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第2章|解雇の日、静かな音がした

    解雇の日は、驚くほど静かだった。

    その朝は、何でもない朝のはずだった。

    朝、練馬駐屯地にいた。
    ジオラマ模型用の写真撮影。
    若い会社員と現地で打ち合わせをしていた。

    お客さんと元請けとの話を終え、
    午後は現地計測を手伝う予定だった。

    そのとき、社長からショートメールが入った。

    「今日何時に会社戻れますか?
    お話したいことがあるので、
    打ち合わせ終わり次第帰社願います。」

    昼休みを過ぎた頃だった。

    はぁ……
    昨日、顔を合わせていただろ。

    なんでいつも急なんだよ。

    「明日じゃダメなんですか?」

    「申し訳ないですが、終わり次第帰社願います。」

    定時を過ぎた17時50分。
    会社に戻ると、応接室に呼ばれた。
    社長と二人。

    今日の業務報告を一通り伝える。

    そして沈黙。

    「今日付けで解雇になります。」

    解雇通知が一枚、机の上に置かれた。

    怒鳴り声もなければ、ドラマもない。
    ただ、事務的な言葉が並んだ。

    「はい、そうなります。」

    その一言で終わった。

    ほぼ10年働いた会社の最後が、これか。

    でも、不思議とその瞬間は冷めていた。

    目も合わせず、

    「今日は定時を過ぎているので、帰ります。」

    それだけ言って、立ち上がった。

    何かを言い返すでもなく、
    感情をぶつけるでもなく。

    ただ、静かに席を立った。

    会社を出て、そのまま歩いた。

    都内での打ち合わせ帰りだったから、
    電車ではなく、そのまま足が動いた。

    気づけば、いつもの定食屋の前に立っていた。

    暖簾をくぐる。

    不思議なことに、その日は客が少なかった。
    いつもは誰かしら常連がいるのに。

    カウンターに座ると、
    お母さんがいつも通りの声で言った。

    「おつかれさま。」

    その一言が、抜けた心に沁みた。

    気づけば、閉店まで飲んでいた。
    そんなこと、1年以上なかった。

    あの日、静かに終わったのは、会社だけだった。

    そう思いたかった。


    ーーー✴︎ シリーズ一覧 ✴︎ーーー

    「息子の進路と、50歳の進路」

    ※この物語は現在進行中です

    ▶ 第1章
    【息子の進路と、50歳の進路】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/ncf94247f9754

    ▶ 第2章
    【解雇の日、静かな音がした】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/na71d8572ee6b

    ▶ 第3章
    【家のドアを開けた瞬間】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/nec8571d6c9ff

    ▶ 第4章
    【進むしかない】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n979dff85c81e

    ▶ 第5章
    【一歩目を踏み出す朝】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n7be50d3570eb

    ▶ 第6章
    【小さな成果と大きな不安】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/nb14af9fbfe13

    ▶ 第7章
    【家族のテーブルに、未来を置いた夜】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n2ba96dae3557

    ▶ 第8章
    【現地という現実】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n21dcb2db7d2b

    ▶ 第9章
    【画面越しの温度】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/neab1cb528725

    第10章|待つ時間
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n6968a4f461d3

    ▶ 第11章
    【連絡が来た日】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n2fcdf66cc80b

    ▶第12章
    【選べる未来】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n5de67a2a8ba9

    ▶ 第13章
    【面接の日】
    https://note.com/lucky_quail6282/n/n6df3e8e11956

    ▶ 次章
    (更新され次第追加)

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    このシリーズは、
    現実の進行とともに更新されていきます。

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    神成

     
     
    神成(かみなり) 50歳で会社を解雇され、山形に移住して米農業を始めます。 2007年のmixiから日記を書き続け、 今はnoteに人生の記録を書いています。 カルチャー、服、仕事、家族、失敗。 遠回りしてきた人生の話。 「解雇からの再スタート」 ここに記録しています。

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