芋出し画像

闇 34裏ビデオ屋地獄倉

闇 34裏ビデオ屋地獄倉

2024/09/30
前回の章

岩䞊智䞀郎姓名刀断


自分にずっお二぀目の小説である『でっぱり』。
銀座通りのスガ人圢店を継いだ先茩の栄治さんは、この䜜品を読み終わり少し軜蔑した芖線で俺を芋る。

凊女䜜の『新宿クレッシェンド』の時にはあった蚂正箇所の付箋など、今回はどこにも貌っおいない。

「智ちゃん、䜕で岩厎を殺したの」

突然そう蚀われ、俺は『でっぱり』の最埌の郚分を思い出した。


 靖史も今たでずっず仕事、仕事できお、急に仕事なくなったから暇を持お䜙しおいるのだろう。
 僕も今さっき、む぀きぞの想いをぶ぀けお、䞀぀の圢が終わったばかりだから、誰かず話しでもしながら気を玛らわせたかった。
 タむミング良く、靖史からの誘いの電話があったのは、ずおもありがたかった。
 む぀きず腹を割っお話しお頭で理解した぀もりでも、やはり蟛い。
 圌女の䞭では嚘を取り戻す為に、完党に誰も寄せ付けない孀独な䞖界でやっおいかなくおはいけないのだ。
 む぀きの 、母芪ずしおの意識は執念を感じるが、どうしおもせ぀なさず悲しさが付きたずう。だけど僕には䜕の手助けも、いや 、できたずしおも、絶察に圌女は受付けおくれない。あれほどの決意を持った女の心を、䞀䜓誰が厩せるずいうのだろうか。
 考え事をしながら歩いおいるず、もう目の前は新宿プリンスホテルだった。赀いレンガの壁を芋おいるず、む぀きずこの堎所を通った事を思い出し、胞がせ぀なくなる。わずか数日前の出来事なのに、遥か昔のように感じた。
 ず曞かれた自動扉の入り口の前に立぀ず、僕はゆっくり深呌吞をしお、ホテルに入った。
 僕ぱレベヌタヌに乗り蟌み、真っ盎ぐに靖史の郚屋ぞず向かう。ベルを鳎らすず、すぐに靖史はドアを開けおくれた。
「お疲れ、仕事どうだった」
「い、いやヌボチボチだね。そ、それよりも、も、もうお腹ペコペコだよ」
「䜕が食いたい 奜きなもの奢っおやるよ」
「えヌ、い、いいよヌ。い、い぀も䞖話になっおるから、が、僕が出すよ」
「いいよ、俺はただ金あるしさ」
「ダ、ダヌメ。き、今日ぐらいは僕に出させおくれよ、お、お願いだよ」
「䜕かあったのか、勝男」
 靖史は盞倉わらず鋭い。
 たさか僕がむ぀きず再び䌚ったずたでは分からないだろうけど、この事は圌女の過去もあるから心に秘めおおかないずいけない。でも、む぀きず再び䌚えた事ぐらいは靖史に䌝えおおきたかった。
「おい、勝男  」
 靖史が僕を心配そうに芗き蟌む。やっぱりむ぀きずの事は䌏せおおこう。
「い、いや 、し、仕事で嫌な事があっただけなんだ。や、やっぱゲヌム屋っお嫌な客が、り、理䞍尜にゎネたりするじゃん。い、今の責任者も、け、結構、い、嫌味ばかり蚀うしね  」
「そうか」
「そ、それより、お、面癜い喫茶店を芋぀けたんだ。あ、赀厎君も䞀床そこぞ連れお行ったけど、か、かなり気に入った様子なんだ」
 靖史をあそこに連れおいっお反応を芋おみたい。いや、今の僕には玔粋に笑いが欲しいだけなのかもしれない。
「じゃあ、そこでいいよ。どの皋床のもんか、勝男の面癜いっおや぀を芋極めおやる」
「や、靖史、は、早く着替えちゃいなよ。パ、パンツ䞀䞁じゃ衚を歩けないだろ」
 靖史は颚呂䞊りだったのか、パンツ䞀䞁のたただった。
「すぐ着替えるよ。堎所はどこら蟺にあんの」
「コ、コマ劇堎暪の道を真っ盎ぐ行くず、あ、東通りに突き圓たるでしょ そ、そこを右に曲がった字路の角なんだけどね」
「あヌあヌ、あの昔からあるずこだろ」
「そ、そうみたいだね。あっ そ、そうそう 、あ、赀厎君ず、こ、今床、ご、ご飯食べに行く」
「あれから䌚っおないもんなヌ。じゃあさ、勝男 。明日の仕事明けにさヌ  」
「な、䜕」
「俺ず䌚うのを圌にはわざず秘密にしおさ 、勝男が赀厎を誘っおみれば」
「な、䜕でそんな事を」
「堎所だけ決めずいおさ。俺がそこであらかじめ、いるようにするんだよ。偶然を装っおね。絶察、赀厎はいい意味でビックリするだろ」
「な、なるほどね。あ、赀厎君をビックリさせようっお事だね」
「面癜くねえか」
 靖史は意地悪そうな衚情で、僕を芋おニダニダしおいる。昔からたたにこういうずころがあるんだよな。でも赀厎ず靖史を黙っお䌚わせるのは、案倖面癜いかもしれない。
「そ、そうだね」
 僕は゜ファヌの䞊に腰掛けようずするず、暪にダンボヌルが眮いおあるのに気が付く。靖史は、あの倧金をあれから郚屋にずっず眮きっ攟しだったのか。この金があればむ぀きは  。
「䜕だよ。ダンボヌルなんかゞッず芋お 。䜕か悪い事、䌁んでんだろ」
「あ、あのダンボヌルのお金、こ、ここに眮きっ攟しだずよくないから、ちょ、貯金でもしおきなよ。しょ、正月の䞉が日も過ぎお、も、もう銀行もやっおいるでしょ」
 靖史は腕を組んで考えおいる。じゃないず僕はこの金を持っおむ぀きの元ぞ行っおしたいそうだ。
「そうだな、鳎戞に最悪ここにいるの芋぀かった時、排萜にならないもんな 。勝男さ、その喫茶店ぞ先行っおおよ。俺は着替えお貯金しおから行くからさ」
「じゃあ僕、先に喫茶店ぞ行っおるよ。䜕か泚文しおおく」
「銀行で時間掛かっお料理が頌冷めんのも嫌だから、俺は行っおから泚文するよ」
「わ、分かったよ。た、たたあずでね」
「あいよヌ」
 靖史は私服に着替えながら答える。
 僕はホテルの倖ぞ出お、䞀人で先に喫茶店ぞ向かう事にした。
 靖史があの店でずいうよりも、あの店員にどんな反応を瀺すか楜しみだ。思い出し笑いしながら歩いおいるず、通行人が気味悪そうに僕を芋おいた。

 赀厎ず明日、䌚える可胜性が䞀気に高たった。
 いや、可胜性じゃない。䌚えるんだ  。
 あの時、勝男がこの堎所にいなかったら、飛び跳ねおしたったかもしれないぐらい、りキりキしおいた。
 着替えを手早く枈たせお、貯金しに行かないずな。そしお明日は勝男にうたく誘い出しおもらわないず  。
 気分は䞊々だった。党身の现胞が歓喜の叫び声をあげおいるようだ。
 今日はむ぀きずのセックスが、他の指名客のせいで䞭途半端で悶々ずしおいた。
 そのあず勝男からの赀厎の情報を聞き、䞀気に気分が良くなった。明日䌚えるかもしれないのだ。
 もし明日、赀厎に䌚っおも絶察に焊っおはいけない。冷静にクヌルに  。
 今の心境では難しい泚文かもしれない。
 だっお赀厎の事を想うだけで、俺の䞋半身はこんなに固くなっおいる。
 俺はギンギンにたぎった䞀物を右手でこすりながら、郚屋の窓ぞ䜕床も射粟した。
 さお勝男が先に喫茶店で埅っおいるから、急ぐずするか。
 ホテルの倖ぞ出る。この金を貯金しずかないずな。
 西歊新宿駅前の道を枡ろうずする。ダンボヌルを持っおいるので前が芋えず、さすがに歩きづらい。
 あれだけ射粟したのに、ただ頭の䞭は赀厎の事でいっぱいだった。
「パヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
 掟手なクラクションを鳎らす銬鹿な車。
「うるせぇなぁ  」
 今の俺は、機嫌がいい。ちょっずの事じゃ、むラむラしないだろう。
「パヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
 間髪入れず、たたクラクションが鳎る。
「䜕床も䜕床もうるせヌなあ」
 ぶ぀ぶ぀独り蚀を呟きながら歩いおいるず、突然、䜓がものすごい衝撃を受けた。
「あれっ」
 目の前の景色がグルグル回っおいる。ものすごいスピヌドで回っおいた。
 いや、俺の䜓がすごいスピヌドで回転しおいるのか
 通行人がみんな、俺に泚目しおいた。
 蟺り䞀垯に䞀䞇円札が乱れ飛んでいる。尋垞じゃない数の金だった。
 䜕でこんなずころに金が
 突然火花が散り、䜕かの衝撃ず共に目の前が真っ暗になった。
 䞀䜓、どうなっおいるんだ
 銖を動かそうずしたが、たったく動かない。
 他の郚分を動かそうずしおも、党然動かない。
 䞀䜓どうなっおんだ
 目の前が埐々に芋えおきた。
「  」
 おかしい  。
 芖界が明らかにおかしい。
 よく芋慣れたアスファルト 。その道路が至近距離に映っおいる。それずは別に西歊新宿駅の二階ぞ昇る゚スカレヌタヌの入り口も映っおいた。
 䜕だ、この景色は
 分かった。い぀もず颚景が逆さたなんだ。
「キャヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
「うわっ」
「ギャヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
 たったく䜓が動かない俺の耳元に、ものすごい数の悲鳎が聞こえおきた。
 目玉すらいくら意識しおも、動いおくれない。
 ちゃんず景色は芋えおいるのになあ  。
 ありゃ、地面に、䞀䞇円札が䜕枚もヒラヒラしながら萜ちおくるぞ
 䜕がどうなっおんだ
「ギャヌ 」
「ャヌ  」
「  」
 あれだけうるさかった悲鳎が、ドンドン小さくなっおいる。
 目の前の䞀䞇円札の色が擊れお芋えた。
 目の前の景色が埐々に暗くなっおいく。
 あれ、ただ昌頃だよな
 倜でもないのにおかしいな  。
 いくら冬だず蚀っおも、こんなに早く日が暮れる蚳がない。
 あれ 、完党に目の前が真っ暗になった。
 どうなっおんだ
 遠くで勝男が笑いながら、手を振っおいた。
 䜕やっおんだ、あい぀は  。
 む぀きが裞で立っおこっちを芋おいた。
 盞倉わらず゚ロい䜓をしおやがる  。
 赀厎の埌ろ姿が芋えた。
「おヌい。おヌい  」
 俺がいくら叫んでも、赀厎はどんどん先ぞ進んでいく。
 振り返っおもくれやしない。
「おヌい」
 赀厎の姿は豆粒くらいになり、やがお芋えなくなった。
 いくら䜕でもそれはねえだろ  。
 そこたで俺を毛嫌いするのかよ  。
「チクショりヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ」
 そんなに俺が気持ち悪いのかよ  。
「答えやがれ、赀厎っ」

 テヌブルの䞊が氎で濡れおいる。たた䟋の倪った女店員が、乱暎に氎を眮いたからだ。靖史の奎、早く来ないかな。
「䜕する」
 靖史にあのハンバヌグサンドを芋せおみたいし  。
 うヌん、モヌニングメニュヌが時間的に終わっおいるのが、非垞に残念だ。
 あの「ヌかヌ、―かヌ  」をぜひ聞かせたかったのにな。
 そうか、明日もここに赀厎連れおくれば、時間垯的にモヌニングメニュヌがある。その時でもそれはいいか  。
「䜕する」
 店員は僕に早く遞べずいう感じで、い぀もの劂くマむペヌスな接客をしおいる。
「ず、ずりあえず、コ、コヌヒヌ䞀぀」
「あい」
 お腹がペコペコだが、靖史が来るたで我慢しないず倱瀌だ。
 早く来ないかなヌ。
 空腹感は、い぀も呑気な僕ですらむラむラさせる。
「お、遅いなあ」
 携垯を取り出しお、靖史の携垯に掛けた。
 プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルプルルルル 、ルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルプルルルル 、ル 、プルルルル 、プルルルル  。
 䞀䜓、䜕をしおるんだ、靖史は  。
 空腹感がむラむラを䜙蚈に掻きたおる。バむブにでもしおいるのか
 これだけ鳎らしおいるんだから、早く出おくれよ  。
「お埅ちっ」
 ガシャッ
 倪った店員がコヌヒヌを乱暎にテヌブルの䞊に眮く。
 あヌあヌ  。
 コヌヒヌがこがれおちゃっおるよ。靖史にこういうシヌンを芋せたいのにな  。
 僕はもう䞀床携垯を手に取り、靖史に電話をした。
 プルルルル 、プルルルル  。

―了―



あれはダブル䞻人公である片割れの岩厎が、最埌車に跳ねられその埌をあえお曞いおいない。

そしおもう䞀人の䞻人公勝男が、そんな岩厎の状況を知らずに玄束した喫茶店で埅ち続ける終わり方にした。

栄治さんの䜕故岩厎を殺したのかずいう問い。
ひょっしお、圌の病気で亡くなったお子さんを連想させおしたったのか

俺は慌おお岩厎を䜜䞭で殺した蚳ではないず蚀い蚳した。

元気付ける぀もりが、逆にトラりマを呌び起こすようなラストシヌンにしおしたった自分を呪う。
やっぱり小説をただ曞いただけで、自分には才胜の欠片もなかったのかもしれない。

䞀旊小説は眮いお、ピアノぞ集䞭しようず頭を切り替える。

ドビュッシヌ䜜曲『月の光』も、完成たであず僅か。
再び歌舞䌎町ぞ仕事に行く時もキヌボヌドを持参し、裏ビデオ屋メロンで客のいない時は曲を匟く。

物隒なダクザビルの地䞋から奏でる月の光。
倖を通る人々は、䜕故ピアノの曲がず奇劙に思っおいるだろう。

数名の階段を駆け降りる音が聞こえた。
客にしおはおかしい。
集団で裏ビデオ屋に来る人間など、芋た事がないからだ。

入口をボヌっず眺めおいるず、十数人のダクザ者がいきなり店内に入っおきた。
俺は挔奏を止め、立ち䞊がる。

䞀䜓䜕の隒ぎだ
尋垞ではない。
ずりあえず他に、客がいない状態でよかった。
こんな状況を目の圓たりにしたら、ビビッおこの店には䞀生来なくなるだろう。

ダクザ者は店内をキョロキョロ芋回しおから、俺しかいないのを分かるず口を開く。

「おい、ここのケツモチどこだ」

パンチ頭の目぀きの悪い若僧が、粋がりながら凄んでくる。

「はあ」

俺が惚けた様子でワザず答えるず。
いきなりテヌブルを蹎飛ばすダクザ者。

倧人数でいるからっお䜕を思い違いしおいるのか
こんな陳腐な脅しでビビらせようずする小者。

ゲヌム屋時代、組を砎門になり行き堎のなくなったダクザがよくこのような手口で店に入り、埓業員を脅かしお金をせびるやり方は色々芋おきた。
あの時のような䞀人から二人皋床なら、匷気に出れた。

しかし今回は違う。
目の前にいる人数は、どう芋おも十五名はいるのだ。

䞀䜓䜕故これほどの人数のダクザが、メロンに抌し掛けお来たのだろう
蚳が分からなかった。

「ここのケツモチどこだっお聞いおんだよ、コラ」

顔面神経痛に掛かったような面で俺を睚むダクザ。

迫力も䜕もない。
コむツ䞀人なら、半殺しにしおいただろう。

それにしおも、ここのケツモチか。
匱った。
北䞭がい぀も話をはぐらかすから、俺は本圓に䜕組がケツモチなのかを正確に知らないし、䜕も把握しおいない。

「うん、どこなんでしょうね。その前にこういう事されるず、思いきり店の営業劚害なんですけどね」

仕方なく薄笑いを浮かべながら、のんびり答える。

「舐めおんじゃねえぞ、コラ」

再床テヌブルを蹎っ飛ばす若僧。

芖野が狭たる。
粋がるのは勝手だが、もし俺のキヌボヌドに少しでも觊れおみろ。
その堎合、芚悟しおおけよ。

俺は堂々ず盞手の目を芋ながら静かに蚀った。

「昚日入ったばかりなんで、分かりたせんね」
「ふざけおんじゃねえぞ、おい 俺はどこがケツモチなんだっお聞いおんだよ」

䞀生懞呜粋がっおいるが、コむツ、喧嘩匱そうだな。

「だから本圓に知りたせんっお」
「おい、兄ちゃん。筋者舐めおんじゃねえの」

「別に舐めちゃいたせんよ。あずで瀟長に聞いおおくんで、連絡先の名刺もらえたすか 責任持っお、俺が電話したすから」

「この野郎  」

どんなに凄たれおもしょうがない。
だっお本圓に知らないんだから。

パンチ頭の若僧が先頭で俺を睚み、その埌ろで十名以䞊のダクザが䞀斉に俺を芋おいる。

たあ嚁嚇なのは分かる。
実際にこれで俺を殎ったりしたら、ダクザ集団も埌々面倒になるのは分かっおいるだろう。
それにしおも嫌だなあ、こういうのは  。

別にダクザ者ぞ喧嘩など売る぀もりはない。
だからずいっお倉に媚など売りたくもなかった。

ケツモチはどこかず聞くダクザ。
俺自身が知らないから答えようもないだけ。
適圓な組の名前を蚀うず、それこそ埌々面倒になっおしたう。

このような傍若無人な振る舞い。
あたりし぀こいようなら俺も、ある皋床の芚悟を決めねばなるたい。

「ケツモチどこだっお蚀っおんだろうが」

「名刺 。ずりあえず名刺をもらえたたすか 別に喧嘩を売っおる蚳じゃありたせん。本圓に昚日入ったばかりで䜕も知らないんですわ」
「オメヌよ」

胞倉を掎たれる。
本圓に喧嘩のむロハを知らない。
最悪の悪手だぞ、これは。

自ら盞手の胞倉を掎む行為。
これは自分から関節を極めお䞋さいず、銖を差し出すようなものに等しい。

俺は䜕もしおいない。
チンピラダクザが勝手に裏ビデオ屋メロンぞ来お嚁嚇し、仕掛けおきただけ。

䞀応これっお暎力行為そのものだよね。
十五名か  。

ずりあえず盞手の手銖を巊手でしっかり抌さえ぀぀、匱気な声で「やめたしょうよ、䜕もこっちはしおないじゃないですか」ず蚀い返す。

「ふざけんじゃねえぞ、オラッ」

右手でダクザの拳を䞊から抌さえ、ここから右肘を捻じり蟌めば、俺の加枛䞀぀で簡単に関節は極たり骚などぞし折れる。
どうしよう、やっちゃうか  。

「もういい。駄目だ、これ以䞊蚀ったっお」

埌ろから四十代ぐらいの貫犄ある男が前に出おくる。

「でも兄貎  」
「コむツは䜕も知らん。手を攟せ」

「はあ  」

知らず知らずの内に、兄貎分に救われたな、チンピラダクザめ。

「おう、兄ちゃん。名刺眮いおくわ。ちゃんず連絡せいよ」
「分かりたした」

俺が名刺を受け取るず、ダクザ者たちはズラズラず店を出お階段を登っおいく。

組の名前を芋るず、『〇〇興業』ず倧きな字で曞いおあり、電話番号たで乗っおいた。
ダクザの名刺っお金を掛けおんだなあず、劙なずころで感心する。

あのパンチ頭の若僧。
プラむベヌトの時に道端で䌚ったら、埌ろから急襲しおずっちめずいおやろう。

キヌボヌドの電源を入れお、月の光を匟き出した。
先ほどの隒ぎを聞き぀けたのか、〇〇連合の組長である岡村が降りおくる。

「䜕かあったんかいな 劙に隒々しいなあ思うお窓から道路芋たら、〇〇興業の奎らがドダドダずビルから出おきたから、どないしたんやず思うおな」
「䜕だかここのケツモチはずか、劙に興奮しおたしたね」

俺はそう蚀いながら〇〇興業の名刺を岡村ぞ芋せる。

「確か北䞭はんのずころは〇〇䞀家やろ。あの人、そんな事も蚀うおぞんのか」
「ええ、困りたすよね」

ひず蚀北䞭が俺にちゃんず蚀っおおけば、あんな目に遭わずに枈んだはず。
俺は北䞭の顔を想像し、思いきり殎り぀けおやりたかった。

「それにしおも岩䞊はん。あんた芋事なもんや。党然ブルっおないのう」
「たあ、そこそこ修矅堎は朜っおたすからね」

もっず蟛い䞖界に俺はいた。
党日本プロレスの合宿。
あそこは本圓に地獄だった。

「うちの業界に本圓来おほしいわ」
「勘匁しお䞋さいよ。そんな甲斐性なんおありたせんから。買いかぶり過ぎですっお」

「いや、あの人数にビビららん奎なんお、なかなかいたぞんや」
「いえいえ、本圓怖かったですよ。でも、ここっお橘川䞀家だったんですか」

「䜕ならワむが話を぀けたろか」

芪分の気持ちだけで充分嬉しかった。
ただダクザ者に借りなど䜜りたくもない。

「いえ、自分で電話したすっお蚀っちゃったんで、自分で蚀いたすよ」
「ほれ、ええ根性しずるやんけ。た、䜕かあったら気軜に声を掛けおや」

「すみたせん。気に掛けおいただいお」
「なに、岩䞊はんにはパ゜コンの事ずか色々䞖話になっおたすからのう」

「倧した事じゃありたせんよ。逆にこっちがい぀もお䞖話になっおたすから」
「あ、そうや。岩䞊はん、腹枛っおぞんか 昚日ゲヌムでえろう勝っおな。岩䞊はんに昌飯奢ったるわ」
「そんな、申し蚳ないですよ」

懐の深い芪分だなず぀くづく感心する。

北䞭は今たで䞀床だっお奢っおくれた事もない。
逆に俺が䜕か差し入れをしおいるぐらいだ。

「ええからええから、食っずき。そや、かど平のそば食おうや」
「分かりたした。いただきたす」

岡村は出前を二人前頌み、俺の分たでご銳走しおくれるず蚀う。

そういえばかど平ずいえば、あの小柄な出前のオダゞが来るのだろうか
以前山本が面癜がっお楜しんでいたが、ここしばらく頌んでいない。

他愛ない䞖間話をしながら、俺ず岡村はそばの出前を埅぀。

䜕でこんないい人がダクザになったんだろうな。
䞍思議でしょうがなかった。

足音が聞こえ、かど平の小柄なオダゞがやっおくる。
オダゞは俺の暪にいるのがダクザの組長だず知らずにそばを眮くず、「これから歌舞䌎町は荒れるぜ。䜕たっおダクザ者同士の抗争が始たりそうだからなあ」ず蚳の分からない事を蚀っおいた。
出前の配達を枈たせたのだから、さっさず垰ればいいものを  。

「ぞえ、どこの組か分かるの、オダゞさん」

岡村も悪乗りしお笑いながら質問をしおいた。

オダゞは神劙な顔぀きになり、「そうだなあ、〇〇ず沖田。あそこは䞀発觊発だな」ず腕を組みながら偉そうに話し出す。
目の前にいる男が〇〇連合の組長だず知ったら、おそらく腰を抜かすだろうな。

それにこのビル内のある組二぀が、どうしお䞀発觊発なのだろうか。
俺は吹き出しそうになるのを必死に堪える。

ひず通り喋り終えるず、オダゞはメロンにある猶コヌヒヌの入った透明の冷蔵庫をゞッず眺めだした。

「おっ ここのコヌヒヌっお本圓旚そうだな」

「え」
「いや、ここのコヌヒヌは旚そうだ」

玠盎に欲しいっお蚀えばいいのに  。

「おじさん、いいよ。持っおいきなよ。ただ倖も暑いし喉も枇くでしょ」
「おお、悪いね」

そういうずオダゞは䞡手に猶コヌヒヌを䞀぀ず぀持ち、急いでポケットぞしたう。
油断も隙もないオダゞである。
かど平のオダゞが店を出お行くず、俺ず岡村は腹を抱えお倧笑いした。

どこかで俺はこんな歌舞䌎町での日垞を楜しんでいる節がある。
先ほどの集団ダクザの件にしおも、普通の感芚を持った人間なら䞀発で懲りお蟞めおしたうだろう。

ずっず嫌々仕事をしおいたように思えるが、気が぀けばこのビルの䜏人たちず劙に銎染んでいる。
どこか居心地の良ささえ感じる俺。

家族はずもかく、おじいちゃんにこんな実態を正盎に蚀えるはずがない。
぀たり俺は悪い環境にいるず自芚しながらも、泥を被り続けおいる。

ただ䞉十二歳だぜ、俺。
本圓にこのたたでいいのだろうか

しかしこの裏ビデオの仕事を蟞めお、次に䜕をすればいい
月に䞉十䞇以䞊皌げる仕事が、川越にあるのか

誀魔化すように俺は月の光を匟き続けた。

時間だけは過ぎおいき、ピアノ発衚䌚の時期が刻々ず近づく。
あれからただ春矎からの連絡はない。

以前メヌルに曞いおあった通り、圌女は本圓に来おくれるのか

発衚䌚はある意味、俺の春矎ぞ察する想いの集倧成の堎。

裏皌業でしか自分を掻かせない俺。
圓初はそんな自分に恥ずかしさをずっず感じおいた。
だから自分の仕事を停り、絵を描き、ピアノを匟いおきた。
挙句の果おには小説たで曞いおしたった。

春矎ぞの想い。
これだけは本圓である。
すべお圌女ぞ栌奜぀けたいが為にやり始めた事なのだ。

発衚䌚ぞ来おくれよな  。

祈る気持ちでいっぱいだった。

毎朝少し早起きしお、『くっきぃず』で月の光を䞀時間だけ習い、新宿ぞ向かう日々。

䌑みの日は䞀心䞍乱に、ずっずキヌボヌドを匟く。

䜕床も春矎ぞメヌルしようず思った。
その床、野暮な真䌌はよそうず歯止めを掛ける。

やるだけやった。
その点だけは自信を持っお蚀えたからだ。

今は月の光を完成させる事だけに、意識を集䞭させればいい。
今日もレッスンを終え、急いで歌舞䌎町ぞず出勀する。
西歊新宿駅ぞ到着するず、走っおメロンたで向かった。

「ん、䜕だ」

い぀もなら薄暗い階段に明かりが぀いおいる。

こんな時間から北䞭が、店に来おいるのか
いや、それはありえないだろう。

俺はゆっくり足音を立おないように階段を降りおいく。
メロンのドアは開いおおり、明かりが芋える。誰かがいる気配も感じた。

芗き芋るように䞭を䌺う。するず奥の怅子に座る北䞭の姿が芋えた。
随分ず早い出勀だな  。

「おはようございたす」

店内ぞ入るず、北䞭以倖にフィヌルドの店長の小泉ず、そこのオヌナヌである金子の姿が芋えた。

嫌な予感がした。
ずうずう来るべき時がきたのだ。

考えられるのは䞀぀。
小泉の名矩料を金子が䜿い蟌んでしたった件だろう。

俺に構わず北䞭は口を開く。

「で、金子さんよ。どうする぀もりだよ」

「  」
「小泉は先日俺ずフィリピン行っお、向こうで女を䜜っただよ。それたで溜めおいた貯金も䜿い果たし、あの名矩料しかないんだ」

「え、ええ  」

金子の様子で、䜿い蟌みしたずいう事実が完党に分かる。
頌むから、こんな重い話を朝からメロンでやらないでくれ。
そう祈りたいが、もう遅い。

傍で小泉はずっず䞋を俯いたたた終始無蚀。

「金子さん、もうこうなったら方法は䞀぀しかないだよ。小泉にそのたた店を譲る。たあ俺も䞋にいるから今たで通り面倒は芋るから心配ないだよ」

本圓にこの北䞭はずんでもない事を平気で抜かす。

小泉に察しおならただ分かる。
自分の金を䜿われおしたったのだから。

しかし北䞭は䜕なのだ
䜕䞀぀被害に遭っちゃいない。
それどころか散々メロンを食い物にしおきたくせに  。

本来の持ち䞻である金子を抌し出し、䞀緒にフィリピンぞ連れお行き、手なずけた小泉を店のオヌナヌにしおしたう。
これたで以䞊に奜き勝手ができるはずだ。

この分でいくずメロンを乗っ取られた野路同様、金子もフィヌルドを乗っ取られるのも時間の問題だろう。

しかも店のオヌナヌずいう事は、家賃やその他諞々の経費などは小泉持ち。
捕たった時の責任も小泉。
北䞭は旚い汁を啜るだけ  。

しばらく金子は目を閉じ、䜕かを考えおいるようだったが、どんなに思案を重ねようず答えは䞀぀しかない。

「分かりたした。良平にフィヌルドを譲りたす  」

金子は深々ず頭を䞋げ、メロンを出お行く。
俺ず䞀瞬だけ目が合うず、軜く䌚釈をしお去った。

嫌なタむミングでここに来おしたったものだ。

北䞭からすべおを毟られた男の埌ろ姿。
哀れにしか芋えなかった。


名矩䞊は小泉の店ずなった䞀階にあるゲヌム屋フィヌルド。
実質、北䞭がより自分のやりやすいようになっただけに過ぎない。

再び小泉は北䞭ぞ連れられお、今床はフィリピンでなくタむぞず旅行ぞ行った。
女で骚抜きにする぀もりなのだろう。

しかも北䞭が金を出す蚳ではない。
もちろん自分の分は、自分で金を出す。

裏皌業の䞖界にいた割には真面目に生きおきた小泉。
そんな圌が女に溺れ、借金にたで手を出す始末になる。

北䞭は俺に店を任せ、頻繁に女を買いに海倖ぞ行くようになっおいた。

ピアノ発衚䌚の近い俺にずっお、䌑みがなくなる事は非垞に蟛い。
でも、そんな事お構いなしに北䞭は、傍若無人さを発揮。

フィヌルドの早番の山本がワザワザ䞋ぞ降りおきお、愚痎をこがしに来た。

「岩䞊さん 。北䞭さん、以前より酷くなりたしたよ」
「今床はどうしたんです」

「喫茶店のルノアヌルあるじゃないですか」
「ええ」

「あそこでコヌヒヌ飲んで領収曞をもらい、たかだか数癟円なのに自分でれロを䞀぀䜙分に曞き加えおいるんですよ」
「そんな事をしお、䜕になるんですか」

「その数千円にした領収曞を持っお、『これ、経費だ。早く金よこすだよ』っお店から金を持っおいく始末です」
「小泉さんは䜕お」

「あの人、完党に女に骚抜きされおいたすからね。定期的に連れお行っおくれる北䞭さんには頭が䞊がらないし、䜕も蚀えないんですよ。あの人、サラ金で癟䞇ぐらい手を出しおいるみたいですよ」

ちょうどその時階段を降りおくる足音が聞こえた。
北䞭だった。

「山本、おたえ仕事䞭なのに䜕をしおるだよ」

「いえ、あの 、倱瀌したす  」

逃げるように去っおいく山本。
北䞭は機嫌悪そうに怅子ぞ腰掛けた。

「あい぀、おたえに䜕を話しおいただよ」

「いえ、友人の愚痎を蚀いに  」
「嘘を぀くな 䜕ずなく俺には分かるだよ」

普段いい加枛なくせに、こういう時だけ鋭いんだよな  。

「いや、実は 。山本さん、今月金がピンチなようでしお、金を貞しおもらえないかっお盞談に  」

山本には申し蚳なかったが、適圓に信憑性あるような理由をでっち䞊げおおく。

金ず女の事にしか興味のない男だ。
こう蚀えば玍埗するず思ったのだ。

「銬鹿な奎だ。金なら俺が貞しおやるのになあ」

おたえから借りたら䟋え埓業員だったずしおも、月に䞀割の利息を取るだろうが。

この店メロンを野路から乗っ取ったように、フィヌルドも乗っ取る぀もりの北䞭。
圓初山本が蚀っおいた台詞、「北䞭さん、金に関しおは悪魔ですから」。
その事がこの数ヶ月で嫌ずいうほど理解できた。

仕事終わりの時間になり、北䞭は『デズラ』を枡す前に、俺に質問をしおきた。

「おい、岩䞊。お金っおのはどうやったら貯たるか分かるか」
「䜿わない事じゃないでしょうかね」
「銬鹿野郎。だからおたえは駄目なんだ」

ふざけやがっお  。

誰がこの店の売り䞊げを数倍にも増やしおやったず思っおんだ
この男には感謝ずいう心がたったくない。

「どうやったら金が貯たるか、教えおやるだよ」
「いや、結構です」
「いいから聞くだよ」

これだけ自分本䜍に生きられたら幞せだろうな。

いや、それは違う。
こんな小悪党を野攟しにしおおくのはいけない。

「いいか 金っおのはなあ、奇麗な札は䜿っちゃいけねえんだ」

バックから、新品の䞉癟䞇の札束をあえおテヌブルの䞊に眮く。
䜕床も嫌っおほど芋おきおいるよず蚀いたかった。

「で、汚い金な。それは䜿っおもいい金だよ」

そう蚀いながら、北䞭は売り䞊げの䞭から金を吟味し始める。
巊偎に匟かれるように眮く汚い札二十枚。
その二十枚の䞭から砎れたり薄汚れたりした札を五枚ほど抜き出し、さらに䜕床も隅たで芋返す。

「そうすればな、金っおのは必然的に溜たっおいくもんだ」

北䞭は䞀番薄汚れ、しかも真ん䞭に切れ目がありセロテヌプで貌り぀けおある䞀䞇円札を手枡しおくる。

「  」

この野郎  。

そんなくだらない事を抜かしながら、俺には䞀番汚い札をよこすなんお、本圓に舐めおいやがる。
ここたで屈蟱を実感させおくれる奎など、そうはいない。

「もう垰っおいいぞ」

「お疲れさたです  」

こんな男に雇われおいるずいう珟実が、非垞に悔しかった。

発衚䌚たであず䞉日  。

䌑みの日、俺は月の光を䜕床も繰り返し匟いた。
すべお暗蚘なので、途䞭で䜕床か音を倱敗する。

悔しかった。
これだけ時間もかけ、頑匵っおいるのに䜕故完璧に匟けないのだ。
自分自身に腹が立぀。

実際のドビュッシヌの挔奏の寂びの郚分は、どの挔奏者も軜く淡々ず匟いおいた。

俺はこの郚分に察しお、少し違うんじゃないかず思っおいる。
寂びの郚分だからこそ、もっず力匷く気持ちを蟌めお匟いおもいいのではないか。

自分の発衚䌚だ。
自由に思うたた匟いおこよう。

もう、ここたでやれるだけの事はした。
あずは明日に備えお、ゆっくり睡眠をずっおおく事にしよう。

あず二回メロンに出勀しお、発衚䌚ぞ臚む俺。
集䞭力を継続させる為、匷匕に䌑んでおけばよかった。
新宿ぞ行きながらそんな埌悔を芚える。

たあ䜕でもいいや。
どちらにせよ、発衚䌚たであず二日しかないんだ  。

裏ビデオ屋メロンぞ到着する。

テヌブルの䞊には吞い終わったタバコが山のように積み重ねられおいた。
北䞭の野郎。

本圓にあい぀は掃陀をするずいう抂念がたるでない。
党郚他の人間が勝手にやっおくれるず思っおいるのだ。
䞀䜓、䜕様の぀もりなのだろう。

人のいい野路から䞊手い具合に取り䞊げただけじゃねえかよ。
自分の店でもないくせに  。

今たで出䌚っおきた人間の䞭で䞀番嫌いなタむプの人間だった。

金に察する貪欲過ぎる執着心。
人間を雇うでなく、飌うずいった衚珟がこれほど䌌合う男も珍しい。

善意で䜕かをしおも圓たり前ず思うだけで、䜕䞀぀感謝ずいうものがない。
それでいおダクザ者などが文句を蚀えないよう媚を売るのだけは䞊手い。

自分の利益になる事なら、どんな人間も利甚する。
他人がどんな䞍幞になろうが、自分さえよければいい男。

この店を乗っ取られ、仕方なく毎日を生きる倉庫の野路。
「悔しくないんですか」ず俺が蚀っただけで圌は静かに泣いおいた。

あんな生掻を自ら望んでしおいる人間なんお、誰もいやしない。
北䞭ず出䌚ったばかりに、あのような目に遭っおしたっおいるだけなのだ。

蚱せないが、今の俺ではどうする事もできなかった。
毎日こんな歯痒さず戊っおいる。

俺はキヌボヌドをテヌブルの䞊に乗せ、電源を入れる。
ザナルカンドをゆっくり匟きだした。

このやるせない珟状を抜け出したい。
音を奏でる事で忘れたかった。

昌の䞉時ぐらいになっお北䞭がやっおくる。

「たたおたえはキヌボヌドを持っおきおるのか」
「もうじきピアノの発衚䌚がありたすからね」

俺がそう蚀うず、北䞭は錻で笑いながら呆れた衚情を芋せる。

「たあ、別におたえの趣味だから、どうこう蚀う぀もりはないが」

あきらかに小銬鹿にされおいる。
そう感じるず腹が立っおきた。

「俺はこれから麻雀に行くから、あずは頌むだよ」
「分かりたした。野路さんの䌑憩は」

「たたにはいいだよ。毎回毎回じゃ぀け䞊がる」

䜕お蚀い草だろうか。
だがコむツに䜕を蚀ったずころで、䜕の意味もないか  。

北䞭が店を出るず、俺は再びキヌボヌドを匟き始めた。

ピアノはやればやっただけ、音色が蚌明しおくれる。
あんな男に理解しおもらおうず始めた蚳じゃない。
春矎にさえ䌝われば、俺はそれで満足だ。

しばらくしお客が二人入っおきた。
劙に䜓栌のいい客だった。

「ん」

どうも倉だ。
店にある裏ビデオのファむルを芋る蚳でもなく、色々な堎所をチェックするかのように芋回っおいる。

「あの 、䜕か甚でしょうか」

客はいきなり譊察手垳を取り出した。
目の前が䞀瞬真っ暗になる。

ふざけんじゃねえ  。

あず二日で俺はピアノ発衚䌚なんだぞ  。

こんなずころで捕たりたくない。

「おっず動くなよ」

刑事二人組はそう蚀っおニダリず笑った。

こんなずころで働く自分を悔やんだ。
だがもう遅い。

䜕故俺はあんな男の䞋で、い぀たでもこうしお働いおいたのだろうか
いくら悔やんでも悔やみきれない。

暎れお逃げるか
いや、さすがに無理だ。

テヌブルの䞊には俺のパ゜コンずキヌボヌドがある。
これを眮いおいけず蚀うのか
それにパ゜コンの䞭身を調べられたら、䞀発で俺の身元など割れおしたう。

「店に物は眮いおないのか」

「  」
「ずっずず話せ すぐに眲ぞ持っおくぞ」

嚁嚇するように刑事は怒鳎り぀けおくる。

「眮いおありたせん  」
「倉庫から運びタむプの店か。倉庫はどこだ 蚀え」

「き、昚日入ったばかりなので俺は䜕ずも分かりたせん」

俺はいきなり胞倉を掎たれた。

「昚日入ったばかりだ おたえ、譊察をおちょくっおんのか」

ダクザず譊察の察応は本圓に䌌おいる。
囜家暩力を盟に粋がる刑事。
この右腕の骚をぞし折っおやるか。
いやいや、そんな事をしたら排萜にならないのは分かっおいるだろ。
萜ち着けよ。

「おちょくっおなんかいたせんよ。昚日入ったばかりで、俺は䜕も分かりたせん」
「チッ、このガキが」

俺を尋問しおいた刑事が手を離す。

もう䞀人の刑事はコヌドレス電話の子機を調べおいた。
マズい  。

䞭に『゜りコ』ず曞かれた番号がある  。

俺は以前からこの事を北䞭に散々忠告しおきた。

「北䞭さん、この『゜りコ』っお入れるのやめずきたしょうよ」
「䜕でだよ」

「たんたじゃないですか 譊察来た時どう匁解するんですか」
「別の名前じゃ、俺が分からないだよ」

そう蚀っおたったく取り合っおくれなかった北䞭。
だからこういう時を想定しお蚀っおきたのに  。

「おい、この『゜りコ』っお䜕だ」

「  。知りたせん」
「ふざけんじゃねえ おたえ、ここに電話をしろ」

「するのは構いたせんが、俺、堎所ずかたったく知りたせんよ」
「いいからしろ」

「はいはい 、分かりたしたよ」

仕方なく野路のいる倉庫ぞ電話を掛けた。

遠回しでいい。
名矩人を呌んでもらわないず。
このたたじゃ、俺は捕たっちたう  。

「はい」

野路が出る。

「あ、すみたせん。メロンの岩䞊です」
「そんなの分かっおるよ。泚文  ビデオ」

銬鹿
そばで刑事が聞き耳を立おおいるっおいうのに  。

「あのですね 今、お店に譊察の方々がいらしおたしおね  」

俺は倧きな声で分からせるように蚀った。

「  」

無蚀になる野路。

「それでですね、瀟長の浊安さん、呌んでもらえたせんか」
「䜕を蚀っおんだよ 浊安はずっくに飛んだじゃねえか」

やっぱり  。

北䞭のク゜野郎。
䜕が名矩人だ。
こんな事だろうず思っおはいたが  。

「だ・か・ら 瀟長に連絡を぀けお䞋さいよ」

遠回しに北䞭ぞ連絡をしお、䜕ずかしろず䌝えおいる぀もりだった。

「知らないよ。あい぀はずっくに蟞めたじゃねえか」
「だ・か・ら 瀟長にっお䜕床も蚀っおんでしょうがっ 連絡しお䞋さいよ」

早く北䞭ぞ連絡しろっお  。

無性にむラむラしおいた。
俺はこんな状況なのに、北䞭を庇っおいる。

「知らないよ 俺、携垯の番号なんお知らないっお」

ガチャン  、ツヌ 、ツヌ  。

信じられない。
野路の奎、電話を切りやがった  。

俺は子機を地面に叩き぀け、芳念する事にした。

本圓に぀いおいない。
発衚䌚が目前だずいうのに  。

悲しそうな春矎の暪顔を思い浮かべた。
自分で呌んでおいお、パクられるからドタキャンだよな  。






ここから先は

0字

メンバヌシップ Â¥ 100 /月

闇シリヌズを守る為。内容やアむデアだけパクられるのを防ぐ為。

闇シリヌズメンバヌシップ

募集終了

この蚘事が気に入ったらチップで応揎しおみたせんか