第6章|小さな成果と大きな不安
動き出して数日。
ヤフオクで出品したものが、ひとつ売れた。
通知を見たとき、
ほんの少しだけ嬉しかった。
大きな金額じゃない。
生活が変わるわけでもない。
でも、
「自分で動いて、お金が生まれた」
その事実は小さくなかった。
何社かに連絡もした。
けれど、求人を見れば見るほど考えてしまう。
このまま東京で働いて、未来はあるのか。
特別な実績も資格もない。
これまで普通にもらっていた給料も、
求人票の額面を見れば、どれも似たような数字だった。
定年まであと15年。
今から、誰でもできる仕事に就いて、
また同じように働き、
また同じように切られる可能性もある。
そのときだった。
協力隊のインスタグラムが、目に飛び込んできた。
農業。
東日本大震災のとき、
子どもたちを汚染から守りたいと本気で考えたことがある。
地方移住。
香川まで行き、
農家に住み込みで2週間手伝ったこともあった。
止まっていた何かが、また動き出す。
スマホを持つ手が止まった。
やりたい仕事なのか。
やらなければならない仕事なのか。
前に進んでいる感覚はある。
けれど同時に、
じわじわと大きな不安も膨らんでいった。
娘が20歳になるまで、あと10年。
この先の会社勤めに、未来はあるのか。
貯金はどれくらい持つのか。
本当に次は決まるのか。
夜になると、不安は大きくなる。
昼間は動いていれば紛れる。
でも、静かになると
現実の数字が頭に浮かぶ。
小さな成果と、
それを飲み込む大きな不安。
それでも、止まるわけにはいかない。
進みながら考えるしかない。
そう自分に言い聞かせていた。
ーーー✴︎ シリーズ一覧 ✴︎ーーー
「息子の進路と、50歳の進路」
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▶ 第1章
【息子の進路と、50歳の進路】
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▶ 第2章
【解雇の日、静かな音がした】
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【家のドアを開けた瞬間】
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【進むしかない】
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▶ 第5章
【一歩目を踏み出す朝】
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▶ 第6章
【小さな成果と大きな不安】
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▶ 第7章
【家族のテーブルに、未来を置いた夜】
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▶ 第8章
【現地という現実】
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【画面越しの温度】
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第10章|待つ時間
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▶ 第11章
【連絡が来た日】
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▶第12章
【選べる未来】
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▶ 第13章
【面接の日】
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▶ 次章
(更新され次第追加)
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このシリーズは、
現実の進行とともに更新されていきます。
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