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ある彼女の冒険3

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    ※私的な宗教的解釈を含みます。敬虔なキリスト教信者さんはここで回れ右して読み進めないことを強くお勧めします。
    =====


    私が下宿の女将さんに引っ張られるようにして帰宿したのと前後して
    アリマタヤ兄さんが教会のピラト提督に十字架降架を願い出て、

    あの人の体はアリマタヤ兄さんとニコデモ兄さんに戒めを解かれ、香油を全身にぬってもらい墓所である街外れの洞窟に安置された。


    教会の神官たちが、
    私たち弟子があの人の遺体を隠して
    「復活した」
    と言いかねない、と言って


    その洞窟の入り口を、大人が10人がかりでやっと動かせるようなそんな大きな岩で早々に塞いでしまった。

    言いがかりだと思ったけれど、
    兄弟子たちはあの人のことを尊崇していたから言いかねないな、とも思った


    その晩はなにもすることが見つけられなかったので大人しく宿屋で休息をとり、
    次の土曜日も教会が定めた安息日だったからあの人のために香油を買い求めることさえできなかった。


    日曜日の早朝、エルサレムの朝市にかけていって一番上等な香油を求めることができた。
    まあ洞窟は岩で塞がれてしまっているのだからあの人の足に塗ってあげることはできないんだろうけども、でも必要な気がして、持っていたお金のほとんどを使って買い求めた


    街から洞窟に向かう途中で何人かの女の人が寄ってきて、大丈夫かと声をかけてくれた
    涙がこぼれそうになるのを堪えて、これからあの人のところへ行って可能だったら黄泉への手向に足に香油を塗ってあげたいのだ、と話した


    女性たちは顔を見合わせて頷くと
    それぞれの家に走って戻り、
    ある人は家で育てているお花を束にして戻ってきた

    「一緒に行かせてください。私たちは、私たちもまた、彼の方に救われました」


    今度こそ涙があふれて止まらなくなってしまった
    ああ、あの人はたしかに人を救っていたのだと実感した


    嗚咽をもらししゃっくりあげ始めてしまった私の肩を女性たちは包み込み、支えるようにして、
    洞窟まで一緒にいきましょうと言ってくれた


    洞窟の入り口がそろそろ見えそうなところで、私は女性たちに忘れ物をしたので、取りに行ってもらえないかと頼んでひとりになった


    ひとりで静かにあの人に会いたかった


    入り口まで来ると、
    あの大きな岩がずれて人ひとりが通れる隙間ができていた


    不思議な気がして隙間から中に入ると
    ユダ兄さんが腰に手を当ててあの人の体を見下ろしていた


    「ユダ兄さんっ」


    と声をかけると振り返り、
    くちびるに指を当て


    「会えてよかった。
    あいつに頼まれたから俺が連れて行く。
    お前の杯も一緒にって頼まれたから探したんだけどここにはなくて、
    持ってるよな?」


    そりゃあもってるよ
    形見にしようと思って腰袋の中に入れたままにしてたから


    荷物の中から杯を取り出している間に、
    ユダ兄さんは布袋にあの人を包み、さらに絨毯です巻きにして肩にかついでいた


    素早すぎるでしょ?と、びっくりしてユダ兄さんに杯を渡したらユダ兄さんはそれを斜めにかけていた布袋の中に片手で器用に入れた


    そのまま洞窟を出て行こうとするので、
    なにがあったの?どうしてこうなっているの?
    どこに連れて行くのかだけでも教えて欲しいと食い下がると

    ユダ兄さんはすこし考え、
    そして戻ってきて耳元で



    「モーセの神のおわすところ」


    それだけだけ言うと走り出ていって、
    私がまろびながら洞窟から這い出た時には、もう姿もなかった

    モーセの神のおわすところ?
    それは教会の聖書の中のモーセの十戒の話で出てくる、、、

    シナイ山?



    何時間か経ったのか、それとも数分しか経っていなかったのかわからないけど
    忘れ物を頼んでいた女性たちが戻ってきて洞窟が空であることを見つけ騒ぎ出した


    そのうち兄弟子たちが集まってきて大騒ぎになった


    ある人は泣き、ある人は嘆き、
    またある人は呆然と立ち尽くした


    ユダ兄さんのことを伝えようと一瞬思ったけれど、だめだ、と思った

    この人たちはまだだめだ
    あの人の遺志もユダ兄さんの思いも踏みにじってぐちゃぐちゃにしてしまいかねない

    この人たちはあの人の体に縋ってしまう
    私だけで行くんだ!


    私はお腹に息を入れ、止めて、吐いて、ゆっくりと立ち上がった

    そして、
    「兄さんたち、私は行きます。いかなけばいけないから」


    兄弟子たちは嘆くのをやめ、
    一様に私を見た


    そして各々その場に立ち上がった

    「行くんだね。
    あなたに彼の方の幸いがありますように、


    …行く前に謝らせてほしい。
    私たちはあなたに嫉妬していた。

    あの人の特別な愛があなたの上にあると知ってしまったから

    だからあなたを彼の方から遠ざけ、あなたに冷たく当たってしまった。



    愚かだった。


    もしかしたら私たちこそが彼の方を死に追いやったのだと思う

    そして、彼の方が死してなお彼の方の体に縋ろうとしてしまっていた


    …もうやめようと思う。


    あなたは彼の方の行く先を知っているのだろう?
    いや、聞かないよ?


    行きなさい。
    私たちもまた進まなければならないと思う


    …アーメン」

    そう言って手を合わせて私に礼をとった

    私も手を合わせて兄さんにアーメン、と小さく言い洞窟から出た


    だれかがハレルヤ、と口にだした
    ハレルヤ、ハレルヤ、とひとりまたひとりと口に出し、繰り返して徐々に大きな響きになっていった。

    傍目には教祖を失った哀れな団体が狂ったようにしか見えかったかも知れないけれど

    私には兄さんたちの気持ちがよく伝わってきたし、外面もなく行先を祝福して応援しようとしてくれるその気持ちが嬉しかった

    洞窟からだいぶ離れても
    まだ聞こえてくる、そんな気がしていた

    =====
    続きのお話はこちらから

    この話を最初から読みたい方は
    ある彼女の冒険1
    ある彼女の冒険2

    キリスト目線の前日譚はこちらから
    ユダ目線のお話はこちらから


    ここまで読んでくださってありがとうございます🌸
    あなたは素敵です💖
    また読みにきてくださいね✨

    余談

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    んー、
    とりあえずsubstackにくればわかるよ
    noteとの連携もできそうですし✨
    おいでませsubstack🌸

    #サブスタ盛り上げ隊

     
     
    不登校・ひきこもりの経験から、今お子さんへの接し方に悩んでいるおかあさん、おとうさんの参考になる情報を書いています。小説も書いてるよ🗒️ 気軽にのぞいていってください♪ 主にsubstackにて活動中です🌸 「味村昇」で検索してねっ🔍

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