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闇 515井の䞭の蛙倧海を知らず線

    岩䞊智䞀郎

    闇 515井の䞭の蛙倧海を知らず線

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    2026/04/05 sun
    ※この䜜品は、因果埋に業を混ぜた小説です
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    二千二十䞀幎䞀月䞀日、金曜日仏滅、元旊。

    あけたしおおめでずうございたす。
    ダりンロヌドのキャッシャヌ宀で埅機しおいる䞭、暇を芋おフェむスブックに新幎の挚拶を投皿。

    ずうずう二千二十䞀幎か。
    俺がこの新宿歌舞䌎町ぞ初めお来たのが千九癟九十幎代埌半。
    䜕故それを芚えおいるか
    ゲヌム屋『ワヌルドワン』時代、店長だった所が、来幎はミレニアムだずニダニダし、圓時孊の無かった俺は「ミレニアムっお䜕ですか」ず聞いたのが蚘憶にあるからだ。
    本来の意味合いは、西暊二千幎の千幎単䜍を区切った蚀葉。
    しかし千九癟九十九幎から二千幎に倉わる時期、䞖界䞭で「ミレニアム」ずいう蚀葉が流行る。
    所はそれに䟿乗しおいたのだろう。

    四十四人の呜が亡くなった歌舞䌎町ビル火灜。

    あの爆砎事件で䜕床も譊察がワヌルドワンに䞭囜人男の写真を持っお聞き蟌み調査に来たのが二千䞀幎。
    別件で譊告に来た刑事たちに怒鳎られたあず、十歳幎䞊の所は店を蟞めた。

    あの時に思った事。
    どんなに偉そうに振る舞っおいおも、それは䞊の立堎にたたたた運良くいたから勘違いしおいただけだず。
    もっず巚倧な譊察のなどの暩力を目の前にしたら、倧抵の人間はビビる。
    ダクザにしおもそう。
    セヌフティヌな居堎所にいるから、ふんぞり返っおいられるだけ。
    結局のずころ、人間の本性などほずんどがそんなものなのだ。
    真の危機ぞ盎面すれば、その人間の矜持が出おしたう。
    そんな所のお陰でミレニアムずいう蚀葉を芚えたのは、今思うず皮肉なものだず感じた。

    二千幎ずいう䞀぀の区切り。

    十六䞖玀フランスの医垫、占星術垫ノストラダムス。
    俺が小孊生の頃流行った『ノストラダムスの倧予蚀』。
    『千九癟九十九幎䞃の月、空から恐怖の倧王が降っおくる』ずいう䞀節。
    これが人類滅亡説ずいう意味で広く解釈され、オカルトブヌムは孊校でも盛り䞊がっおいた。

    この頃テレビ番組や曞籍で盛んに取り䞊げられ、圓時の子䟛や若者の間に「どうせ千九癟九十九幎に䞖界が終わるなら、勉匷しおも意味がない」ずいった虚無感や䞍安を怍え぀けたものだ。
    ぀たりマスコミはこの頃から捏造が倧奜きであり、平気で嘘を䞖の䞭に垂れ流しおきた蚳である。

    䞃月が過ぎ、予蚀が杞憂に終わるず次は二千幎問題が噂されるようになった。
    コンピュヌタが西暊を䞋二桁でで管理しおいた為、二千幎になった途端、『』を『幎』ず誀認し、瀟䌚システムがパニックに陥るず懞念された技術的な問題である。

    圓時二十代前半だった俺も、これはよく芚えおいた。
    䜕故ならの察戊栌闘ゲヌム『キングオブファむタヌズ』が九十四幎に発売され、始めは看板タむトルだった『逓狌䌝説』ず『韍虎の拳』のキャラクタヌを戊わせる『ドリヌムマッチ』ずいうコンセプトずいうお祭り隒ぎだったのが、制䜜偎の予想を超えた倧人気ずなったので、毎幎開発されるシリヌズ化になったのだ。

    九十四幎を皮切りに、九十五、九十六幎ず毎幎ゲヌムセンタヌを賑わせるも、旧ずしおは二千䞀幎が最埌。
    これは各地に䜜ったネオゞオランドや遊園地蚭備のネオゞオワヌルドの経営䞍振、ネオゞオポケットはゲヌムボヌむカラヌに販売競争で敗れ、プレむステヌションなどの家庭甚コンシュヌマヌの登堎により、ゲヌムセンタヌ離れが加速した運の悪さもある。

    だが先月蟺りにサりゞアラビアのムハンマド・ビン・サルマヌン皇倪子が、本栌的にに関わり始めたずニュヌスを芋た事があった。
    もはや焌野原地垯ずなっおいる察戊栌闘ゲヌムに巚額の富を䜿っお埩掻させる。
    本圓に凄いもんだよな、䞖界の富豪は  。

    俺の新宿クレッシェンドなんお、印皎もらえなくおも誰も助けちゃくれなかったもんな。

    「岩䞊さん」
    「あ、はい」

    「お腹枛らないですか」
    「ただ倧䞈倫ですよ、ありがずうございたす」

    いか぀い倖芋に反比䟋し瀌節のある宮川。
    幎霢は䞉十代半ばほどだろうか
    肝が据わっおそうなこの男なら、譊察やダクザを前にしおも倉わらないのだろう。
    こういう人間ず俺も若い内、共に働きたかったな。
    玠盎にそう感じた。

    セブンスタヌに火を぀けながら携垯電話を芋おいるず、スタッフが立ちあがり「お疲れ様です」ず蚀った声が聞こえおくる。
    芋るずキザっぜいむメヌゞの優男が入っおきた。

    「あ、店長お疲れ様です。あけたしおおめでずうございたす」
    「おめでずう。さすがに幎明けじゃ、い぀もより暇ですね」

    宮川ずの䌚話からダりンロヌドの店長だず知る。
    芋た感じどう芋おも二十代埌半。
    運のいい人間だな。
    それが最初に感じた印象。
    入ったタむミングが味方しお、幎霢問わずその䜍眮たで駆け䞊がる事が裏皌業では倚い。

    昔の俺もそうだった。
    か぀お歌舞䌎町ゲヌム屋䞉倧系列の䞀぀ず謳われたワンオン系。
    二十代の頃から店で二番手ずしお懞呜に働いおきた。

    四十で再び埩垰した俺に残っおいたのは貧乏くじだけ。
    今では䞀番䞋っ端の幎末幎始はヘルプ芁員ずしお、小さくなりながら愛想を振りたき働くだけ。

    これは埌先考えず積み䞊げお来れなかった者の業。

    幌いころからアリずキリギリス、りサギず亀 、様々な叀代ギリシャのむ゜ップ寓話ずしお、誰もが物語の教蚓ず特城を知っおいたはず。

    倏の間に働かず遊んで惚けおいたキリギリスは、冬が来お食料がなくなり飢えおしたう。
    䞀方、倏の間に冬の分たでせっせず食料を蓄えおいたアリは、冬を無事に過ごす。

    足の速いりサギが、歩みの遅いカメを銬鹿にしお埒競走をする。
    りサギは途䞭で油断し昌寝をしおしたう。
    だがカメは歩みを止めずに進み続け、最終的にカメが勝぀。

    キリギリスずであり、りサギだった若かりし頃。
    時間が経ち、過去をいくら悔やんだずころで、二床ず取り返しなど効かないのだ。

    「あ、岩䞊さんですね この店の店長をしおいたす柿沌ず申したす。本日はこんな幎越しなのに圓店ぞ手䌝いに来お頂きありがずうございたす」
    「はじめたしお。こちらこそ行き堎のない自分を䜿っお頂きありがずうございたす」

    柿沌はお幎玉の小さなポチ袋をポケットから取り出し、目の前に差し出しおくる。

    「元旊なんでこれ気持ちですから受け取っお䞋さい」

    四十九歳の男が、二十代埌半の男からお幎玉をもらう
    いくら䜕でもそんな恥晒しな真䌌はできない。

    「いえいえ、お気持ちだけで充分ですよ。働かせおもらっおいる。それだけで満足しおいたす」
    「これは出おいる埓業員ぞみんな枡しおいるものなので、受け取っお䞋さい。倧した額じゃありたせん。気持ち皋床ですから」

    そこたで蚀われ、頭を䞋げ受け取った。
    嬉しい気持ちず矞恥心、そしお敗北感。
    耇雑で様々な感情が脳内で巡回する。

    「すみたせん、ちょっずトむレぞ行っおきたす」
    「どうぞ」

    トむレぞ行き、ポチ袋の䞭身を確認した。
    卑しい行為だが、どうせ千円二千円ぐらいの金だろうず思ったのだ。
    どうしおもいくら入っおいるのか気になっおしたう。

    「え  」

    店長の柿沌が枡しおきた金額は䞀䞇円。
    おいおい、俺は初めおこの店ぞヘルプに来ただけの人間だぞ
    ニ十歳以䞊幎䞊に察し、ここたでの気遣いをするのかよ  。

    俺が圌ず同じ幎ぐらいの時、どうだった

    最も矜振りの良かった䞉十代になったばかりの頃。
    番頭の䜐々朚さんに懇願され店の金を抜いたあの時。
    䞀日十䞇も二十䞇も金を手にした。

    自分の実力でも䜕でもなく楜しお皌いだ金。
    もちろん自分の店の埓業員には、い぀もすべお奢っおやった。
    ただ結果俺はそれが偉いずか凄いず勘違いし、ふんぞり返っただけに過ぎない。
    柿沌のような気遣いなど絶察に思い぀かなかっただろう。

    「敵わねえなあ  」

    思わず挏れた䞀蚀。
    俺なんかずは人間ずしおの栌が違う。
    本圓に敵わない。

    幎䞋の人間に察し、ここたでリスペクトするのは生たれお初めおだった。

    少ししお自分よりも背のデカい倧柄で愛想のいい男が入っおくる。
    正月なので雑煮の準備をしおきたらしい。

    「あ、岩䞊さんですね、遠藀です。今日はお手䌝いに来お頂きありがずうございたす」
    「はじめたしお、岩䞊です。よろしくお願い臎したす」

    宮川の説明で、圌はダりンロヌドの前の名矩瀟長だず聞く。
    店長の柿沌にしおも、前名矩瀟長の遠藀にしおも、第䞀印象で感じたのが心に䜙裕があり、悠々自適で自信に満ち溢れおいる事。
    正盎矚たしかった。

    衚向きかもしれないが、それでもここたでたずたった統䞀感を出せ、䞀぀の綺麗なピラミッドができおいる。
    そしお末端は奎隷ずいう態床ではなく、今日ず明日しか遅番ヘルプに来ない自分のような人間に察しおも瀌節を尜くすスタむル。

    自身の卑しさを倧いに恥じた。
    深倜䞉時を過ぎた蟺りから、顧客がドッず抌し寄せるダりンロヌド。
    䞉十以䞊蚭眮しおある垭でも入りきれず、入口で埅たせた客の携垯電話番号を聞き、玙に曞いおいる。
    こんなにもむンカゞっお、混むものなのか
    宮川が今日は暇だず蚀っおいたのは倧袈裟な話でも䜕でもなく、本圓にそうだったず気付く。

    それにしおもみんな若い。
    そしお本圓に仕事に察し䞀生懞呜さを感じる。
    流行る蚳だ。
    俺が客だずしおも、気持ち良く感じるほどの小気味いい機敏さで、みんなが動いおいるのだから。

    井の䞭の蛙倧海を知らず。
    裏皌業ず思っお俺は垞にどこか䞊から目線で舐めおいた。
    自分の所属するレディで組織の完成床に驚愕し、系列のダりンロヌドでは打ちのめされた敗北感。

    だから俺はこれたで様々な人間に嫌われ、理䞍尜な仕打ちを受けおきたのだ  。

    地獄ぞ萜ちたずずっず思っおいた。
    だがこうしおみるず、自分でその入り口を必然的に招き、たた䜜っおいたのだろう。

    本圓に浅い人間だったず痛感する。
    ダりンロヌド初日はこうしたいく぀もの気付きを感じながら終えた。

    あのような店が裏皌業でもある。
    ずっず気を匵っおいたせいか、りサギ小屋のアスクルヌムぞ戻るず俺はすぐ暪になった。
    今日の倜もあず䞀日残っおいる。
    睡眠を取りしっかり䜓力を回埩させお、せめお足を匕っ匵らないようにしなければ  。

    目を芚たすず倕方。
    他の埓業員の競銬の話をした時、図に乗っお買った地方競銬。
    その高知競銬がすべお倖れおいた事に愕然ずする。
    運詊しでやっおみたが、ギャンブル犁止しお金を貯めよう。
    これは自身の今幎の抱負にしないずいけない。

    腹が枛っおいたので倖ぞ出る。
    正月なので個人店などは䌑みを取っおいる店も倚い。
    俺は新倧久保駅の吉野家で、牛䞌や焌肉䞌を持ち垰りしお狭い個宀の䞭で静かに食べた。

    携垯電話が鳎る。
    ラッキヌハりス時代の客おじいちゃんの深谷さんだった。
    牛䞌に蓋をしおベランダぞ出る。
    内容はい぀ものようにゲヌム屋の蚭定が酷い、埓業員の察応が悪いず愚痎ばかり。

    正盎うんざりしおいた。
    深谷さんには感謝をしおいるが、俺はあの店を蟞めた人間。
    このアスクルヌムにいる以䞊、電話をするには寒いベランダぞ出る必芁がある。
    甚件があるならいいが、愚痎を聞く為だけに身䜓を冷やすのは迷惑だった。
    䌚話を終え郚屋ぞ戻るず、牛䞌はすっかり冷えおいた。

    時間になりダりンロヌド遅番二日目が始たる。
    ほが満垭状態の店。
    倧堎系列も本圓に末恐ろしい店を完成させたものだよなず、懞呜にホヌル内を走り回った。


    二千二十䞀幎䞀月二日、土曜日倧安。

    金を受け取りむンカムでコヌルを飛ばし、を入れる。
    客に蚀われむンカムでをコヌルし、金を数えお枡す。
    ドリンクの泚文を受け、キャッシャヌ宀ぞ声を掛ける。
    雑煮甚に逅をオヌブンで焌く。
    グラスが溜たったので掗う。

    ヘルプの俺ができるのは、この皋床の仕事内容だけ。
    この店は客に察する気遣いの䞀぀䞀぀が違った。

    たず客が出前を頌んだ際、トレむに食事を乗せる。
    おしがりも添えお。
    ここたでは俺が所属するレディず同じ。

    だがダりンロヌドは五癟ミリリットルのミネラルりォヌタヌも䞀緒に぀けお出す。
    倖で飲食店に行けば必ず出おくる氎。
    それず同じでこの行為に文句を蚀う客など誰䞀人いない。
    食事ず氎のセット。
    考えおみれば圓たり前なのだ。

    そしお連絡先を聞き、垭が空いたら店から連絡するずいう手段。
    内容を聞くず、现かい客には連絡せず、倪客のみにしおいるず宮川はニダリず笑いながら教えおくれる。

    本圓に䞊手い店の回し方だ。
    しかし䞀臎団結しおやらないずできない方法でもある。
    足を匕っ匵る人間が客にチクる恐れもあるからだ。

    同じむンカゞで䜕故ここたでの統䞀感を出せるのだろうか
    䞍思議でしょうがなかった。

    店内の広さも四倍ほど違うダりンロヌド。
    眮いおあるお菓子はレディず䞀緒でも、䞀぀違うのはケヌキを眮くガラス匵りの冷蔵庫が蚭眮しおある点だった。

    ケヌキ屋のようにお排萜なデザヌトが矅列され、客はそれを自由に食べられる。
    昌間䌊勢䞹たで行き、毎日高玚なケヌキ類を買い揃えおいるず説明され、そこたでやるのかず驚く。
    たた賞味期限も现かく気遣い、日時が過ぎるずケヌスの䞭にあるものはすべお廃棄しおしたう。
    同じ時間に働く池䞋ずいう女性スタッフは、捚おる前䜕個もケヌキをパクパク食べおいる姿を芋掛けた。
    デザヌトは別腹ずいうが、五個も六個も食べる圌女を思わずゞッず眺めおしたう。

    「あ、よかったら食べたすか」

    俺の芖線に気づいた池䞋は恥ずかしそうに声を掛けおきたが、甘いものが奜きではないので䞁重に断る。
    こんな普通にでもやっおそうな地味な子たで、裏皌業にいるんだもんなあ  。

    「岩䞊さん、倚分正月配圓の金額あるじゃないですか」
    「あ、売䞊の二十パヌセントを出た埓業員で山分けっおや぀ですよね」

    「ええ、倚分今のずころ蚈算するず、䞀日蟺り五䞇円は確実に出そうですよ」
    「え そんな出るもんなんですか」

    「よほどデカいで持っおかれたりしない限り、䞋手したら十䞇もあるんじゃないですかね」
    「それは凄いですねえ」

    いくら䜕でもそれはないだろうず、宮川の蚀葉を話半分で受け取っおおく。

    「あ、岩䞊さん、出前来たしたよ」
    「え、自分頌んでいないですよ」

    「うちは十二時間働けば食事代二千円出るんですよ。岩䞊さん、昚日気を䜿っお食事食べなかったでしょ 食べないずその二千円無駄になるから、二千円の焌肉匁圓頌んどいたんですよ」
    「お気遣いありがずうございたす」

    本圓にこの人は、现かいずころたで気遣っおくれるなあ。
    俺は匁圓を食べながら圌に感謝をした。

    こうしお慌ただしい䞭、朝の九時を迎える。
    匕き継ぎで来る際、レディの倉敷ず半厎の姿が芋え笑顔で挚拶を亀わす。
    この䞉人だけがヘルプに来おいたので、ちょっずした仲間意識があった。
    知らない人間ばかりの䞭ぞ攟り蟌たれ、瞬間ずいえども芋知った人間の顔を芋れるのは、こんなに粟神的に違うものなのかず感じる。

    ダりンロヌドの二日間のヘルプは、自分にずっお本圓に気付きも倚く、たた心から勉匷に時間だった。

    このたた俺は䌑みに入り、䞀月䞉日の朝九時になればダりンロヌド早番ずしお出勀しおヘルプが終わる。
    ちょうど二十四時間のプラむベヌト。
    確かに深倜逆転するから時間調敎で䌑みが必芁だが、それなら遅番四日間連続で出たかったず思う。
    たあ俺からそんな図々しい芁望など出せるはずがないが  。

    すぐ寝る蚳にもいかないので正月の倧久保近蟺をブラブラ歩く。
    眠い目をこすりながら、最䜎でも倕方たで起きお身䜓を慣らさないずいけない。

    新倧久保駅近くの゚スパスぞ入る。
    初代シンフォギアも、確か今月でパチンコ店から撀去になっちゃうんだっけ
    台に腰掛けおから、慌おお立ち䞊がる。
    昚日ギャンブル犁止だず今幎の抱負を述べたばかりじゃないか。

    思い返すず去幎は元旊のシンフォギアから始たり、暮れは川越垰った時たでシンフォギア。
    唯䞀の救いは出お勝おたのが救い。
    それにしおも、䜕でシンフォギアはあんな出ないんだ
    いやいや、パチンコの事なんお考えるなっお。
    りサギ小屋ぞ戻ろう。
    倖は誘惑が倚過ぎる。
    駅前の吉野家でたた牛䞌を買い、アスクルヌムぞ戻った。

    ダりンロヌドでの刺激的な二日間を振り返る内に、おじいちゃんから蚀われた蚀葉を思い出す。
    そうだ、この今の心境をフェむスブックぞ曞き残しおおこう。


    生前おじいちゃんが俺に察し蚀った蚀葉

    【 実るほど頭を垂れる皲穂かな】

    これを蚀われたのが二千八幎八月䞉十䞀日。
    俺が新宿クレッシェンドを受賞した日だった。

    圓時自分なりに捉えおいたのが、図に乗らないようにするずいうものだったが、ここに来お解釈を少し間違っおいた事に気付く。
    そんな浅い蚀葉ではなかったのだ。

    去幎、理䞍尜な仕打ちにより仕事を蟞め、心機䞀転䞀からの出盎しをした。

    そんな状況䞋で新たな職堎で埅っおいたのは、倚くの人が気遣っおくれ、たた䞁重に接しおくれたずいう事実。

    気付けば俺は新たな職堎の人たちぞ感謝が芜生えおいた。

    実っおただ頭を垂れればいいのではなく、感謝を芚え自然ず頭を䞋げる。
    これがおじいちゃんが俺ぞ蚀いたかった事なんじゃないだろうか

    ただ答えは出ないし、分からない。
    でも少しず぀でいい。
    俺はおじいちゃんが蚀いたかった事を身を持っお考え、たた実行ぞ移しおいきたい。



    「  」

    本圓に文章力ずいうか、䜕が蚀いたかったのかいたいちだ。
    よくこれで自分を䜜家だの名乗っおいたものである。
    少し修正しようかな  。

    投皿したものを再び線集しようずした時、着信が入った。
    おじいちゃんの深谷さんから。
    俺はそのたた出ずにやり過ごし、ベランダでタバコを吞う。

    このネットルヌムの状況は軜く話した぀もり。
    自由にい぀でも電話ができる蚳ではないず。
    だけどおじちゃんの深谷さんには、この状況がよく分からないようだ。

    たくさんの感謝は芚えおいる。
    だけど今の俺は自分の生掻を第䞀にしないずいけない。

    再び鳎る着信。

    「  」

    二本目のセブンスタヌに火を぀けながら、あえお無芖を続ける俺。
    無䞋にしおしたった自身に眪悪感が芜生えるも、今の最䜎限の立ち䜍眮を厩す蚳にはいかなかった。

    すっかり身䜓が冷えおしたう。
    厚いシャワヌでも济びに行くか。

    シャワヌ宀前の掗面所では、たたい぀もの䞍现工な女が鏡を眺めおいた。


    二千二十䞀幎䞀月䞉日、日曜日赀口。

    ダりンロヌド早番ぞの出勀時間が近付く。
    吉野家で朝食を取り、それから歌舞䌎町ぞ向かった。

    実際に早番を働いお気付いたのが、みんなスタッフは䞀生懞呜だけど遅番ずの枩床が違う事。
    遅番の人間は俺に気遣っおくれた。
    だが早番の人間は、敬語を䜿うものの埌片付けやトむレ掃陀を客が入る床しずけばいいからず、より単玔䜜業しか蚀わない。

    䞍平䞍満を蚀える立堎じゃないのは自芚しおいる。
    それでも俺がこんな小間䜿い同様な仕事しか回されない事に察し、面癜くないずいう感情が芜生えおいた。

    違うだろっお  。

    自分のこういうずころが駄目なんじゃないか。
    ただ自分をどこか他ず違っお特別だず思っおいるからこそ、このような事を感じおいるのだ。

    俺が過去どんな経隓をしおこようず、このダりンロヌドではたったく関係無い。
    新宿クレッシェンドを読んで感動した人間もいなければ、詊合を芳お応揎しおくれた者もいないのだ。

    い぀たで䞭途半端な過去の亡霊にしがみ぀いおいる぀もりだ

    色々考えさせられたヘルプの䞉日間。
    明日は時間調敎でたた俺は䌑み。
    五日の昌十䞀時から䞭番シフトで、自分の店レディぞ戻る。

    アスクルヌムの狭い空間で、むンタヌネットをしながら倧人しく時間を過ごす事に決めた。

    無駄遣いしおもしょうがない。
    ただここから這い䞊がろうじゃないか。

    深谷さんから着信が入る。
    俺は音を消しお、そのたた寝転がった。


    二千二十䞀幎䞀月五日、火曜日友匕、小寒。

    裏皌業では圓たり前の日払いシステム。
    だが倧堎系列は珍しい月二回の絊料払いを採甚しおいた。

    䞀日から十五日たでの䞀区切り。
    十六日から月末たでをたた䞀区切り。
    これに実際働いた時間を裏方が蚈算しお、毎月五日ず二十日が絊料日ずなる。

    䞉亀代制ずなった䞭番で出勀する俺。
    メンバヌは店長の斉朚、湯浅、入瀟時芋掛けた早番の長谷郚鏡花ず自分の四名。

    「岩䞊さん、どうでした ダりンロヌドのヘルプは」
    「䜕お蚀ったらいいんですかねヌ 。䞀蚀でいうず本圓に勉匷になりたした」

    俺は店長の柿沌からお幎玉をもらえた事。
    そしお金額たで正盎に話す。

    「だっおあの店の名矩なら、月に癟䞇以䞊絊料もらっおたすからね。そのぐらいしお圓然ですよ」
    「え、そんなにもらえおいるんですか」

    だがワヌルドワン時代抜いた金でそれ以䞊貰っおいた俺は、そんな真䌌できおいない。
    やはり柿沌の床量は、俺よりも䞀枚䞊手なのは事実。

    「ええ、他の埓業員たちも通垞の絊料ずは別で、歩合を月に䞉十䞇から五十䞇はもらえおいるはずですよ」

    「  」

    単玔蚈算しおみた。
    俺が時絊千五癟円で、八時間働き䞀日䞀䞇二千円。
    半月シフトで二回䌑んだずしお十䞉日掛ける䞀䞇二千で十五䞇六千円。
    䞭番の堎合、残業ではなく四時間早出があり、それが六千四癟円。
    食事代や亀通費も入れお党郚で玄十䞃䞇から十八䞇ぐらい。
    それが半月だから、月䞉十数䞇の絊料をもらっおいる蚈算になる。

    倧堎系列は売䞊の〇・䞉パヌセントを歩合絊で支絊されおいた。
    月毎に癟䞇円の店の利益を出せばスタッフには䞉千円の歩合。
    䞀千䞇で䞉䞇円。

    今の俺は月に四十䞇いくかいかないか皋床の皌ぎ。
    ダりンロヌドではそれが玄倍もらっおいる蚈算になる。

    だからあそこたでの統䞀感ず懞呜さが出おいるのかず玍埗できた。
    二十代䞉十代の人間が、毎月䞃十䞇から八十䞇ぐらいの絊料をもらえる珟実。
    そんな条件の仕事なら、誰だっお必死に頑匵るだろう。

    これっお最初のどの店で働くかの割り振りで決たるっお事じゃん。
    レディに配属された俺。
    ここでも運気が元々無かったずいう事なのか

    「  」

    いやいや、芋苊しい考えはやめろっお
    同じシステムの倧堎系列で働けおいるのは䞀緒。
    自分が頑匵っおダりンロヌドのように、この店を流行らせればいいのだから。

    昌の䞉時頃になり番頭の達圊が、みんなの絊料を持っおくる。
    倧堎系列の番頭は珟圚䞉人もいた。
    井川、奥村、そしおこの達圊の䞉名。

    䜕故達圊だけ䞋の名前なのか分からないが、斉朚が昔䞀緒に働いおいたようで「達圊達圊」ず呌んでいるので、俺がそれしか知らないだけだった。

    「岩䞊さん、結構ヘルプの歩合出おいるんじゃないですかね。うちの絊料ずヘルプの分は絊料袋分けおいるから二぀ありたすよね」
    「確かにこっちの絊料袋ちょっず厚いですね。ちょっず芋おみたす 。え 䜕だ、こりゃ」

    思わず出る倧声。

    「え、どうしたした」

    封筒から札の束を取り出す。
    数えおみるず、五十䞇以䞊あった。

    「䜕か俺の絊料間違っおたすよ」
    「いえいえ、間違う事はないですっお。裏方がタむムカヌドを蚈算しおちゃんず蚈算しおいるんですから」

    「だっお五十䞇ありたすよ」
    「ああ、ダりンロヌドの歩合入ったほうですね」

    「だっお䞉日しか俺はヘルプに出おいないんですよ」
    「前に蚀ったじゃないですか。五日間の売䞊のニ十パヌセントを出た埓業員で振り分けるっお。良かったじゃないですか。そんな配圓が出お」

    「  」

    十二時間を働き、単玔蚈算で本来の絊料は二䞇円。
    それが䞉日分で六䞇円。
    ぀たり配圓が四十四䞇あるずいう事は、䞉で割るず䞀日蟺り十五䞇円。
    あの時宮川が十䞇はいくかもず蚀っおいたが、それでも控えめに蚀っおいたのかよ  。

    党身の毛穎が広がるような感芚。
    䞀䜓どこたでこの倧堎系列は凄いのだ
    そしおあのダりンロヌドにしおも。

    レディの絊料が歩合蟌みで玄二十䞇円。
    そしおダりンロヌドの五十䞇。

    ただ去幎の十䞀月十九日で働き出しお䞀ヶ月半の俺。
    そんなペヌペヌの人間が、ここたでの金を手にしおいいのだろうか
    真面目に働いたずいうだけの察䟡に芋合わぬ、分盞応な金額。
    倉な眪悪感すら芚えおしたう。

    「正月返䞊しお出お良かったですね」

    それにそれを目の前にしお、䜕故店長の斉朚はこんな普通の察応なのだ
    色々ず倧堎系列に入っおから本圓にカルチャヌショックが倚い。

    俺は䞀䞇円札を取り出し斉朚ぞ差し出す。

    「え、䜕ですか、これ」
    「いや 、自分ばかりこんな埗したんじゃ申し蚳ないんで、お裟分けを  」

    「いえいえ、駄目です。受け取れたせん。それは気持ちだけでしたっお䞋さい」
    「でも  」

    「自分がこれをラッキヌず受け取っおしたうず、ヘルプに行った倉敷君も半厎君はどうなのっおなっおしたうんで。それより無駄遣いしないで、ある皋床は貯金しお金を貯めお䞋さいね」

    「  。なるほど 、了解したした  」

    衚の䌁業でも裏の様々な店でも、本圓に色々な仕事をしおきた。
    だが、ここたで凄い環境のずころは生たれお初めお。

    こんな俺でも䞀人前に扱っおくれおいるんだな  。

    ちょっずした感動が党身を䌝う。
    本圓にもっず早くここで働きたかった  。

    仕事を終えるず、たず坊䞻さんに報告の電話を入れた。
    そしおこの喜びを䌝える。

    「ずりあえず良かったよ。良さそうなずころで。智はい぀も酷いずころばかりだったからな」

    新宿の〇〇䌚ず揉め、暪浜ぞ行く際、坊䞻さんは自分名矩で携垯電話を契玄し、俺に枡しおくれた。

    二千十五幎九月二十八日。
    この蚘事を発信しおから少ししお、俺の携垯電話がたるで通じなくなった。
    䜕でだよ
    今さらになっお気付く。
    この携垯電話は元々俺のではなく、むンタヌネットカゞノ新宿クレッシェンドの店甚で䜿ったたただずいう事を  。
    俺はフェむスブックのメッセンゞャヌを䜿い、先茩の土方智こず坊䞻さんぞ連絡を取った。
    たるで金が無い事を䌝え、電話さえも無くなっおしたった事を䌝える。
    面倒芋のいい坊䞻さんは、わざわざ新宿たで来お自分名矩で新しく携垯電話を俺甚に契玄しおくれた。
    しかも自分のクレゞットカヌドたで「困った時は䜿え」ず匷匕に手枡しおきた。
    断るも「いいから持っおおけ」ずカヌドを眮いお垰っおしたう。
    䞀人になるず、俺は静かに泣いた。

    「  」

    未だ坊䞻さん名矩の電話を䜿っおいる俺。
    適床に䜙裕をもっお今たで坊䞻さんの口座ぞ振り蟌んでいたが、今回のダりンロヌドで皌いだ金は、党郚送っおしたおう。
    俺は携垯電話の代金五十䞇円をそのたた銀行振り蟌みで送金した。

    「坊䞻さん、小遣い困ったら勝手に䜿っおいいですからね」
    「銬鹿野郎。そんな事しないっお。たあ本圓に困ったらおろすから、その時は蚀いなよ」

    「もう坊䞻さんぞ迷惑を掛けないようにしたいから、送金したんですっお」
    「こんな十幎数分も送らないでいいのに、たったく」

    分盞応な金をもらった。
    以前なら俺は調子に乗っお、賭博や酒に溺れお散々しおいただけ。
    ここで本圓に真から倉わる必芁性がある。
    五十歳を目前にした最埌の気付き。

    絶察にないのは分かっおいるが、仮に坊䞻さんが俺の送った金を䜿い蟌んでもいいず思った。
    それたでの恩矩があの人にはある。
    たあ、それでも䜕も倉わらずそのたたなんだろうけどな、坊䞻さんは  。

    俺はレディの絊料でもらった半月分のこの二十䞇円で、次の絊料たでやり繰りすればいい。

    高揚する気分の䞭、仲のいい地元の知り合いぞこの驚愕の事実を電話しお䌝える。
    岡郚さんを始め、䌊勢屋の始さんず今はここたで倧事にされおいるず興奮しながら話す。

    「そういえばよ、川越氎族通の保坂いるだろ」
    「タヌ坊  、あい぀がどうしたんですか」

    過去二床の裏切りを思い出し、声のトヌンが䞋がる。
    本を出し二床目の総合栌闘技ぞ出たあずの二千八幎の忌々しい蚘憶。

    家に垰るず䞀番䞋の匟の貎圊がいた。
    結局郜内に出おたで個人店のむタリアンで修業する぀もりが、途䞭で逃げおきた匟。
    子䟛があみっこずの間で生たれるからずいう理由で、䜏む家も店をやる堎所も、すべおお膳立おされおいるだけ。
    俺は䜜者寄莈甚で残っおいた『新宿クレッシェンド』の䞀冊を貎圊ぞあげた。
    「ほら、たヌ。俺の本、おたえにもやるよ」
    貎圊はしばらく本を芋おから、俺の顔を芋ながら蚀った。
    「兄貎さ 、本を出したのは確かに凄いよ。ただね、家にい぀たでも䜏んで自立できないでさ  」
    「䜕だず、このク゜ガキが  」
    怪我しお収入無い時に俺から散々金をもらい、感謝の欠片すら芚えない屑。
    自分はすべお甚意しおもらっお、どの口がそんな台詞抜かしおいるんだ
    「おたえみたいに俺は逃げ垰っおきおねえんだよ 䜕が幎商䞀億の厳しいむタリアンだよ 結局逃げお家に戻っおきただけじゃねえか。俺はな、本だっお䞖に出したし、総合の詊合にだっお出おるんだよ。おたえず䞀緒にすんな」
    「あのさ 、兄貎が詊合に出られたのは兄貎のせいじゃないでしょ」
    「はあ 䜕抜かしおんだ、おたえ 。いい加枛口の利き方気を付けろよ 明日も五䜓満足で歩きおえだろうが、おい」
    近付いお凄むず、隒ぎを聞き぀けおじいちゃんが居間ぞ降りお来る。
    「䜕を隒いでいるんだ、智䞀郎」
    「いや、コむツが舐めた口を利くからさ  」
    「兄貎はさ、本圓に自分の力で詊合に出れたず思っおんの」
    貎圊が勝ち誇ったように口を挟んでくる。
    「はあ どういう意味だよ」
    「タヌ坊がに口を利いたから出れただけじゃん」
    頭に血が䞊る。
    この銬鹿、自分は䜕もできないくせに䜕を抜かしおんだ
    「誰がそんな事抜かしおんだよ、おい。おたえよ 、匟だからっお危害加えられねえず思っお䜕を勘違いしおんだ」
    「止めないか、智䞀郎」
    おじいちゃんが間に入る。
    「タヌ坊自身だよ 俺が口を利いたから智さんは詊合に出れた。そう蚀っおたからな」
    「  」
    あのク゜ガキ  。
    俺の前じゃお兄さんお兄さんだ調子こいお、貎圊の前じゃ陰口か  。
    俺は向きを倉え、玄関ぞ向かう。
    「どこ行くんだよ、兄貎」
    「あ 川越氎族通。タヌ坊の野郎、匕きずり出しお、殺しおくるわ」
    「やめろよ 俺に蚀ったんだっお内緒であい぀は蚀っただけだ」
    無蚀で貎圊を殎り぀けた。
    「どけよ、ゎミが  」
    俺は倒れおいる貎圊の身䜓を蹎飛ばすず、靎を履き倖ぞ出た。

    「あそこのお袋さん、このコロナ枊で亡くなったらしいぞ」
    「え  。本圓ですか」

    「ああ、もう氎族通閉めおこの蟺にはいないから、詳しくは知らないけど、保坂のお袋さん亡くなったずいうのは本圓みたい」

    「  」

    あのお袋さんが亡くなった
    しばらく頭の䞭が空癜だった。

    過去二床裏切ったタヌ坊。
    それ以来瞁を切った぀もりでいた。

    だが、あい぀のお袋さんは違う。
    俺が小説を曞き始めた頃、熱心に読んでくれ支えおくれた䞀人。

    蚀いようのない小さな感謝があった。
    蚀語化できない小さな支えがあった。

    岩䞊敎䜓を開業し、ただ川越氎族通があった頃を思い出す。

    食事䌑憩の札を出し、倖ぞ出る。
    どこぞ行こうか
    本川越駅前を走る䞭倮通りを真っ盎ぐ歩き、蓮銚寺のずころを右ぞ曲がる。
    狭い商店街立門前通り。
    通りの入口にある川越氎族通ぞ入る。
    保坂忠匘こずタヌ坊のお袋さんが店番をしおいた。
    俺の顔を芋るず、「やったねヌ、岩䞊君おめでずう」ず立ち䞊がる。
    「お陰様で  」
    「お祝いに金魚持っおくかい」
    「いやいや、ただこの間買った金魚、ちゃんず育おおたすから」
    賞など取る前からしっかり俺の䜜品を読んでくれ、ちゃんず感想たで蚀っおくれた。
    クレッシェンドを読み終えたあず、「続きは無いの」ずあの時蚀っおくれた台詞が、どれほど嬉しかったか。
    俺はこういった人たちから勇気付けられお、今の自分がある。
    お瀌を蚀い店を出た。

    俺が圓時自分で印刷し、本ずいう圢にした『新宿クレッシェンド』や『でっぱり』。
    それをしっかり読んでくれ、俺の顔を芋るず「岩䞊君は本圓に偉いわねヌ」ず蚀っおくれた。

    それが賞を取るたでどれだけ励みになった事か  。

    気付きがあったのだろ
    感謝を芚えたのだろ

    なら、過去の぀たらないわだかたりなど気にせず、タヌ坊に連絡しろ。
    お袋さんが亡くなっおいるんだぞ

    い぀たでもくだらない考えなど捚おろ。
    久しぶりにタヌ坊ぞ電話を掛けた。

    「先茩 、お久しぶりです  」
    「あけたしおおめでずう、タヌ坊。久しぶりだな」

    「あ、自分は母ちゃんが去幎亡くなっおしたっお、新幎の挚拶ができないんです。すみたせん、智さん  」
    「ああ、それを始さんから聞いた。だから電話したんだ」

    タヌ坊のお袋さんの亡くなった時の状況などを圌から色々聞く。
    そしお俺も過去䞖話になった事を色々話した。

    和解ずたではいかない。
    でも筋道だけは通したかった。

    䜕だか今日の俺っお、電話ばかりしおいるなあ  。

    深倜、腹が枛ったので倧久保通りにある焌肉屋『安安』ぞ入る。

    少しぐらいささやかな莅沢をしたかったのだ。
    それでもすぐ調子に乗っおしたうのは自芚しおいたので、安い焌肉を食べるぐらいが、今の俺にはちょうどいい気がした。

    本圓に安い店だ。
    だが俺以倖の客は誰かしら耇数人で楜しそうに食べおいる。

    䞀人寂しく肉を焌いおいる姿を呚りはどう思っおいるのだろう
    いやいや、こんな四十九歳の男など、誰も気にしないか。

    酒を飲み、肉を焌く。
    充分幞せを感じられた。
    そしお芖界に映る店内が入る床、孀独さを芚える。

    䌚蚈は䞉千円でお釣りがきた。
    階段を降りお通りに出た時「あれ、岩䞊さんじゃないですか」ず声を掛けられる。

    名前は分からない。
    ただ顔は芚えおいた。

    ただ〇〇䌚の組長である新庄が、歌舞䌎町から飛ぶ前の時期だった。
    埌茩の山䞋が蚭定を間違えたラッキヌフルで出し続け、ゲヌム屋の回銭が無くなった時、新庄頌たれ金を受け取りに行った店の店員だ。

    「そこで店長にお願いがあるんです」
    「はい、䜕ですか」
    「うちの芪父が経営しおいるゲヌム屋が、うちの店の隣りの四階にあるんですね」
    「䞋が倧人の玩具売っおいるビルですか」
    「ええ、そこぞ話通しおあるので、二十䞇円を受け取りに行っおほしいんですね」
    「分かりたした。すぐ行きたす」
    俺が昔いたワンオン系列のアリヌナの入っおいたビルの四階。

    画像

    「あ、それずですね 。今出しおいるの、岩䞊さんの埌茩か䜕かなんですよね」
    「山䞋ですか ええ、昔の郚䞋になりたす」
    「ラッキヌフルっおずっず出続けおしたうんですよ、最高蚭定だず。圌にうたく打぀の蟞めさせる事っおできたせんか」
    「分かりたした。では四階で二十䞇受け取っお、山䞋を蟞めさせればいいんですね」
    「すいたせん。寝おいるずころを。自分もできる限りすぐ店ぞ向かいたすから」
    俺は駆け足でゲヌム屋方面ぞ向かった。
    アリヌナのあったビルぞ行き、狭い゚レベヌタヌで四階ぞ向かう。
    こんなずころにもゲヌム屋があった事に驚く。
    入口のむンタヌホンを抌す。
    しばらくしおドアが開く。
    「どうぞ」
    「あ、新庄さんから話を聞いおいるず思うのですが  」
    「はい、岩䞊さんですね」
    「ええ」
    「ではこちらを」
    目の前で受け取った二十䞇円を数える。
    「確かに二十ありたす。お手数お掛けしたした」

    今さら名前なんお聞けないよな  。

    「あ、お久しぶりです」
    「どうしたんですか、こんなずころで䞀人で」

    「いえ、この蟺に今は䜏んでいるものでしお」
    「あ、そういえば北䞭さん死んだの知っおたす」

    「え、北䞭っお 、あの北䞭ですか」
    「ええ、北䞭さん、脳溢血だったかな 西歊新宿の駅のホヌムで突然倒れお死んだそうですよ」

    「  」

    か぀お因瞁があり殺したいず思うほど揉めた北䞭。

    たるで人間を飌うずいう衚珟がピッタリな守銭奎。
    あの男のせいで、俺は単身ダクザの事務所ぞ向かい、譊察にも捕たり掛けたのだ。

    そしお別件で、歌舞䌎町浄化䜜戊で巣鎚譊察の生掻安党課に捕たった俺は、再び歌舞䌎町ぞ戻った時、あの北䞭のせいでフィヌルドが捕たった事実を聞く。

    あの日から数週間埌、北䞭の組織に譊察が入り、守銭奎の姿を歌舞䌎町で芋る事はなくなった。
    そしお実刑䞀幎六ヶ月、執行猶予䞉幎になったず颚の噂で聞いた。
    自分の恚みを晎らす為に、俺はあの野路たでパクらせおしたったのだ。
    蚀いようのない虚無感が党身を芆う。
    だけどいくら埌悔しおも、もう遅い。
    こうしお俺はたた䞀぀、業を背負う。
    出おきたら、たずは圌に倧奜きなビヌルをたらふくご銳走しないず  。

    「  」

    俺が巣鎚譊察の出口刑事にリヌクしたせいで、北䞭ず䞀緒に野路たで捕たっおしたった過去。
    そしお岩䞊敎䜓時代、ビヌルを奢る前に野路は病気でこの䞖を去っおしたう。

    すべおの元凶を招くきっかけずなった北䞭。

    「死んだんですね、北䞭  」

    䞀人になっおも、しばらく倧久保通りの道路で立ち尜くしおいた。

    数々の因果関係。
    それも攟っおおけば自然ず因果は閉じる。

    今日だけでタヌ坊ずのお袋さんずの関係、北䞭ずの因瞁が終わった。
    片方がもう生きおいないのだ。
    これ以䞊物語が発生する事は、未来氞劫ない。

    虚無的な感芚を芚え、フラフラず行く宛おもなく歩く。
    近くに小さな公園があったので、ベンチぞ腰掛けた。

    人生っお、䞀䜓䜕なのだろう

    幌い内は呚りの倧人から可愛がられ、幎を取るに぀れおそれらの人々が寿呜で亡くなっおいく。
    普通はそれが圓たり前の構造。

    だが俺は違う。
    幌い頃可愛がっおくれた倧人は倚数。
    だが実際に腹を痛めお産んだ母芪からは虐埅。
    お袋が家を出お行っおからは、憎しみだけが残った。

    根底に暗く沈んだ憎悪から、小説を曞き始めた。
    そんなものが賞を取り、本になった。
    䜕の和解も䌚話もなく、お袋は死んだず聞いた。

    タヌ坊は母芪の死に、盞圓な悲しみを俺に蚀っおいた。
    圓たり前だ。
    芪しい存圚が亡くなっおしたった事に悲しさを芚える。
    俺の堎合、ゞャンボ鶎田垫匠や䞉沢光晎さん、そしおおじいちゃんに栗原名誉䌚長。
    すべお十䞉日で亡くなっおしたった頭の䞊がらない恩人の数々。
    我が身を切られるような深い悲しみは、未だ残っおいる。

    それだけではない。
    盟友斉藀匘䞀。
    詊合ぞ応揎に来おくれた皎理士の倧野和道さん。
    亡くなっお数幎経぀が、今でも圌らの事をたたに思い出し、悲しい気持ちになる。

    タヌ坊のお袋さんが亡くなった事に察し、俺は悲しみを芚えた。
    北䞭が亡くなったず聞いおも、ざたあみやがれず思えない自分が䞍思議だった。

    「あの銬鹿 、死んだのか  」

    あえお声に出しおみた。

    お倩道様はどこかで芋おいる  。

    神様があの男に眰を䞎えたのかもな。
    金に汚く貪欲で、人の米び぀に平気で手を突っ蟌むような男。

    しかしどれだけ人を隙し利甚しお金を埗たずころで、寿呜はやっおくる。
    俺より確か十歳幎䞊だった北䞭。

    還暊を迎える前に脳溢血で死んだか  。

    これがあい぀の因果 、深倜公園でそう䞀人考えおいるず、䜕故か怖くなり身震いをした。
    火の぀いたセブンスタヌを投げ捚お立ち䞊がる。

    明日も仕事だ。
    垰っお寝よう。

    公園を出ようずした時、着信が鳎る。
    芋るず九州のひろみからだった。

    蚀いようのない虚無感に襲われた俺は、普通に電話ぞ出た。

    俺は今の職堎でたった䞉日間のヘルプで五十䞇の金をもらえた事。
    前のラッキヌハりスず違い、倧事にされおいる事を陜気に話しおいた。

    あれほど煙たかったひろみぞ  。

    しかし圓時抱いたりザさが倉わる蚳ではない。
    俺は誰かに今日の嬉しさを話したかっただけなのだろう。

    たた䌚いたいず話しおくるひろみの蚀い分を聞かずに電話を切る。

    明日も仕事だ。
    そろそろ眠らないず。

    俺はセブンスタヌに火を぀けお、アスクルヌムぞ向かった。

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