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ある彼女の冒険4

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    ※私的な宗教的解釈を含みます。敬虔なキリスト教信者さんはここで回れ右して読み進めないことを強くお勧めします。
    =====

    女ひとりのシナイ山への道のりは意外とすんなり進んだ

    ふもとの村までは乗り合い馬車があったからそれを乗り継いで行った

    馬車で乗り合った人たちはなんだかそわそわして理由のない不安をボソボソと口にする人もいた


    シナイ山のふもとの村に2日ほど逗留し、シナイ山のコンディションが整うのを待った

    大雨に降られたり大風に吹かれたり、あるいは暑すぎたりを我慢しながら登攀するのはまっぴらのごめんだったからだ


    そして3日目の今日、
    穏やかであたたかい日差しが夜を朝に変えた

    これなら登っていけるだろうと、簡単にまとめた荷物を肩から斜めにかけて私はシナイ山の頂上を目指すことにした

    なぜシナイ山の頂上なのか?

    あの人が安置場所までユダ兄さんに頼んだのであれば、
    山の中腹とか光が当たらない場所を指定するのではなく、
    天と太陽に一番近い場所に横たえてほしいと頼むと思ったからだ


    山の中腹までは着てきた足首あたりまである厚手のローブのままで歩いてこられたが、次に切り立った山肌を這うように進んでいくしかないことがわかって困ってしまった


    仕方がないので、護身用に持ってきていた片刃の短剣で太ももの真ん中くらいから足元に向かってじいぃぃっとローブの裾を裂いた

    そしてその分かれた裾をそれぞれ両足の足首で結び、私は岩山にとりつき登り始める


    股の隙間から腰布が覗いたりしていてなかなかすごい格好をしているなとおもったけれど、

    あの人に会えればいい、
    あの人に会えるまででいいと
    自分をはげました

    5時間か、あるいはもっと経ったのだろうか?
    霧にけぶるようだった朝は太陽の日差しで照らされ温められもうすっかり覚醒していた

    シナイ山の頂上にそれは安置されていた
    棺がそこだけ草も木も生えていない岩の上に安置されていた


    私は駆け寄って重たい棺の蓋を腹に息を溜めて押しこくった


    あの人がいた


    静かに、たったいま死んだのだと言わんばかりに、ただただ眠るように死んでいた


    私は棺の蓋をそっと閉じ
    棺から数歩後退った


    …私はここまで来て何をしたかったのだろう?
    もしかしてあの人に会える、笑いかけてもらえる、あの十字架刑の前日に話したいと思っていたことを伝えられる、聞いてもらえるとでも思っていたのか?


    涙が出そうになったがぐっと堪えた

    私はひとりで生きていかなければならない
    このシナイ山を降りて、
    あの人の意志を継いで、人々にあの人の言葉を、愛を伝えていくべきなのだろう

    ひとりっきりで旅をしながら、、、


    そこまで考えると堪えていた涙が押し留め切れずあふれてしまった


    声を上げて泣いた


    寂しかった
    孤独だった
    あの人が私の全てだった
    あの人のいないこの世界はもう私にとって意味をなさなった

    あなたと一緒に行きたかった
    連れていってほしかった

    なんで置いていったの?
    なんでひとりで悩んで死んで行ったの??

    ユダ兄さんにだけではなく私にも話してほしかった
    …でもあの時の私にはあなたの悩みを引き受けるだけのちからはなかった


    だからいまあなたは死んでいる


    苦しい、泣きすぎて過呼吸になりかけてる、、、
    落ち着け、落ち着いてよ…私の体…!!!!



    ゴトッと何か硬いものが木の板に当たるような音が背後からした

    そして、

    「痛あっ!
    …なになになになに????

    えっ?木?箱の中??…棺?
    なんで??

    あ!
    ああ〜!
    そういえばそうだったなあ〜」


    ひとり合点いったような台詞が聞こえてきて
    棺の蓋がズズズっと音を立てて開いていき


    あの人がひょこっと上体を起こしたのが見えた

    「ヨシュアさん?」


    宣伝用ではない、あの人のほんとうの名前で呼びかけると
    あなたはこちらを振り返り、
    少しびっくりした顔をしたけれど、すぐに嬉しそうに破顔して

    よいしょっと棺をまたいで立ち上がった


    ヨシュアさんだ!
    ヨシュアさんが生きてる!!

    そうだよ!
    死ぬわけないじゃん!あんなにいいことしてきてあんな酷い死に方をするはずない!!

    夢だ、私はただ悪い夢を見ていたのだ!


    私は彼の元に走り寄っていって飛びついた
    バランスを崩した私たちはそのまま背の高い草むらの中を転がり、止まった


    嬉しくて笑いがとまらない
    笑いながら横を見るとヨシュアさんも嬉しそうに笑っていた

    「マグダラさん、
    ここまで登ってきてくれたの?
    ……大変だっただろうに…ありがとう!!!


    きみが来てくれるとは思ってなかったから、なんだか緊張してしまうな


    実はきみに伝えたいことがあって、
    伝えられずに死んでしまったのが心残りだったんだよ

    だからきみが来てくれてよかった


    あのね、」

    ここでヨシュアさんはふうーっと一度息を吐き切って、

    「好きだよ
    好きだった、、、

    きみが好きだったし、
    きみを抱いて自分のものにしたいとまで思っていた

    マグダラさん、
    好きだ
    大好きだよ…」


    えっ、
    うっ??
    あなたが私のことが、好き???


    …私も好き!
    好きっ好き好きっ!!!!
    愛してるっ!


    私は嬉しくて彼のくちびるに口付けた
    最初はくちびるをただ押し当てて
    徐々にそれでは足りなくなって彼のくちびるを舐めまわし、くちびるをこじ開けて彼の口の中を舐めまわして吸った

    もう頭のなかが真っ白でただただ喜びでいっぱいだった


    ずっとこうしていたかったけれど、私の体も彼を求め出した

    ヨシュアさんも私を抱きたいと言ってくれたし、いいよね?いいよね、ヨシュアさん?


    そう思いながら彼の股間に手を添えた


    でもそこには男の人にあるべきものが無く、女の人のように硬い盛り上がった骨があるだけだった



    あの人は首をゆっくり振りながら私の体を引き離し言った


    「マグダラさん、ごめんね
    マグダラさんを抱いて気持ちよくしてあげたいんだけど、
    おれ死んで神さまとやらになっちゃったらしくて、
    神さまは両性具有だから
    男でもあり女でもある、
    男でもない女でもない、


    そんな体になっちゃったんだ


    だから女性性であるマグダラさんを抱いてあげることは、もうできないんだよ、、、」


    えっ、、
    はっ?ええっ?


    神さま?
    両性具有??
    だから私はヨシュアさんに抱いてもらうことができない???


    混乱する頭がガンガン痛んだ

    ??
    私はあなたを求めて、
    ひとりきりでこんな山道を登ってきて、

    あなたは?!
    勝手に神さまとやらの完全な存在になって?!
    永遠に半分足りない私をおいて?!!
    もう抱くこともできないって??!!!


    悔しさなのか
    悲しみなのか
    痛みなのか
    怒りがわいてしょうがなかった


    「返してよっ
    私のヨシュアさんを返してよおっ!!!」


    両拳で彼の胸板を力まかせに叩き、
    そのうちにその腕が掴まれ、体ごと引き寄せられ、


    あの人は私を力いっぱい抱きしめた

    その体は人のように柔らかくて、
    冷たくはなかったが暖かくもなく心臓の鼓動も感じることはできなかった


    おじけずく私に彼が

    「マグダラさん、
    おれはもうあなたを抱いてあげることはできないけど抱きしめてあげることはできる


    この山から降りたら
    きみに3人の男が声をかけてくる


    ひとり目とふたり目の男が
    どんなに優しく声をかけてきても良さそうなことを言っても、きみを怒鳴りつけて連れて行こうとしても、

    決してついて行ってはいけないよ?


    3人目の人についていきなさい。

    熊のように体が大きくて、最初はこわい思いをすると思うんだけど、とても優しくて賢くて働き者のいい人だよ


    きみをきっと守ってくれる
    きみもきっと気にいるだろうね
    彼、おれの声にそっくりな声をしているからおれだと勘違いしちゃうかも?」


    そういって体を離すと、
    一歩、また一歩後ろに進み始めた

    一歩ごとに背後から光があふれて強くなって行った


    私は追いかけた

    私が追いかけるとその速度より速く、私が走り出すとさらに速く進んでいく

    光も強くなっていって、
    もうまぶしくて見られない、と思ったところで

    あの日、香油をあなたの足に塗った夜に見せてくれたあの満面の優しい笑顔を作って、


    「マグダラさん、生きて?」


    と言い残し光の爆発?大洪水になり、
    いつのまにか降り出していた雨に乱反射し幾億の光の粒の輝きとなって世界をうめ尽くした


    世界はきれいだった
    ただただ愛にあふれていて美しかった


    間違っていた
    人との諍いや、その日食べることに飢えていたことで目がくもってしまっていただけで

    世界はこんなにも愛にあふれていたんだとわかった


    というよりもあの人が全部愛で満たしてくれたんだということがわかった


    雨がやんで
    今度は虹がかかった


    一重二重、三重、、、
    五重?

    五重の虹が空に大きくかかっていた
    やりすぎだろうとも思ったけれも、あの人らしいなあとも思った


    気づいたら泣いていた
    そんな愛を見せてもらって包み込んでもらっても私は寂しかった


    私はあなたの、
    ただ私にだけの愛が欲しかった


    こんなにも大きな愛をもってさえ満たされず飢えている自分が悲しかった



    ひとしきり泣いた後、私はもう一度あの人が寝ていた棺の中を覗きそこにプレゼントした杯が転がっているのを見つけた

    でもこれはもう私のものではないから置いて行くことにした


    棺の蓋をやっとの思いでまた閉めて、
    手近にあった枯れ草で覆って隠した
    枯れ草が飛んで行かないように大きめの石をいくつも置いた


    …もういかなければ



    後ろを振り返らないようにシナイ山をゆっくりゆっくりくだっていった

    そのあいだも空には五重の虹がかかりつづけ


    世界は愛に満たされていた

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    続きはこちらから
    この話を最初から読みたい方は
    ある彼女の冒険1
    ある彼女の冒険2
    ある彼女の冒険3

    ヨシュア目線の第一話はこちらから
    ユダ目線の第二話はこちらから


    ここまで読んでくださってありがとうございます🌸
    あなたは素敵です💖
    また読みにきてくださいね✨

    余談

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    有名人も無名な人もわちゃわちゃと交流しながら日々楽しんでいます。
    沼です。マウントなんて存在しません。
    必要がないから。
    みんなが自立してお互いの意見を楽しんでいる。
    それがsubstack。

    んー、
    とりあえずsubstackにくればわかるよ
    noteとの連携もできそうですし✨
    おいでませsubstack🌸

    #サブスタ盛り上げ隊

     
     
    不登校・ひきこもりの経験から、今お子さんへの接し方に悩んでいるおかあさん、おとうさんの参考になる情報を書いています。小説も書いてるよ🗒️ 気軽にのぞいていってください♪ 主にsubstackにて活動中です🌸 「味村昇」で検索してねっ🔍

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