込んでしまった

    服は岩や草木ですれてボロボロだし、なんなら服の股がさらに裂けて腰布があらわだった

    でももう泣く気も起こらなかった

    元気もなにもかもすっからかんでわたしはあられも無いほこりまみれの姿で往来にへたりこんだ

    空にはあいからわず五重の虹がかかり続け「これどうしよう?みんな喜んでるし、でもいつまでも出しておくわけにはなぁ〜」と引っ込みがつかなくて困って独りごちるあなたの姿が見えるようだった


    そんな虹をぼーっと見つめながら、あなたが「生きて」といってくれたから生きなければならないと思い直した


    太陽は中天に至り、地面もわたしの肌もちりちりと灼きつけた

    「お嬢さんどうしたの?」


    ひとりの痩せた大きな垂れた目が印象的な男が声をかけてきた。旅の商人らしく、きれいにまとめられた大きな荷物を背負っている

    男が心配そうに、その大きな目を見開きこちらをじっと見つめている


    ふいに自分の格好が恥ずかしくなり服を引き延ばそうとしてみたけれどどうにもならないとわかった


    男はふーーーっと息をつくと、
    自分の荷物から厚手の生成りの布を取り出して私にふわっとかけてくれた


    ためらう私に
    「お代はいいよ。…でもあなたはいつまでもこんなところでへたり込んでいてはいけないと思う
    この村に宿をとっているんだけど、一緒に来るかい?」


    それは心からの心配といたわりの声に聞こえた

    …しかし、あの人は「ひとりめとふたりめの男にはついていくな」と言っていなかったか?


    「ありがとうございます。でも、大丈夫です。
    布地をありがとうございました」


    精一杯の元気と笑顔を出してそう伝えると、
    男はそれなら、といって立ち去っていった


    ひとりめの男が立ち去った後も私はその場にへたり込んだままだった


    灼けつくように太陽は照り続け、私の喉はからからに渇きその苦しさを訴えてきていた
    ただ先ほどもらった布のお陰で肌はなんとか日差しから守られていた


    水を売っている場所はないかとあたりを見渡すとてっぷりとした腹をゆったりとした服で覆った露店を開いている商人風の男と目が合った


    「お姉さん、水をお求めですか?
    お飲みなさい、ほらどんどんっ」


    口元から覗く歯並びの悪さに気後れするものを感じつつ私はお礼を言いながら渡された錫のお椀を受け取り、なかの水をこくこくと飲んだ


    生きている味がした
    …生きていける
    そう思った。


    口元を人差し指で拭いお礼を言ってお金とともにお椀を返す手を、
    なぜか男は腕ごとつかんだ


    「お姉さんんんん〜、いい女だねえ?
    …でも、そんななりじゃもったいないよ
    わたしの知り合いに教会に服を卸している男がいる
    紹介しあげるし、今日はもう店畳むし、連れてってあげてもいいよ?
    この通りわたしは商売上手で金なら有り余っている男だから、
    服買ってあげるし、極上のお嬢さんにしたててあげるからさあぁぁ」

    乱れた歯並びを露わにして鼻息を荒くする男に私の心は最大級に警告音を発していた

    逃げなければ

    「いいえっ!わ、、私いかなければな、ならないの、でっっっ!!!」


    発声とともに腕を振り解き脱兎の如く駆け出す私の後ろから男がドタドタと追いすがり、数瞬後にどてっと大きなものが転ぶ音がし悪態をつく声も聞こえたような気がするが、
    私は脇目も振らず、逃げて逃げて、逃げた


    涙が出てきた


    あの人の顔が頭にちらちらよぎった

    どうしてあの人は死んで
    あんなどうしようもない変態がのさばっているのかわからなかった



    どのくらい走ったのか


    村を丸ごと突っ切る勢いで走ってきたので、シナイ山のふもとのその村は、比較的村にしては規模が大きかったが、それでももう外れに来てしまっていた



    お腹が空いていた
    そういえばシナイ山に登り始める前に村で食事をとったのが最後の食事だったと思い出した


    …いい匂いがしてきた


    匂いのもとを辿ると
    煙逃しの円筒から湯気が上がっている石造の家が目に飛び込んできた


    ふらふらとなんとはなしにその家の方に歩いて行くと

    何人かのこどもたちの歓声と、



    あの人の、声がきこえてきた



    そんな馬鹿な


    あの人はさっき、光になって世界になったのだ


    信じられない気持ちを抱えたままドアをノックすると、
    ドアを開けてくれた年嵩の男の子と
    様々な年代のこどもたちの奥で
    熊のような体格の浅黒の腕をもつ男がゆっくりと振り返り


    「こんにちは?
    なに?お腹空いてるの??

    よかったら一緒にいかがですか?」

    と言って、どことはなくあの人に似たような笑顔を作り微笑んだ

    =====
    この話の続きはこちらから

    この話を最初から読みたい方は
    ある彼女の冒険1
    ある彼女の冒険2
    ある彼女の冒険3
    ある彼女の冒険4

    ヨシュア目線の第一話はこちらから
    ユダ目線の第二話はこちらから


    ここまで読んでくださってありがとうございます🌸
    あなたは素敵です💖
    また読みにきてくださいね✨

    余談

    いま熱烈にハマっているSNSがあります。
    その名はsubstackです。
    Xのツイート、InstagramのLIVE機能、noteのような記事機能、チャット機能、なんとメルマガスタンド機能(有料化も可能)まで無料で使い倒せて広告が見当たらない
    そんな「うそでしょ??」というSNSがsubstackです。
    いま日本でのsubstackは黎明期
    有名人も無名な人もわちゃわちゃと交流しながら日々楽しんでいます。
    沼です。マウントなんて存在しません。
    必要がないから。
    みんなが自立してお互いの意見を楽しんでいる。
    それがsubstack。

    んー、
    とりあえずsubstackにくればわかるよ
    noteとの連携もできそうですし✨
    おいでませsubstack🌸

    #サブスタ盛り上げ隊

     
     
    不登校・ひきこもりの経験から、今お子さんへの接し方に悩んでいるおかあさん、おとうさんの参考になる情報を書いています。小説も書いてるよ🗒️ 気軽にのぞいていってください♪ 主にsubstackにて活動中です🌸 「味村昇」で検索してねっ🔍

    あなたへのおすすめ