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でっぱり【2004幎執筆小説】


 最近、僕っお倉なのかな  。
 お昌前に歌舞䌎町を埘埊しおいるず、綺麗に着食った女たちが腐るほど歩いおいる。歩いおいる時間垯ずその女から発する匂いで、ある皋床どんな仕事をしおいるか僕には想像が぀く。こんなの特技にも䜕にもならないけどね。
 考え事をしおいるず、䞀人の綺麗な女ずすれ違った。たずい 。たた僕の倉な欲望が脳みそを支配しおいく。意識が埐々に薄れおいく  。
 指先がムズムズしおくる。
 いけない。
 こんなんじゃ駄目だ。気分を玛らす為、僕は思い切っお声を掛けおみた。
「あ、あのヌ 、す、すいたせん」
 綺麗な女は気味悪そうに僕を䞀別するず、無芖しお歩き出す。通行人がその光景を芋おニダニダしおいた。
 別にナンパしたい蚳じゃなんだけどな。
 確かに僕は少しばかり出っ歯で、顔だっお栌奜良くはない。圌女は自分がナンパされた぀もりでいるのだろう。でも、僕が道を尋ねる為に声を掛けたずしたらどうするんだ いくらなんでも、無芖する事はないんじゃないのかな。
 目の前で取られた女の行動。悔しいけど、それが僕の珟実なんだ。
 幞いにも仕事が終わったばかりで、時間だけは腐るほどある。それに今日は䌑みだしね。無芖されるのは癪に障るけど、少し距離を開けおその女のあずを぀けおみる事にした。
 自分でもこんな行動するのは䞍本意だし、ずおも嫌だ。でも、逆らえない  。
 欲望に支配された脳みそが、ずっず僕に呜什を出し続けおいた。しばらくその女を぀けたわす事以倖、僕には遞択肢がないのだ。
 それにしおも䞍思議な女だ。埌姿から挂う銙りを嗅いでも、舐め回すようにスタむルを眺めおも、䜕系の仕事をしおいるのか分からなかった。
 飲み屋の女 いや、違うような気がした。颚俗嬢で、ここたで小奇麗にしおいる子もそうはいないし  。
 女はホテル街の方向ぞず歩いお行く。芋れば芋るほど、うっずりするプロポヌション。歩く床、小気味いい感じでリズム良く揺れるお尻。ほどよくくびれたり゚スト。綺麗な耐色の肌に包たれた筋肉質の締たったふくらはぎ。色っぜいうなじ。腰たで䌞びおいるサラサラの黒い髪。
 これから恋人ずセックスでもするのだろうか
 女は距離をずっおいるので、僕に気付く様子もなく普通に歩いおいた。
 そんな状況なのに、僕の芖線は垞に女の埌頭郚ぞいっおしたう。気になっお気になっお仕方がないのだ。
 埌頭郚に觊れたい  。
 觊れお確かめおみたい。
 そんな事をしおはいけないっお、充分に分かっおいる。
 だけど、欲望が僕に呜什をするんだ。僕の歩くスピヌドが若干早くなり、女ずの距離が埐々に瞮たっおいく。
「ちょ、ちょっず觊っお、逃げればいいか  」
 自分に蚀い聞かせるようにボ゜ッず呟いおみる。自分の声が耳に届き、思考回路が動き出した。
 駄目だ、駄目だ  。
 そんな事したら譊察に捕たっおしたう。いきなり觊っお、あの女が隒ぎ出したらどうするんだ 今こうしおあずを぀けおいる時点でも完党なストヌカヌ行為だ。
 僕は絶察にどうかしおいる。
 気付けば女ずの距離が開いおいた。しばらくするず欲望の支配力が倧きくなり、頭の䞭で隒ぎ出す。
「サワレヌッ サワレペヌデッパリ、サワレペヌ キニナルンダロヌ りズりズシテンダロッ」
 頭の䞭でざら぀いた声がこだたする。
 芖野が埐々に狭たり、呚りの景色が芋えなくなっおいく。今僕の芖野でハッキリず芋えるのは、あの女の埌頭郚だけだ。
 埌頭郚がどんどん目の前に近付いおくる。俺の歩くスピヌドが自然に早くなっおいるのだ。僕の右手が女の埌頭郚に䌞びおいく。
 頌む、やめおくれ  。
 僕は必死に懇願するが、そんな意思など無関係に右手はどんどん女の埌頭郚ぞず近付いおいく  。
「ちょっず、あんた さっきから、䜕、さっきからあず぀けおきおんの」
 急に女がこちらを振り向く。明らかに怒っおいた。怒った顔もたた䞀段ず綺麗に芋える。でも僕の右手は、それでも女の埌頭郚に向かっお蚀った。
「やっ、䜕よ あなた、䜕すんのよ 気持ち悪いわね」
 僕の右手の指が女の髪に觊れる。女はその瞬間、手で僕の右手を払いのけた。ゞワリず痛みの感芚が䌝わっおくる。それでも僕の意思ずは関係なく、再び右手は女の埌頭郚に向かっお進みだす。怒っおいた女の顔が急に倉わり、たるで怖いものでも芋るかのような衚情になっおいた。
「いやヌ、誰か助けおヌ 。倉態ヌ」
 女は倧声をあげお僕から離れおいく。このたたではたずい。街䞭の人々が僕に泚目しおいる。痎挢か倉質者扱いで捕たっおしたう。欲望はこんな状況でも怒鳎りたおおいた。
「オむカケテ、トットトサワッテ、カクニンシロペヌ」
「おいっ、䜕やっおんだ、貎様」
 おせっかいな通行人の䞀人が僕の肩を぀かみかかっおくる。僕は通行人の手を払いのけ、党力でその堎を逃げ出した。頭のどこかに䜏み着いた欲望を怚みながら、䞀生懞呜走った。
 
「䜕だ、こりゃ  」
 蟺りはすごい匂いが充満しおいた。その匂いが錻に぀き、吐き気を催しそうになる。目をゆっくり芋開くず、ゎミ捚お堎のゎミず䞀緒になっお俺は寝おいた。
 慌おお立ち䞊がるず、党身に痛みが走る。再びゎミの䞭に厩れ萜ちる俺。䜓がいうこずを利かない  。
「いおおお 。ちくしょうヌ、鳎戞の野郎  」
 こりゃあこっぎどくやられたもんだ。
 たあ、圓たり前か 。ダヌクネスで店の売り䞊げを抜いおいたのをオヌナヌに芋぀かっおしたったのだから  。
 あれだけ抜いおいれば、い぀かはバレおもおかしくない。それが今日だっただけの話である。
 赀厎が無事だったみたいだし、たあそれで良しずするか。
「いおお 。䜕だこりゃヌ 党然、力はいんねヌや。あヌ 、いおっ」
 少しでも䜓を動かすず激痛が走る。臭いけど仕方ない。ゎミをベッド代わりに倧の字になった。
 寝たたたの状態で財垃を確認する。痺れおいる右腕に力入れ、䞭に入っおいる札を慎重に数えおみた。
 十䞇円ごずに俺はズクを䜜っおいるので、こんな時は本圓に数えやすい。
「これで 、二十。うヌん 、四十。六十、いおお 、八十  」
 財垃の䞭は間違いなく癟䞇以䞊ある。数えおいる途䞭で財垃を服に戻した。
 鳎戞のボケ野郎  。
 頭に来お殎ったたではいいが、俺の財垃から金をずるのを興奮し過ぎおすっかり忘れおいたようだな。頭が切れるず自分じゃ思っおいるみたいだけど、鳎戞は怖いだけでどこかが抜けおいる。もっずも氎野は、ただの倧銬鹿野郎だけどな。
 自然ず笑いが出おきた。
「アハハ  」
 道を通りすがる通行人が気味悪そうに俺を芋おいく。そりゃあそうだろう。血だらけでゎミ捚お堎に寝転がっおいる人間なのだから。
 誰も俺を芋たっお、助けようずしおくれる奎なんかいやしない。
 だけどこんな俺が、癟䞇以䞊の金を持っおいるだなんお誰も想像しやしないだろう。みんな軜蔑の県差しで俺を芋お、避けるように歩いおいく。非垞に愉快だった。しょせん、䞖の䞭なんおこんなもんさ。
 たった唯䞀の気掛かり  。
 それは赀厎ずもう䞀緒に働けない事だ。
 男らしいキリッずした顔぀きに、そこそこ均敎のずれた筋肉質の䜓。どこか圱のある雰囲気。䞀芋どこにでもいそうだが、この街にあのタむプはたずいない。
 過去に䞀床だけ男同士で関係を持ったこずがある。男のツボは男だからこそ分かるず、衚珟したらいいのだろうか。あれは最高の快感だった。だからずいっお男なら誰でもいいずいう蚳じゃない。自分でこい぀だず思える人間じゃなきゃ、最高の快感など埗られやしない。あの赀厎をホモセクシャルの䞖界に匕きずり蟌めたら、どんなに最高だろう。
 あのたた䞀緒に働きながら、金をふんだんにちら぀かせれば、この手に萜ちたかもしれないのに  。
 そういえば郚屋に、いくらあったっけ  。
 確か抜いた金、党郚で二千䞇は貯めおあったよな しばらくその金でゆっくり䌑むずするか。
 空を芋䞊げおみる。歌舞䌎町の空は盞倉わらず薄汚かった。
 
 本圓に疲れた。ただ息が敎っおいない。い぀も欲望がしゃしゃり出おきお僕をこんな颚に困らせる。
 無我倢䞭で逃げ、新倧久保駅の近くたで走っおきたみたいだ。クリスマスも過ぎ、幎末だずいうのに僕はこんな倧汗を掻いお、䞀䜓䜕をやっおんだろ  。
 手持ちの金もあんたり無いし、今日はあそこの癟八十円のラヌメン屋にでも行くか。
 しばらくその堎に立っお考え蟌む。ゞトッず滲み出おくる汗。
 マンションも近いし、䞀床垰っおシャワヌを济びよう。党身汗を掻いおいるからダケク゜だ。僕は走りながらマンションたで行く事にした。
 靖史は今、仕事にいっおいるはずだから、シャワヌのあずゆっくり寝るのもいい。マンションぞ着くず、゚レベヌタヌの䞊向きの䞉角ボタンを抌しお埅った。
 ゆっくり深呌吞しお、息を敎えおいるず、゚レベヌタヌが降りおくる。䞭に入り八階を抌した。自動的にドアが閉たりだす。その時、遠くから足音が聞こえおきた。
「すいたせヌんヌ。ちょっず、埅っおくださヌい」
 女の声が聞こえたので、僕は開ボタンを抌しおあげる。女は駆け足で、゚レベヌタヌに飛び蟌んできた。
 声も出せないのか女は䞭腰で䞡ひざに手を付き、肩で息をしおいる。
 目の前に女の埌頭郚がある  。
 欲望がたた疌きだす。
 もうほんずにやめおくれっお 。さっきも酷い目に遭ったばかりだずいうのに  。
 だけど今なら手を䌞ばせば、䞋を向いおいる女の埌頭郚に觊れるのは容易いはず  。
「サワッチマ゚ッテ ハダク、ハダク」
 欲望を必死になっお抌さえ蟌む。冗談じゃない。䜏んでいるマンションの゚レベヌタヌの䞭で、そんな事できる蚳がない。必死に思考回路を働かせ抑制させる。
「な、䜕階ですか」
「  。はぁ 、はぁ  」
 女は話をする䜙裕さえないようだ。自然ず゚レベヌタヌのドアが閉たり、八階に向かっお䞊昇しおいく。䞉階を過ぎた蟺りで女は䞋を向いたたた、喋りだした。
「すいたせんでした 。はぁ、はぁ 、あのヌ、はぁ 、十二階で、おねが 。あっ」
 ゚レベヌタヌに飛び蟌んできた女が、話しながら顔を䞊げる。なんずいう偶然なんだろうか。さっき僕が街でひず隒動起こした女だった  。
 こんな狭い箱に二人っきりずいうしシチュ゚ヌション。気たずい空気が蟺りに充満する。たずい。このたたじゃ絶察に誀解される。絶察になんずかしないずいけない。
「い、いやっ、あのヌ 。さ、さっきはですねヌ  」
「ひっ 、おっ、お願い 。近寄らないで 。おっ、倧声出すわよ」
 女は狭い゚レベヌタヌの䞭で埌ろに䞋がっおいく。街で出䌚った時の嚁勢はどこぞいったのか、かなり怯えおいる様子だ。壁にベッタリず匵り付くように僕ず䞀定の距離を保ち、小刻みに震えおいる。このたたでは、かなりたずい方向に行きそうだ。
「ち、違うんです。き、聞いおください。さ、さっきは僕 、別に悪意があった蚳じゃ 。たあ、そのヌ  」
「いやっ こっちこないで、お願い。いやヌっ」
 ガタガタ震えながら女は声のトヌンが䞊がっおいき、叫び声に代わり぀぀ある。もし、マンションの䜏人たちに気付かれたら  。
 僕はずっさに動いた。
 気が぀けば、䞡手で女の口を抌さえおいる僕。最初は隒いでいたが、すぐに女は諊めたのか震えながらも倧人しくなる。こんな予想倖の展開になっおしたい、僕はどうしたらいいのだろうか
 ゚レベヌタヌが止たり、ドアが開く。そこは八階だった。
 僕は女の背埌に回りながら片手で口を抌さえ、もう片方の手を腰に回したたた、䞀緒に出る。
 どうか、このマンションに䜏んでいる人ず䌚いたせんように  。
 祈るような気持ちで通路を慎重に進む。
 靖史ず共同で借りおいる郚屋に着くず、嫌がる女を攟り投げた。女は片膝を立お、自分の黒いパンティヌが䞞芋えなのも気付かず、怯えた衚情で小刻みに震えおいる。
 僕は自然にキッチンのドアを開けお、䜕故か右手で包䞁を取り出す。こんな事したくはない。でも倧声を出されたら僕はおしたいだ  。
 ゆっくり包䞁を女に突き぀けた。
「ぜ、絶察に倧声を出さないでよ。が、僕だっお 、こ、こんな事を奜んでしおいる蚳じゃないんだ。た、たたたた 、こ、こんな展開になっお  」
「おっ、お願い 。お願いだから私を 、私を殺さないで  」
 女は完党に怯え、ガタガタ震えおいる。涙を流しながら蚊の鳎くようなか现い声で囁いおいる。なんでこんな事になっおいるんだろうか  。
「お、お願いだから静かにしおっおば」
 目の前で包䞁突き぀けられたら僕だっおこうなるだろう。結局のずころ、党郚僕の欲望がいけないんだ。
「むマナラ、コノオンナハナンダッテ、むりコトヲキク。サワレ。デッパリヲサワッチマ゚ッ ハダク、ハダク」
 たた欲望が巚倧化しお頭の䞭で、ざら぀いた声を発する。
「う、うるさい うるさい うるさヌいヌっ」
「ひっ ご、ごめんなさい。䜕でもしたすから。お願いですから、どうか呜だけは  」
 この女、勝手に勘違いしおいるな。
 それにしおもこの郚屋を知られおしたい、完党に顔も芚えられた。この堎合どうしたらいいんだろう
 女はすがるような目で、僕を芋぀めおいる。
「な、䜕もしないから安心しおよ。ねっ」
 安心させるように蚀い、包䞁を巊手に持ち替えお右手を女の肩ぞ眮いた。柔らかい華奢な女の肌に觊れお、僕の心臓はドキドキしおいた。
「ひっ、ごめんなさい。殺さないで䞋さい お願いしたす  」
「  」
 こんな時に僕は䜕を考えおいるんだ  。
 右手の指先が、モゟモゟず勝手に動き出した。
 
 ただ痛いけど、い぀たでもこんなずころで寝おいられない。すっかり蟺りは暗くなり、各店のネオンが点きだしおいた。その䞋品なネオンが倜の歌舞䌎町を圩っおいる。気力を振り絞り䜕ずか立ち䞊がった。
 携垯が鳎っおいるのに気付く。
 着信画面を芋るず、あの鳎戞からだった。
 冗談じゃねえ  。
 俺は焊っお携垯電話の電源を萜ずす。
 鳎戞に散々蹎られお意識を倱い、このゎミ貯め堎に捚おられた俺。あれから䜕時間経぀のだろうか 時蚈を芋るず、もう倜の八時になっおいた。
 䜕故鳎戞は、わざわざ俺に電話をした
 あれだけ俺を殎ったから生きおいるか心配で電話をしおみた。いや、あの男にそんな配慮などある蚳ない。
 しばらく経っお冷静さを取り戻し、今たで抜かれた金の䞀郚分でも取り返そうず思っおか うん、こっちのほうが合っおいるな。
 だずすれば、ここにいるのはたずい  。
 携垯の電源を途䞭で萜ずしたのはミスだった。さっきはあのたたやり過ごせば良かったのだ。鳎戞に譊戒心を生たせただけである。蛇のような性栌の鳎戞。もう䜕かしらの行動に動いおいるはず。
 痛い足を匕きずりながら、ゎミ貯め堎を去る事にした。鳎戞がここに来たら、䞀貫の終わりだ  。
 あい぀、俺のマンションの堎所は知っおいたっけ
 最初にあの店で働く時に枡した履歎曞。あい぀がちゃんずそれを保管しおいたら、俺のマンションの堎所など知られおしたう。そんなものはマンションを出れば枈む事だが、郚屋には俺の貯めた二千䞇の金がある。
 今からマンションに向かい、鳎戞ず鉢合わせになるのだけは避けたい。
 考えろ  。
 頭を䜿え  。
「そうか」
 幞い俺には同居人の勝男がいる。
 あい぀なら俺ずは間逆の時間垯で働いおいるから、この時間なら郚屋にいるはずだ。それに別の店で働いおいるから、鳎戞ずも面識がない。同じ地元の同玚生だから、信甚もできる。
 勝男に二千䞇の金を持っおいる事を知られるのは嫌だが、この際背に腹は代えられない。
 顔䞭アザず血だらけの俺は、ペロペロず歌舞䌎町の街を歩いた。街を歩く通行人の芖線が、四方八方から突き刺さる。確かに今の俺は目立ち過ぎだ。泚目を济びるのも圓たり前か。いやそんな事を気にしおいる堎合か。二千䞇だぞ、二千䞇  。
 俺は携垯を取り出しお電源を入れた。たずは勝男に電話をしよう。ただ準備䞭の携垯。
「チクショり。早く぀けよ  」
 ぀い独り蚀を呟いおしたう。むラむラしおいる蚌拠だ。駄目だ、萜ち着け 。こんな時こそ冷静に行動しないず、あずでこっ酷い目に遭うだぞ
 俺は携垯が぀くたでの間、ゆっくり深呌吞をしお粟神を萜ち着かせる。
 勝男の番号を探し、すぐ電話を掛けおみた。今、勝男に電話しおいる間、鳎戞から電話があれば話し䞭になっおしたう。こんな事ならキャッチホンを぀けずきゃよかった。
 どっちにしおも、急がないず  。
 
 僕は欲望の趣くたた右手で優しく髪を掻き分け、郚屋に連れ蟌んだ女の埌頭郚を觊っおいた。
 女は䞀段ず震えが激しくなる。なるほど、僕が思った通りの子みたいだ。
 僕はニッコリ埮笑んでから、優しい口調で話し掛けた。
「き、君はいい子だねヌ。せ、性栌のいい優しい子だ。ちょ、ちょっず突っ匵っおしたうずこあるかもしれないけど、う、うん、うん 。が、僕にはよく分かるよ。そ、そんなに震えないで。な、䜕もしないから倧䞈倫だよ。ねっ」
「ごめんなさい。䜕でもしたすから 。ね お願い  」
 いきなり女が抱き぀いおきた。
 いい匂いがする。黒のロングヘアヌが、僕の錻をくすぐった。女は僕に抱き぀きながら、小刻みに震えおいる。
 い぀の間にか包䞁を離し、自然に抱き締めおいる僕。
 今日初めお街で出䌚った女が、䜕故か僕の郚屋にいる。そしお飛んだハプニングにより、こうしお抱き合っおいる  。
 興奮した僕はどんどん冷静さを倱う。圌女を抱き締める䞡腕に力が入っおいく。
 匟力のある倧きな胞の感觊。
 鮮やかな赀い唇から発せられる吐息。
 理性が吹き飛んでいく。
 気付けば本胜の趣くたたに女を抌し倒しお、唇を半ば匷匕にむさがっおいた。歯ず歯がぶ぀かり合う。僕は少しだけ出っ歯だからしょうがない。
 気にせず右手を女の服の䞊から入れ、胞の蟺りをたさぐりだす。䞀瞬、女は逃げようずするが、匷匕に舌をねじり蟌むず倧人しくなった。
 服を䞁寧に䞀枚䞀枚脱がし、䞋着姿のみにする。
 矎しい 。䜕お芋事なダむナマむトボディヌなんだ。もう僕の理性は止たらない。ブラゞャヌを匷匕に剥ぎ取り、乳銖に舌を這わせる。パンティヌの䞊から手を入れようずするず、激しく動いお女は抵抗した。
「やめお」
「こ、ここたで来お、な、䜕を蚀っおんだよ」
 僕はやりたい䞀心、女はやられたくない䞀心の攻防を繰り広げる。
 䜕床か転げ回っおいる内に、郚屋の本棚に激突した。その衝撃で棚の䞊にあった小さなダンボヌル箱が、僕の頭に萜ちおくる。
「うげっ」
 すごい衝撃だった。僕は頭を䞡手で抑えお地面を転がる。
 いおヌ  。䞀䜓、䜕が入っおいるんだ いや、痛がっおいるどころじゃない。女に逃げられたらどうするんだ。
 慌おお呚囲を芋枡す。
「あれ」
 女はパンティヌ䞀䞁のたた、胞も隠さず四぀ん這いの栌奜で、ある䞀点を呆然ずしながら芋぀めおいた。䜕で逃げなかったんだ、この女  。
 そういえばどこを芋おいるんだろう。女の芖線を远うず、ダンボヌル箱を芋おいるようだ。ひょっずしおこの子、匷烈な箱マニアだろうか いや、そんなのある蚳ないか。
 女は僕の事などたるで芋えないかのようにダンボヌルを凝芖しおいた。裞に近い栌奜で。ん、裞  。
 僕は、目の前にある圢のいい胞をボヌっず眺めた。
「あなたっお、金持ちだったのね  」
 女はボ゜ッず呟くように蚀った。
「はあ」
「だから、あなたっお倧金持ちなのねっお蚀ったの」
 女はこちらを振り返り、僕の顔をマゞマゞ芋぀めおいる。䜕だ、この女  。
「あ、あのヌ 、お、おっしゃっおいる意味が、ぜ、党然理解できないんだけど  」
「䜕を蚀っおんのよ。こんなやり方で私を郚屋ぞ連れ蟌んで匷匕にやろうずしお 。埌々お金で枈たせればいいやっお思ったんでしょ」
 チンプンカンプンな事を蚀い出す女だ。だいたい僕がお金持ち 銬鹿蚀っちゃいけない。僕はただのしがないゲヌム屋の埓業員であっお、絊料が人よりも䞊倖れおいい蚳でもない。女の蚀っおいる事が、䜕も理解できなかった。
 女は先ほどから僕をずっず芋぀めおいる。さっきみたいに怯えおいる蚳ではない。だからずいっお怒っおいる蚳でもなさそうだ。
「さ、さっきから䜕、い、蚀っおん 、の  」
 女が䞊目遣いに、色っぜい目線を送る。さっきの怯えた目もいいけど、こういう目぀きの方がやっぱり䌌合う。心臓がドキドキしおいた。
「ねぇ 。最初からちゃんず蚀っおくれればよ 私、あんな怖がらなくおも良かったのに  。あんな手の蟌んだ事しなくおもいいじゃない。別にあなたの奜きにしおいいのよ。こんなの芋せられちゃったんだもんね。しょうがないわ、私の負け」
 こんなにいい女が䞊半身裞で、僕に挑発ずいうか誘惑しおいる。信じられない光景だが、目の前に起こっおいる珟実なのだ。僕の股間はギンギンに興奮しおいた。
 女は気玛れっおいうからな  。
 据え膳食わねば男の恥ずも蚀うし  。
 だが埅およ  。
 ちょっずおかしいず思わないのか
 この女の急激な態床の倉化は䞀䜓  。
「さっきたでの勢いは、どこいっちゃったの ねぇ  」
 女が俺の倪ももをさすりだす。
「はうっ」ず思わず声が出おしたう手銎れた手぀き。それでいお嫌味じゃなく非垞に気持ちがいい 。どこかたったりした  。
 いや、これは違う。料理番組じゃないんだから。
 くだらない事を考えおいる間、女の手は千手芳音のようにせわしく動き回りだす。頭の䞭が真っ癜になりそうだ  。
 気付けば僕は、ズボンずパンツを䞀緒に脱ぎ捚お女に突撃特攻隊のごずく、真っ癜な灰になるたで腰を振り続けた。
 䜕回、名も知らない女ずのセックスを重ねたのだろう  。
 い぀の間にか、僕ず女は二人しお䞀緒に眠っおいたようだ。
 気が付くず、時蚈の針は倜の八時を過ぎおいる。
「良かったヌ。あなたっお芋かけに寄らずパワフルなのね 。もう私、クタクタ  」
 こんな矎人の女を抱けただけでも奇跡に近い気分なのに、こんな蚀われ方されちゃうなんお男冥利に尜きる。ほんず、生きおいお良かった。芪に生んでくれおありがずうず感謝の気持ちでいっぱいだ。
「ねぇ、あれ。あなたの携垯でしょ あそこに転がっおるの 。さっきからバむブ鳎っおいるわよ」
 ズボンを脱いだ時にポケットから飛び出たのか、郚屋の隅でバむブの着信ランプが点滅しおいた。
 誰から そんなの今の僕には関係ない。誰からの電話だっお構わない。
 しばらくこの䜙韻に挬かっおいたいんだ。
 女が悪戯っぜい目で僕を芋぀めおいる。僕はたたたた元気になっお女に襲い掛かった。
 
 いくら鳎らしおも電話に出やしない  。
 䜕しおやがんだ、勝男の野郎
 寝おいるにしたっお、い぀たで寝おやがる。どうでもいい時はし぀こいぐらい連絡するくせに、肝心な時はい぀もこうだ。本圓に䜿えない奎め。
 しょうがない。自分で金を持っおくるしかないか。でも、この䜓でマンションたで歩いお行くには少々蟛過ぎる。たずタクシヌを捕たえないず  。
 蟺りを芋回しおみるが、こんな時に限っおタクシヌの姿はたったく芋぀からない。
 この通りじゃ無理か。区圹所通りに出ないず  。
 花道通りを颚林䌚通のある方向ぞ向かっおを歩く。
 い぀もならポン匕き連䞭が嫌っおほど声を掛けおくるのに、さすがに今日だけは誰も声を掛けられない。
 すれ違う通行人は、りザいぐらいに俺の顔をゞロゞロみおいきやがる。
 颚林䌚通の前をやっずの思いで通り過ぎ、ようやく区圹所通りたで蟿り着いた。い぀ものようにタクシヌは結構走っおいる。
 匱々しく手を䞊げるず䞀台のタクシヌがすぐに止たる。運転手は血だらけの俺を芋るず、無蚀で䜕も蚀わずにドアを閉め、逃げる様に走り去っお行った。完党な乗車拒吊だ。
 確かにこの栌奜じゃしょうがない。だが今は䞀刻も急いでいるのだ。やるせないものがあった。結局どのタクシヌも同じ察応で、俺を乗せおくれる運転手は誰もいなかった。
 仕方なく新倧久保に向かっお歩き始める。劙にむラむラしおいた。もう䞀床勝男ぞ電話を掛けおみる。
 足が痛い。肩もアゎも痛い。党身が軋む  。
 それなのに勝男の野郎は、いくら電話しおも出おくれない。
「チキショヌりッ」
 倧声を匵り䞊げたので、アゎに痛みが走る。思わずその堎でうずくたっおしたった。
 
 し぀こいくらいバむブの振動ず、着信ランプが点滅しおいる。
 どこの銬鹿者だ。人の幞せな時間を邪魔するずは  。
 銬にでも蹎られお死んでしたえばいいのだ。
「ねぇ 、私をあなたの女にしおよ。䜓の盞性だっおいいず思うし  」
「きゅ、急にどうしたんだよ きょ、今日、ぞ、倉な出䌚い方をしたばっかりで  」
 僕は寝返りを打぀ず、背䞭に固いものがチクッず圓たり、飛び跳ねる。
「な、䜕だ、こりゃ」
「䜕、驚いおいるの ほんずに蚳分からない人ねヌ」
 僕の目の前には䞀䞇の札束が  。
 䞀䜓、䞀䞇円札の札束が䜕個あるんだ 棚から萜ちた小さなダンボヌル。そこから札束が飛び散っおいる。
 僕には身に芚えがたったくない。これは絶察に靖史の金だろう。あい぀そんな矜振り良さそうな事、蚀っおなかったのに  。
 こんなずこに金をヘ゜クリずしお貯めおいたんだ 無甚心な。
 なるほど、ようやく理解できた。この女は僕が金持ちだず思っお態床が急倉したんだ。
「ねぇ、䞀䜓どうしちゃったの そういえば私たち、同じ日に二回も逢っおいるのよ。なんか運呜的なもの感じない ただ、お互い名前すら知らないのにさ  」
「ね、ねヌ 。こ、このお金  」
 僕の携垯はさっきからずっず、バむブの振動音を鳎らしおいる。
「ちょっず、さっきからし぀こいぐらい、あなたの携垯鳎っおるわよ。おかしくない もしかしたら他の女からなんじゃないの じゃなきゃあ、そんなし぀こく電話なんおしおこないわよね」
 色々あり過ぎお頭がパニックになっおいる。ずりあえず、携垯を手に取っおみた。
「ゲッ」
 着信履歎を芋るず、靖史からの着信ですべお埋たっおいる。䞀䜓䜕回掛けたんだ
 只事じゃないこずだけは理解できた。
「ねぇヌ、絶察に女でしょ ハッキリ蚀いなさいよ」
「ち、違うっお 。ご、ごめん、ず、友達に電話するからちょっずの間、し、静かにしおおよ。た、頌むからさヌ」
「䜕、誀魔化しおんのよ。絶察に女でしょ そうなんでしょ」
 䜕お説明しおもこの子は理解しおくれないだろうな。僕はずりあえず女を攟っおおいお、靖史に電話を掛ける事にした。靖史からの異様な着信回数。きっず䜕か倧倉な事が、あったに違いない。
 プルルル 、プツッ  。
「おいっ 勝男 ぐっ 、あいおおお 。䜕で電話、出ないんだよ 䜕回、電話したず思っおんだよ。い぀もは起きおいる時間だろ」
「あ、あヌ、ご、ごめん、ごめん 。じ、実はね  」
「今は事情なんおどうだっおいい。今から俺が蚀った通りにしおくれ。分かったな、勝男」
 しどろもどろしおいる僕の話を途䞭で匷匕に遮る。僕の埌ろで女は聞き耳を立おおいた。
「い、いきなりどうしたんだよ だ、だいたい、い、い぀もは  」
「いいから聞いおくれっお 本棚の䞊に、ダンボヌル箱があるだろ」
 い぀もは冷静なはずの靖史が、珍しく怒鳎り口調だ。
「ダ、ダンボヌル  あ、あヌそ、そういえば  」
「それを持っお、すぐ倖に出おきお欲しいんだ」
「で、でもあのお金、ど、どうしたの」
「おい、䜕で䞭身が金だっお知っおんだ たヌいい 。今は䞀刻も急ぐんだ 早くダンボヌルごず持っお、郚屋を出おきおくれよ」
「あ、あのさヌ 。も、もうちょっず、ちゃ、ちゃんず説明しおくれないずさヌ  」
「うるせヌっ 時間がないっお、さっきから䜕床も蚀っおんだろ いいから俺の蚀われた通りにしおくれよ、勝男。なっ 出お、そのたた区圹所通りに向かっお来おくれ」
「わ、分かったよ 。靖史  」
 携垯を切っお少し考えおみる。
 今珟圚、靖史の身に䜕かあった事だけは確かなようだ。
 ダンボヌルず金  。
 そしお岩厎靖史  。
 これから䜕が起こるのだろうか 僕は奇劙な面倒事に無理やり匕きずり蟌たれたような気がする。
「ねぇヌ、䜕なの 今の䌚話は䜕を䞀䜓話しおたのよ」
 この今日、出䌚ったばかりの女もそうだ。
 䜕がなんだか分からない内に、面倒事に銖を぀っ蟌もうずしおいる。もちろんこれだけの金が掛かっおいるからだろうけど 。興味接々の目で僕を芋おいた。もっず詳しい情報を聞きたいのだ。
「わ、蚳はあずで話すからさヌ、い、䞀緒に぀いおきおちょうだいよ。ね」
「今、話しおちょうだい じゃないず私、ここ動かないもん」
 女はむくれだす。綺麗な顔の女のふくれっ面ずいうのも悪くないものだ。ただ、今は靖史が気に掛かる  。
 僕はすぐに立ち䞊がっお服を着替えだした。
「ねヌ、ちょっずヌ 。あなた、䜕しおんのよ」
「た、頌むから早く服を 、き、着おおくれよ。ほ、ほんずに僕は今急いでいるんだ」
 女に懇願する。女は玍埗のいかない衚情で仕方なく、ゆっくりず立ち䞊がった。
 圢のいい倧きな胞が揺れ動き、僕は思わず芋ずれおしたう。女は僕が芋ずれおいるのなんおたるで気にせずに、可憐な手぀きで服を身に぀けだした。
 その動䜜はずおも神秘的で、劖粟が舞っおいるような印象を受ける。アッずいう間に僕が着替え終わるより先に身支床を敎え終わった。
 圓たり前か 、僕は女の仕草に芋ずれおいただけなんだから  。
「ちょっずあなた、急いでいるんでしょ 早く着替えなさいよ。真盞をちゃんず聞くたで、私は絶察にあなたのそばから離れないからね」
「わ、わかったよ  」
 女っおいうのは恐ろしい生き物だ。初めは僕を気味悪がり、マンションで䌚った時は怯え、郚屋で金を芋おから急に媚を売り出し、それから僕ずセックスしお 。今はダケになっおいるのかちょっぎり怖い。
 未緎たらしく女の䜓を芋おいたが、仕方なく着替え始めた。今は急がなきゃいけない。萜䞋した衝撃で飛び散った札や札束を二人でダンボヌルにぶち蟌む。金を詰めたダンボヌルを手に取り、立ち䞊がる。
「駄目よ。これ持っお衚に行くんでしょ このたたじゃ目立ち過ぎるわ。ちゃんずフタを閉じお、せめおガムテヌプぐらい貌らないず駄目よ」
「そ、そうだよね」
 女っおこんな時でも冷静だ。
「それにしおも汚い郚屋よね。ほんず  」
「ご、ごめんよ。で、でもね、僕䞀人が掃陀しないっお蚳じゃ  」
「いいから早くガムテヌプを探しなさいよ」
「は、はい  」
「どこに眮いおあるの」
「い、いや、ふ、普段䜿わないものでしょ そ、そんな急に蚀われたっお、わ、分からないよ」
「口動かす前にずっずず探しなさいよ」
「は、はい  」
 色々探し出しおようやくガムテヌプを芋぀ける。ガムテヌプをダンボヌルにきれいに貌り付ける。
「じゃ、じゃヌ行こうか  」
 郚屋を出ようずしお僕の携垯が鳎り出す。靖史からだ。
「も、もしもし  」
「今、どこだ」
「えっ、た、ただ郚屋出ようずしおいるずこなんだけど 」
「䜕しおんだよ 早く出ろっお あっ、そヌそヌ、もし郚屋に誰か来お、俺の事聞かれおも知らん振りしおくれよ。マンション内で声掛けられおも同じだ。誰かそっちに向かっおいるかもしれないんだ。勝男、頌むぞ」
「え、えヌず 、ど、どういう事かな」
 ガチャッ  。
 靖史は蚀うだけ蚀っお、さっさず電話を切っおしたう。たったくせっかちな奎だ。女はゞッず僕を芋据えおいる。真剣な県差しの衚情もたたいい。僕はこんないい女ず䜓を重ね合わせたんだ。できればこのたた䜙韻に浞っおいたい気分だった。
「䜕、ボヌっずしおんの」
「い、いや  」
「知り合いのずこ行くんでしょ」
「う、うん  」
「もちろん私も䞀緒に行くんだからね 分かっおるの」
「わ、分かっおるよ  」
 女ず䞀緒に郚屋をあずにする。ダンボヌルを持ったたた歩くなんお匕越しの時以来だ。マンションの八階の通路を歩いおいるず、女が再び喋り掛けおきた。
「そろそろちゃんず、私に話しおくれおもいいんじゃないの」
「が、僕だっおよく分からないんだよ」
「しらばっくれないでよ だいたいそんな倧金持っおどこぞ行くっおいうのよ」
「しっ し、静かにしお 。゚、゚レベヌタヌのボタンを抌そうずしたら、そ、その前に䞊に動き出したんだ。が、僕の盞棒が蚀っおたように、だ、誰かが探しにきたのかもしれないんだ」
 女は静かに頷いた。僕ず圌女ぱレベヌタヌの䞊昇しおくるデゞタルの数字を黙っお芋守る。
「  」
 ゚レベヌタヌは八階を通過しおそのたた䞊昇しおいく。ホッずしお思わず出る吐息。これだけの金の量だ。悪い奎がこれを狙っおいる可胜性だっおあるだろう。もっず慎重に動かなきゃいけない。䞋の階に向かう䞉角のボタンを抌しお、僕ず女ぱレベヌタヌを埅぀事にした。
 
 本圓、あい぀は昔っからトロむずころがある。
 携垯を切っおポケットにしたう。
 ただマンションから出おいなかったずは  。
 鳎戞が来たら䞀貫の終わりだ。呜たでは取られる事はないが、二千䞇はすべお倱う事になる。
 冗談じゃない。あれを貯めるのに䞞二幎は掛かったんだ。金を倱う事だけは絶えられない。俺はこの展開をうたく行くよう祈るしかない。
 歩いおいるず䜓䞭に痛みが走る。通り過ぎる人が俺の顔を芋おビックリしおいた。手で自分の顔を觊っおみる。䞡目が腫れお芖界が狭たり、あっちこっちがアザで腫れおボコボコだ。䞡手を広げるずベッタリ血が぀いおいる。
 確かにこのたたじゃ目立ち過ぎるな  。
 新倧久保のマンションに近付いたずころで、鳎戞ずバッタリずいうのは避けたい。確立を枛らす為、近くの薬屋に入るこずにした。
「いらっしゃ 、ひっ」
 薬屋の店員は、俺を芋おビックリしおいる。
「そんなにビックリしないで䞋さいよヌ。いやヌ、階段から萜ちおしたいたしお 。血を拭う為の濡れティッシュやマキロンずかもらえたすか」
「だ、倧䞈倫ですか」
「時間急いでいるのでお手数ですが、すぐお願いできたすか」
「は、はいっ。かしこたりたした」
 店員が慌おお応急凊眮をしおくれる。鏡を芋るず以前鏡で芋た顔ずは別人の俺が写っおいた。血だけは拭えおもアザは残り、歯は欠け、芋事醜い顔になり代わっおいる。鳎戞に散々蹎られたこずを思い出す。たた憎悪が沞きだしおきた。
「鳎戞の野郎  」
「えっ、ど、どうか臎したしたか」
「いえ、䜕でもないです」
 怚み蚀が぀い、出おしたっおいた。
 䌚蚈を枈たし、薬屋をあずに再び区圹所通りを歩く。
 勝男の奎、ちゃんず持っおきおくれるんだろうか。たさかダンボヌルの金を芋お、考えが急に倉わっお  。
 いや、あい぀ずはただの同玚生じゃない。幌銎染なんだ。そんな奎じゃないっお事は、俺が䞀番よく理解しおいる。
 幌皚園からずっず䞀緒だった。
 高校を出おすぐに俺は東京に、勝男は地元でそのたた就職。俺も初めは普通のサラリヌマンをやっおいたが、䞊叞のくだらない苛めに嫌気をさし䞀幎半で仕事を蟞めおしたったんだよな。
 二十歳に新宿ぞ出おきお、ゲヌム屋を転々ずした。そしお䞉幎前に䞀円ポヌカヌゲヌム屋の『フロッガヌ』ぞ入る。ここに入っおから俺の人生は䞀倉した。圓時店長だった鳎戞ずの出䌚い。あの゚グさは倧倉勉匷になった。店での金の抜き方も参考になった。ただあの頃は店長ず郚䞋ずいう図匏だから良かったのだ。
 今は違う。二幎半前に鳎戞は前オヌナヌ氎野ず組み『ダヌクネス』ずいう店をオヌプンさせた。そしお半幎ほど経っお、勝男が䞊京。俺ずの共同生掻になった。
 鳎戞がオヌナヌで、俺は店長。経営する立堎から芋れば、俺の存圚が非垞に煙たかったのだろう。『フロッガヌ』時代に散々抜いお、金を貯めた鳎戞の背䞭を芋お育っおいるのだから  。
 あれから俺は色々ず考えるようになった気がする。いかに人を出し抜くかを。垞にそれだけを考えお生きおきた。鳎戞もある皋床、俺が抜いおいたのは分かっおいたろう。ただ蚌拠を抌さえられなかっただけなのだ。芋぀かりそうになった時は、郚䞋のせいにしおうたく切り抜けおきたのだ。だから二千䞇もの金を貯める事ができた。
 うたくいっおいた歯車が狂ったのは、おそらく䞀ヶ月前に入っおきた赀厎隌人ずの出䌚いだろう。
 自分がゲむなんだず自芚した盞手でもある。あれほど性栌も顔も䜓も奜みの男はいなかった。いや、それ以倖に赀厎の持っおいる䜕かに匷烈に惹かれた。普段なら女にしか興味がない。だが赀厎だけは特別だった。たった䞀床でいいから抱かれおみたい。赀厎ず接しおいるず、自分の䞭にある女の郚分が出おきおしたう。
 だから俺は赀厎に察し、぀い芪切心が出おしたうのだ。䞀ヶ月間だけで圌に癟䞇近い金をあげた。自分が抜いた取り分のほずんどをあげた。すっかり掟手な生掻に慣れおいた俺は、金が足りなくなり必芁以䞊に売䞊から抜く。だから鳎戞にバレたのだ。
 グチャグチャになっおも぀た先で䜕床も顔を蹎られた。そんな状況なのに、赀厎の身を案じおいる自分がいた。
 違う  。
 蟞めた店の事を思い出しおいる堎合か 今は二千䞇円の事だけを考えろ。勝男がちゃんず裏切らず、俺のずこぞ金を持っおきおくれれば䜕の問題もないが  。
 二幎前に勝男が地元から新宿に出おきおから、俺ず勝男の同居生掻が始たったんだよな。こんな俺でも勝男は数少ない友達の䞀人だず蚀えよう。
 
 ゚レベヌタヌが八階で止たる。扉が開き、僕ず圌女ぱレベヌタヌぞ乗り蟌んだ。䞀階のボタンを抌す。
 女はどこを芋぀めおいるのか、壁の片隅をゞッず芋぀めおいる。考え事をしおいるのかもしれない。僕がずっず圌女の暪顔を芋おいるのに、䞀向に気付く様子がない。今、䜕を考えおいるのだろう。
「ね、ねえ 。お、お互い名前も知らなかったよね。が、僕は鈎朚勝男。か、勝぀男ず曞いお勝男っおいうんだ。き、君の名前は」
「ん、私 む぀きっお蚀うの。倉」
「い、いや 。ず、ずおも、す、玠敵な名前だよ。き、君にずっおも䌌合うよ」
「ありがずう」
 女は僕に埮笑み返す。ずっおもチャヌミングな笑顔だ。僕も思わずニダけおしたう。䞍思議な魅力を持った綺麗で華麗で゚レガントな女。
 歌舞䌎町での出䌚い。マンションの゚レベヌタヌの乗り合わせた偶然。圌女ずは運呜的なものを感じる。む぀きちゃんず出䌚えお僕は最高に幞せ者だ。神に感謝したい。
「䜕しおんのよ。おいおっちゃうよ」
「え  」
 すでに゚レベヌタヌは䞀階に着いお止たっおいた。む぀きちゃんは先に出お、僕を埅っおいる。慌おお゚レベヌタヌの倖に飛び出した。
「あっ」
 その瞬間、誰かにぶ぀かり、僕は尻逅を぀いおしたう。
 䜕が起きたんだ
 その状態で顔を芋䞊げるず、真っ癜なロングコヌトを矜織った鋭い芖線を投げ掛ける男が立っおいた。
 すごい嚁圧感だ  。
 たるで僕の芖線が、その男に吞い寄せおしたうような魔法をかけられたような気分だ。芋かけは普通のサラリヌマンぜいのに  。
「勝手に人にぶ぀かっおおきながら、謝る事すらできないのですか」
「はっ  」
 劙に甲高い声を出す男。ただ、その声を聞くず、劙に䜓が委瞮しおしたう。
「分からない人ですねヌ、あなたはヌ 。人にぶ぀かっおおいお謝る事すらできないのですかず、私は蚀っおるんですよヌ」
「す、すいたせん」
「初めから玠盎にそうしおおけばいいんですよヌ。分かりたしたか」
「は、はい 。すいたせんでした」
「そうです。分かっおくれればいいんです。ちょっずお聞きしたすけど、このマンションはクリスタルバカラ第䞀マンションですよね」
「は、はい  」
「そうですか。ありがずう」
 恐ろしい男はそう蚀っお、゚レベヌタヌの䞭ぞに消えおいく。
 埌ろ姿はどこにでもいそうなサラリヌマン。いや普通のサラリヌマンがあんな癜いロングコヌトなんお着ないか。恐ろしいオヌラず劙に甲高い声の男だった。ただ党身に鳥肌が立っおいる。マンション名を聞いおくるぐらいだから、同じマンションの䜏人じゃない事だけは分かる。
「ちょっず、倧䞈倫」
 む぀きが僕に駆け寄っおくる。腰に力が入らずなかなか立おない。
「こ、怖かったぁヌ  」
「でも私の蚀うずおり、ガムテヌプ貌っずいお良かったでしょ」
「は」
「勝男が転んだ時にダンボヌルたで掟手に転がったじゃない。ガムテヌプでしっかり固定しおなかったら、絶察にお金飛び出しおいたでしょ そしたらさっきのダクザみたいな男、勝男に䜕だかんだ治療費だずか無茶蚀っお、絶察にお金取り䞊げられちゃっおたよ」
 暪を芋るず、小さなダンボヌルは暪向きに倒れおいた。
 確かにガムテヌプで固定しおなかったらお金は飛び出しいた。あのダクザみたいな男に䜕を蚀われおいたか分からない  。
 僕は急いでダンボヌルを拟いだすず、む぀きちゃんの手を取っおマンションを出た。
「い、急ごう、む぀きちゃん」
 この堎でモタモタしおいお、さっきの男がたた因瞁぀けおこられおも嫌だ。靖史のずころぞ早いずこ行かないず  。
「ちょっずヌ、これからどこ行くのよ」
「く、区圹所通りだ」
「それのどこら蟺よ」
「が、僕だっおよく分からないよ」
「たったくヌ  」
「ご、ごめん 。ん で、電話だ」
 携垯を芋るず、靖史からだった。
 
 たるで萜ち着かない。
 今、勝男の奎、どの蟺なんだ
 勝男に電話を掛けおみた。あ、すぐに出たな。
「もしもし勝男か。今、どこら蟺にいるんだ」
「え、えヌず 、マンションを出たずころだよ」
「ただそんなずこかよ  」
「だ、だっおさヌ、゚、゚レベヌタヌはなかなか来ないし、い、入り口のずこで怖いダクザみたいな男にぶ぀かっおしたい、た、倧倉だったんだよ  」
 ダクザみたいな男だっお
 鳎戞は䞀芋、芋かけは普通のサラリヌマンみたいに芋えるはずだ。たずもに察峙しお初めおその恐ろしさが分かる男。
 ただ、劙に気になった。鳎戞がダクザを䜿い、俺たちのマンションに来させる事も考えられる。
「ダクザみたいな男 どんな特城だった」
「え、ええヌずね 、み、芋かけはパッず芋、普通のサラリヌマンっお感じなんだけど、声が劙に甲高くお、オ、オヌラっおいうのかな 。ず、ずにかくおっかない感じだったんだ。し、癜のコヌトを着おお  」
 絶察に鳎戞の事を勝男は蚀っおいる  。
 勝男の䞋手くそな説明でも、充分に鳎戞だずいう事が分かる。
 本圓に玙䞀重だったのだ  。
 想像するず冷や汗がドッず出る。俺の勘は間違っおいなかった。玙䞀重でも俺のほうに運が぀いおいる蚌拠だ。
「勝男、そい぀には気を぀けおくれ」
「え」
「そい぀が俺を狙っおるんだ」
「ね、狙っおる」
 あず区圹所通りで埅ち合わせだず、すれ違う可胜性もあるな。
「たヌいい、今からタクシヌを捕たえおくれ。区圹所通り沿いにバッティングセンタヌがあるだろ そこに急いでダンボヌル持っお来おくれ」
「え だ、だっおタクシヌっお蚀っおもさヌ  」
「金なら払うから 頌むから蚀う通りにしおくれよ、勝男。ほんずに今、ダバむ状況なんだ。俺たち、幌銎染だろ 出来る限りすぐ、俺のずこ来おくれ」
「わ、分かったよ 。で、でもあずで詳しい事、ちゃ、ちゃんず説明しおくれよな」
「ああ、頌むぞ」
 電話を切る。
 よし、これで䜕ずかなりそうだ。金さえ受け取れば問題はない。勝男に事情を話しおマンションを匕き払っおもらっおおしたいだ。
 たた、携垯が鳎りだす。
 䜕だよ 、勝男の奎ただ䜕かあるのか 電話を取ろうずしお、慌おお思い留たる。着信はあの鳎戞からだった。危ねえずこだったぜ  。
 俺はバむブにしお攟っおおく。
 今、鳎戞はおそらく俺たちのマンションの八階にいるはずだ。いくら郚屋のチャむムを鳎らしおも返事がなく、メヌタヌをじっくり芋る。䞭にひず気がないのが分かり、俺に電話を掛けおいるんだろう。
 あい぀のむラむラしおいる様子が目に浮かぶ。
 䞀床、鳎戞からの着信は切れ、間髪入れず携垯が鳎る。
「クックック  」
 自然に含み笑いが出た。
 いくら金を抜いたずはいえ、俺に散々殎る蹎るの暎行をあれだけしたんだ。いずれあい぀は地獄に萜ずしおやる  。
 この䜓の痛みを俺は絶察に忘れない。俺がどこにいるのか分かるたい。今のずこはずりあえず悔しい思いをさせお、地団駄を螏たせおやるよ。
 キヌンッ 。ズドンッ。
 バッティングセンタヌから音が聞こえおくる。
 勝男が初めお歌舞䌎町に来た時は、あい぀、このバッティングセンタヌ芋お䞀発で気に入り、よくここに付き合わされたっけな。
 勝男が新宿に来お、二幎が経ずうずしおいる。時間が経぀のは本圓に早いものだ。
 俺はバッティングセンタヌに入り、自動販売機でコヌヒヌを買っおベンチに腰掛けた。䜓の節々が痛む。
 鳎戞の野郎、たさか俺がこんな堎所にいるずは想像もできたい  。
 あの銬鹿からのし぀こい着信。念の為、留守番電話をチェックしおみた。
『䞀件です 、ピヌ 。あヌもしもし鳎戞です。岩厎、あなたも随分ずふざけた人ですねヌ。ずりあえず私の持おる力、すべお䜿っお、あなたの人生を地獄ず埌悔の連続にするよう頑匵りたすよ 。いいですね ガチャッ  』
 
 靖史、倧䞈倫かな  。
 携垯を切っおからむ぀きちゃんを芋る。
「ず、友達がね、さ、さっきのダクザみたいな奎に気を぀けおくれっお  」
「䞀䜓あなた、䜕しでかしたの」
「が、僕だっお分からないよ。な、䜕が䜕だか」
「たヌ、勝男っお今日䌚ったばっかりだけど、嘘぀けるようなタむプじゃないっおいうのは私、分かっおいるから」
 い぀もあれだけ冷静に物事を運ぶ靖史が、あれだけ慌おおいるのはよっぜどの事だろう。ちょっずズルむずころはあるけれど、昔から僕には良く接しおくれたよな。
 電話で睊月ちゃんの事を蚀っずくべきだったかな  。
 たあ、その事はしょうがない。
「む、む぀きちゃん。タ、タクシヌ捕たえおくれないかな」
「いいけど 、そろそろどこに行くかぐらいは話しおくれおもいいんじゃない」
「い、今、本圓に急いでいるんだ。が、僕の友達が倧倉な事になっおいる」
「分かったわよ  」
 む぀きちゃんは優しく埮笑んでから、道路に立ち手を振っおいる。こういう時、矎人は本圓に埗だ。アッずいう間にタクシヌを捕たえおくれる。圌女は埗意そうな顔をしお僕に手招きをした。その仕草も非垞に可愛い。タクシヌの運転手は、僕を芋おガッカリずうな垂れおいた。䞀䜓、䜕を期埅しおいたんだ、このドスケベ運転手は  。
「す、すごいなヌ」
 僕が笑顔でタクシヌに近付くず、急にむ぀きちゃんの衚情が倉わりだした。
 芖線は僕じゃなく、別の方向を向いおいる。
「ど、どうしたの、む、む぀きちゃん」
 蚀い終わるより先に、む぀きちゃんが僕の手を匷匕に匕き、タクシヌ内ぞ匕っ匵り蟌む。
「早く乗りなさいよ 運転手さんっ 早くドア閉めおっ すぐに出しお」
 む぀きちゃんがすごい剣幕で喋り出し、運転手は慌おおドアを閉めた。
 コンコンッ  。
 その時、タクシヌの窓を叩く音がした。
「 ちょっずいいですか」
 声の方向に振り返っおみる。
「うわっ」
 さっきの゚レベヌタヌの前でぶ぀かった男が、タクシヌを芗き蟌んで立っおいる。
 口から心臓が飛び出そうなぐらいビックリした。運転手は埌ろを振り返り、困った顔をしおいる。
「早く出しおっ 早くっ」
 ガンガンッ。
 男はたったく衚情を倉えずに、窓を匷く叩きだした。
「ちょっずいいですかず私は蚀っおるんですよ」
「早く出しおっおばっ」
「ひっ 、はいっ」
 運転手はむ぀きの怒鳎り声で、やっずタクシヌを急発進させた。男はこっちをずっず芋おいたが、距離は離れおいきやがお姿が芋えなくなる。
「フヘヌ  」
 思わずため息が出る。
 䜕だっお靖史はあんなおっかない奎に远われおいるのだろう 僕だったら、寿呜が癟日瞮んでしたう。
「そろそろどこぞ行くのか話しおよ。運転手の人だっおどこ行くか困っおるわよ」
「あ、あのヌ 、く、区圹所通り沿いのバ、バッティングセンタヌぞお願いしたす」
「ちょっずヌ、䜕でそんなずこに  」
「が、僕だっおよく分からないんだ。ちょ、ちょっず考えさせお  」
 少し敎理しよう。
 今日は朝から色々な事が起き過ぎだ。
 たず靖史のずころぞ行かないずいけない。靖史に䌚い、これたでむ぀きずの経緯も説明しないず駄目だ。あずは  。
「ん」
 圓たり前だけど、運転手が前を芋お運転しおいるので埌頭郚がこちらを向いおいる。
 ダバむ 、たた僕の欲望が疌きだす。
「サワレヌ、サワレヌ、サワッチマ゚ペ」
 僕は自然に手を䌞ばし、運転手の埌頭郚を觊っおしたう。
「あっ で、でっぱっおる」
「な、䜕すんですか」
 運転手が慌おお急ブレヌキをかけた。こっちを振り向いお明らかに怒った顔をしおいる。それはそうだろう。いきなり埌頭郚を運転䞭に觊られたのだから。埌ろから䜕台かのクラクションが鳎り響く。
「す、すいたせん 。぀、぀い 」
「たったくヌ、困りたすよ。今床、倉な事したら降りおもらいたすからね」
 再床タクシヌは発車する。この運転手の埌頭郚はでっぱっおいた。
「䜕やっおんのよ、勝男。こんな時に冗談やっおる堎合じゃないでしょ」
「う、うん」
「それよりもこのダンボヌルの説明しおよ。バッティングセンタヌに向かっおる事ずいい、蚳分からない事だらけじゃない だいたいあなたは  」
 たずむ぀きを玍埗させるのが、今は先決みたいだ。
 タクシヌの運転手もさっきの事が気になるのか、さっきからチラチラずバックミラヌ越しに芋おいる。
 ん 、いや、違う。
 明らかに芖線はむ぀きのある方向を芋おいる。圌女が興奮気味に喋っお股を開いおいるから、運転手にはパンティヌが䞞芋えなんだ。
「う、運転手さん 。ちゃ、ちゃんず前芋お運転しないず、あ、危ないですよ」
「す、すいたせん  」
 先ほどずは打っお倉わり粟神的優䜍床圢勢逆転。む぀きは䞍思議そうな顔しお僕を芋おいる。そんな圌女の衚情も玠敵だ。
「䜕、ニタニタしおんのよ」
「い、いやヌ 。に、二幎前からさっきの僕の郚屋、じ、地元の友達ず共同で䜏んでいたんだ。そ、そのダンボヌルのお金、き、きっず友達のお金だず思うんだ」
「䜕ですっお これ、あなたのじゃなかったの ハァヌ  」
 この䞖のすべおが終わったような顔。
「そ、そんな萜胆しないでよ。む、む぀きちゃん  」
「あなた、そんなんで私の䜓を匄んで  」
「む、む぀きちゃヌん 。も、匄ぶだなんお、そ、そんな人聞きの悪い」
 声を掛けるず、すごい目぀きで僕を睚んでくる。本圓にコロコロ衚情が倉わる子だ。
「これ絶察に呜什だからね。絶察に勝男の友達に䌚う時は、私をそばに居させる事 分かった これだけはしっかりしおよ、ほんずっ」
「は、はい  」
「ちょっず、あなた 䜕さっきから私のパンティヌじろじろチェックしおんのよ」
 いきなりむ぀きに怒鳎られお、運転手の肩がビクンず震える。
「いえ、そんな  」
「誀魔化さないでよ 今、私ずバックミラヌで芖線合った時、目を思いっ切り逞らしたのがいい蚌拠よ」
 蟺りを芋るず、もうじきバッティングセンタヌに着きそうだった。
「私のパンティヌ芋たんだから、タクシヌ代は払わないからね」
「そ、そんなヌ」
「超倧サヌビスよ 私のパンティヌ芗いずいお、ほんずはタクシヌ代ぐらいじゃ足りないんだからね。感謝しお欲しいわ。ほらっ、返事は」
「の、芗きだなんお」
「ぞ・ん・じ・はっ」
「ヒィヌ」
「ヒィヌじゃ分かんないわよ。男でしょ」
 倚分、む぀きのパンティヌをミラヌで芗き芋しおいた事は嘘じゃないだろう。さっきこの運転手のでっぱりを觊った僕には分かる。タクシヌの運転手は今にも泣きそうな顔をしおいた。
 
 嫌な留守電を残しやがっお、鳎戞の野郎  。
 これから金を受け取るだけだっおいうのによ。䞀応、譊戒はしずかないずな。
 俺の目の前にいるカップルが、癟二十キロのバッティングマシヌンに入っお行くのが芖界に映った。
 圓然女の方は笑顔でドアの倖から男を芋守っおいる。圌氏の方は圌女の前で倧匵り切りだ。機械から時速癟二十キロの球が出おくる。男はフルスむングで空振り。女は残念そうに芋぀めおいる。圌氏の方はめげる様子もなく次の球に備え、フォヌムを決めた。次の球が出おくる。
「キンッ ズドンッ」
 バットには圓たったが、ただのチップだった。
「ひろゆきヌっ 頑匵っおヌっ」
 圌女の声揎に圌氏は振り返り、笑顔で手を振る。その間に䞉球目の玉が飛び出し、マットに突き刺さる音にカップルはビックリしお振り返る。芋おいおなかなか面癜い光景だ。
 四球目が飛び出すず、バットには圓おたが自打球が右の足銖に圓たり、圌氏はその堎で転げ回る。
「ひろゆきヌっ 倧䞈倫―っ」
 圌女が心配そうに芗き蟌んでいる。打おないなら、もうちょっず遅い速床のずころで、栌奜぀ければいいものを  。
 圌氏は圌女の心配する顔を芋お、痩せ我慢したたた笑顔を䜜り、起き䞊がろうずする。そこぞ五球目が圌氏の巊肩にぶ぀かり、たた転げ回った。
 芋おいお飜きないカップルだ。退屈しない。
 そういえば勝男の奎、結構時間掛かっおいるな。
 できれば金を受け取っお、ホテルでゆっくり䌑みたいが 。四本目の煙草に火を点けた時に、バッティングセンタヌの駐車堎にタクシヌが停たるのが芋える。
「やっず来たか」
 痛い䜓にムチを打っお立ち䞊がる。
 ん、勝男の暪に女が乗っおいるぞ  。
 䞀䜓、どういう事なんだ ずりあえずここから離れ、陰から様子を芋たほうがいいかもしれない。
 俺は慎重にバッティングセンタヌから出お、駐車堎に停めおある車の陰から勝男ず女をチェックする事にした。
 勝男が先にタクシヌから降りお、女はタクシヌの運転手ず䜕か蚀い争っおいる。勝男はタクシヌを芋お困った顔しおいた。䞀䜓どうなっおんだ 女がタクシヌから降りおくる。運転手は悲しそうな衚情でタクシヌを発進させ、バッティングセンタヌから去っお行った。
「䜕であい぀、あんないい女連れおんだ」
 あの電話のあず、鳎戞に䌚ったのか。
 あの留守電の内容が䞍信感を募らせる。ひょっずするず鳎戞の差し金かもしれない。
 いや、考え過ぎか。勝男はあのダンボヌルを片手に持っおいる。
 埅およ 、鳎戞の事だ。金だけ抜いお、空のダンボヌルを持たせおいるかもしれない。そしお鳎戞が別の堎所から監芖しおいるかもしれないのだ。
 疑いだすずキリがない。
 俺はあい぀に捕たったら終わりなのだ。
 勝男ず女はバッティングセンタヌの䞭に入り、キョロキョロず俺を探しおいる。女が勝男の近くにいるから電話を掛ける蚳にもいかない。ここたで来お焊らされるのは苛々した。
 苛々するな。焊っおはいけない。慎重にいかないず  。
「ちきしょう 、勝男の奎ヘマしやがっお 。あい぀も女にうたい事蚀っおバラバラになれば、すぐ電話ぐらい掛けられるのによヌ」
 
 䜕だ靖史の奎、あれほど人を急がせおおいお  。
 どこを探したっおどこにもいやしないじゃないか。
 む぀きはドンドン䞍機嫌になっおくるし、あヌ、チクショり。
「ねぇ、勝男。あそこのカップル芋およ。面癜くない」
 む぀きの指差す方向を芋るず、時速癟二十キロの郚屋から䞀人の男がバッティングセンタヌの店員に運び出されおいるずころだった。
「ひろゆきヌっ ひろゆきヌっ」
 圌女らしき女がグッタリしおいる男に、声を掛け、肩を぀かみながら揺らしおいる。
「お客さん、運ぶのに邪魔ですっお。離れお䞋さいよ」
 店員が迷惑そうな衚情で露骚に蚀った。倚分、無理しお球速の早いずころに入り、球にでもぶ぀かったのだろう。
「ひろゆきヌっ」
「だから邪魔ですっお」
 む぀きは銬鹿なカップルを芋お、倧笑いしおいる。
 あの男を運んでいる店員もそうずう前からここでアルバむトしおいるよな。よく靖史ずここに連日遊びに来たっけ 。散々通い、やり飜きおから半幎ぐらい経぀。
 それにしおも靖史の奎、䞀䜓どこにいるんだ
「ねヌ、勝男の友達っおどこにいるのよ さっきから探しおるのに党然いないじゃない。䞀䜓どうなっおいるの だいたいさっきのダクザみたいのず䜕の関係があるのよ」
「そ、そんな䞀蟺に質問しないでよ」
「もうむラむラするわね。あんたの友達はどこにいるのよ」
「ず、友達 、や、靖史っお蚀うんだけど 。な、䜕だか僕も状況がよく分からないんだよ。あ、あれだけ散々電話しおきずいお  」
「銬鹿ね、あなた䜕で電話しないのよ。私がいるから譊戒しお身を隠しおいるのかもしれないでしょ さっさず電話しおみたら」
「う、うん。そ、そうだよね」
 僕は靖史の携垯ぞ電話を掛ける事にした。
 
 あの銬鹿 女が䞀緒にいるのに携垯を手に持ちやがった。きっず俺に電話する぀もりだな。携垯を急いでバむブにした瞬間に着信が鳎り出す。
 ここは出るしかないか  。
「おいっ、勝男か。暪の女に聞こえないように、ハむかむむ゚で答えおくれ」
「や、靖史ヌ。ひ、人をここたで来させずいお䞀䜓どこにいるんだよ」
「銬鹿 声がでかいよ 頌むから、ハむかむむ゚で答えおくれよ」
「わ、分かったよ」
 女は勝男のそばで聞き耳を立おおいる。䞋手な事は喋れない。
「ダンボヌルに金は入っおいるのか」
「ダ、ダン  」
「ハむか、むむ゚で蚀え」
「は、はい  」
 よし 、いや、ただ䞭身を芋るたで安心はできない。
「よし、ダンボヌルに貌っおあるガムテヌプずり、今いる䜍眮から窓に向かっお䞭を芋せおくれ」
「た、窓のほう な、䜕でそんな事 」
 俺は慌おお身を屈めた。
「銬鹿 ハむかむむ゚しか話すなよ」
 こっちは二千䞇の金が懞かっおんだから、もっず俺の気持ちを理解しおくれよ  。
 
 電話に出お話をしおいるのに、靖史の様子が少し倉だ。窓のほうっお蚀っおいるけど、ここが芋える䜍眮にいるのかな
「もヌ、䜕しおんのよ。ちょっず貞しなさいよ」
 む぀きが僕の携垯をいきなりひったくる。
「もしもし あなた、勝男の友達でしょ ここたで呌んどいお、どこ隠れおるのよ」
「  」
 すごい剣幕だ。慌おお僕は携垯を取り䞊げようずするが、む぀きは巊手を開き僕を制止した。
 そしお指を䞋に向けおしゃがんだ。僕がボヌっず芋おいるず、手銖を぀かんで匷匕に座らせられる。
「おぉ」
 僕の目の前にはむ぀きちゃんが倧股開いおりンコ座りしおいるから、黒いパンティヌが䞞芋えだ。こういう眺めもいい。
「䜕か話しなさいよ 䜕、コ゜コ゜しおるの 話しなさいよ。じゃないずこのダンボヌルのお金、私たちでもらっちゃうからね」
「た、埅っおくれ  」
「やっず喋ったわね。どこにいるのよ」
「な、鳎戞はどこだ  」
「ちょっずヌ、聞いおるのはこっちでしょ」
「いや、先に俺の質問に答えろ。鳎戞はどこにいる」
「ふざけないでよ 䜕が鳎戞よ。もういいわ。こっちがこれだけ聞いおいるのに 。ダンボヌルの䞭身はもらっおいくからね。でわ 、バむバヌむ」
 む぀きず靖史が䜕か激しく電話で蚀い争っおいるが、僕の芖線は぀い黒いパンティヌに行っおしたう。
「埅およ。質問に答えろ」
「バむバむキヌン  」
 む぀きは僕の携垯の電源を勝手に切り、自分のバックに入れおしたう。いきなり立ち䞊がったので、パンティヌはスカヌトに隠され芋えなくなっおしたった。たるで心にポッカリず穎が開いお、そこに冷たい颚が突然吹いた感芚がする。
「䜕、ボサッずしおるのよ」
「む、む぀きちゃヌん 。が、僕の携垯返しおよヌ」
「うるさいわねヌ。駄目よ。これからどうするかは、私が決めるから」
「む、む぀きちゃヌん  」
「いいから黙っお私のあず぀いおきおよ」
「う、うん  」
 む぀きちゃんはバッティングセンタヌを出おスタスタ歩き出す。僕も慌おおあずを远い駆けおいく。バッティングセンタヌを出る時蟺りを芋回したが、靖史の姿は芋圓たらなかった。先を行くむ぀きちゃんに声を掛ける。
「ど、どこぞ向かうの」
「い・い・ず・こ・ろ  」
 優しい小悪魔のような笑顔を僕に向けおくる。この䞀発で、僕は圌女の魔力の虜になっおしたう。あんなに気になっおいた靖史の事など、もうどうでもよくなっおくる。む぀きの事だけで頭がいっぱいだ。
「ほヌら、勝男。タクシヌ捕たえたから早く乗っおよ」
 気付くず電光石火のような速さで、む぀きちゃんはタクシヌを捕たえ乗り蟌もうずしおいる。頭の䞭が゚ッチな事でいっぱいになっおいる僕は、たるで犬が尻尟を振っお飌い䞻のずころぞ行くよう嬉しそうにタクシヌに向かった。
「運転手さヌん 、うんず 。新宿プリンスホテルぞお願いできたすか」
「かしこたりたした」
 タクシヌは発車しお、僕達は再び区圹所通りに出る。新宿プリンスホテルか。
 む぀きちゃんも積極的だなヌ  。
 期埅ず想像で頭が砎裂しそうだ。チラリず暪目でむ぀きを芗き芋る。圌女は䜕か考え事をしおいるみたいだ。僕が芋おいるのに埮動だにしない。こんなむ぀きの衚情も溜たらなく魅力的だ。
 道が枋滞しおいおタクシヌはなかなか進たない。今はむ぀きが䜕かを䞀生懞呜考えおいるので、邪魔しちゃいけないんだろうな。
 タクシヌの運転手を芋る。僕の芖線は圌の埌頭郚ぞ自然ずいく。
 たた、欲望が僕の頭を支配しおいくようだ  。
 
 䜕がバむバむキヌンだ、畜生。
「あのアマ  」
 思わず呟いおしたう。話しおいる最䞭に携垯を切りやがっお 。俺はすぐに勝男の携垯に電話を掛けた。
『こちらはです。お客様がお掛けになった電話番号は電源が入っおいな プッ  』
 あの女、電源たで切りやがった。金はもらうだず 、ふざけやがっお  。
 どんな思いであの金を貯めたず思っおいやがんだ。俺は車の陰から様子を芋るしかない。あの女は鳎戞の差し金で来たのだろうか
 ただ䜕も分からない。
 今のずころ分かっおいるのは勝男ず䞀緒にいる女が、俺の二千䞇円を盗ろうずしおいる事だけだ。
「ん」
 立ち䞊がったのか、窓から女の姿だけが確認できた。勝男はどこだ 様子を䌺っおいるず、女がバッティングセンタヌから䞀人で出おくる。続いお勝男も埌を远いかけるように出おきた。
 二人は区圹所通りぞ向かい、勝男は俺を探しおいるのかキョロキョロ蟺りを芋回しおいる。ここで自分の姿を芋せるべきか。
 いや、あの女が鳎戞の差し金だずしたら、䞀環の終わりだ。
 勝男の野郎、女に声を掛けられお䜕やら話しおいやがる。女が笑顔で䜕かを蚀うず、デレッずしやがっお  。
 女はすぐにタクシヌを停めお、勝男を呌ぶ。このたたじゃ俺はダバむぞ。金を持ち逃げされおも終わりだ。
 道は䞍幞䞭の幞いか混んで枋滞しおいる。勝男ず女が乗ったタクシヌがちょっず進むのを埅っおから、タむミング良く来たタクシヌを捕たえた。
「どちらたでですか」
「あの五台先にある緑色のタクシヌありたすよね あれの埌を぀けお䞋さい」
「いやヌ、お客さん、面倒は困りたすよ」
 運転手は露骚に嫌な衚情をした。俺は懐から財垃を出しお䞀䞇円札を二枚抜く。そのたた運転手の目の前に出すず、運転手は自然ず金を受け取った。
「党然、面倒な事じゃないんですよ。恥ずかしい話、あのタクシヌに乗っおいる女、あれ私の女なんですよ。最近ちょっず怪しかったから、あずを぀けおいたしおね。たあ、情けない話かもしれないですけど、男の嫉劬みたいなもんです 。ただ蚱せないじゃないですか」
「お客さん 私もその気持ち分かりたすよ 。うちの女房も 、い、いや、䜕でもないです。では、任せお䞋さい」
 俺の嘘に隙されお、運転手は嚁勢よく匷匕に枋滞の列に割り蟌んでくれた。
 金を出すタむミングず巧みな話術で、ある皋床の事は解決できる。こういう単玔な人間には非垞に効果的だ。
 それにしおも勝男ずあの女、どこぞ行く぀もりなんだ 行き先が鳎戞のずころなら、すべお終わりになる。
 勝男たちを乗せた車は区圹所通りを巊折しお職安通りに入った。
 前の車の運転がトロい  。
 信号が黄色に切り替わった。このたた離されたら芋倱う。
 運転手は信号がほずんど赀なのに匷匕に巊折しおあずを远い駆けた。䜓が遠心力で右に倒れる。
「倧䞈倫ですか、お客さん」
「ありがずうございたす。本圓に無理しおもらっおすいたせん」
「いえいえ、これで芋倱っちゃヌ、お客さんに䞀生恚たれおしたいたすから」
「感謝の気持ちで胞いっぱいです」
「そういえばお客さんの顔のアザ、どうしたんですか」
「いやヌ、あそこのバッティングセンタヌで匵り切っおいたら、自打球を顔にぶ぀けおしたいたしお 、起き䞊がったずころにたた䞀発  」
「そりゃヌ、灜難ですねヌ」
 さっきのバッティングセンタヌでの銬鹿なカップルを思い出しおしたう。自然に笑みが広がった。
「打おもしないのに栌奜を぀けた私が銬鹿だったんですよ」
「男なんお、そんなもんですっお。あれ たた前のタクシヌ、巊折したすね」
 䜕だかんだいっお、タクシヌの運転手も尟行を楜しんでいるようだ。タクシヌは西歊新宿駅前の通りに出た。この道の先には新宿プリンスホテルがある。
 䞀昚日、このホテルの二十五階にあるラりンゞ『シャトレヌヌ』で飲んだのを必然的に思い出す。
 あの時『ダヌクネス』の仕事がたたたた早く終わったので、俺は思い切っお赀厎を飲みに誘った。圌にたくさんの金をあげ芪切に接しおいたので、赀厎は快く぀いおきた。
 初めお行く堎所で圌はたくさん酒を飲み、䞊機嫌だった。ろれ぀が回らなくなっおいた赀厎の手に、そっず自分の手を重ね合わせる。今にしお思えば、ここで倱敗したのだ。
「あ、あのヌ  、䜕かの冗談ですよね  」
 そう蚀っお手を匕っ蟌めた赀厎。あれで䞀気に酔いを醒たしおしたった。「冗談です」ず笑いながら蚀えば良かったのか。今ずなっおは分からない。ただ俺はどうにか赀厎をものにしたくお焊っおいた事だけは確かである。
 あの時俺が、もっず赀厎を酔わせお朰しおいれば、望み通りの展開に持っおいけたものを  。
 その事がずっず悔やたれる。あの次の日から仕事で俺を芋る赀厎の芖線は、たるで軜蔑の県差しを向けおいるようで蟛かった。平然を装っおはいたが、やはり内面的にはかなりショックだったのだ。
 やるせなさを感じ゜ヌプランドにも行った。䞀回行けば六、䞃䞇円はする新宿の高玚店『バルボア』に行っおも、駄目だった。垞に赀厎の事を考えおいる自分がいる。
 初めお赀厎を芋た時、䞀目惚れに近い感芚がした。圌を想いながら郚屋で、よくマスタヌベヌションをした。途䞭たではいい信頌関係を築けおいたのだ。そんな赀厎に冷たい目で芋られるのは非垞にショックだった。
『シャトレヌヌ』の䞀件で俺は圌からの信甚を䞀気に倱った。タむムマシヌンがあるなら、䞀昚日に戻りたいぐらいだ。
「お客さヌん。お客さヌん。前のタクシヌ、プリンスに停たりたしたよ」
 運転手の声で我に垰る。
 前で勝男ずあの女がタクシヌから降りお、プリンスホテルの入り口に入っおいくのが芋えた。ダンボヌルは勝男が持っおいるようだ。
 俺はどうかしおいる。二千䞇円が掛かっおいる正念堎なんだぞ 今は赀厎の事より、金の事を考えろ。じゃないず手痛い目に遭うぞ。自分に叱咀激励した。
 あの分じゃ、鳎戞がプリンスホテルで埅っおいる可胜性は高いだろう。譊戒心が匷たる。
「暪に男がいたすね。それにしおもお客さんの圌女、すごく綺麗な圌女ですね  」
「開けおくれ」
「えっ」
「早くドアを開けろ。それ以䞊無駄口を叩くな。金は最初の二䞇で充分足りるだろ」
 俺の話し口調の急激な倉化にビックリしたのか、運転手は黙っおドアを開けた。俺はすぐにタクシヌを降りおプリンスの入り口ぞず向かう。
 ホテルに入り、巊偎の地䞋䞀階に行く階段を芋る。慎重にゆっくりず譊戒しながら降りお、階段の螊り堎からフロントの様子を眺めた。
 勝男ずあの女が、フロントでホテルマンず話しおいるのが芋える。このたたチェックむンするのか
 俺は気付かれないように階段を䞋りお、すぐに右偎に曲がる。ロビヌラりンゞの開いおいる垭に、二人からは死角になる堎所を探しお座った。コヌヒヌを泚文し、二人の動向を探る事にする。
 勝男の野郎、あんな短時間で俺を裏切りやがったのか  。
 時蚈を芋るず倜九時を回っおいた。俺はある事を閃いた。りェむトレスがラりンゞ内を歩いおいる。俺は手を振り、垭ぞ呌んだ。
 
 僕は運転手のほうぞ右手を䌞ばしだす。でっぱり具合はどうなんだろう
「䜕やっおんのよ いたずらしおる堎合じゃないでしょ」
 む぀きの声で我に垰る。
「ご、ごめんなさい」
 運転手は䞍思議そうな顔で、ミラヌ越しに僕をチラリず芋た。
 景色を芋るず、右手に西歊新宿駅が芋える。駅前の通り沿いはモダンなレンガ造りで壁を圢成しおいお、なかなかシックでいい感じだ。
 今床暇できたら、む぀きずいっぱいデヌトしながら色々な堎所に行っおみたい。
 新宿ぞ来お、今のゲヌム屋で働き出しお二幎。その間、たったく女の子に瞁がなかった。たたに行く颚俗も、終わったあず、虚しさず寂しさの入り混じったせ぀ない心境になる。考えおみたら党然プラむベヌトでデヌトなんお、こっち来おからした事なかった。でも、今はこんな可愛いむ぀きが隣にいる。倢のようだった。
 タクシヌは新宿プリンスホテルで停たり、今床の運転手はむ぀きのパンティヌを芗き芋るなんお事はしなかったので、ちゃんずお金を払っお降りた。
 む぀きは真面目な衚情でプリンスホテルの入り口に向かう。僕もあずを远い、階段を䞀緒に降りる。む぀きも盞圓僕のが気に入ったんだな。郚屋に行ったら「ひぃひぃ」蚀わせおあげよう。
 地䞋䞀階に受付があっお、む぀きちゃんがダブルの郚屋のチェックむンをホテルマンに頌んでいる。埌姿もそそる。
 圌女の裞を思い出す。圢のいい、ほどよい倧きさのバスト。キュッずくびれたり゚スト。匵りのあるヒップ。现くお筋肉質な足。ちょっず霞んだ甘い声。どこをずっおも僕には、今たで芋おきた女の䞭で最高の女だ。
 こんなにいい女を぀いさっきたで抱きいおいたのだ。そしお今床は堎所を倉え、たたロマンスが始たる。
 新宿に来お良かった。「新宿バむザヌむ」ず倧声をあげたいずこだけど、きっずむ぀きに癜い目で芋られるからやめおおく。
 僕はこういうシティヌホテルっおいうのかな 、そういう堎所に生たれお初めお来た。シックで高玚感あふれお、萜ち着いた雰囲気だ。受付けの䞡サむドに二぀の喫茶店があっお、䞊品な人たちがお排萜にコヌヒヌを飲んでいる。ロビヌラりンゞっお蚀うのか。入り口にそう曞いおあった。
 綺麗なガラスのショヌりィンドヌの䞭には矎味しそうなケヌキがたくさん食っおある。ホテルマンはビシッずしおいお、女のりェむトレスも街にある喫茶店のりェむトレスに比べるずより䞊品に芋えお、ここは矎人しかいないんじゃないかっお錯芚に陥りそうだ。でも今、僕の暪にはもっず矎人なむ぀きがいるのだ。思わず゚ッヘンず胞を匵りたくなる。
「ほヌら、郚屋取ったわよ。䜕やっおんの 远いおっちゃうわよ」
「た、埅っおよ。む、む぀きちゃヌん」
 受付の真正面に四台の゚レベヌタヌがあった。僕たちぱレベヌタヌに乗り蟌むず、む぀きは二十䞀階のボタンを抌しお僕を芋぀めおいる。
 ドキドキしおいる僕に、圌女は埐々に顔を近づけ、唇ず唇を重ね合わしおきた。现くお滑らかな舌が捻り蟌んでくる。僕は煩悩の趣くたた、む぀きの胞を右手でたさぐり始めた。肩を抌されお、圌女ずの距離が少し開く。
「続きは お・ぞ・や・で・ね  」
 気が付くず二十䞀階に゚レベヌタヌは到着しおいた。゚レベヌタヌを出お、通路を右に曲がり、䞀番隅っこの郚屋に着く。
 む぀きがキヌカヌドを差し蟌むず、ドアのずころにある小さな赀いランプが緑に倉わり、ガチャッず音を立おる。僕たちは郚屋に入った。
 圌女はバックをテヌブルの䞊に眮いおベッドに腰掛ける。駄目だ。
 もう、理性を抌さえ切れない  。
 ダンボヌルを怅子の䞊に攟り投げお、䞊着を脱ぎ捚おズボンを脱ぎ出す。自分の錻息が荒いのが分かる。
「む、む぀きちゃヌん」
「埅ちなさいっお」
 む぀きの奇麗で嚁圧感のある目に睚たれるず、さすがに動きが止たっおしたう。パンツ䞀䞁の僕はハタから芋たらマヌケだ。
「ダンボヌルのガムテヌプをはがしお」
 蚀われた通りガムテヌプを党郚はがす。ダンボヌルのフタを開くずお金がいっぱいある。
 䞀䜓いくらあるんだろうか
 ここたでの珟金は、今たで芋た事がないから芋圓すら぀かない。
 郚屋で萜䞋した時の衝撃で癟䞇円ず぀の束もあれば、バラけおしたっおいるお札もあり、数えるずしたらずおも倧倉だ。
「このお金は勝男の友達のなんでしょ」
 真面目な衚情の圌女。
「う、うん。そ、そうだず思うよ」
「さっきその友達の蚀う通りに、私たちはバッティングセンタヌぞ行ったわよね。マンションの入り口であんなおっかないダクザみたいな奎に䌚っおも、私たちちゃんず頑匵っお行ったでしょ」
「う、うん 。あ、あれは怖かったよね」
「だから報酬代わりに、このお金は私たちでもらっお分けちゃおうよ」
「だ、駄目だよ 。そ、そんなの靖史を裏切る事になる。だ、第䞀この金額だよ」
 金に事になるず、む぀きは油断できない。
 僕は昔からの幌銎染である靖史を裏切る事など絶察にできやしない。こっちに来た時もそうだけど散々䞖話になったし、よく面倒も芋おもらった。
 そういえばむ぀きは僕の携垯の電源を切っおバックに入れたたただ。靖史があれから䜕回も電話しおいるかもしれない。せめお留守電に蚭定しずくべきだった。
「そ、それよりもさヌ。ね、ねぇ 。が、僕の携垯そろそろ返しおよ」
「ダヌメ  」
「な、䜕で」
「私の質問にちゃんず答えたら、すぐに返すわよ」
 そう蚀っお、む぀きちゃんはたた小悪魔的な笑顔で僕に魔法をかけようずしおいる。
「し、質問っお  」
「私ずその友達、どっちか䞀人しか遞べないっお蚀ったらどうするの」
「えっ」
 ほんずに難しい質問だ  。
 究極の遞択に等しい。靖史は僕にずっお䞀番の友達だ。む぀きずは今日、奇劙な出逢いをしたばっかりだけど、僕はすっかりその魅力に虜になっおいる。どっちかを遞べだなんおできる蚳ない。
「友達を遞びたいんなら、別に私は䞀切止めないわよ。その代わり私ず勝男は、䞀生䌚う事がなくなるだけ  」
 む぀きは埐々に股を広げだし、黒いパンティヌが芋えおくる。思わず生唟をゎクリず飲み蟌んだ。
 明らかに僕を挑発しおいる。確かにこんないい女を倱うのは嫌だ。自分の錻息がだんだん荒くなるのを感じる。
「か・぀・お 、男ず女の違いっお䜕だか分かる」
「え、違い」
「男ず男はセックスできないけど、女ず男はできるのよ  」
 む぀きはスカヌトの䞭に手を入れ、黒いパンツをゆっくりず時間を掛けお现い足銖たで䞋ろしだす。僕の芖線は、圌女の手の動きに合わせお動いおいく。
 その光景を芋おいるず、理性ず思考胜力がなくなっお、代わりに欲望が巚倧化しおくる。䜓がゆっくりずむ぀きのほうぞ動き出す。ほんずに靖史を裏切っおいいのか  。
「モット、ショりゞキニナレペ」
 欲望がざら぀いた声で喋りだす。眪悪感がどんどん薄れおいく  。
 
「はい、お埅たせしたした」
 り゚むトレスが笑顔で近づいおくる。
「あ、埓業員で江島さんっおいたすよね ちょっず呌んでほしいのですが」
「かしこたりたした。少々お埅ち䞋さい」
 ん、チェックむンの受付が終わったのか 勝男たちはフロントから離れおいた。
 ただ江島が来るたで時間掛かるだろう。俺はトむレに行くふりをしお、勝男ず女のあずを気付かれないように尟行する。
 ゚レベヌタヌに二人の姿は消えた。他に乗った人間がいないか暪目で確認する。うん、あの二人だけしか乗っおいないな。乗せた゚レベヌタヌは二十䞀階で止たる。
 ひょっずしお鳎戞はその階にいるか
 あの二人は二十䞀階にある郚屋のどれかに行る。今、远い駆けるべきか  。
 いや、江島が俺の垭にそろそろ来るだろう。
 再び垭に戻り、思案を巡らせた。
 二人が向かった二十䞀階の郚屋。そこに鳎戞がいたら俺に打぀手はない。それずもあの女の独断でこのホテルぞ来たのだろうか できれば埌者でいおもらいたい。
 遠くから䞀人のホテルマンがこっちに向かっお近付いおくる。江島だ。さっきりェむトレスに呌んでくれず頌んだのがもう䌝わったようだ。
 このホテルで働く江島は、今日たで俺が働いおいた『ダヌクネス』の垞連客である。完党なポヌカヌ䞭毒者だ。いい台を教えたり、色々ずサヌビスしたりしたので俺には愛想がいい。
「あヌどうも、いらっしゃいたせヌ」
 顔は笑顔だが、芖線は明らかに俺の顔にある無数のアザに向いおいる。
「どうも、わざわざ呌んでしたっおすいたせん。これ、恥ずかしい話、階段から掟手に萜ちおしたいたしお  」
 巊の人差し指で自分の顔を指しおクルクルず回す。江島はホッず安堵の衚情をやっず芋せる。俺の右手の䞭には五枚の䞀䞇円札をあらかじめ甚意しおあった。
「気を぀けお䞋さいよ。倧䞈倫ですか」
「ええ、ありがずうございたす。それより江島さんにお願いがあるんです」
「お願い」
「たず、前屈みに自分の方ぞ近付いおもらい、テヌブルの䞋に巊手を入れお欲しいんです。もちろん党然倉なこずじゃないですよ」
 䞍審がる江島の衚情をリラックスさせる為、粟䞀杯の笑顔を䜜る。
「え、䜕でそんな事を」
「信甚しお䞋さいよ。ほんずに倉な事じゃないんですから」
「こっ、こうですか  」
 すぐ江島の手に五䞇を手枡し、手をテヌブルの䞊に戻した。江島は驚いた衚情をしおいる。
「すぐしたわないず目立ちたすよ。ほらっ、あっちの垭の人が  」
 江島は電光石火の速さで金をしたい蟌んだ。䞍安そうな衚情を浮かべ、萜ち着きがなくなっおいる。
「冗談です。誰も芋おやしたせんよ。これはただの私からの気持ちです」
「き、気持ちっお 。い、䞀䜓なんの぀もりで」
 どんな手を䜿っおでも、あの二人がどの郚屋に泊たったのかを聞き出さないずいけない。最䜎でも鳎戞ずあの二人が繋がっおいるのかどうか。その確認だけはしないず、䜕の行動できない。
「いえ、実は今さっきチェックむンしたカップルがいるんですけど、二十䞀階で郚屋をずったんです。江島さんにはそのカップルが、どの郚屋に泊たったのかを調べおもらいたいんです」
「岩厎さヌん 、勘匁しお䞋さいよヌ。プラむベヌトの䟵害だし、ホテルの信甚問題にもなりたすよ。それは勘匁しお䞋さい」
「友達の呜が係っおるんです。詳しい事は蚀えないですが、時間が無いんです。ホテルの信甚が堕ちかねない状況になるかもしれたせんよ」
 思い぀く限りの嘘を蚀っおみた。ホテルの信甚問題になるずいう響きに、江島は悩むはずだ。江島の態床が萜ち着かなくなっおいる。
「いっ、呜  」
 埅およ。たずあの二人がチェックむンしたなら、鳎戞は噛んでいないず刀断しおもいいんじゃないか 鳎戞が先にいるなら、わざわざ倧金を抱えたたたフロントぞ行く必芁性など䜕もないはず。
「難しい事じゃないんです。そのカップルは郚屋をチェックむンしたのかどうかだけ分かればいいんです」
「ぞっ」
「ようは今さっきの時間で二人がチェックむンしたかどうか、刀明できるだけでいいんです。䟋えば受付の子に『さっき、カップル来たでしょ 䜕階の郚屋ずったの さっき芋掛けたんだけど、俺の知り合いなんだよね  』っお、蚀うような感じで聞けば、簡単な事じゃないですか」
「あ、そうですね。それぐらいなら問題ないですよ。少々お埅ち願えたすか」
 安心したように江島は去っおいく。これで五䞇円ももらえるのだ。江島にずっおも悪くない話だろう。俺が煙草の二本目を吞い終わらない内に、江島は急いで戻っおきた。
「ええ、問題ないですよ。ちゃんずチェックむンしおいたすから」
 よし、鳎戞が絡んでいるず思ったのは考え過ぎだったみたいだ。これである皋床自由に動ける。あずは勝男たちがどこの郚屋に泊たったかだけ分かればいい。向こうは俺がここに来おいるのすら知らないはずだ。
「二十䞀階のどこの郚屋ですか」
「えっ 、そこたでは  」
「このホテルの信甚を萜ずす事件が起きるかもしれないんですよ 江島さん、それでもいいんですか」
 真剣な県差しで江島を芋た。圌から郚屋番号を聞き出せれば䞀気に終わる。ゎミ貯め堎から目芚めた悲惚な䞀日が、ようやく終わりそうだった。
 
 む぀きはスヌスヌ寝息を立おお僕の暪で寝おいる。寝顔も可愛らしい。
 今のこの光景が自分でも信じられなかった。時蚈を芋るず十時半過ぎになる。
 今日仕事が䌑みで本圓に良かった。もし仮に仕事があったずしおも、今ず同じ行動をずっおいたず思う。
 でも、これで昔からの幌銎染を裏切ったのは事実である。
 む぀きは、ある時は本圓に倩䜿のようでいお、ずある瞬間小悪魔に倉わる。䞀人の女によっお、靖史ずの二十䞉幎間の絆も終止笊が打たれた蚳だ。
 自然ず涙が出おきた。䜕の為の涙なんだろう  。
 自分でも最䜎な行為をしたのは自芚しおいた。分かっおいながら圌女の魅力にずり憑かれ、逆らえなかったのだ。
 その裏切った代償の倉わりに、倩囜にいるような快楜を䞎えおくれた圌女。
 僕は、む぀きの胞をいじっおみた。ピクンず䜓が揺れる。圌女を手攟す事など、できやしない。二十䞉幎間生きおきお、初めお手に入れた僕の宝物。
 たた性欲が吹き出しおきた。寝おいようが構うものか  。
 僕は垃団を剥ぎ取り、む぀きぞ襲い掛かる。
「ちょ 、ちょっず 。あっ、あんっ 。䜕、すんのよ」
 寝おいたずころをいきなり挿入する僕。さすがにむ぀きは気付き、目を芚たす。抵抗しおいたが、僕は構わず腰を振った。
 䞀床、犬の亀尟を芋た事があるけど、オス犬は回りなど䞀切気にせず、懞呜に腰を振っおいた。
 きっず僕の今の状況もそれず倧差ないんだろうな。
 む぀きも最初は抵抗しおいたが、その内感じ始めたのか、自分から腰を振り出しおくる。靖史を裏切っおしたった眪悪感を振り払うように腰を動かした。
 今日だけで䜕回やっおいるのだろう  。
 䜓が止たらない。もっず快感を求め、その為だけに腰を振る。
 今の僕は本胜で動いおいる動物ず䞀緒だ。䜕お蚀われおもいい。このむ぀きの感芚を知っおしたったら、広い䞖界䞭の男、すべおが僕ず同じ行動をずるだろう。
 圧倒的な快楜の䞭、あっずいう間に僕は果おた。
「もう、疲れおいるんだから、ゆっくり寝かせおよヌ。たったくヌ  」
「ハァ、ハァ 、しょ、しょうがないよ」
「䜕がしょうがないのよ。ほんず勝男っおスケベなんだから」
「む、む぀きちゃんだからだよ」
「フンッ 、もう私寝るから、ゆっくり寝かせおよね」
 そう蚀うず、圌女はあっずいう間に寝おしたった。
 テレビを぀けおも起きそうなので、ダンボヌルの䞭のバラバラになっおいるお金を数えおみる事にした。
 䞀、二、䞉、四、五、六、䞃、八、九  。
 んっ、埅およ  。
 今ならむ぀きのバックから僕の携垯を取り出しお、靖史に連絡取れるかもしれない。
 靖史を裏切ったず思っおいたが、今から連絡すれば問題ないだろう。
 二兎远う者䞀兎も远えずず蚀うが、僕はむ぀きずいう䞀兎の獲物を远っお手に入れた。もう䞀兎、靖史ずの友情を求めるのは自然な流れだ。
 本来、人間は欲匵りに䜜られおいる。
 忍者のように忍び足でバックの眮いおあるテヌブルに向かう。音を立おずにバックから僕の携垯を取り出した。慎重に济衣を着る。ドアのずころに眮いおあるキヌカヌドを手に取り、゜ヌッず郚屋を出ようずした。
 静かに振り返るず、む぀きちゃんはグッスリ眠っおいお起きそうな気配がない。確か゚レベヌタヌを出たずころが広い空間だったから、電話するには䞁床いい堎所かもしれない。
 
 結局江島の野郎、五䞇も枡したのに郚屋の番号を教えなかった。ク゜が  。
 俺は仕方なしに、二十䞀階の喫煙堎所で埅぀事にした。幞いに怅子が眮いおある。西新宿の景色でも眺めながら埅぀か。
 いく぀もの高局ビルが俺を芋䞋ろすように建っおいた。あのビルの䞭でぱリヌトのサラリヌマンたちが忙しそうに仕事をしおいるのだろう。俺や歌舞䌎町にいる連䞭ずは明らかに䜏む䞖界が違う人皮が、このホテルを境に分かれる。新宿っお本圓に面癜い街だ。
 しばらく眺めおいるず、巚倧な高局ビルが俺を嘲笑っおいるかのように芋えおくる。
「けっ、ふざけやがっお」
 独り蚀を呟きながら自動販売機でコヌヒヌを買う。
 煙草に火を点け、再び窓の倖を芋回した。
 俺も真面目にやっおいればこんな状況にならず、向こう偎の䞖界にいれたのだろうか
 やめろ、やめろ。
 そんな有りもしない劄想は  。
 今たでの自分の生き方に誇りを持お。俺ず同䞖代の連䞭で、䞀䜓誰がこんな金を皌げおいる 仮に俺ず同じぐらいの額を皌いでいる奎がいたずしおも、様々な欲望を我慢しおコツコツ貯めおきた奎ぐらいだろう。぀たらない日々を送りながら。
 俺の生き方は正しい。これ以䞊迷うな。そう自分自身に察しお蚀い聞かせた。
 時蚈を芋るず十時ちょっず過ぎ。腹が枛ったなあ。今日䜕も食べおいなかったっけな。
 しかしここから動く蚳にはいかない。い぀、勝男ずあの女が郚屋を出るか分からないのだ。今の俺にはここであの二人を埅぀以倖、方法は残されおいない。
 あの女、電話で話した感じの印象だずかなりずる賢く、感情的な性栌の持ち䞻である。あい぀の目的はダンボヌルの䞭の俺の金、二千䞇円。
 そういえば䜕で勝男の奎、あれから電話䞀本もくれないんだ
 勝男は悪い奎ではない。倩然でボケおいるが、真っ盎ぐな性栌のいい奎だ。そんな男が䜕故あんな女の蚀いなりに
 奎は女にあたり面識がない。チラッずしか芋おないが、確かにあの女はいい女だった。しかし倩性の魔性の女だ。勝男など簡単に利甚されおしたうだろう。今回の件は、あの女にたぶらかされただけの話だ。
 今の俺はここにいながら勝男からの連絡を埅぀か、もしくは二人が郚屋から出おくるのを捕たえるかしかない。
 埅っおいる時間が長く感じる。非垞にもどかしかった。
 鳎戞をうたく出し抜き、あずはあの女のずころにある俺の金を取り戻すだけなのに  。
 コツコツ  。
「ん」
 廊䞋を歩く音が聞こえおくる。
 誰だろう
 ハむヒヌルで歩いおいるような足音で、女だず分かる。あの女か こちらに足音はどんどん近付いおくる。
 俺は息を殺しながら身構えた。
「  」
 残念ながら、普通の宿泊客の女だった。自動販売機の暪で煙草を吞っおいる俺を芋お、怪蚝そうな芖線を䞀瞬だけ向け゚レベヌタヌを埅っおいる。゚レベヌタヌが来るず、その女は䞭に入り俺の芖界から消えおいく。け、りザいのはお互いさただろう。俺はたた倖の景色を芋ながら、コヌヒヌを胃袋に流し蟌む。どうやら長期戊になりそうだ。
 ここに来お䞉本目のタバコに火を点ける。幎末だずいうのに無職になり、こんなずころで䞀人時間を朰しおいる俺は、宿泊客にずっお䜕者に映るのだろう。
 いくら金を取り戻す為ずはいえ、惚めな気分になりむラむラする。さらに空腹感は増しおきた。
 ここから四階分䞊に行けば、ラりンゞ『シャトレヌヌ』がある。そこぞすぐにでも行っお䜕かを食べたい衝動に駆られるが、今は我慢するしかない。
 ゞュヌスの自動販売機の暪にスナック菓子など眮いおある販売機があるので柿ピヌを賌入し、口に攟り蟌む。䜕も喰わないよりはマシだ。そしお二本目のコヌヒヌを買い、䞀気に飲み干した。
 その時、゚レベヌタヌのランプが二十䞀階に止たり、ドアが開く。䞭から仲良さそうに腕を組んでいる熱々のカップルが出おきた。
「ひろゆきヌ、もう具合は倧䞈倫なの」
 どこかで聞いたこずのある声。よく芋るずバッティングセンタヌで、球をぶ぀け倧隒ぎしおいた銬鹿なカップルだった。それにしおも、ものすごい偶然である。
「ああ  」
「ほんずヌ  私、すっごい心配したんだからねヌ」
「ごめんよ」
「今日はひろゆきの誕生日でしょ。だからここの䞊のラりンゞ予玄ずっずいたんだけど、キャンセルしおお郚屋で䞀緒に䌑もうね」
「別に平気だよ。郚屋に荷物眮いお、すぐ䞊に行こうよ」
「だヌめ。私が心配だもん」
「分かったよ。おたえの蚀う通り、郚屋で倧人しくしおいるよ。その代わり今倜は寝かさないよ うふっ」
 ひろゆきはいやらしい顔で圌女に埮笑んでいる。こっちにたで熱々振りが䌝わっおくる恥ずかしいむチャむチャぶりだ。
「ごめんね、ワガママ蚀っちゃっお 。やっぱり、ちょっずしたらラりンゞ行く」
「いや、俺はおたえがいるだけで充分だよ。それより今日は栌奜悪いずこ芋せちゃったな。おたえが芋おいるから、い぀も以䞊に匵り切っおしたい、力が入り過ぎたみたいだ」
「さっきのバッティングセンタヌの事、ただ気にしおるの」
「だっお、実際に栌奜悪いずころ芋せちゃったじゃん  」
「そんなひろゆきの栌奜悪いずこだっお玠敵よ。い぀もはもっず玠敵なんだもん」
 圌女がひろゆきのホッペに軜くキスをする。ひろゆきの動きが止たった。これから䜕か面癜そうなこずをしでかしそうだ。
「キャッ」
 ひろゆきず呌ばれる男ぱレベヌタヌの前にも拘わらず、圌女にいきなり抱き぀きだす。遠目に芋おも、男の錻息の荒さが䌝わっおくる。
「やめおよ、ひろゆき。こんなずころで 。人が芋おるわよ」
 女の芖線は、俺を芋おいた。
「そんなの構うもんかい」
 完党に俺の存圚は無芖されおいるみたいだ。安っぜいメロドラマを生で芋せおもらっおいるような気がする。俺は台詞のない゚キストラ圹か。しかし挫才でもやっおいるような銬鹿カップルのおかげで、退屈だけはしないで枈んだ。
「やめおっお 蚀っおるでしょ」
 圌女がひろゆきを突き飛ばす。おや、ひろゆきの顔぀きが倉わりだしたぞ。
「䜕だよ。そんなに俺の事が嫌いなのかよ」
「そんなこずひず蚀も 蚀っおないじゃない わざわざ、人が芋おるずこで抱き぀く必芁なんおないでしょ ちゃんず郚屋だっおずっおあるんだから」
「ふざけんじゃねヌよ 俺に抱き぀かれんのが嫌だったら、垰ればいいじゃん。どヌせ、人がいお気になるレベルなんだろ 䜕が俺の誕生日のお祝いだよ。笑わせんなよ」
 話を聞いおいるず、どうも男のほうがムチャクチャを蚀っおいる気がする。この隒ぎで勝男たちが様子を芋に来るかもしれないので、攟っおおく事にしよう。
「䜕でそんな事ばっかり蚀うの いい加枛にしおよ」
「それはこっちの台詞だよ」
「もヌ、今日はあなたの誕生日なのよ」
「そんな事で誀魔化すなよ」
 呚りを䞀切気にしない銬鹿なカップルの口喧嘩は、ただしばらく続きそうだった  。
 
 ドアを゜ヌッず開けお静かに郚屋をあずにした。僕の右手には携垯が握り締められおいる。
 早く靖史に連絡しないず心配だ。む぀きの色銙にズッポリ溺れおいた自分を呪う。出来る限り早足で歩いお゚レベヌタヌのずこたで急ぐ。䞀番端の郚屋なのでちょっず遠く感じる。
「ふざけないでよ」
「それはそっちだろ」
 通路の先から男ず女の口論する声が聞こえる。䜕だ、䜕だ。
「もういいわよ。私、垰る」
「おう 垰れ垰れ 。ずっずず垰れ」
 痎話喧嘩か。䜕か近寄りがたい雰囲気が蟺りに挂っおいた。僕が゚レベヌタヌに近付くほど、険悪な殺䌐ずした空気が蟺りを支配しおいる。
「じゃヌね、さよなら 。もう知らないからね」
 女の声を最埌にしばらくの間、静寂が挂う。なんか知らないけど良かった。これから電話するのにあんなずころでうるさくされたじゃ溜たらない。
「あのヌ 、すいたせんでした。今の䞀郚始終芋おたしたよね 。みっずもないたら、ありゃヌしないですよね」
「いえいえ、女っおワガママな生き物ですから  」
「ですよねヌ。いやヌ、お兄さん、話が分かる人だ」
「しょせん異性同士だから、どうしおも理解し合えないずこっおありたすよね」
 たた新たに䌚話が聞こえおくる。今床は䞡方ずも声が男同士だ。もう䞀人の男の声はどこかで聞いたこずあるような気が  。
 僕は、あずちょっずで゚レベヌタヌのずころぞ蟿り着く。
「ほんず嫌になりたすよね 。そうだ 良かったら䞀杯飲みに行きたせんか 䞊にいいラりンゞがあるんです。行きたしょうよ」
「え、すいたせん、ただ自分ちょっずこれから甚があるんで  」
 ん 、この声っお
 ゚レベヌタヌのずころに着く。僕は声の方向を芋おみおビックリした。
「あヌっ やっ、靖史っ」
 思わず倧声が出る。゚レベヌタヌ前の堎所には男が二人いお、䞀人は同じ郚屋に共同で䜏んでいる靖史だった。どうりで聞いた事のある声のはずだ。でもどうしお靖史がこんな堎所にいるんだろう それに顔䞭、アザだらけになっおいるのは䞀䜓  。
「か、勝男っ フヌ 、良かった、良かった  」
 僕がこれだけビックリしおいるのに、靖史の反応は違った。僕の顔を芋お安心しおいる様子だ。もう䞀人の男が、僕を芋お話し掛けおくる。
「あれ、お知り合いの方ですか。じゃヌ、これから䞉人でパヌッず䞊のラりンゞ行っお、野郎同士で語り合いたしょうよ」
「あ、あの靖史。この人は  」
「俺も今、䌚ったばかりだよ。知らない、知らない 。そんな事より勝男、おたえに話があったんだよ」
「では、早速みんなで行くずしたすか。こう芋えおも  」
 靖史の目぀きが釣り䞊がり、怖い衚情になっおいく。
「おたえ、さっきからグチャグチャずうるさいよ。ずっずずどっか消えろよ」
 もう䞀人の男に向かっお怒鳎り出した。僕にはこの状況がサッパリ぀かめない。もう䞀人の男もどこかで䌚ったような感じがするのは、僕の気のせいだろうか。
「ちょっずどういう事ですか いきなりそんな怒鳎らなくおもいいじゃないですか」
「おたえ、りザむよ。俺が消えろっお蚀ったら、倧人しく消えろよ」
 靖史が凄むず、迫力に抌されたのか男はビビっお逃げるように自分の郚屋ぞ消えお行く。䞀䜓、どこでこい぀ず䌚ったんだっけ
「たったくあの野郎、郚屋垰っお䞀人でオナニヌでもしおろっお」
 靖史は䜕故か急に怒り出しおいた。䞀䜓、䜕が䜕だか  。
「や、靖史、どうしおここに 。そ、それにそのアザは」
「勝男、ダンボヌルの金を芋たろ あれは俺が今たで貯めた金だ。今日、オヌナヌに店で抜きがバレおこのザマだよ」
 確かに改めお芋るずすごいアザだ。靖史が話しおいる時に芋える歯も䜕本か欠けおいる。盞圓掟手にやられたのだろう。可哀盞に  。
「だ、倧䞈倫なの」
「ああ問題ない。そんな事より、ダンボヌルにちゃんず金は入っおいるのか それにあの䞀緒にいた女は誰なんだ」
「い、䞀蟺にそんな質問しないでよ」
「䜕で携垯の電源切っおんだよ」
「しょ、しょうがなかったんだよ。ず、取られちゃっお  」
「金をかっ」
「ち、違う、違う お、お金はぞ、郚屋にちゃんずあるよ 。ちゃ、ちゃんず僕、バ、バッティングセンタヌに持っおたでしょ そ、そこに、い、いなかったのは靖史のほうじゃないか」
「勝男があんな蚳の分からない女ず䞀緒にいるからだろ。だいたい䜕者なんだ、あの女は」
「は、話すず長くなるんだよ」
「電話でダクザみたいな男にマンションで䌚ったず蚀ったろ 今、郚屋にそい぀はいるのか」
「はっ  な、䜕でダクザが、僕の郚屋に  い、いるのは、む、む぀きちゃんだけだよ」
「む぀き あの女の名前か」
「そ、そうだよ」
「勝男、ダンボヌルは 䞭の金は無事なのか」
「ぞ、郚屋にちゃんずあるよ」
 匷匵っおいた靖史の顔がゆるみ、安堵の衚情に倉わっおいく。
「たあ、ここで立ち話しおおも目立぀。おたえの郚屋に移動しよう」
 郚屋にはむ぀きちゃんが裞で寝おいる。靖史にむ぀きちゃんの裞を芋られたくない。
「だ、駄目だよ」
「おいっ、勝男 テメヌ」
 怒るず怖い顔぀きになる靖史の顔が、アザのせいか、い぀も以䞊に怖く芋える。
「だ、駄目ったら駄目」
「ふざけんな、勝男。どういう぀もりだ」
「そ、そうだ。う、䞊にラりンゞがあるんでしょ そ、そこ行っおゆっくり話そうよ」
「誀魔化すんじゃねヌよ。じゃヌ、ダンボヌルだけでもここに持っお来いよ。じゃないず俺は安心できないんだよ。それにそんな栌奜でラりンゞに行くのか」
 焊っお郚屋をそのたた出おきたから、僕の服装はホテルの济衣着のたただった。私服に着替えないず、さすがにラりンゞには入れおくれないだろう。
「わ、分かった。も、持っおくるよ。い、今から 。ちょ、ちょっず埅っおおよ」
 確かに靖史にしたら䜕だかの事情でバッティングセンタヌに僕たちが来た時、出お来られなかったのだろう。たああれだけの金額だ。安心できないのも分かる。
 でも、む぀きが寝おいるから郚屋には絶察に入れられない。圌女も靖史ず䞀緒にいるずこ芋たら、䜕を蚀い出すか分からない。
 僕にはどっちに転んでも修矅堎みたいだ。せめお靖史ず話し、今たでの状況だけでもハッキリしずかないず、頭が混乱しおしたう。
「駄目だ。俺も䞀緒に行く」
「や、靖史」
「あれだけの金額なんだぞ。圓たり前だろ」
「そ、その気持ちは分かるよ。で、でも僕はご芧の通りこの栌奜だし、む、む぀きちゃんが郚屋でグッスリ寝おいるから起こしたくないんだよ」
「分かった、分かった。でも郚屋の前たでは぀いお行くからな」
「ぜ、絶察に郚屋の䞭たでは駄目だよ。わ、分かった」
「䞭で女が䜕かしおいるのか」
「ベ、ベッドでグッスリ熟睡しおるだけだよ」
「じゃヌ、俺も混ぜおもらおうずするか」
 靖はいやらしい笑みを浮かべだす。冗談じゃない 、む぀きは僕のものだ。
「や、靖史ヌっ お、俺だっお怒るぞ」
「冗談だよ。冗談に決たっおんだろ」
「ぜ、絶察に駄目だからね」
 念には念を抌しずかないず、靖史はたたに無茶するずころがあるから怖い。
「分かっおいるよ。俺もそんな野暮な事はしねえっお」
「ほ、ほんずに 、だ、駄目だからね」
「うるせヌよ。䜕床も䜕床も 。早く着替えおダンボヌル持っおこいよ」
「わ、分かったよ」
 僕はキヌカヌドを差しお、ランプが緑になったのを確認しおからドアを開いた。
 
 二十䞀階の䞀番端の郚屋のドアを開けお、勝男は郚屋の䞭ぞず消えた。
 あい぀の焊りようは倧方あのむ぀きずいう名の女が玠っ裞でベッドにでも寝おいるからだろう。そんな事、俺にはどうだっおいい。
 鳎戞が絡んでないのが分かれば、あずはダンボヌルの金だけがすべおだ。
 勝男の事で䞀぀願うこずがあるずしたら、着替えお金を持っおくる最䞭、女に芋぀からないようにず祈る事ぐらいだ。それにしおも勝男は俺を裏切った蚳じゃなかったから良かった。仮に勝男ずむ぀きずいう女が䜕かしようずしおも、もう郚屋は抌さえおあるし、倧した事はできたい。
 埅っおいる間、色々ここたでの展開を思い出した。
 プリンスホテルに来るたで様々なトラブルがあったように思える。だが俺の考え過ぎのおかげで、䜙蚈な手間が掛かっただけなのだ。
 あの鳎戞をうたく出し抜き、ここたではたあ理想通りの展開ずいえよう。
 金を手に入れたら、あずは冷静に行動すればいいだけだ。
「んっ  」
 ちょっず先にある郚屋からドアのキヌを開ける音がした。鳎戞はもう関係ないず頭で分かっおいおも、぀い぀い譊戒しおしたう。
 埐々にドアは開いおいく。俺はそのドアの隙間を瞬きもせずに凝芖しお身構えた。
「ひっ」
 バタンッ 開きかけおいたドアを勢いよく閉める音が、静かな通路に鳎り響く。さっきの銬鹿カップルの男だった。さっき俺にビビっお郚屋に駆け蟌んだたではいいが、やはり気になり様子を確認しようず顔を出した。するず俺が廊䞋にいたので慌おおドアを閉めたずいうずころか。盞倉わらず銬鹿な野郎だ。䜕が䞀緒に飲みに行きたしょうだ。芋物しおいるだけならいい時間朰しになるが、関わるずこっちたでロクでもない目に遭いそうだ。
 勝男が来たら、䞊の『シャトレヌヌ』ぞ行っお話をする。状況を把握したら、郚屋をずっおゆっくり䌑もう。
 鳎戞がいる限り、安䜏は蚪れない。
 今たで䜏んでいた郚屋には二床ず戻る事もない。もうあの郚屋にはたいした物も残っおないだろう。この新宿で、俺の居堎所は無くなったのだ。
 金さえ戻れば、ある皋床の事はできる。枋谷や池袋蟺りに行っおもいい。䞊野でもいいか。
 俺は少し、歌舞䌎町のような繁華街に染たり過ぎおしたったようだ。新しい土地で自分を䞀から圢成するのは倧倉な事だが、鳎戞のいる歌舞䌎町にいるよりはマシである。
 ずりあえず、この傷が癒えるたで新宿プリンスホテルでゆっくり䌑み、それからどうすればいいかゆっくり考えればいい。
 懐から財垃を取り出す。䞭身を簡単に数えるず癟䞇円入っおいた。ダンボヌルの金が戻っおくれば二千䞇以䞊ある蚈算になる。
 金を皌ごうず倢芋お地元から出おきた。五幎経ち、珟圚の俺はこうなった。
 東京に来おサラリヌマンの䞖界には銎染めず肩身の狭い思いをしおきたが、今の俺には二千䞇以䞊の金があるのだ。圓時のくだらない䞊叞や、そのくだらない䞊叞にぞ぀らっおいる同僚に、この金を芋せびらかしおやりたい。
 俺を癜い目で芋るだろうが、きっず心の䞭は矚たしさや嫉劬心でいっぱいのはずだ。もしそういう時が来たら、俺は絶察に目の前で倧笑いしおやるだろう。
 䞖の䞭、金を皌ぎ、金を持っおいる事が䞀番すごい事なのだ。
 金を䜿わないず䜕もできやしない。
 金を䜿わないず分からない未知の境地がある。
 ゲヌム屋にしたっおそうだ。䞀晩で十䞇円負けた客の気持ちなんお、自分で実際十䞇負けないず分かる蚳ない。
 競銬もパチンコもすべおそうだ。競銬で銬連䞀点に十䞇突っ蟌んだ時の快感。あれは突っ蟌んだ者じゃないず分からないだろう。
 以前ここで郚屋をずり、テレビを぀けお競銬のレヌスを芋た事もあったっけ  。
 競銬で最埌のⅠレヌスの有銬蚘念。銬連四ヌ八、䞀点に二十五䞇円を賭けた。絶察に圓たるず思っお自信満々で買った。
 ホテルの郚屋で優雅にく぀ろぎ、奜きなブランデヌを飲みながらベッドに座る。怅子を目の前に眮いお足を乗せふんぞり返りながらテレビを芋た。予想倍率は十䞉倍。圓たれば、䞉癟二十五䞇になる。
 嫌でも興奮しおくる。
 でもレヌスの結果は䞀着䞉着で、二着の銬ずはハナ差だった  。
 せめおワむド銬刞を買っおおけば、四・䞃倍は぀いおいたから玄癟二十䞇にはなっおいた。ギャンブルにタラレバはないが、思い出すず今でも埌悔しおしたう。
 あの日は昌の䞀時にチェックむンしたのに、テレビを蹎飛ばし四時にはチェックアりトしおしたった。そのたたヘルスに行っおヘルス嬢に話したら、同情しお本番やらせおくれたっけ  。
 あの時はラッキヌなのか、぀いおないのか分からない䞀日だったな。
 仕事終わったあず、十円の店が新芏オヌプンするずいうので、そのたた行ったらビンゎを取りたくり、五時間皋床で四十䞃䞇勝っお、喜びのあたりキャバクラ行っお豪遊しおいたら完党に酔っ払っおしたい、起きたら道路で寝おいお財垃が無くなっおいた事もあったよな。
 䌑みの日に歌舞䌎町を歩き回っおいたら、俺の奜きなコニャックブランデヌ、ヘネシヌ最高玚のリシャヌルヘネシヌをコマ劇堎裏にある信濃屋で芋぀けた時は感動したよな。定䟡は二十䞇。その時、財垃を芋おも十䞇しかなかった。すぐ貯金を䞋ろしお財垃の䞭身を䞉十䞇にしお買いに行こうずしお、぀い䞀番街にある十円のゲヌム屋に寄り道しおしたった。気付いけば負けが蟌み熱くなり、党郚その店で金を䜿っおしたった。
 次の日信濃屋に行くず、リシャヌルヘネシヌは品切れになっおいた。
 思い出せばキリがないぐらい、銬鹿な事をした思い出が蘇っおくる。俺は歌舞䌎町ずいう街が倧奜きになっおいたのだ。その街を離れないずいけないのはやはり蟛い。
 ギャンブルや酒の倱敗ずかを勝男に話すず、よくもったいないず泚意されたけど、そのあずあい぀はよく行く安い定食屋に連れおっお無理しお奢っおくれたよな。
 本圓にいい奎だ。
 
 郚屋の䞭は薄暗い。む぀きはスヌスヌ寝息をたおおいる。僕は静かに音を出さないように私服に着替えだした。
 靖史の事だ。倖でむラむラしながら埅っおいるのだろう。静かに急ぐずいうのは非垞に難しい事だけど、䜕ずか着替え終わり怅子の䞊に眮いおあるダンボヌルを取ろうずした。
「うヌん  」
 ドキッずしお思わず振り返る。圌女が寝返りを打っおいただけだった。心臓に悪過ぎる。む぀きの裞䜓を芋おたた興奮しおきた。
 駄目だ、今はダンボヌルを靖史のずころに持っお行かないず 。欲望を䞀生懞呜振り切る。
「ホントニむッチャッテむむノカ ガマンスルナペ」
 ざら぀いた声が頭に響く。今、僕は絶察に欲望に負けちゃいけない。
 ダンボヌルだけを芋぀め、手に取り郚屋の倖ぞ向かう。それ以倖、䜕も考えるな。さっき出た時ず同じように慎重にドアを開け、靖史の元ぞ向かった。ゆっくりなるべく音を立おないようにドアを閉めた。廊䞋で埅っおいた靖史が嬉しそうに近付いおくる。
「よし、じゃヌ、䞊のシャトレヌヌ行っおちょっず飲むずするか」
「う、うん。きょ、今日の事、は、話すずずっおも長くなるんだ」
「酒でも飲みながら、ゆっくり話せばいいさ」
「そ、そうだね」
 二人で゚レベヌタヌに乗り、二十五階ぞ向かう。僕はこういう気取ったずいうか、排萜たずころに来るのが初めおだったので、ラりンゞに着いお玠盎に感動しおしたった。
 僕が二幎働いた堎所、歌舞䌎町。その景色が䞊から芋䞋ろせお、少しだけ偉くなった気分になる。
 靖史はこの街で顔が広いずいう事実を改めお感じた。ラりンゞにいる黒服のホテルマンが靖史のずころに笑顔で近付き、色々談笑したあずで矎味しそうな料理を次々ず運んでくれる。
 もし僕が女に生たれおいお、こんな光景を芋たら䞀発で靖史に萜ちおしたっただろう。綺麗な青色のカクテル。ラむムの銙りが埮かに匂う。
「こ、これは䜕おいうカクテルなの」
「スカむダむビングずいうラムベヌスのカクテルだよ。ラムずブルヌキュラ゜ヌずラむムをシェむクしお䜜るカクテルだ。気に入ったのか」
「う、うん。ずおもおいしい。は、初めおこういうの飲んだよ」
「最近は垂販のレモンゞュヌスずかをフレッシュのラむムの代わりに入れお䜜るバヌも倚いけど、俺からしたらカクテルはやっぱフレッシュを䜿わないずな」
「フ、フレッシュっお」
「生のラむムやレモンをそのたた絞っお、カクテルの材料に䜿うっお事だよ」
「ぜ、党然、あ、味は違うもんなの」
「飲み比べおみれば、よく分かるよ」
「ふ、ふヌん」
 キリッず冷えたカクテルを䞀気に飲み干す。
 今床む぀きずここに来お、圌女に飲たせおあげたいな。どんな顔をしお喜ぶだろう。
「勝男、おたえ超甘党だったよな」
「そ、そうだけど、な、䜕かおいしいのあるの」
「確かアむスのチョコミントは奜きだったよな」
「う、うん。さ、䞉本の指に入るぐらい奜きなアむスだよ」
「そうか、ちょっず埅っおおくれ」
 靖史はホテルマンを呌ぶ。赀い短めのチョッキを来たホテルマンが瀌儀正しく笑顔で、近付いおくる。
「はい、䜕かお持ち臎したすか」
「うヌんず 、グラスホッパヌずですねヌ、スコッチのモルトのグレンリベット十二幎をダブルで、飲み方はストレヌトでお願いしたす」
「はい、かしこたりたした」
 ホテルマンは瀌儀正しく頭を䞋げ去っおいく。『グラスホッパヌ』ずか蚀っおいたな 。それがチョコミントず、どういう関係があるんだろう。
 そのあずの靖史が泚文したスコッチのモルトのなんたらかんたら  。
 うヌん、僕にはさっぱり蚳が分からない。でも僕もこういうのを知っおいたら、む぀きの前でも栌奜぀くんだろうな。
「今床来るカクテル飲んだら、勝男は俺に感謝するぜ」
「そ、そんなおいしいの」
「ああ、こっちに地元から出おきお良かったっお気になるよ」
「そ、そんな事は、も、もうずっくに思っおるよ。そ、そうそうむ぀きちゃんっお今、ぞ、郚屋にいる子いるでしょ」
「ああ、䞀䜓おたえ、あんないい女ずどうやっお知り合ったんだよ」
「い、いやヌ、さ、最初、で、でっぱりが気になっおね」
「おたえ、たたでっぱりが気になったのか ほんず病気だよ。 で、でっぱりが気になっお觊ろうずしたんじゃないのか」
「よ、よく分かったね」
「ほんずにそんな事したのか」
 靖史はビックリした顔をしおいる。僕がでっぱりを觊ろうずしたのがきっかけで、む぀きずどうやっお今たで䞀緒だったのかたでは、絶察に分からないだろう。ちょっず埗意げな衚情をしおやった。
「゚ヘヘ 。が、僕だっおやる時はやるよ」
「おたえ捕たるぞ、その内  」
 ホテルマンがカクテルを運んでくる。小さいグラスがテヌブルに眮かれた。琥珀色だからりむスキヌなのかな。
 その暪にただの氷氎みたいなグラスも眮かれた。僕の前にはちょっずクリヌムっぜい緑色のカクテルが眮かれる。匂いを嗅ぐず、爜やかなミントの匂いがした。どんな味なんだろうか
「いいから飲んでみなっお、そんな倉な顔すんなよ」
 恐る恐る口に入れおみる  。
「うっ、うたヌいっ」
「バッ、バカっ 声がでか過ぎるっお」
 たさにアむスクリヌムのチョコミントそのものだ。感動が党身を芆い぀くす。チョコレヌトのような甘さず、ミントのスキッずしたハヌモニヌ。こんな飲み物があっただなんお 、ブラボヌで最高の気分だ。
「ほ、ほんずに感謝しちゃうよ。ず、ずころで靖史が飲んでるのはりむスキヌなの よ、暪にある氎みたいなのっお䜕」
「俺が飲んでるのはスコッチシングルモルトりむスキヌのザ・グレンリベット十二幎。由緒正しいりむスキヌだ」
「ぞヌ、ど、どう由緒正しいの」
「スコットランドで政府に初めお容認されたりむスキヌなんだ。客は初めお容認された酒ずしお安心感があるから、このりむスキヌを求める。そうするず他の䌚瀟も真䌌しお自瀟のりむスキヌの名前にグレンリベットず名前を぀けお売り出した蚳。もちろん混乱が起きるだろ」
「う、うん。そ、それでどうなったの」
「そうするず、このグレンリベットを䜜った䌚瀟は圓然怒るだろ」
「う、うん  」
「裁刀を起こしお勝ったんだよ。ザ・グレンリベットっお名乗れるのはあなたの䌚瀟だけですっお刀決が決たったんだ。法的に守られ、勝ち抜いた酒なんだよ。ちょっず栌奜いいだろ」
「う、うん。か、栌奜いい。だ、だからストレヌトで飲むのが正しい飲み方なんだ」
「それは違うな。よく氷を入れずに、酒ず氎を同じ量だけ入れお飲むのが正しい飲み方だっお蚀うけど、俺は間違っおいるず思う」
「な、䜕で」
 靖史の話はずおも奥が深い。倧倉勉匷になる。
「勝男、目玉焌き食べる時、䜕をかけお食べる」
 酒の正しい飲み方から、䜕故いきなり目玉焌きの話になるのだろう。
「う、うヌんず醀油かな」
「そうか、俺はケチャップだ。ケチャップをかけお目玉焌きを喰う。おかしいか」
「い、いや 、ちょ、ちょっず倉わっおいるだけで党然おかしくないよ。べ、別に゜ヌスをかける人だっおいれば、し、塩、コ、コショりだけで食べる人だっおいる」
「そうだろ。人の奜みなんお十人十色だ。目玉焌きに䜕かけたっお文句蚀われる筋合いは䜕もない。じゃあ酒の飲み方だっお個人の自由でいいず思わないか。䟋えば俺は今、この酒を金出しお買っおいる。倧袈裟な蚀い方をすれば、この酒のオヌナヌだ。俺がこの酒をストレヌトで飲もうが䜕だろうが自由だず思わないか」
 確かに靖史の蚀葉には説埗力があるず思う。さらに靖史は続けた。
「それに察しお正しい飲み方はどうだずか蚀う奎が、俺に蚀わせれば間違っおいるんだ。そい぀がその勘定を持぀っお蚀うならただいい。でも自分の金で飲んでいるのに、そんな䞍愉快な事、蚀われたらムカ぀くだろ」
「そ、そうだね」
「そんなの自分の奜きなスタむルをただ吊定されただけの話だ。文句だけだったら、誰だっお蚀えるんだよ。口先だけなら簡単だよ。人をただ吊定するだけでも簡単。でも俺に蚀わせりゃ、そんな奎はクズ野郎だ」
「す、すごいな、靖史は。た、たさに正論だず思うよ」
 ちょっずずる賢いずころはあるにせよ、靖史は劙に青臭いずころがある。い぀もはスマヌトに生きおいるけど、人間は本来ピュアな生き物なのだ。ただ、呚りの環境や生き方によっおドンドン圱響を受けお巊右されおしたうものなのだ。
「俺は酒が奜きだから、真面目にこだわっおいるだけなんだ」
「う、うん」
「勝男、よくスコッチずバヌボンっお蚀うけど、蚀い方が比䟋しおいるず思うか」
「た、倚分ね。が、僕はりむスキヌは飲たないから、よ、よく分からないけど  」
「りむスキヌの五倧生産囜っおいうのがあっおね。もちろん俺達の日本も入っおいる。あずはアメリカが䜜るアメリカンりむスキヌ。カナダが䜜るカナディアンりむスキヌ。アむルランドが䜜るアむリッシュりむスキヌ。スコットランドが䜜るスコッチりむスキヌ」
「ス、スコットランドが䜜るりむスキヌだからスコッチっお蚀うの」
「そうなんだよ。そのスコッチを倧別するずモルト、グレヌン、ブレンデットの䞉぀に分かれる。アメリカンりむスキヌだっおラむ、コヌン、バヌボンっお具合に色々ず分かれるんだよ。みんなバヌボンずスコッチっお蚀うだろ 正匏な蚀い方をしたらバヌボンずモルトっおいう蚀い方が俺は正しいず思うんだ。ただ飲んでいる時にそんなこず蚀っおも、぀たらないし、癜けるだろ だから別にいちいち蚀わないだけだけどな」
 充分に熱くなっおいるよず蚀いたかったが止めおおいた。誰に 、䜕に察しお蚀っおいるのかは分からないが、少なくおも僕に文句を蚀っおいる蚳じゃないのだから  。
「み、氎みたいのは䜕で぀いおくるの」
「チェむサヌっお聞いたこずあるだろ カヌチェむスの語源から来たず蚀われおいる。埌を远いかける意味だね。たヌ、酒の埌を远いかける氎っお蚀っおも分からないか」
「い、いや、な、䜕ずなく分かる気がするよ。す、すごいね、や、靖史は」
「偉そうに蚀っおいるが、い぀も行き぀けのバヌのマスタヌの受け売りなんだ」
「ぞえ、そ、そうなんだ。す、すごいね、そ、そのマスタヌっお」
「話が脱線し過ぎだ。 で、そのむ぀きのでっぱりを觊ったのか」
 僕は今日、仕事終わっおからの様子をちゃんず説明する事にした。
 もちろん、圌女が金の件で、靖史ずむ぀きのどっちを取るのかっお蚀われ、僕が䞀瞬だけでも靖史を裏切ろうずした事だけは、どんなに口が裂けおも蚀えないけど  。
 
 ひず通り、勝男の話を聞き終える。俺の勘は最初のマンションで鳎戞をかわしただけで、あずの勝男ずむ぀きの行動は、自分の勝手な勘違いで考え過ぎだったのも分かった。
 ドッず疲れが出る。たあ、ダンボヌルの金も戻っおきたし、良しずするか  。
「よろしかったら、和牛ヒレ肉の黒コショり焌きなんですけど、これサヌビスなんで、食べお䞋さいよ」
 江島が色々ずサヌビスしお俺を気遣っおくれおいる。さっき地䞋䞀階のロビヌラりンゞで匷匕に枡した五䞇が効いおいるのか。いや、江島はそんな金を枡さなくおも同じ事をしおいるだろう。
 二日前ず同じようなシチュ゚ヌション。
 どうしおも、赀厎ずここに来た時の事を思い出しおしたう。
 俺ず赀厎がここで酒を飲み、江島が色々ずサヌビスをしおくれる。
「赀厎さん、グラス、空ですよ。䜕か頌みたす」
「ん、えヌずれすねヌ  」
 ろれ぀の回らない赀厎。もう䞀息だ。
「カクテルの王様、マティヌニにしたしょうか」
「ふぁい  」
 運ばれおきたマティヌニを䞀気に飲み干す赀厎。頭の䞭がグルグル回っおいるのだろう。
「はい、赀厎さん。今床はです」
「ふぁい  」
 いい感じで酔っおいる赀厎。この男に抱かれおみたい。俺の捻じ曲がった欲望がどんどん膚れ䞊がっおいく。
「ここ、暑いれすねヌ。れも、気分ちゃいこうれすよ」
 駄目だ、もう我慢できない。
「こんな倜景だけど、綺麗に芋えたすよね」
 焊った俺は、赀厎の巊手の䞊に右手を乗せた。
「䜕ですか、いきなり  」
 拒絶しお手を匕っ蟌める赀厎。䞀気に酔いも吹っ飛んだ感じに芋える。
「あれ、赀厎さん、やっぱりノヌマルなんですか うヌん、残念だなヌ」
「あ、あのヌ  、䜕かの冗談ですよね  」
「本気っお蚀ったらどうしたすか」
 もうよせ。今なら冗談で枈む。それなのに俺はずたらなかった。
「あ、あの  」
「どうしたんですか」
「やめおください  」
 声を振り絞るように蚀う赀厎。嫌がる玠振りも男らしく芋えた。
「いやヌ、拒たれちゃしょうがないですよねヌ。最初芋た時から、男らしくおいいなっお思ったんですけどね。あっ、もちろん自分、女だっお奜きですよ。ただね、赀厎さん 。男にくわえおもらったこずっおありたす」
 䜕を蚀っおいるんだ、俺は  。
「あ、ある蚳ないに決たっおんじゃないですか」
「結構ずいうか、かなりいいもんですよ。自分は無理にずは蚀わないですけど、男のツボは男のほうが絶察に分かりたすっお 。どうですか、詊しおみたせんか」
「す、すいたせん。俺、圌女いたすし  」
「黙っおれば分かりたせんお  」
 俺は粟䞀杯埮笑んだ。
「トむレ行っおきたす」
 赀厎は完党に俺を拒吊しおトむレぞ行った。そうなるのは分かっおいたが、やはりショックだった。衚情に出さないようにしたが、赀厎の顔を芋おいるず堪らなくなる。拒絶されるのを分かっおいながら、远い蚎ちを掛けるように話し掛けおしたい、さらに自分で墓穎を掘っおしたった。赀厎の目は、明らかに俺を薄気味悪いホモ野郎ず語っおいた  。
 もっず酔わせおからにすれば、あの時  。
「ど、どうしたの、靖史」
 黙っお赀厎ずの事を思い出しおいたのが、勝男には気になったらしい。こっちを心配そうに芋おいる。たさか俺が奜きな男の事を考えおいたなんお蚀える蚳がない。
「いや、ちょっず考え事をしおいただけだ。それにしおも、む぀きっお女。俺の金を盗ろうずしやがっお  」
「あ、あの堎に行っおも靖史が隠れお出おこないからだよ。そ、それでむ぀きちゃんむラむラしおいたんだよ」
「たあいいか。金も無事手元に戻っおきたしな」
「あ、あの芋かけはサラリヌマンみたいだけど、ダ、ダクザみたいな鳎戞っお蚀ったっけあ、あれに䌚った時は怖かったよ、ほ、ほんず  」
「普通じゃないからな、鳎戞は」
 あの特城のある甲高い声。以前は恐れたが、もう俺には関係のない人間だ。
「ほんず悪かったな、勝男。おたえがいなかったら絶䜓絶呜だったよ。これお瀌代わりに受け取っおくれよ」
 俺はダンボヌルの䞭から札束を䞀぀掎み、勝男に枡す。
「えヌ、も、もらい過ぎだよ。こ、これだいたい 、い、いくらあるの」
「癟䞇だ」
「そ、そんなにもらえないよ」
「ずっずいおくれ。どっちみち、あのマンションには、おたえだっお䜏みたくないだろたたにあのダクザみたいな鳎戞がチェックしに来るかもしれないんだぞ。新しいずこ借りんだっお金は必芁だぞ」
 勝男は、鳎戞ず今日初めお接觊しただけなのに、その名前を聞くずブルブル震えだす。よほど怖かったのだろう。これで俺の持ち金は二千䞇円をきったけど、そのぐらいどうでも良かった。
「俺は明日になったら携垯番号を倉えるから、そしたら勝男に教えるよ」
「な、䜕でわざわざ倉える必芁があるの」
「鳎戞のク゜野郎が、俺の番号知っおるじゃないか。ああいうタむプはし぀こいんだよ。ちょっずした隙も芋逃さない奎だからな」
「じゃ、じゃヌしょうがないね。が、僕も靖史の立堎だったらきっず倉えおるよ」
「俺も慣れ芪しんだ番号倉えるの、ほんずは嫌だけどな。たあ、明日になったらすぐにでも倉えに行っおくる぀もりだ」
 俺の抜きが芋぀かったのは今日。鳎戞に有無を蚀わさずボコボコにされた。無抵抗の人間の顔面に、思い切り぀た先で蹎りができる男なんお、鳎戞ぐらいだろう。
「ようやく気付いたんだよ。岩厎ヌ」
 今でも鮮明に芚えおいる。あの時の鳎戞は衚情自䜓倉わっおいないのに、声だけがい぀も以䞊に迫力があった。聞いおいるだけで身がすくんだ。
「立およ。どのくらい抜いおいたんだ、あっ 立およ」
 たたもあごに思いきり蹎りを入れられる。俺の顔が䞀瞬だけ䞊を向き、真正面の壁にあるボヌドの䞋蟺りたで、鮮血が飛び散った。
「立およヌ、おいっ 私は立ちなさいず蚀っおるんですよ」
 あの時䞀緒にいた赀厎は、蚀葉を倱い怯えおいた。
「赀厎ヌ。おたえは、岩厎から金をもらっおいたのですかヌ」
 鳎戞の怒りは赀先たで及びそうだった。こんな状況でも俺は、赀厎を守りたかった。抜きが芋぀かったのは俺だけ。圌たで巻き添えにしたくない。心の底からそう思えた。
 だから俺は癜い歯を䞀瞬だけ芋せ、無理しおりむンクをした。絶察に自分の口から蚀っちゃいけないずいうれスチャヌの぀もりで  。
「赀厎ヌ、私の蚀っおるこずが聞こえないんですかヌ」
「い 、いえ  」
「本圓ですね」
「は、はいっ」
「じゃヌ、今日はもう垰っおいいですよ」
 そう蚀っお今日のでずらを枡す鳎戞。
「よし、確かに枡したぞ。じゃヌ、明日十時な。お疲れさた」 
 垰る際、赀厎は俺のほうをゞッず芋぀めおいた。それでいいんだ。君が無事ならそれで 。俺はそんな事を思いながらニダリず笑った。
 明日十時ず鳎戞は蚀っおいたが、赀厎はただあの『ダヌクネス』に出勀するのだろうかそしおちょっずは俺の事を心配しおくれおいるだろうか あの店の最埌で、赀厎をかばえた事に関しおだけは、自分を誇りたい。
 それにしおも鳎戞の野郎、俺をこんなアザだらけにしやがっお  。
 い぀の間にか俺は、『ダヌクネス』での最埌を思い出しおいた。
 
 今日の靖史はちょっず倉だ。僕ず䞀緒に話しおいるのに、どこかうわの空。倚分、鳎戞に散々殎られたのを思い出しムカ぀いおいるのだろう。顔だっおアザだらけ。今たで僕ず䞀緒に䜏んで堎所も、もう垰れない。ムカ぀くのもしょうがない。
 片手に酒を持ちながら䞀点を睚み぀ける靖史。僕はそっずしおおく事にした。
 新宿プリンスホテル最䞊階の『シャトレヌヌ』は、いい感じで賑わっおいる。僕はこんな雰囲気も倧奜きだった。靖史の教えおくれた『グラスホッパヌ』は、䜕床でも飲みたくなるぐらいおいしい。む぀きはただぐっすり寝おいるかな
「ん」
 入口の方向を芋た時、先ほど廊䞋で激しい口論をしおいたバッティングセンタヌの銬鹿カップルが入っおくるずころだった。
「あ、あれ芋およ。さ、さっきの 」
 思わず僕は靖史ぞ声を掛けおいた。
「ん、どうした」
「い、入口芋お」
 僕はその方向ぞ指を差しながら蚀った。
「私ねヌ、絶察にひろゆきが電話くれるず思っおいたんだ」
「俺も぀い感情的になっちたっお悪かったよ。郚屋に行っおから、ずっず反省しおいたんだよ」
 銬鹿なカップルの䌚話の声は非垞に倧きい。ここにいおもよく聞こえた。今回もたた䜕かしでかしそうな気配は充分にある。狙っおじゃなく、倩然でやっおいるのが䜙蚈に質悪い。芋おいる分には非垞に退屈しないで枈むのけど  。
「おい、勝男。ひょっずしおあれっお  」
 靖史が聞いおくる。
「さ、さっきの、お、男だよね 僕、今日、さっき以倖でも芋たような気が  」
「バッティングセンタヌでだろ」
「そ、そうそう」
「芋おいる分には面癜いぜ、勝男」
 僕ず靖史は二垭先にある垭に座っお楜しそうにする銬鹿カップルをゆっくり芋物する事にした。
「ねぇ 、ひろゆき」
「なんだい」
「お誕生日おめでずう  」
「ありがずうな、ほんず  」
「ううん  」
「俺が銬鹿だったよ」
「ううん、私の方が銬鹿よ」
 圌女の目がりルりルしおいた。ひろゆきの肩に頭を乗せ甘えた衚情をしおいる。ひろゆきも、圌女の髪の匂いを嗅いでいるらしく、錻の穎が倧きく膚らんでいる。ずおもマヌケな衚情だ。銬鹿カップルの二人の目ず目が合わさる。たさかこんな堎所でもお構いなしに、おっぱじめるのだろうか  。
「ひろゆき  」
「ああ、愛しおるよ」
 人目を䞀切気にしない芋事な䌚話。聞いおいおこっちが恥ずかしくなる。だんだんずお互いの顔が近付いおいく。
「す、すごいね  」
「ああ 、ある意味、すご過ぎる」
 ずうずうラりンゞの䞭だずいうのに、銬鹿カップルは垭を立ち䞊がっお、ド掟手に濃厚なキスをしだした。呚囲の客が埐々に銬鹿カップルに泚目しおいく。二人は蟺りの様子などたったく芖界に入っおいない様子で、自分たちの䞖界にドップリず入っおいる。長い 、長いキスだった。僕たちの隣のテヌブルの客が拍手をしだす。他の垭からも拍手が聞こえだし、シャトレヌヌにいる客の倧半が拍手を銬鹿カップルに送っおいた。コンサヌトに来たような盛倧な拍手だ。もちろん僕は拍手などしないが、靖史たで笑顔で拍手を送っおいる。
 ホテルマンの江島が僕たちの垭に向かっおきた。
「すごい賑わい方ですよね」
「いやヌ、参っおしたいたすよ。䞀応ここはホテルのラりンゞなので  」
「ああたで盛り䞊がっおは、泚意すら行けないですよね。お気持ち察したすよ」
「私も仕事じゃなければ、笑いながら拍手しおいたすけどね」
「江島さん、すいたせんね、今日も色々気を䜿わせおしたったみたいで  」
「いえいえ、䜕を蚀っおるんですか。お互い様ですよ」
「実は私、今日で『ダヌクネス』を蟞めおしたったのですよ」
「えっ 䜕でたた  」
「オヌナヌずトラブっおしたいたしおね」
「じゃ、じゃあ、その顔のアザは  」
「ご想像の通りです」
「裏皌業っお、おっかない䞖界なんですね」
「でもなかなか面癜いもんですよ。あっ、そうそう、江島さん。今日このたたここに泊たりたいんで、郚屋を䞀぀頌みたいんですよ。いいですか」
「そんな事、い぀だっお任せお䞋さい。いい郚屋おずりたすから」
「すいたせんね」
 僕は黙っお二人の䌚話を聞いおいた。
 拍手の勢いが萜ちおきたので、暪目で銬鹿カップルのほうを芋るずただキスをしおいる。よくもたあ、あそこたでできるものだ。ずおも僕には無理な芞圓だ。ラりンゞにいる客もあたりにも長過ぎるキスにうんざりしおきおいる様子だった。
「では、そろそろ垭に戻りたすね」
「お腹倧䞈倫ですか 䜕かお持ちしたしょうか」
「いえいえ、もうその気持ちだけで充分ですよ」
 僕は和牛ヒレ肉の黒コショり焌きをがっ぀いお食べだした。
「どうだ、うたいか」
「う、うん。で、でも 、す、すごいな靖史は  」
「䜕がだ」
「み、店でも店長をやっお、こういうホテルのラりンゞに来おも、ホテルマンが靖史に気を䜿っおくれる。か、金だっおある。じ、地元の頃よりも栌段にレベルアップしおいる。じ、地元にいる神嚁や深沢ずかも、い、今の靖史芋たらきっず感心するず思うよ」
「神嚁か 。もう随分ず懐かしい名前だな。もし、あい぀らに䌚ったずしおも、感心なんおないさ。特に神嚁みたいな奎は、俺の事を軜蔑するさ。もう店長じゃないし、たたたたこのホテルに知り合いがいたっおだけだ。金だっお店の金を抜いお貯めおだけ。結局はバレおこのザマだ」
 そう蚀っお靖史は、右手の人差し指で顔に向けおクルクル回す。僕はそれを芋お笑った。さすがにそろそろ眠くなっおきた。時蚈を芋るず十二時十分前だった。
「じゃヌ、勝男。そろそろ出ようか。おたえだっお郚屋に垰っお、女が起きおたら面倒なんじゃないのか」
「そ、そうだね。む、む぀きちゃんが起きた時に、が、僕が郚屋にいないず確かにそうだよね」
「ここの䌚蚈は俺が払うから、もういいぞ」
「さ、さっき癟䞇も貰っずいお、そ、そんな蚳にはいかないよ」
「いいよ、実際に勝男に迷惑掛けた事には倉わらない」
「で、でも  」
「気持ちだけ受け取っおおくよ」
「あ、ありがずうな、や、靖史。お、お蚀葉に甘える事にするよ」
「これでも勝男には感謝しおんだぜ」
 出口に向かっお歩いおいくず、キャッシャヌには江島がニコニコしながら立っおいた。
 二人で゚レベヌタヌに乗り蟌む。ホテルのラりンゞの䌚蚈があんなに安いずは、ビックリした。でも、もちろん靖史の顔が利いおいるからだろうけど。
「あ、あれだけ飲んで食べお、な、䜕で五千円なの」
「向こうが気を遣っおくれたんだろ」
「す、すごいよなヌ、靖史は  」
「䜕床も同じこず蚀うなよ。たたたた俺は運気が人より、ちょっず良かっただけの話だよ。党然ビックリする事じゃない」
「い、いやヌ、じゅ、充分にすごいっお  」
「お、お酒たでお土産にくれたじゃない」
「今日はちょっずした魔法を掛けずいたからな」
「え、な、䜕それ」
「冗談だよ。冗談 。いちいちそう真剣にずるなよ。そろそろ二十䞀階に着くぞ」
「あ 、そ、そうだね」
「ほら、もうドア開くぞ。じゃヌな、おやすみ」
「お、おやすみ」
 ゚レベヌタヌで二十䞀階に着く。靖史はそのたた゚レベヌタヌに乗り、䞋に降りお行った。靖史のずった郚屋は僕たちの階より、もうちょっず䞋の階らしかった。
「む、む぀きちゃん怒るかな  」
 恐る恐る郚屋ぞ戻る。ドアを開けるず郚屋の薄暗さは倉わらない。足音をできるだけたおないように静かに歩く。
 ベッドを芋るず、ただむ぀きは熟睡しおいた。僕はホッず胞を撫で䞋ろす。出おいった時ず違うのは、お金の入ったダンボヌルが無い事だけだった。
 僕は服を脱いで圌女のいるベッドに朜り蟌んだ。む぀きの䜓枩を肌で感じながら幞せを感じる。暪で熟睡しおいる圌女を芋おいるずやはり興奮しおきた。たた寝おいるずころを襲い掛かったら、絶察に怒りそうなので我慢する事にする。出来る限り真っ癜な倩井を芋るようにした。もずもずお酒が匷いほうじゃない僕はすぐに眠くなる。
「うヌん  」
 む぀きちゃんが寝返りを打぀。぀い、性欲に目が眩み、芖線を持っおいきそうになるが、懞呜に我慢した。
「眠るんだ 。早く眠るんだ  」
 心の䞭で呪文を唱えるように繰り返した。
 睡魔ず興奮が僕の頭の䞭で、互角の闘いを繰り広げおいた。今だけは睡魔を応揎しないず  。
 
 江島が甚意しおくれた郚屋は䞀人にしおは、なかなかの広さがあった。テレビを぀けおチャンネルを回しお芋るが、ロクな番組がやっおないので消す。リモコンをテヌブルに攟り投げおベッドぞ暪になった。
 しばらくここに滞圚しおゆっくりしよう。ここ䞀幎ほど䌑みもずっおいなかったし、もう無職になったんだから  。
 ゆっくり時間をかけお目を閉じる。アルコヌルを飲んだせいか、傷の痛みを感じない。このたた眠っおいる内に、この痛みがなくなっおしたえばいいのにな。
 そんな、郜合いい事を考えおしたう。
 今、俺は完党な孀独の空間にいる。仕事に行けば、もちろん人はいたし、郚屋に垰っおも勝男ずの共同生掻で、自分䞀人だけずいう時間が考えおみるずあたりなかった。たたにはこういう静寂な䜕もしないでいい空間ずいうのもいいもんだ。
 シャトレヌヌでチェック枈たした際、江島が「良かったらどうぞ」ずプレれントしおくれたグレンリベット十二幎のボトルを開ける。ショットグラスはさすがに郚屋に無いので、そのたた口に぀けラッパ飲みをした。
 喉にグッず䞀気にくるこの感芚。やはりチェむサヌも必芁だな。
 千円札䞀枚ず小銭を適圓に぀かみ、空のアむスペヌルを持っお郚屋をあずにした。
 確か゚レベヌタヌのずころに自動販売機があったな。おっず、カヌドキヌを忘れないようにしないず  。
 倜䞭なので通路を歩いおいおも誰にも䌚わない。静かなものだった。
 ゚レベヌタヌのずころに着くず、自動販売機が䞊んでいる。プリンスは各階によっお自動販売機の皮類も埮劙に違っお蚭眮しおいるようだ。ゞュヌスの販売機はどの階も眮いおあるが、俺の郚屋の階は冷凍食品だろうけど食べ物の販売機もあった。どうせ郚屋で酒を飲むのだからポテトず焌きおにぎりを買う事にする。
 䞀぀䞀぀の出おくるたでの時間が掛かるのがこの自動販売機の欠点だが、䞭で解凍しおいるのだから我慢するしかないだろう。
 チェむサヌ代わりに烏韍茶ず、朝起きた時甚ずしお猶コヌヒヌも買っおおく。補氷機に空のアむスペヌルを入れ、氷のボタンを抌す。ガラガラず音を立おながら、平べったい氷が空のアむスペヌルを埋めおいく。
「ピッ、ピッ、ピヌッ」
 食べ物の販売機のブザヌが鳎る。どうやらポテトができたようだ。取り出そうずしお玙補の容噚に觊れた瞬間、思わず手を匕っ蟌めおしたう。
「アチッ」
 結構な熱さだった。少しばかり自動販売機の加熱力を䟮っおいた。ちょっず経っおから玙補の容噚を取り出す事にする。続いお焌きおにぎりのボタンを抌した。
 ただ自動販売機で物を買うずいうだけの行為が、ずおも新鮮に感じる。毎日毎日ゲヌム屋で䌑みなしに働き、店の売り䞊げから金を誀魔化しお抜くだけの生掻。そんな事を繰り返しおいたから、俺の心は埐々に汚しおいったのだろう。
 そんな汚れた日垞の䞭に突劂入っおきた赀厎。顔や䜓などの倖芋的なものに惹かれたのも事実だが、初めお芋た時にそれ以倖の䜕かを感じた。今たでの埓業員に比べるず、぀い赀厎には芪切に優しくしおしたう自分がいた。赀厎ず出䌚った時に感じた䜕かずは、倚分、圌の真っ盎ぐな青臭さい郚分に察し、䞀気に惹かれたのだろう。そんな赀厎に抱かれおみたかった。逆に抱いおもみたかった。誰にも盞談できない自分だけの秘密だった。
 明らかに今の俺は金に狂っおいる。金がすべおだず思いたい。しかし赀厎の顔を想像するず、金だけじゃ割り切れない䜕かを感じた。あの男の青臭さが、少しは俺にも䌝染したのかもしれない。
「ピッ、ピッ、ピヌッ」
 焌きおにぎりができたようだ。
 それらを手で持おるぐらいの熱に冷めるたで、タバコを吞っお時間を朰した。
 郚屋に垰るず、テヌブルに買った物を眮く。明日の仕事を気にせずに、郚屋で萜ち着いお酒を飲むずいう幞せ。明日は朝になったら携垯の番号を倉えに行っお、たたこの郚屋に戻り、いくらでもゆっくりすればいいだけだ。
 俺が今しおいる事は莅沢になるのだろうか。ここで䜕日か泊たっおも俺の持ち金はそんなに枛らない。酒を飲む環境を敎え、俺はたたグレンリベットを飲みだした。
 時蚈を芋るず倜の䞀時を過ぎおいる。
 そういえば俺が店でこんな颚になり赀厎はあの堎で垰されたが、『ダヌクネス』はどうなるのだろうか 遅番の時間で働く新堂ず田䞭は、今の時間なら店で働いおいるはず  。
 俺の抜きがバレお鳎戞が怒り、あんな事になっお店のは今、営業しおいるのだろうか
 気になるず非垞に気になりだすものだ。たあ、もう蟞めたんだし店の事はどうでもいい。アルコヌルの酔いが回り、いい感じに気持ち良くなっおいる。
 たた赀厎の事を考えおしたう。
 今、赀厎に連絡しおこのホテルにいるけど䞀緒に飲たないかず誘ったずころで、断られるのは目に芋えお分かる。
 盎接俺が赀厎に電話しおも、出おくれなさそうだ。
 赀厎ず新堂は仲がいい。新堂を利甚したら、もしかしお赀厎に䌚えるかもしれない。いや俺がホモだず分かっお拒絶感をあらわにした赀厎が、もう店でも関係ないのに俺に䌚いたいず思うか
 そう考えるず憂鬱になる。
 新堂にずりあえず電話を掛けおみるか  。
 いや、危険かもしれない。
 もし、新堂ず田䞭が今の時間、店で働いおいたずしたら、圓然鳎戞や氎野の䞡オヌナヌは、俺を探す手掛かりに利甚されおいる可胜性は充分にある。
 でも最悪、新堂、田䞭ず鳎戞、氎野が通じおいたずしおも、携垯を掛けるぐらいじゃ、俺がここにいるのは分からないだろう。
 新堂だっお店の金を抜いおいたのは俺も知っおいる。向こうだっお連絡が来たずしお、俺を鳎戞らに売ったら、逆に自分たちだっお危険な事ぐらいは分かるだろう。そうなったも自分たちが店の金を抜いおいたずいう事実が発芚するだけだ。
 俺は携垯を手に取り、新堂の携垯に電話する事にした。
「もしもし、岩厎さんか」
 すぐに新堂は電話に出た。受話噚からはポヌカヌゲヌムの音は聞こえおこない。
「どうも」
 客がいないだけかもしれない。
「倧䞈倫ですか 倜になっお店に行ったら鳎戞さんず氎野さん䞡方いお、岩厎さんの抜きが芋぀かり制裁を加えたっお聞いお  」
「今、店ですか」
「いや、俺ず田䞭も店の金を抜いおいたじゃないですか。䜕か話を聞いおおダバいなっお思い、俺たち遅番も今日で店蟞めるっお蚀ったんですよ」
 新堂の話しぶりを聞いおいるず、嘘ではないず思った。圌は鳎戞ずは通じおない。
「鳎戞ずか怒りたせんでした」
「その前に俺ず田䞭も疑われたんですよ。だからワザず匷気に挔技しお、そんな疑われおたでここで働けないっお 。たあ、ある意味逆ギレですけどね。でも岩厎さん、盞圓やられたっお聞いたんですけど、倧䞈倫なんですか」
「確かに酷かったです。こっ酷くやられはしたしたけどね。でも別に鳎戞は腕力でっおタむプでもないし、そこたでのダメヌゞは残っおないですよ。たあ、散々蹎っ飛ばされたんで、顔はアザだらけですけどね」
「実際酷いですよねヌ。俺もこんな事、蚀っちゃあれですけど、岩厎さんがやられたっお聞いお、こっちの身だっお危ない蚳じゃないですか その状況で俺たちも疑われたんで、それなら自分たちも蟞めたすっお具合で、そのたた蟞めたんですよ」
「そのほうがいいですよ。あんなムチャクチャなオヌナヌの䞋でなんお、やっおられないですよね、実際の話」
 䜕故かすんなり信甚できるのは、新堂の話し方から䜕か䌝わっおくるものがあるからだろう。安心した俺はグレンリベットを口に含む。
「氎野なんお、ただの金の無い乞食ず䞀緒じゃないですか 鳎戞は幎䞭人に嚁圧をかける事だけが生き甲斐のサディスト野郎ですよ」
 新堂も店を蟞めおスッキリしたのか、さっきたで鳎戞ず氎野の䞡オヌナヌをさん付けで呌んでいたのに、今じゃもう呌び捚おだ。しかもク゜ミ゜にけなしおいる。
「盞圓あの二人にストレス溜たっおたんですね」
「特にあの氎野の野郎のセコさ加枛には、実際参りたすからね」
「以前、赀厎さんの話を聞いたこずありたすか」
「䜕かあったんですか」
「俺が鳎戞に呌ばれお倖行っおいる時に、赀厎さんず氎野が店にいたんですよ。それで出前ずろうかっおなったらしいんですよ」
「もしかしお氎野の野郎は、それなのに赀厎君から金をずったずか」
「その通りです。赀厎君、千円だよっお、蚀いながら手を差し出したらしいですよ」
「ほんず、あい぀はチンカス野郎ですね。オヌナヌなんだから、自分の郚䞋に飯食うかず蚀っおおいお、奢りじゃないなんおク゜野郎ですよ。たたにピンクの氎玉暡様の぀いた悪趣味なネクタむなんかしやがっお、『どヌだ、これ家の女房が遞んだアメリカ匏なんだ』っお蚳の分からない自慢するんですよね。ほんず倧銬鹿野郎ですよ」
 新堂は氎野の悪口になるず䞀気に加速する。胡散臭い口髭にパンチパヌマが䌞びたむンチキ臭い顔。そんな男がピンクの氎玉暡様の぀いたネクタむを締めお偉そうに自慢するのを思い浮かべるず、思わず吹き出しおしたう。
「バカ氎野っお䞀応、奥さんがアメリカ人らしいですよ。以前、自慢しおたしたよ」
「ほんずなんですか 初めお聞いた  」
「でも、自分もそのアメリカ人の奥さんの自慢話は散々聞きたしたけど、写真䞀枚も芋おないですからね。英語も党然話せないくせに  」
「絶察に嘘ですよ。アメリカ匏っお蚀葉を䜿えば、きっず栌奜いいずでも思っおいるんですよ。䜕故ピンクのネクタむ締めるのが、アメリカ匏なのか分かりたせんけど」
「いいじゃないですか。自分の䞭じゃ栌奜いいず思わせおおけば。ずおも可愛そうな人なんですから、そのぐらいは枩かい目で芋おあげないず」
 本圓に眠たくなっおきた。そろそろ赀厎を誘い出す為の逌をたかないずいけない。
「新堂さん。今床時間䜜っお赀厎さんず田䞭君も呌んで、みんなで飲みたしょうよ」
「いいですね。倚分、鳎戞ず氎野の悪口倧䌚になりそうですけどね」
 よし食い぀いた。今日はこの蟺で切り䞊げおおこう。
「じゃあ、たた連絡したす」
「岩厎さんもお倧事にしお䞋さいね」
 電話を切り終わるず、ベッドに暪になる。アルコヌルが効いおいた。目を軜く閉じるず、い぀の間にか眠りに匕きずり蟌たれおいった  。
 
 䜕か痛いぞ バシバシ叩かれおいるような  。
「起きなさいよ 勝男」
「いおお  」
「早く起きなさいよ」
 む぀きが、僕の頬っぺたをバシバシず䜕故か叩いおいる。
「な、䜕時なの」
「うるさいわねヌ。さっさず起きなさいよ」
「わ、分かったから叩くの止めおよ」
 䜓が気だるい 、昚日の酒がただ䜓に残っおいるみたいだ。でもむ぀きが䜕故か怒っおいるから、しょうがなく起き䞊がる事にする。
「勝男ヌっ」
「な、䜕だよ 。い、いおっ。や、止めおよ」
「䜕でダンボヌルが無いのよ 䞀䜓どう蚀う事なの ちゃんず説明しなさいよ」
 む぀きは僕が起きたずいうのに、叩くのを止めおくれない。
 昚日あれから靖史ずこのホテルで䌚い、ダンボヌルを返した事を説明した。む぀きも始めのうちは倧人しく聞いおいたが、ダンボヌルを靖史に返した蟺りの説明になるず、みるみる内に顔が般若のように倉わっおいく。さすがに靖史からもらった癟䞇円の事は蚀い出せなかった。
「あんたねヌ、ふざけないでよ」
「だ、だっお 、あ、あれはもずもず靖史のお金だし 。グァッ」
 む぀きの正拳突きをたずもに喰らう。錻血が吹き出した。
「冗談じゃないわよ。もうあんたなんかずは終わりよ」
「ひょ、ひょんなヌ 、ひょ、ひょっず埅っおよ  」
 圌女はプリプリず膚れっ面で、掋服を着替え出しおいる。僕の事などもう県䞭にないずいった感じだ。僕はティッシュを錻の穎に捻り蟌んで、ずりあえず錻血を止めた。
「じゃヌね、さよヌなら  」
「た、埅っおよ。む、む぀きちゃヌん  」
 僕はむ぀きの前に立ち塞がり、進路を阻もずする。む぀きちゃんの衚情が怖い。
「お、萜ち着いお話そうよ。が、僕はむ぀ 、グェッ  」
 容赊なく圌女に金的を蹎飛ばされた。あたりの痛さに僕は悶絶しながら床を転げ回る。
「あのねヌ、あんたふざけんじゃないわよ。勝手にダンボヌル返したりしお 。いくらあったず思っおいるの、あの䞭に 。私、蚀ったでしょ 友達ず私どっちずるのっお。あんたなんかず寝た私が銬鹿だったわ。䌚った時から銬鹿だず思ったけど、ここたで倧銬鹿ずは思いもよらなかった。もう、あんたずはこれっきり二床ず䌚うこずはないでしょう。じゃヌね  」
 バタンッ
 ドアが勢いよく閉たる音がする。僕は金的を蹎られた痛さにで、動こうず思っおも党然動けなかった。
 薄々気付いおはいたんだ。
 む぀きちゃんが䜕故、僕ず䞀緒に行動しお、䜕故僕なんかず寝たのか  。
 すべおはあのダンボヌルの䞭のお金のせいなんだ。
 昚日の倜、勝手に靖史に返した事で、もう僕の存圚はむ぀きちゃんにずっお䞍芁なものになっおしたったんだ。
 床に顔をくっ぀けた情けない栌奜のたた、僕は泣いた。ずおも悲しく、自分自身に察しお情けなく感じた。
 
 意倖ず簡単に番号っお倉えられるもんだな。
 携垯のサヌビスセンタヌに行っお、携垯番号を倉えおきたずころだった。
 歌舞䌎町を歩いお偶然鳎戞ず出くわすのも嫌なので、俺はすぐ新宿プリンスホテルに戻る事にする。
 途䞭酒屋に寄り、奜きなブランデヌやりむスキヌ、぀たみ代わりにチヌズやビヌフゞャヌキヌを倧量に買い蟌み、ホテルぞ向かう。
 郚屋に垰るず、ボトルを綺麗に揃えお䞊べ、぀たみ類は冷蔵庫に入れた。時間を芋るず十䞀時ちょっず前だった。そろそろチェックアりトの時間か。
 備え付けの電話をずり、シャトレヌヌに連絡を入れる。ホテルの埓業員である江島に頌んで、今の郚屋の宿泊日数を延ばす事にした。
 こうしおゆっくりできるのはなかなかいい気分だ。昚日たでならずっくにダヌクネスぞ出勀しおいる時間である。
 赀厎は今日、出勀したのだろうか その蟺が気になるずころだ。
 勝男はあのあず、修矅堎だったろうな  。
 この郚屋を知っおいる蚳でもないし、俺の携垯に電話したずころでもう番号は倉えおあるから通じない。あのむ぀きずかいう女は金が無くなった勝男ず䞀緒にいるようなタマじゃないのは容易に予想できた。
 勝男には酷な事かもしれないが、お詫びの気持ちも蟌めお癟䞇の金を枡した぀もりだ。それで颚俗でもキャバクラでも行っお、いくらでも他の女に慰めおもらえばいい。
 あい぀の事だから、む぀きずかいう女に、そのたた癟䞇を枡しおいおもおかしくないが、どう䜿おうずそれはあい぀の自由だ。
 それにしおも、あのむ぀きずいう女  。
 結構どころじゃない、かなりいい女だった。
 バッティングセンタヌの時䞀床だけ電話で話したが、かなりの曲者だ。性栌はひず癖もふた癖もあっおおこずりそうだが、䞀床抱いちたえば女なんお倧人しくなるもんだ。䞀床は抱いおみたい女だった。
 遠目で二床ほど、バッティングセンタヌの時ず、この新宿プリンスホテルに入る時だけしか芋おいないが、それでも俺がここたで思うずいう事は盞圓いい女だずいう蚌。今頃は、䜕故ダンボヌルが無くなっおいるのか勝男に食っお掛かっおいるだろう。勝男の困る顔が頭に浮かぶ。
 ずっず忙しかったから急に暇になっおも、䜕もやる事が芋぀からない。䞀時の孀独は人間をリラックスさせるが、リラックスしたあずの孀独ずは、非垞に蟛いものである。
 本来俺っお寂しがり屋だったのかな  。
 そう考えるず口元がニダ぀いおくる。金は取り戻したんだ。もう䜕も蚀う事はない。いや、もしここに赀厎がいおくれたら  。
 携垯に手を䌞ばす。赀厎の携垯番号を画面に出すが、思い留たる。携垯を゜ファヌに投げ぀けた。
「出おくれる蚳ねえじゃねヌか」
 俺はハッキリ拒絶されたのだ。あの時だけでいいから綺麗な女に生たれたかった。
 赀厎の蚀った台詞を思い出す。
「す、すいたせん。俺、圌女いたすし  」
 赀厎の口から出た圌女ずいう存圚。名前も顔も知らない赀厎の圌女に嫉劬を芚えた。俺の感芚がおかしいのは充分に分かっおいる。本来俺は、女性的な性栌なのかもしれない。赀厎が普通の神経の持ち䞻で、俺が異垞なだけなのだ。
 さっき買っおきたアルコヌルの䞭から、適圓にボトルを䞀本手に取った。たたたた手にしたのは有名なコニャックのブランデヌ、ヘネシヌのだった。
 さっきの酒屋でブランデヌグラスもショットグラスも買っおある。俺は包装玙に包たれたブランデヌグラスを取り出し、䞁寧に包装玙を倖す。取り出したブランデヌグラスにヘネシヌを泚ぐ。
 冷蔵庫からミネラルりォヌタヌずクリヌムチヌズずクラッカヌを取り出しお、テヌブルの䞊に眮く。ミネラルをグラスに泚ぎ、クリヌムチヌズをクラッカヌに塗る。
 ヘネシヌを口に含みながら、チヌズの乗ったクラッカヌを口に攟り蟌んだ。手軜に䜜れたわりには、なかなかうたい。
 しばらくはここで䜕も考えず、せめお顔のアザが消えるたで、ゆっくりず䌑息をずる事にしよう。
 もう䞀぀クラッカヌを口に攟り蟌むず、俺は颚呂堎に行き、ナニットバスの排氎口の栓を閉めおお湯を溜めた。廊䞋に着おいる服を脱ぎ捚おお裞になる。
 カヌテンを開けお、玠っ裞のたた窓際に立ち、歌舞䌎町の町䞊みを䞊から芋䞋ろす。
 誰も、俺がここに玠っ裞でここにいるのを気付く奎なんおいない。そう思うず劙なざわざわした開攟感が、䜓を支配しお䜕ずもいえない気分になる。
「ざたヌみやがれ、鳎戞の野郎」
 歌舞䌎町の町䞊みに向かっお叫んでみた。
 俺は倉態だったんだ。このような奇劙な行動を明らかに楜しんでいる。
 股間の局郚が興奮でギンギンに勃起しおいた。どこかで誰かが、窓に玠っ裞のたた立っおいる俺を芋おいるかもしれないず思うず、さらに興奮しおくる。
 心地良い快感に包たれながら、俺はしばらく街の光景を芋䞋ろしおいた。
 
 靖史から受け取った癟䞇円の札束を手にずっおみる。癟䞇ずいう金額を生たれお初めお手にしたが、改めお芋るず、こんな薄いものだったんだ。
 む぀きちゃんに去られおしたい、僕にはこの癟䞇円だけが残った。この癟䞇をあげれば、たたむ぀きちゃんが戻っおくるずいうのなら、僕は簡単にこの癟䞇を手攟すだろう。
 僕にずっお、癟䞇の䟡倀はそんなもんだった。
 玄䞀日、ずっず䞀緒にいたむ぀きちゃんは、たったそれだけの時間で僕の心の䞭に倧きく広がり過ぎ、忘れられない存圚になっおしたっおいた。それほど、魅力のある女性だった。
「んっ、䜕だろう」
 ベッドの傍に䞀枚の名刺らしき癜い玙が萜ちおいた。拟い䞊げるず名刺だった。
【性感ヘルス モヌニングぬきっ子 モモ】
 名刺にはそう曞いおある。
 以前にこの郚屋を借りた奎の忘れ物だろう。䞀応あずで受付けに届けおればいいか。名刺をポケットにしたう。
 その時、郚屋にある電話がいきなり鳎りだした。ひょっずしおむ぀きちゃんかもしれない 。
 倧急ぎで受話噚を取る。
「すいたせん、そろそろチェックアりトの時間になりたすが  」
 珟実なんおそんなものだ。自分の郜合いいように物事がうたくいく蚳ではない。
「あのヌ、お客さた」
 時蚈を芋るず十䞀時をちょっず過ぎおいた。
「す、すいたせんでした。す、すぐに出たす  」
 急いで服を着替えお受付に向かう。靖史はただこのホテルのどこかにいるのだろうか。通路を歩きながら考えた。
 急にちょっず手前の郚屋のドアが勢いよく開きだしお、声が聞こえおくる。
「ふざけんなよ、おたえはよヌっ」
「䜕よ、ひろゆきがいけないんでしょヌっ」
 あれは昚日、靖史ず飲んだ䞊のラりンゞで飲んだ時に、熱烈なキスをしお堎内を沞かせたあのカップルの郚屋だった。僕はこのカップルに、䜕かず瞁があるみたいだ。
「もうチェックアりトの時間だろ。䜕、モタモタしおいるんだよ」
「私が着替えようずしたら、いきなりムラムラしたずか蚀っお、襲っお来お着替えさせおくれなかったのは、ひろゆきのほうでしょ」
「セックスが終わっおから、どれだけ着替えに時間掛かっおいるんだよ」
「あのねヌ、男ず女じゃ準備するのに掛かる時間が違うの。髪の毛だっおあんなに激しくするからクシャクシャになっちゃうし、自分だけ出すもん出したらずっずず着替えちゃっお、それで私に早く準備しろだなんおさヌ、ほんず冗談じゃないわよ。そんなにチェックアりトが倧事なの  だいたい、ひろゆきは勝手過ぎるよ」
 そうだ、そうだ。僕もすぐにチェックアりトしないず延長料金取られちゃう。
 このカップルの喧嘩を呑気に芋物しおいる堎合ではない。急いで歩いおカップルの郚屋を通り過ぎようずした時、䜕かが僕の頭にぶ぀かっおきた。
 䜕だ、䜕だ
 地面に転がった物を芋るず、女物の片偎のハむヒヌルだった。
「止めろっお、おいっ」
「ふざけないでよヌっ」
 郚屋から次々に色々な物が飛んでくる。癜い枕に、もう片偎のハむヒヌル、バッグなど様々な物が飛んできた。
 郚屋の入り口で、圌氏のひろゆきは飛んでくる物を巧みにかわしおいるから、僕は溜たったもんじゃない。
 ここにいおは危険だ  。
 駆け足で、その堎から逃げ出すこずにした。
「䜕、さっきからかわしおいるのよ」
「止めろっお  」
「ふざけないでっ よけおないで圓たりなさいよ、ひろゆきっ」
 ゚レベヌタヌのずこに僕が着いおも、カップルの喧嘩の怒鳎り声が聞こえおいた。
 
 どのくらいこうしお歌舞䌎町の町䞊みを玠っ裞で芋䞋ろしおいるだろう。
 ギンギンになった局郚を右手で握り、䞊䞋に激しく動かす。
 歌舞䌎町の町䞊みを芋ながらマスタヌベヌションをする奎なんお、倚分、俺が初めおだろうな。
 赀厎の顔を想い浮かべる。
 自分の想像の䞭だ。奜きにさせおもらう。
 快感が絶頂に届くず、俺の局郚は勢いよく射粟し、粟液が窓に掛かる。
 ゆっくりず垂れ流れる粟液を芋ながら、俺はブランデヌを飲みだした。これじゃたるで粟神異垞者だな  。
 窓を芋ながらニダリず笑っおみた。
 颚呂を芋に行くず、バスタブにはお湯がいい具合に溜たっおいる。そのたた湯船に浞かった。なかなかいい湯加枛だ。
 しばらく目を閉じ、党身をお湯に浞かるようにした。このたたお湯の䞭に溶けるこずができるなら、きっず楜なんだろうな  。
 ん、埅およ。䜕でお湯に溶けるのが楜になるんだ
 思考回路が明らかに狂い出しおいる。俺みたいな人間は䜕の目的もなく暇だず、おかしな方向ぞいっおしたうのかもしれない。
 別に構わないさ、おかしくなったっお  。
 再び俺は、赀厎の事を想い浮かべた。
 たた元気になる局郚。湯船の䞭でマスタヌベヌションを始めた。赀厎ず䞀緒にお颚呂ぞ入れたら、どんなに幞せだろうか。淫らな想像がどんどん膚らむ。
 湯船の䞭で俺は射粟しおいた。
 完党に俺は倉態の領域に入っおいる。
 湯船から出お鏡を芋るず、ちょっずだけ顔のアザがひいおいるように芋えた。
 
 ホテルをチェックアりトしお倖に出る。
 十䞀時を少し過ぎおいたが、受付けの綺麗なお姉さんはサヌビスをしおくれたのか、延長料金を取らなかった。
 たた機䌚があったらここに泊たりに来たいものだ。
 さっきたで僕の暪にむ぀きがいたのが倢のようだった。
 地元から東京に出おきお、初めおプラむベヌトでデヌトした女。
 䞀倜を共に過ごした女。
 僕が䜓隓したのは幻だったのだろうか  。
 いや、違う。
 む぀きの枩もりは、ただ僕の䜓がちゃんず蚘憶しおいる。
「もう、あんたずはこれっきり二床ず䌚うこずはないでしょう。じゃヌね  」
 先ほど蚀われた台詞が、頭の䞭でずっずこだたする。
 道の真ん䞭で、思わず䞡膝を぀きそうになるくらい力が抜けた。
 今日は倜十時から仕事だ。こんな力が入らない状態で仕事に行くのはずおも嫌だった。時蚈を芋るず、ただお昌にもなっおいない。玄十時間もどうやっお時間朰したらいいんだろう
 マンションに垰っおたた寝おもいいが、昚日䌚ったダクザみたいな男ず䌚ったら嫌だ。靖史が蚀っおいた鳎戞ずいう名前の男。ああいう人間ずは二床ず係わり合いになりたくない。
 今僕のポケットには、癟䞇の札束ず財垃に四䞇円のお金があった。どこぞ遊びに行っおもお金が足りないっお事はないが、萜ずしたりする可胜性もある。癟䞇は途䞭で銀行に寄り貯金しおおこう。
 キャッシュディスペンサヌから出おきた残高照䌚の玙を芋るず、貯金残高は癟䞃十䞉䞇円になっおいた。
 ケタが䞀桁増えおいる。数字を芋おいおも、あたり嬉しくないのは䜕故だろう。
 きっずむ぀きが暪にいないからだ。あの時、僕がむ぀きを匷匕に远い駆けたずしおも、拒絶されおおしたいだっただろう。む぀きは僕でなく、あのお金の入ったダンボヌルがあったからこそ、そばにいおくれただけ  。
 䟋えあの堎で靖史にダンボヌルを枡さなくおも、お金が無くなった時点でむ぀きは僕から離れおいくだろう。
 珟実を盎芖するず、あたりいい事がない。寂しいなあ。
 うなだれながら歌舞䌎町を歩いおいるず、いきなり声を掛けられた。
「おにヌさん 。どちらたで行かれるんですか」
 振り返るずポン匕きだった。そんなポン匕きさえ、話し掛けおくれたず嬉しく感じる僕。
「な、䜕かいいずこないですか」
「いっぱいありたすよ。抜きがいいですか」
 抜きなら昚日だけで、む぀き盞手に䜕床も出しおいた。む぀きの䜓を思い出すず、今はどの颚俗に行こうが絶察に満足できないだろう。さすがに性欲が沞いおこない。
「や、やっぱいいです」
「おにヌさん」
 僕はし぀こいポン匕きを無芖しお歩き出す。
 新宿プリンスホテルを出おから、真っ盎ぐ歩くずコマ劇堎に出る。近くにハヌゲンダッツがあるので入る事にした。
 昚日靖史に教えおもらったカクテルのグラスホッパヌを思い出し、チョコミントが無性に食べたくなったのだ。チョコミントをかじるず、昚日飲んだグラスホッパヌの味が脳裏に蘇る。
 アむスを食べながらコマ劇堎の暪を通り過ぎ、぀き蟺りの東通りに出る。近くに喫茶店があったので入る事にした。
 よくゲヌム屋にあるようなポヌカヌゲヌムの台が、テヌブル代わりに眮いおある叀惚けた喫茶店。メニュヌを芋るず、色々なものがあるのでゆっくりず眺めた。
「いらっしゃいっ」
 ドンッっずすごい音がしお、テヌブルに氎を眮かれる。
 ビックリしお䞊を芋るず、倪った無愛想な顔の女性店員がいた。䜕歳ぐらいなのかたったく分からない幎霢䞍詳の女。
 圌女は、䞊から芋䞋ろすような感じで僕をゞッず芋おいた。この店の教育は䞀䜓どうなっおいるのだ
 唖然ずしおしたう僕。グラスから氎が少しこがれ、テヌブルが濡れおいた。
「䜕する」
「はあ」
 店員の蚀葉がよく理解できなかった。喋っおいる発音を聞くず、どうやら日本人ではないみたいだ。アゞア系のどこの囜かは分からないが、その蟺の囜の人だろう。
「䜕する」
 倪った女店員の喋り方は、僕に早くメニュヌを決めろずでも蚀うようにプレッシャヌを䞎えた。
「ハ、ハンバヌグサンド  」
 圧倒されたたた僕が泚文をするず、店員はりンずもスンずも蚀わず無蚀で去っお行った。䜕だかすごい喫茶店だ  。
 しばらく呆然ずしお店員の消えた方向を芋おいた。
 目の前のポヌカヌゲヌムを芋るず、千円札を入れる入り口がある。暇぀ぶしに千円を入れるず、クレゞットが癟になった。䞀応、十円のレヌトみたいだ。
 ベットをマックスで掛けるず五十ベッド。䞀ベットが十円なので、マックスだず五癟円掛かる。千円だず二回しかできない。癟ベット分しかないので、ベット数を二十にしおプレむする。五回プレむしお䜕の圹も出ず、千円は台に溶けた。
「お埅ち」
 ドカッず目の前にハンバヌグサンドを眮かれる。氎の時ず䞀緒で眮き方が非垞に荒い。眮いた時の衝撃で、ハンバヌグサンドの圢が酷く厩れおいた。店員はハンバヌグサンドを眮くずすぐに、その堎から去っお行く。
 料理を芋おみるず、芋栄えがいいずは蚀えない。いやハッキリ蚀っお酷かった。
 真ん䞞の手䜜り颚の小さいハンバヌグが、䞀応、圢的にはパンに挟んであるのだが、挟む食パンのミミは切っおいない。パンずパンの間に䞞い小さなハンバヌグを入れ、真ん䞭からただぶった切っただけなのである  。
 レタスもキャベツも䜕も無い䞍恰奜なハンバヌグサンドだった。
 倧䞈倫なのか、こんなものを食べおも  。恐る恐る口に運ぶ。
「ん、う、うたい」
 芋栄えずは裏腹に味はおいしかった。
 店員の態床もすご過ぎお、頭に来るずかじゃなく、逆に面癜くおこの喫茶店を気に入っおしたったようだ。
 本棚には無造䜜に汚くなった雑誌が積み重ねられおいる。僕は暇を぀ぶす為、適圓に䜕冊かの雑誌を手に取り読み始めた。䞉冊目の雑誌を読んでいるず、喉の枇きを芚える。氎も飲んでしたい、䜕も飲み物がないので店員を呌んだ。
「す、すいたせヌん」
 倪った店員がノ゜ノ゜ず近寄っおくる。
「なに」
 盞倉わらずこのぶっきら棒な喋り方にはビックリするが、気にせず泚文をする。
「ア、アむスコヌヒヌを䞀぀」
「あい」
 今床は䞀応返事をしおくれたみたいだ。
 心なしか嬉しく思う僕は倉なのだろうか  。
 この面癜い喫茶店を誰かに教えたかった。
 そうだ 、靖史ならきっず暇しおいるだろう。電話を掛けおみた。
「お客さたのお掛けになった電話番号は珟圚䜿甚されおいたせん」
 機械的なアナりンスが話しおいる。もう携垯番号の倉曎を枈たせおしたったんだな。たあ靖史の事だから、向こうからたた連絡あるか。
 
 ヘネシヌのボトルを空けお、ベッドに暪になる。
 倩井がグルングルン回っおいるように芋えた。盞圓酔っ払ったみたいだ。
 時蚈を芋ようずしおもグルグル回っおいるので、䜕時なのかすら分からない状態だ。気持ち悪い 、吐き気を催す。
 立ち䞊がりトむレに行こうずするがフラフラしおしたい、あちこち壁に䜓をぶ぀ける。やっずの思いでトむレに蟿り着き、䟿噚に屈み蟌んで䞀気に汚物をぶちたけた。
 結構胃の䞭のものを出した぀もりだが、ただ気持ち悪い。俺は右手の指を喉の奥に突っ蟌み、さらに吐き続けた。
 完党に飲み過ぎだ  。
 出すものをすべお吐き出し、ペロペロしながらベッドぞ倒れ蟌む。
 顔のアザが垃団に擊れお、少し痛みを感じた。
「赀厎やらせろヌ、この野郎。くわえさせろ、この野郎。ちくしょう」
 蚀葉に出しおみるず案倖スッキリするものだ。
 俺はベッドに突っ䌏したたた、い぀の間にか深い眠りに萜ちおいた  。
 
 すごい喫茶店を出お、コマ劇堎ぞ向かっお歩き出す。立ち食いそばのずころを巊に曲がるずセントラル通りだ。
 この角にある立ち食いそばの䞉色セットはお金が無い頃、結構お䞖話になった。焌きそば、倩婊矅うどん、かやくご飯の䞉点で䞉色セットずいう、すごい組み合わせのずころである。すべお䞻食でなりたっおいる恐るべきセット。
 男は結構奜んで食べるが、女でこの䞉色セットを食べる子が過去いたのだろうか 䞀床、店員に聞いおみたいものだ。
「ちょっずお茶でもどヌですか」
 立ち食いそばを巊に曲がっおセントラル通りに出るず、聞き芚えのある甲高い声が聞こえおくる。぀い僕は、声のほうを向いおしたう。
「お茶でもどヌですかず、私は蚀ったんですよヌ」
「は、はい」
「じゃヌ、行きたしょう」
 慌おお携垯を掛けおいるフリをしお、埌ろを振り向く。
 口から心臓が飛び出そうな勢いだった。
 癜のロングコヌトを着たあの男。マンションで䌚ったあのダクザみたいな男が、セントラル通りにいた。靖史が確か鳎戞ずか蚀っおいた男だ。
 僕ず同䞖代ぐらいのたあたあガタむのいい男が、鳎戞のあずを黙っお぀いお行く。その男の衚情は、暗く青ざめおいるのが分かる。
 鳎戞に気付かれないように、そのたたやり過ごした。
 昚日む぀きずマンションを出お、タクシヌに乗った時の恐怖が蘇る。タクシヌの窓から芋䞋ろした冷培な県光は、ただ鮮明に芚えおいる。
 こんなのに远われおいたら、靖史だっお嫌になるだろう。
 鳎戞ずガタむのいい男がどこぞ行くのか、ちょっず気になった。あずを぀けるのはずおも怖いが、靖史も萜ち着いたら僕に連絡しおくるだろうし、少しでも情報はあったほうがいいだろう。
 鳎戞が近くの喫茶店に入るのを芋届ける。
 さすがに僕が入っお鳎戞に気付かれるのも嫌なので、倖から様子を䌺う事にした。鳎戞がりェむトレスに䜕かを蚀っおいる。怯えたようにりェむトレスは去っお行く。どうやらあの男は、女にも容赊がないようだ。
 あの時、タクシヌぞ乗る前に捕たらなくお本圓に良かったず思う。
 しばらく鳎戞が䜕か蚀っおいたが、男はいきなり立ち䞊がり、き然ずした態床で鳎戞に䜕かを蚀っおいた。
 珍しく鳎戞がビックリしたような顔をしお、その男を芋おいる。男はやがお垭を離れ、喫茶店を出おきた。
 喫茶店から出た男の顔はさっきのき然ずした時の衚情ずはえらい違いで、すべおの゚ネルギヌを䜿い果たしたような衚情に倉わっおいる。しばらくその男を芋おいたが、西歊新宿駅の方向ぞ向かっお歩いおいき、人混みの䞭ぞ消えおいく。
 あの男の消えた人混みをボヌっず眺めおいるず、鳎戞の甲高い声が聞こえおきた。
「氎野さんですか。今、赀厎に偶然䌚っお話したんですけど、やっぱり意思は固いようで、いくら説埗しおも駄目でしたよ。ええ 。はい、はい 。もうしょうがないですね。店はリニュヌアルしお、来幎にオヌプンっお圢をずるしかないでしょうね。えっ 氎野さん 。今、埓業員がいないんだからしょうがないでしょ ええ、そうです。私は埓業員がいないから無理だっお蚀っおじゃないですかヌ。ええ 。違うでしょヌっ あのねヌ、氎野さん、あんたも本圓に分からない人ですねヌ。だいたい  」
 い぀の間にか鳎戞も喫茶店から出おきお、倖で誰かず話しおいる。
 䜕の䌚話かは分からないが、通行人の䜕人かはその甲高い声に反応しお鳎戞を芋おいる。ただただ話は続きそうだったので、僕はその堎から離れる事にした。これ以䞊、鳎戞ず関わるのはもう嫌だ。
 少し歩き振り返っお芋るず、鳎戞の埌ろ姿が芋える。
 自然ず僕の芖線は、鳎戞の埌頭郚に行っおしたう。
 あい぀のでっぱりは、䞀䜓どうなっおいるんだろう  。
 欲望がざわめきだす。
 ダバむ、さすがにそれはダバむだろっお  。
「キニナルンダロッ デッパリキニナンダロッ ガマンシナむデ、サワッチマ゚ペ」
 ざら぀いた声が聞こえだす。
 確かにあの男のでっぱりはどうなっおいるんだろう
 欲望に逆らえない  。
 勝手に足が鳎戞の埌ろ姿に向かっお歩き出した。僕の意思ずは無関係に右手が動き出す。ほんずに止めおくれっお、頌むから  。
 鳎戞ずの距離はドンドン近付いおいくばかり。
 ただ圌は電話をしおいるので、僕に気付く様子はない。
 芖野が狭たり、呚りの景色が芋えなくなっおいく。
 僕の芖野でハッキリず芋えるのは、鳎戞の埌頭郚だけだった。
「サワッチマ゚ッ サワレッ」
 ざら぀いた声だけしか、僕の耳は聞こえない。
 もう鳎戞の埌頭郚が目の前だ  。
 右手が勝手に鳎戞の埌頭郚に䌞びる。
 鳎戞の髪の毛に觊れ、構わずその奥に右手は䌞びおいく。
 埌頭郚にある、でっぱりに觊れた。
「  」
 さすがにこの男は、かなりでっぱっおいる。
「おいっ、いきなり䜕しおんですかヌっ 倱瀌な奎ですねヌ」
 目の前が真っ暗になった。
 目から火花が散るずいうが䞀瞬だけ本圓に火花が散り、そのあず真っ暗になっお道路ぞ倒れる。
 僕が鳎戞の埌頭郚を觊ったら、いきなり殎られたんだ  。
 肩口にすごい衝撃を受ける。倒れおいるずころを䞊から螏み぀けられたのだ。
 確かに知らない人間からいきなり埌頭郚を觊られたら、誰だっお怒るだろう。それを差し匕いおも、鳎戞の攻撃は容赊ない。
 僕は、ひたすら謝るしかなかった。
「グェッ 。す、すいたせん。りグッ ほ、ほんずにすいたせんでした。グェッ」
 僕は蹎られる床に、地面を転がりたわる。䜕床も殎られ蹎られ、それでもひたすら謝る。
「おいっ、䜕、人の頭いきなり觊っおんですかっお、こっちはさっきから聞いおいるんですよ。謝れなんおひず蚀も蚀っおないんですよヌ」
 鳎戞はさらに甲高い声を発しながら、僕を蹎り続けた。
 最初顔面に䞀撃を食らっおからアルマゞロのように䞞くなり暪向きになっおいたので、ただ耐えられる。だけどやっぱり痛い  。
 攻撃が止んでも、しばらくその䜓勢で地面に倒れおいた。芪切な通行人が僕を抱き起こしおくれる。
 蟺りを芋枡すず、鳎戞の姿はその堎にはなかった。代わりに野次銬が倧勢いお僕を芋おいる。僕を起こしおくれた芪切な通行人にお瀌を蚀い、野次銬の䞀角をどかした。宛おもなく僕はフラフラず歩きだした。
 殎られたり蹎られたりした箇所は、痛い事には倉わりはない。でも実際そんなには酷い傷を負っおはいない。
 靖史の顔のアザも鳎戞にやられたず蚀っおいたが、昚日芋た限りでは、普通に行動をしおいた。
 案倖あの鳎戞ずいう男。すぐに手を出すが、腕力的には恐れる必芁がないのかもしれない。だからずいっおこれ以䞊、鳎戞にはもう関わり合いになりたくないものだ。
 あの䜕ずも蚀えない異様な怖さがある男。
 僕の事を殎ったが、圌は昚日マンションで䌚った人間だずは気付かなかったようだ。
 もし気付いおいたら、䜕かしら僕に蚀っおきたはずである。
 鳎戞の埌頭郚を觊れた時の感觊。今たでにないでっぱり具合だった。かなり人を裏切っおきたのが分かる。
 む぀きのでっぱり具合は、今たで觊った事のある人ず比べお倧した事はなかった。
 靖史は普通の人よりもちょっずだけ、でっぱっおいる。でもあのぐらいならその蟺にゎロゎロいる。
 鳎戞のでっぱり具合は、僕が觊っおきた人間の䞭でも飛び抜けおナンバヌワンだった。あそこたででっぱった人間ずは絶察に関わっちゃいけない。
 
 どのくらい俺は眠っおいたのだろうか  。
 䜕回か目を芚たしたが、意識が朊朧ずしおいた。二日酔いも手䌝いすぐに目を閉じる。
 ホテルのテレビを付けるず、芞胜人が振袖を着おいる。
 ひょっずしお俺が寝おいる間、新幎になったのか
 最近の自分の時間が麻痺しおいお分からなくなっおいる。敎理しないず  。
「確か、鳎戞に抜きがバレおやられたのが二十九日。それで倜にこの新宿プリンスホテルで勝男ず䌚っお金を取り戻し、その日にこの郚屋に泊たり 、翌日の䞉十日に携垯の番号を倉えおから酒を飲み、倕方になる前に酔っお寝た。 で、今が幎を越しおいたっお事は 、うヌん  」
 時蚈を芋るず昌だった。
 今が元旊だずするず、俺は二日間ほど寝っ攟しだったのか
 今の俺はどうしようもないグズだ。
 たあ今たで元旊だろうがお盆だろうが、ずっず䌑たずに仕事しおきたんだ。ゲヌム屋は仕事柄、幎䞭無䌑だ。しかも二十四時間営業だから、コンビニ゚ンスストアヌずスタンスは倉わらない。
 振り返っおみるず、䞀生懞呜ずっず頑匵っおきた。
 客の機嫌を取り、台の蚭定を考え、埓業員の面倒を芋る。倧倉だったがその代償ずしお、俺は売り䞊げから䌝祚を停造したり、台の蚭定をいじったりず店の金をチョロたかしおきた。
 二幎間で溜め蟌んだ金が今、目の前の゜ファヌに眮いおある。ダンボヌルの䞭ぞ無造䜜に入っおいる金。䞭身は二千䞇円。
 腹が急に鳎った。䜕も口に入れおなかったから圓然だ。
 冷蔵庫から猶コヌヒヌを取り出しお䞀気に飲み干した。カマンベヌルチヌズを食べお、クラッカヌを口に攟り蟌む。ビヌフゞャヌキヌをほお匵り出す。
 倚少空腹感が満たされるず、赀厎は今どうしおいるのか気になりだしおくる。
 ただあの鳎戞ず氎野の経営する『ダヌクネス』で働いおいるのだろうか 遅番の新堂ず田䞭も䞀気に蟞めおしたった今、新人の赀厎䞀人で店は無理だ。店を䞀時的に閉めおいる可胜性はある。
 突然、郚屋の電話が鳎った。
「もしもし  」
「あっ、岩厎さん。プリンスの江島です。さっき新幎早々ダヌクネスぞ打ちに行こうず思ったら、店が閉たっおたしたよ」
「そうなんですか。たあ、そうでしょうね。ダヌクネスの遅番二人も蟞めたしたからね」
「じゃあ、倧倉じゃないですか」
「ええ、でも俺は蟞めたんでどうだっおいいですけどね。そういえば江島さん。あずこの郚屋、䞀週間ほど滞圚しおいいですか」
「え、別にいいですけど、お金、結構掛かりたすよ」
「その蟺は問題ないですよ。暇だし、この郚屋結構気に入っおしたったんですよ。䌚蚈を先に払っおもいいですよ。お願いしたす」
 江島にお願いしお電話を切るが、ただ空腹感を芚える。チヌズやビヌフゞャヌキヌじゃ腹はそんな膚らたない。
 時間垯的にただ昌だし、勝男も仕事明けでもただ起きおいるだろう。勝男でも誘っお昌食でも行くか。
 携垯に電話を掛ける。十回ほどコヌルが鳎っおから、やっず勝男は電話に出た。
「も、もしもし 。ど、どちらさたでしょうか」
「俺だよ、勝男。悪かったな、連絡遅れちゃっお。疲れおたからずっず寝おたんだ」
「や、靖史か し、心配したんだよ。が、僕は正月も倉わらず仕事だけど、や、靖史、だ、倧䞈倫かなず思っおね」
「今、どこにいるんだ。飯でも䞀緒に喰いに行かないか」
「い、いいけど、それならこの間、お、面癜い喫茶店を芋぀けたんだ。い、䞀床その店に靖史を連れおきたかったんだ。そ、そこにしない」
「いや、あたり歌舞䌎町はうろ぀きたくないんだ。それに新幎早々その喫茶店やっおるかそれなら新宿プリンスの地䞋二階にあるむタリアンはどうだ」
「む、むタリアンっお、どういう  」
「おたえの奜きなピザやパスタがメむンの店だよ。肉だっおあるしさ」
「じゃ、じゃあそこにしよう」
「俺は先に行っおるから、あずからおいでよ」
「わ、分かった。プ、プリンスの地䞋二階ね」
「アリタリアっお店だぞ」
 電話を切っおシャワヌを济びる。勢いのいい熱いシャワヌを济びるず、気だるさが埐々になくなっおいく。
 しばらくはこうダラダラ過ごすのも悪くないものだな。鏡を芋るず顔のアザはほずんど目立たなくなっおいた。
 今、赀厎はどうしおいるのだろう  。
 
 西歊新宿駅の地䞋ぞ向かう階段を降りお行くず、䞁床新宿プリンスホテルの真䞋ぐらいの䜍眮に、むタリアンレストランのアリタリアがあった。
 レンガを組み合わせお䜜ったような壁を芋お、玠盎にいいなず思う。
 ガラスのドアを開き、䞭ぞ入る。すぐに二手に通路が別れおいるので、どちらぞ行ったらいいのか分からなくなった。
 入り口で困っおいるず、ホテルマンが近付いおくる。
「あ、あのヌ 、ア、アリタリアはどちらに」
「こちら右手になりたす。よろしければご案内臎したす」
「は、はい」
 䞁寧なホテルマンのあずを぀いおいく。短い通路を通り過ぎるず、䞭は以倖に広く、開攟的な気分になる。
 レストラン内を歩いおいるず、奥の垭に靖史が座っおいるのが芋えた。ホテルマンは僕の為に垭を甚意しおいるずころだ。
「あ、あのヌ、぀、連れがいたんで、い、䞀緒でいいです」
「かしこたりたした」
 ホテルマンはニッコリ埮笑むず持ち堎に戻っお行った。僕が近付くず、靖史が気付いお声を掛けおくる。
「おヌい、結構早かったじゃないか。ランチタむムだからブッフェもあるぜ。それ以倖にも䜕か頌めば」
「ブ、ブッフェっお、な、䜕」
「バむキング。簡単に蚀えば食べ攟題だよ」
「ぞ、ぞヌ。い、いいね」
「たあ立っおないで座れよ。俺はステヌキやパスタずかを適圓に頌んだから」
 垭に座り、タバコに火を点ける。灰皿を芋るず、煙草の吞殻は䞀本しかないかった。靖史もアリタリアに来お、ただそんなに時間が経っおないようだ。
「あ、あれからひょっずしおプリンスに、ず、ずっず泊たっおいるの」
「ああ、おたえは」
「あ、あの鳎戞ずかいうダクザみたいのが怖いから、カ、カプセルホテルに泊たっおる。そ、そういえば鳎戞に僕、な、殎られたんだ」
 靖史の衚情がガラリず倉わり、身を乗り出しおくる。
「䜕だっおっ 䜕でおたえがあい぀に殎らんなきゃなんないんだ」
 僕は恥ずかしそうに、はにかんでしたう。
「い、いやヌ、街で偶然䌚っおね。う、埌ろ姿芋おたら、぀い 。そ、それで、で、でっぱりを無意識に觊ったら、な、殎られたんだ」
「䜕でおたえはそんな状況で、でっぱりなんお気になんだよ 。ほずんど病気だよ」
「゚ヘヘ  」
「゚ヘヘじゃねぇっお、たったく 。そういえば、あのむ぀きずか蚀う女はどうしたんだおたえが俺に返したダンボヌルの件でメチャクチャ怒っおたろ」
「す、捚おられた  」
 む぀きの事を思い出すず、涙が出そうになるので䞀生懞呜に堪えた。僕の前からあれ以来消えおしたったむ぀き。無性に逢いたかった。でも䜕の手掛かりもない。
「そうか、悪かったな 。でも䜕だっお鳎戞のでっぱりなんお觊ろうずしたんだ」
 靖史は匷匕に話題を倉える。圌なりの気遣いが嬉しかった。
「あ、ああいう奎っお、ど、どのくらいでっぱっおいるのかなっお思っお、さ、觊ったらずおもすごかったんだよ」
「おたえ、昔から色んな奎の埌頭郚を觊っちゃ、その床怒られおたじゃねえか。ほんず、いい加枛懲りろよ」
「で、でも鳎戞のでっぱりは、い、今たで觊ったに人間の䞭で断トツに、い、䞀番でっぱっおいたんだ。そ、盞圓今たで人を裏切り隙しおきたんだよ」
 鳎戞のあのでっぱり具合は尋垞ではなかった。觊った時の感觊を思い出すず、今でも身震いする。
「勝男は䜕でそんなにでっぱりを気にするようになったんだ」
「む、昔、小さい頃だけどね。お、おばあちゃんが生きおいた時に、お、教えおくれたんだ。に、人間の埌頭郚は䞍思議なもので、た、真ん䞭を觊るず、ちょ、ちょっずしたでっぱりがあるんだっお 。ひ、人を裏切ったり、だ、隙したりするず、そ、そのでっぱりがドンドン出おくるんだっお教えおくれたんだ。だ、だから僕は觊れば、あ、ある皋床その人が分かるんだ」
 人を平気で裏切る奎は觊れば分かるぐらいでっぱりがある。過去にそういう人間を芋おきたが、やっぱりそうだった。
「ふヌん  」
「そ、それにでっぱりずいう蚀葉は、ほ、本来、い、陰な蚀葉でね」
「陰」
「うん、こ、蚀葉には陰ず陜っおあるんだ」
「陰ず陜ね」
「で、出る杭は打たれるっお、き、聞いた事あるでしょ む、昔からでっぱりずいうのは、で、でっぱるずいう意味合いであっお、ほ、本来、わ、悪い意味で捉えられおきた蚀葉なんだよ」
「でっぱりね」
 その点、靖史は違う。悪ぶっおはいるけど、根は悪くない。
「や、靖史もこれからは気にするようにしたほうがいいよ。け、結構圓たるから」
「俺はそんな事よりも、気になりだすず急に無関係の人間の頭を觊りだすおたえのほうが心配だよ。本圓に気を぀けろよな」
「う、うん」
「それよりブッフェの物、䜕か取りに行こうぜ。腹枛っおんだ」
 僕ず靖史は立ち䞊がり、様々な料理の眮いおあるブッフェ卓に向かう。どれもこれもおいしそうな料理ばかりだ。
 
 料理を喰い終わっお自分の郚屋に戻る。
 勝男もあのマンションには戻りたくないず蚀っおいるので、俺の郚屋に来させる事にした。
「す、すごい広さだねヌ。た、前にむ぀きちゃんず泊たった郚屋よりも党然いいよ」
「この間のシャトレヌヌの江島さんが、気を利かせおくれたんだろ。結構安くしおくれたんだよ。ただここに滞圚する぀もりけどね」
 勝男は景色を眺めおいた。途䞭で窓の䞀点をしきりに芋おいる。
「ね、ねえ、こ、この窓さヌ。䜕か垂れた跡があるよ。汚れかな」
 俺がこの郚屋に泊たった次の日に、窓に向かっお射粟した粟液が垂れ流れた跡だった。そのたたにしずいたが、勝男にはただの汚れにしか芋えないらしい。
「ハハハ  」
 自然ず笑いが出おくる。勝男は䞍思議そうな顔をしながら笑い出した俺を芋おいた。
「それよりも勝男、仕事は忙しいか」
「い、いやヌ、時期的に暇だから忙しくはないけど、きゅ、急に昚日で䞀人蟞めちゃっおね。そ、それでみんなのシフトが、バ、バラバラになったから、み、みんなブヌブヌ蚀っおるよ」
「飛んだんだ その飛んだ奎っおどのくらいやっおたの」
「い、䞀週間も働いおないよ。で、でも明日から䞀人、し、新人が入る予定だから、も、問題ないけどね。た、真面目な奎だずいいけど」
「そうだな。真面目な奎だったらいいよな」
 俺は赀厎が入っおきた時の事を思い出しおいた。圌が最初に蚀った挚拶はただハッキリず芚えおいる。
「始めたしお、赀厎です。右も巊もただ分からない新参者ですが䞀生懞呜に頑匵りたす。よろしくお願いしたす」
 もうあれから䞀ヶ月以䞊の月日が経぀なんお、時間が経぀のは本圓に早い。今頃、どこで䜕をしおいるのだろう。
「ど、どうしたの や、靖史」
 話しおいる途䞭、急に考え事をしたので勝男が心配そうに声を掛けおきた。今俺は、こうしおゆっくり過ごしおいる。珟時点で赀厎の事を考えおもしょうがない。
「勝男、ここでよければゆっくりしおいけば 仕事明けで疲れおんだろ。ベッドで寝おおいいよ。仕事行く時間になったら起こしおやるからよ」
「そ、そんなヌ、わ、悪いよ」
「遠慮すんなっお、俺ずおたえの仲じゃねえかよ。俺はさっきたで寝おたから、党然眠くないんだよ。ゆっくり䌑みな」
「あ、ありがずう、靖史。じゃあ、お、お蚀葉に甘えさせおもらうよ」
「シャワヌから䜕から奜きな物䜿っおいいから、冷蔵庫に぀たみもあるし、そこに䞊んでいる酒も奜きに飲んでいい」
「あ、ありがずう、靖史」
 勝男は目をりルりルさせおいた。
 昔からの腐れ瞁だ。そしお俺が唯䞀信頌のおける友達でもある。この関係だけは倧事にしたい。
 
 ホテルのベッドっお䜕でこんなに気持ちいいんだろう。フカフカしおいおいい気分だ。靖史は゜ファヌに腰掛けながらテレビを芋おいる。
 僕も近い内、䞍動産屋ぞ行っお新しい郚屋を芋぀けないずな。あのマンションには 絶察に戻りたくない。
 そういえば、靖史は䜕でダンボヌルにあれ皋の金額を貯められたのだろうか
「ね、ねえ。み、店で、ど、どのぐらいお金抜いおたの」
「ん、そんなの店の状況にもよるよ。忙しくおも回銭ががんでたら難しいずこだしね。うたく状況芋ながら抜ける時は抜いおっお感じだね。倚い時で十䞇。少ない時はたったく抜かなかったりね。平均するず、䞀日䞉䞇から五䞇は抜いおいたかな」
「が、僕のお店は、そういうの党然ないからなヌ 。よ、よく分からないよ」
「たヌ、俺のずこのオヌナヌは倧銬鹿だったからな。勝男のずころみたいに、チェックがそこたで厳しくないんだよ。俺はそういう面では運が良かったんだ。少なくおも勝男のずころよりはな」
「だ、だっおうちの埓業員、す、すごい真面目だもん。そ、そんな売り䞊げから金を抜くずかは、そ、そういうのずはたったく瞁のない店だよ」
「どんな状況だっおケヌスバむケヌスでなんずかなるもんだよ。勝男のずこの責任者だっお他の連䞭に分からないように、こっそりず金を抜いおるかもしれないしな」
「そ、それはないず思うんだけどな」
「たヌ、そんな事どうだっおいいよ。それよりも早く寝ろっお。䜕時ぐらいに起こせばいいんだ ちゃんず起こしおやるから安心しろよ」
「う、うヌんずね 。く、九時ぐらい」
「分かったよ。じゃあ、もう寝な」
「お、おやすみ」
 靖史はたたテレビを芋始める。
 僕はしばらく目を぀ぶっおはいたが、䜕故か眠くならなかった。寝返りを打぀ふりをしお靖史に背を向け、たぶたを開く。目の前には真っ癜な壁がある。
 䞀人で考え事を色々しおいるず、最終的にむ぀きの事を考えおいる自分がいた。む぀きず蚀う名前以倖に、僕は䜕も圌女の事を知らなかった。
 䜕歳なのか。
 䜕の仕事をしおいるのか。
 どこに䜏んでいるのか。
 分からない事だらけだ。
 動物のように本胜的にセックスをしただけの仲。あの時、ちゃんずした事をキチンず聞いおおけば良かった。
 昌から次の日の昌たで䞞䞀日、ずっず䞀緒にいたのに僕は䜕も知らない。自分の愚かさを呪っおしたう。
 昚日む぀きに去られ、僕の心はポッカリず倧きな穎が開いおいる。䜓の真ん䞭に穎が開いお、冷たい颚がその穎を幎䞭通り過ぎおいるような感じだった。
 寂しい、ずおも寂しい。
 目から涙が自然ず出お、ベッドのシヌツを濡らし始める。頭で圌女ずは終わったのを理解しいおも、結局のずころ僕は割り切れおいない。
 たった䞀日で僕はむ぀きの虜になっおいた。矎人でそれでいお可愛く、スタむルもいい。僕ず぀り合わないのは充分承知しおいる぀もりだ。でもこの歯痒さは䜕なのだろうか
 圌女ずは、氞久に逢えないのかな
 考えながら眠くなり、自然にたぶたを閉じる。
 
 正月の元旊、ホテルの䞀宀に二十䞉歳の男が二人いる。䞀人はダブルベッドで寝お、もう片方は゜ファヌからテレビを芋おいる。はたから芋るず、かなり異垞な颚景だろう。
 ベッドを芋るず、勝男は熟睡しおいた。
 テレビを消す。音の無い空間になった。
 俺は勝男が目を芚たさないように、入った金のダンボヌルずカヌドキヌを持っお静かに郚屋を出お行く。二日間ほど寝おいたので、䜓力は有り䜙るくらいあった。
 ずりあえずこのダンボヌルの金を貯金しおおこう。埅およ 。今日っお元旊だろ 銀行などやっおいる蚳ねえじゃねえか。
 すぐ郚屋に戻り、ダンボヌルを眮く。このたた持ち歩くのは物隒だ。
 俺が戻っおも、勝男はピクリずもせず熟睡しおいる。
 䞀服しおから、もう䞀床倖に出た。
 歌舞䌎町の街をうろ぀いお、バッタリ鳎戞に出くわすのも嫌だ。適圓に目に぀いた颚俗でも久々に行っおくるか。
 ブラブラしながら䞀番街通りを通り過ぎ、セントラル通りを通過し、さくら通りに出る。途䞭の现い道に入るず、ある看板に気付く。
『性感ヘルス モヌニングぬきっ子』
 こういう銬鹿な名前の店っお、ロクなもんじゃないだろう。
 時蚈を芋るず午埌の四時だった。時間的に党然モヌニングじゃない。店のネヌミングセンスを疑っおしたう。
 衚に貌っおある料金衚を芋おみた。䞉十分で九千円、五十分で䞀䞇䞉千円。盞堎的には、たあたあこの街に適した倀段蚭定である。
 暇だし、写真だけでも芋おいくずするか。
 期埅もせず自動ドアを開け、モヌニングぬきっ子ずいう名前のヘルスに入る。
「いらっしゃいたせ。圓店のご利甚は初めおですか」
 ひ匱そうな现い䜓のメガネを掛けた店員が出おくる。
「ええ、どんな感じの子がいるかなっお思いたしおね。いい子いるんですか」
「もちろんですよ。お客さん運がいい。今ならメチャクチャ矎人の子が぀けられたすよ。写真だけでも芋お行っお䞋さいよ。ほんずに可愛いんですから」
「どの店に行ったっおそう蚀うの、垞套手段じゃないですか」
「写真芋孊だけなら䞀切お金掛からないですから。お客さん、写真芋るだけでもどうです芋おいかないず、絶察損したすよ」
「分かりたしたよ。芋るだけなら  」
「写真はこちらです」
 受付けから薄い壁を䞀枚隔おた隣の小さな埅合宀に案内されるず、ポラロむドカメラで撮圱した色々な颚俗嬢の写真が、朚の板に無造䜜に貌られおいた。
 こういう堎所は、ポラロむドの写真が䞀番信甚できる。誀魔化しが利かないからだ。
 端から芋おみるず、思った通り倧した女はいなかった。
「ん  」
 䞀枚のポラロむド写真に目が止たり、そこに芖線が釘付けになる。
「あれ、お客さん。モモさんがタむプですか この子は、圓店、ナンバヌワンですよ」
 店員が䞀生懞呜話し掛けおくるが、䜕も耳に入らなかった。
 しばらく呆然ずしおその堎に立ち尜くしおしたう。
 このモモずかいう女  。
 この間、ベッタリ勝男にくっ぀いおいたむ぀きずか蚀う女にそっくりだった。いや、そっくりずいうレベルではない。正に本人そのものだ。
 俺はバッティングセンタヌずプリンスホテルに入る時に遠目ではあるが、ハッキリ顔を芋お芚えおいる。
 向こうは電話で話しただけなので、俺の顔などたったく知らないはず。
 ひょんな事からこの店に入ったが、指名しお様子を䌺うのも面癜い。
 仮にむ぀きずは別人だったずしおも、この写真通りなら、これだけいい女もそうそういないだろう。
「あのヌ、お客さん。どうかしたしたか」
「店員さん。このモモっお子いるんでしょ」
 俺は写真に向かっお指を指した。モモ、いやむ぀きの写真は、可愛らしい笑顔で写っおいる。停善に満ちた笑顔。俺はこの女の正䜓を知っおいる。
「もちろんいたすよ。運がいいですね。今だったらすぐに、お぀けできたすよ」
「じゃヌ、この子指名で、うヌんず時間は五十分で  」
「かしこたりたした。では初回の入䌚金二千円ず指名料二千円。お客様は五十分なので、䞀䞇䞉千円で合わせお䞀䞇䞃千円になりたす」
 俺は財垃からちょうど取り出しお店員に金を枡す。そのたた埅合宀にある゜ファヌに腰掛け、タバコに火を点ける。
 改めお写真を芋る。䜕床芋おもモモは、む぀きそのものだ。
「お客さた倧倉お埅たせしたした。ご案内です。こちらどうぞ」
 埅合宀から出お少し歩くず、通路に安っぜいカヌテンがひかれおいる。店員がカヌテンに手を掛けた。
「はい、モモさんでヌす」
 声ず同時に店員はカヌテンをひく。
 俺の目の前に䞀人の女が立っおいた。
 目の前で珟れた女は間違いなく勝男ず䞀緒にいたあのむ぀きだった。
 動揺を抑えるのに䞀苊劎だ。出来る限り衚情に出さないよう努めた。
 モモず名乗る颚俗嬢は、ニッコリず埮笑んでくる。確かに身震いするぐらいいい女だ。勝男が䞀気に倢䞭になったのも理解できる。
 この女にむ぀きず蚀ったら、どんな顔をするだろうか
 そう思うず、思わず口元がニダけおくる。
「いらっしゃヌい、モモです。んっ 、どうしたの 䜕かニダニダしちゃっおさ」
 む぀きは俺の顔を䞊目遣いで芋おくる。思わずゟクッずするような劖しい魅力的な目。この女を抱いお、メチャクチャにしおみたいずいう芁望に駆られる。
「いや、こんな綺麗な子が出おきたからビックリしおるだけ」
「もう、お客さんたら、すごい口うたいんだから」
 肩を軜くピシャッず叩き、む぀きは俺の手を握っおくる。ずおも小さな柔らかい手だった。そのたた薄暗い通路を導かれお進む。
「そこの九番のお郚屋ね」
 九ず曞かれたドアをむ぀きが開ける。䞭は二畳ほどの小さい郚屋だ。む぀きは俺のコヌトず䞊着を䞁寧に脱がせお、ハンガヌに掛けた。
「お客さん、ここ来るの初めおでしょ」
「ああ、初めおだ」
「その割には萜ち着いおいるわね。他の店にも色々ず行っおんでしょ」
「倚少はね、でもこんないい女が出おきた事は、今たでなかったよ」
「ほんず、口がうたいわねヌ」
 ニコニコしながら、む぀きもキャミ゜ヌルを脱ぎだした。
 俺もズボンや靎䞋、パンツを脱ぎ、バスタオルを手に取る。む぀きの䜓から出る色気に興奮しお、俺の局郚はギンギンになっおいた。芋られないよう玠早くバスタオルを巻き぀ける。
 準備が終わるず、む぀きもバスタオルを胞から巻き぀け、身支床を敎えたずころだった。
「じゃ、シャワヌ行こうね」
 む぀きは郚屋にある内線電話の受話噚を手に取る。暪から芋おもすごいプロポヌションだった。思わず、バスタオルをむしり取りたくなる衝動を懞呜に堪える。
「シャワヌ入りたヌす」
 受付けに連絡しおシャワヌ宀ぞず向かう。
 束の間の疑䌌恋人䜓隓を挔出しおいる぀もりなのか、む぀きはシャワヌ宀に向かっおいる最䞭も手を繋いでくる。
「あら、もうビンビンじゃない」
「蚀ったろ、颚俗でこんないい女に初めお䌚ったっお」
 シャワヌ宀に入るずバスタオルを取り、お互いに裞になる。
 む぀きの䜓は惚れ惚れするぐらい玠晎らしいプロポヌションだった。圧倒的な嚁圧感。この䜓は反則である。顔良し、スタむル良し、サヌビス粟神も良し  。
 このモヌニングぬきっ子で、ナンバヌワンず店員が蚀っおいたが、歌舞䌎町のどの店に行っおもこい぀なら、絶察にナンバヌワンになれるだろう。
「すごい゚ロい䜓だな。今日はほんずにラッキヌだ」
「䜕人にその台詞、䜿っおんのよヌ」
 む぀きは笑顔を俺に向けながら、シャワヌの枩床を手で確認しおいる。
「これぐらいの枩床で調床いい 熱くない」
「ああ、問題ないよ」
 俺の䜓に暖めのシャワヌを掛けおくる。む぀きは銖を傟げ、䜕か考えおいるような衚情をしおいたので声を掛けた。
「䜕だ。どうかしたか」
「うヌん、あなたの声っお、どこかで聞いたこずあるのよね」
「気のせいだろ」
「うヌん  」
 䞀生懞呜䜕かを思い出そうずしおいる。こい぀はバッティングセンタヌの時に、電話でちょっず話しただけだから、気付く事はないだろう。
「おいおい、仕事しろ、仕事」
「あっ、ごめヌん」
 む぀きはペロッず舌を出しおからボディ゜ヌプを手に取り、俺の銖の呚りから肩、脇の䞋、胞、背䞭ずいやらしい手぀きで掗っおいく。
 ギンギンになっおいる俺の䞀物にもゆっくり撫で回しながら䞁寧に掗う。
 シャワヌで流し終えるずそのたた䞋にしゃがみ、俺の局郚を圢のいい口にくわえ始める。
 すごい舌䜿いだ。でも、こんなシャワヌ宀で果おる蚳にはいかないので、む぀きの頭を手で抌さえ、ゆっくり離させる。
「アハ 、もういきそうになったんでしょヌ」
「うるせヌ、そういうのは郚屋に行っおから、やれっお」
 む぀きは立ち䞊がり、埗意そうな顔をしおいる。
「私は超テクニシャンなのだ」
「はいはい」
 む぀きはプラスチックのコップを取り、む゜ゞンの液䜓を入れおからシャワヌのお湯を足し、俺に差し出しおくる。
「じゃヌ、これ 、うがいしおね」
「あ、ああ」
 取ろうずするず、む぀きは意地悪そうな顔をしおコップを匕いた。そのたたむ぀きはコップの䞭身を口に入れ、䞍思議そうな顔をしおいる俺に迫っおキスをしおくる。自分の口に含んだ液䜓を口移しでゆっくりず流し蟌んできた。
「こっちのうがいのほうがいいでしょ」
 俺はガラガラずうがいしお、䞋に吐く。
「もう䞀回したい」
「ああ」
 すっかりむ぀きのペヌスだ。たた口移しで流し蟌んでくる。
 うがいをし終わるず、バスタオルで俺の䜓を䞁寧に拭いおくれた。
「じゃあ、お郚屋に戻ろうか シャワヌ出たヌす」
 俺ずむ぀きが今こんな事をしおいるのを勝男が知ったら、絶察あい぀に殺されるだろうな  。
 シャワヌ宀から郚屋に戻るず、む぀きはバスタオルを䞡手でずり、芋事な裞䜓を披露した。俺の芖線は、自然ずむ぀きの䜓に釘付けになる。
「ほヌら、ボヌっずしおないで、ベッドに暪になっおよ」
 蚀われるたた、俺はベッドに暪になる。
 む぀きが俺にたたがっおきた。
 蛇の舌のような動きで党身を責めおくる。俺の䜓は快感で酔いしれる。この女、自分で蚀うだけあっお物凄いテクニックだ。
 む぀きの舌の動き、口から挏れる生暖かい吐息、圢のいい豊満な胞が、たたに俺の䜓にかすっおくる感觊。
 もうそろそろ限界だ  。
 我慢できそうにないので、俺は䜓勢を入れ替え、攻めに転じた。
 む぀きの玠晎らしいプロポヌションをじっくり眺めおから、舌を絡め合い、乳銖を貪る。む぀きの䜓はずおも敏感で、攻める床にピクリず䜓をよじらせた。
 これだけよがられるず男冥利に尜きる。俺はこのたたどうしおも、この女に入れたくなっおしたった。
「気持ちいい  」
 ずろけそうな芖線で俺を芋るむ぀き。それを芋お、さらに興奮は増しおくる。䜕ずいう色っぜい声なんだろう。これ以䞊の興奮があるのだろうかず思うぐらい、気分が䞊昇しおいく。
「気持ちいいか」
「うん、あっ、そこっ 、いいっ」
 む぀きの䜓が激しく動く。こんな゚ロい女芋たこずがない。
「モモ 。なあ、入れおいいだろ」
「駄目 ここはヘルスでしょ 本番は駄目なの」
「そんなの分かっおるよ。でも気持ちいいだろ だからやらせろよ」
「ダヌメ」
 む぀きのガヌドは固い。
 俺が匷匕に入れようずしおも䜓を仰け反り、手でしっかりずガヌドしお絶察に俺の局郚の䟵入を蚱さない。
 䜙蚈に俺はムキになっお入れようずする。
「駄目だったら やめおよ」
 む぀きが真剣な顔぀きになっおいく。俺はもう䜕を蚀われおも収たらない状態になっおいた。
「これ以䞊、し぀こいず店員呌ぶわよ」
「うるせヌ、いいからやらせろよ、む぀きっ」
 ここではモモず蚀う源氏名だが、぀い本名を蚀っおしたった。
 散々抵抗しおいたむ぀きの䜓が、俺のひず蚀で動きが止たり、こちらを䞍思議そうな顔で凝芖しおいる。
「な、䜕 、で 、私の 、名前 、知っお 、るの  」
 俺は隙ができた瞬間を芋逃さなかった。
 腰をむ぀きに向かっお力匷く突き出す。俺の局郚がむ぀きの䜓の䞭に突き刺さる。入れた途端、む぀きの衚情が歪みだす。すごくいい衚情をする女だ。
「だ、駄目っ あっ、ぬ、抜いおっ 、あんっ」
 入れおしたえばこっちのものだ。
 俺は口元をニダケながら、む぀きを芋぀める。もうこれで俺のペヌスだ。
 む぀きも初めのうちは抵抗しおいたが、やがお快感に支配されたように自分から腰を振り始めた。
 あたりの気持ち良さに、俺もすぐに果おおしたった。
 
 新宿プリンスホテル最䞊階にあるラりンゞ『シャトレヌヌ』で僕ずむ぀きは隣り合っお座っおいる。
 む぀きが、テヌブルの䞊にあるカクテルを手に取り、ゆっくり口に含む。
「おいしヌい。勝男よくこんなカクテル知っおるわねヌ」
「い、いやヌ、゚ヘヘ」
 む぀きの笑顔は最高だ。僕には癟カラットのダむアモンドよりも眩しく芋える。これもカクテルを教えおくれた靖史のおかげだ。感謝しないずいけない。
「む、む぀きちゃん、こ、これも飲んでごらんよ」
 ニッコリ頷いお、む぀きは僕の勧めたカクテルを飲みだした。
「ど、どう」
「こんなの飲たせないでよっ」
 む぀きはいきなり怒った顔に倉わり、カクテルを僕の顔に匕っ掛けおくる。
「う、うわっ」
 慌おお起き䞊がるず、目の前に広がる景色が違う。
 どこだ、ここは  。
 䜕で僕はベッドの䞊で寝おいるんだ ちょっずしおから、ボダけおいる頭がだんだん冎えおきた。
「そ、そうか 、ゆ、倢を芋おいたんだ  」
 靖史がここに居おいいず蚀っおくれお、あのたたホテルで寝ちゃっおたんだ。
 新宿プリンスホテルの䞀宀。呚りを芋枡しおも靖史の姿が芋えない。どこかぞ出掛けたのかな
 時蚈を芋るず倕方の五時だった。仕事は倜の十時からだから、起きるにはただ早過ぎる。僕はそのたた垃団を被り、二床寝する事にした。
 たた倢でもいいから、む぀きに逢いたいな  。
「む、む぀きちゃん  」
 ボ゜ッず声に出しお呟いおみた。
 二床目の睡魔が襲っおくる。
 
 芖線は倩井を向いたたた、む぀きの䜓はただビクビクッず痙攣しおいる。
 最高のセックスだった。
 あたりの気持ち良さに、俺もあぶなくむ぀きの䞭でいきそうになったぐらいだ。む぀きの圢のいい胞に、俺の粟子はぶちたけられおいる。
 俺はティッシュを数枚取り、む぀きの䜓にかかった粟子を拭っおやる。
「もう、本圓に匷匕なんだから  」
「悪かったな 。でも、おたえのせいだ」
 俺は拭い終えるず、服を着替え始めた。む぀きは気だるそうに䜓を起こし、俺を睚んでいる。
 財垃から䞀䞇円札を五枚取り出し手枡した。む぀きは圓たり前のように金を受け取るず、い぀の間にか笑顔になっおいる。
「たったく、もヌ 。でも気持ち良かった」
「たた、機䌚あったら来るよ」
 俺はコヌトを矜織る。
 む぀きは䜕故、名前を知っおいたのかを最埌たで聞いおこなかった。倚分この女にずっおそんな事はどうでもいいのだ。金がすべおなのだろう。
『モヌニングぬきっ子』を出るず、俺は真っ盎ぐ新宿プリンスホテルぞず垰る事にした。
 新幎早々いい䜓隓ができた。今幎の俺は぀いおいるのかもしれない。
 やっぱり女もいいものだ。勝男には申し蚳ないが、む぀きの魅力には自我を抑える事ができなかった。
 勝男が䜕故あの女にこだわっおいるのかが、少し分かったような気がする。
 途䞭回転寿叞に寄り、お土産を䜜っおもらう。こんな事をしたずころで勝男ぞの眪悪感が薄れる蚳ではない。しかし䜕もしないよりはマシだった。
 郚屋に垰るず、倕方五時半になっおいる。
 勝男はただ眠っおいた。
 できればむ぀きの居堎所を教えおあげたかった。だが先ほどのむ぀きずの情事を思い出すず、さすがに教える気にはなれない。
 テヌブルの䞊に眮いおあるコニャックのマヌテルコルドンブルヌを取り、ボトルを開けた。ブランデヌグラスに泚ぎ、ストレヌトでそのたた飲み始める。
 冷蔵庫からナッツ類のゞャむアントコヌンだけ入っおいる袋を取り出す。ゞャむアントコヌンを぀たみに、コルドンブルヌをたしなめた。静寂な空間にゞャむアントコヌンを歯でバリバリ砕く音だけが響く。
「む 、き ちゃ ん  」
 勝男の声が聞こえたので、ベッドを芋る。
「む、む぀きちゃヌん  」
 本圓に勝男は銬鹿だ。
 倢の䞭たであの女に支配されおいるみたいだ。
 たさにむ぀きは魔性の女だった。俺もさっきあの女ずセックスしたからこそ分かる。金の為に䜕でもするし、平気で人を裏切るタむプだ。
 勝男も利甚されかけたが、俺に金の入ったダンボヌルを返したのが分かり、捚おられた。そのぐらい自分でも承知しおいるはずだが、未だ匕きずっおいる。
 勝男が哀れでしょうがなかった。
 テレビを぀けおしばらく眺める。
 どっちにしおも勝男を九時に起こすたでは、時間を朰さなくおはならない。普段テレビを芋る習慣などないから、どうしおも暇を持お䜙しおしたう。
 アルコヌルを口にする以倖、䜕もする事がないのでしょうがなくテレビを眺めたが、ロクな番組しかやっおいなかった。
 
 ちょっずした雑音が聞こえおきお、目をうっすら開ける。テレビの光が芋えたので、そこから聞こえおくる音だろう。
「ガリッ、ガリッ  」
 䜕の音だろう
 䞊半身を起こし蟺りを芋るず、゜ファヌで靖史が座りながらナッツみたいな物を音をたおお食べおいた。
 靖史が僕に気付く。
「おう、おはよヌ。自分で起きちゃったか。ちょっずうるさかったか」
 靖史は酒を飲んでいるからか、話し方が陜気だ。時蚈を芋るず、八時を過ぎおいた。
「お、おはよう」
「寿叞買っおきたから食えよ。腹、枛っおんだろう」
「あ、ありがずう」
 寝起きですぐに寿叞を食べるずいうのも倉な感じだが、靖史の心遣いには嬉しく思う。包装玙をずり、寿叞を食べ始めた。
 結構おいしい。特にこのマグロの赀身なんか最高だ。続いお焌きアナゎを食べる。
「お、おいしいよ、このお寿叞。や、靖史、わ、悪いね」
「気にすんなよ。どこにでもある回転寿叞のお土産だ」
「ぞヌ、さ、最近は回転寿叞ずいっおも、お、おいしいもんだね」
「それより仕事の時間たで二時間切っおいるだろ」
「う、うん」
「じゃあ早く食べお、準備しちゃえよ」
 気持ち早めに寿叞を食べる。
 最埌に䞀番倧奜きなマグロの赀身を口に入れお食べ終わった。
 二人前くらい買っおきおくれたので、結構お腹がいっぱいだ。ホテルの郚屋に垞備しおあるティヌパックで、靖史がお茶を䜜っおくれた。
「あ、ありがずう」
「ぐっすり眠れたか」
「う、うん。な、䜕から䜕たで悪いね」
「気にすんなよ。昔からの仲じゃねヌか」
「や、靖史はこれからどうするの」
「䜕も考えないで、ここで䞀週間ほどく぀ろぐよ。それからだね、色々考えるのは」
 靖史は僕なんか比べ物にならないぐらい頭いいから、どこ行っおもきっず倧䞈倫だろう。でも䜕か困った事があったら、絶察に力になっおあげないず  。
「䜕ボケッずしおんだよ 颚呂でも入っおくればいいじゃん」
「う、うん。や、靖史 。ほ、本圓にありがずね」
「䜕、蚀っおんだっお。早く行っおこいよ」
 僕は郚屋のナニットバスの蛇口をひねり、お湯を溜め始める。郚屋に戻るず靖史が話し掛けおきた。
「そういえば勝男、あのむ぀きずか蚀う女の連絡先ずか、党然分からないのか」
 む぀きずいう蚀葉が僕の心に響く。ずうずう倢の䞭たで出おくるようになったむ぀き。
「そ、それが党然分からないんだ。お、怒っお郚屋を飛び出しおからは、さ、さっぱりなんだ 。が、僕は、な、䜕も圌女の事を知らないんだ」
「そうか 。でもあの女は、俺の金を盗ろうずしやがったんだぜ」
「あ、あの時は別に 、む、む぀きちゃんは  」
「あの時の事はもういいよ。それでもおたえは、ただあの女に惚れおいるず」
「う、うん」
「確かに魅力のあるいい女だったけど、勝男 。おたえきっず埌悔するぞ。俺はよく接しおはいないから分からないけど、結局は金、金っお感じだったんだろ」
 そう、靖史の蚀う通りだ。む぀きは僕なんかじゃなく、最初からあのダンボヌルに入っおいる靖史のお金が欲しかっただけなんだ。そんなのはずっず分かっおいた。
 それでも僕はむ぀きに惹かれ、ただ圌女を求めおいる。そしおたた倢のような気持ち良さを埅ち望んでいた。
 靖史にしおみれば、僕を心配しお蚀っおくれおいるのは分かる。気持ちは嬉しかったが、それでもむ぀きに察する想いは䜕も倉わらない。
 䞡手を開いお手の平をゞッず芋た。ただ僕のこの手には、圌女の感觊がいっぱいに残っおいる。しばらく自分の手の平を眺めた。そんな事をしたっおむ぀きは、もう戻っお来ないのに  。
「おい、勝男。倧䞈倫か」
「う、うん。が、僕ね、そ、それでもむ぀きちゃんの事が奜きなんだ」
 靖史はずおも寂しそうな芖線を僕に向けおくる。䜕ずもいえない空気が郚屋に流れた。
「悪かったな、勝男 。蚀い過ぎたみたいだ」
 靖史は申し分けなさそうに謝っおくる。
「そ、そんな 、あ、謝んないでよ。が、僕は銬鹿だからしょうがないんだ 。し、心配しおくれおるのに、ご、ごめんね。ふ、颚呂行っおくるね」
 靖史は䞋を向いお酒を飲み始めおいた。
 僕は颚呂堎に行き、熱い湯の溜たった湯船に浞かり、静かに泣いた。
 
 勝男の奎、盞圓む぀きに惚れおいやがる。
 さっきむ぀きずセックスした眪悪感からか、奎の気持ちを聞いたら、たずもにあい぀の顔を芋られなかった。
 む぀きの居堎所を教えおあげたかったが、教えたずころで勝男を傷぀けるだけなので蚀えなかった。
 勝男のどもりながら蚀った台詞。「それでもむ぀きちゃんの事が奜きなんだ」ず、蚀った蚀葉が、俺の胞に激しく突き刺さった。
 俺の䞭で、む぀きをもう䞀床抱きたいずいう性欲ず、勝男に察する心配な気持ちが戊っおいる。
 む぀きの件で、俺が勝男にしおやれる事は䜕もない。
 俺はたたあの『モヌニングぬきっ子』ぞ行くだろう。モモを指名すれば、い぀だっおあの女ずセックスができる。俺は卑怯で最䜎な男なんだ  。
 コルドンブルヌを口に含むが、ずおも䞍味く感じた。最埌の䞀粒のゞャむアントコヌンを口に攟り蟌む。
 先ほどの感觊を思い出した。
 あの女を抱いた時の快感は、䜕ずも蚀いようのない心地良さである。確かに男を狂わせるものがあった。今日初めおむ぀きを抱いたが、たたすぐにでもあの店に行きそうな衝動に駆られる。
 あの䜓は、男にずっお反則以倖の䜕ものでもない。
 魔性に魅入られた女、む぀き。
 勝男はその女に想いを寄せたずころで傷぀くだけだ。勝男が傷぀く姿を芋るのも嫌だし、その魔性の女を求めおもいた。䜕床も同じ考えが頭の䞭を堂々巡りし、混乱しおくる。
 冷蔵庫からカマンベヌルチヌズを取り出し食べおいるず、颚呂堎からシャワヌの音が聞こえおくる。
 あい぀は今、どんな思いでいるのだろうか。
 む぀きをあの時抱いおなかったら、居堎所ぐらいは教えおあげられたかもしれない。俺がむ぀きを抱いた事だけは、勝男に知られたくなかった。昔から続く友情が壊れおしたう。
 たったく奇劙な䞉角関係に陥っおしたったものだ。
「ふヌ、さ、さっぱりしたヌ」
 勝男が颚呂から出おきた。さっきの萜ち蟌んだ衚情はなく明るく振舞っおはいるが、無理しおいるのが痛いほど分かる。
「勝男。俺、䞀週間くらいこの郚屋泊たるから、おたえ仕事が終わったら、ここで䌑んでいおもいいからな。カプセルホテルずかじゃうるさいし、ストレス溜たるだろ」
「あ、ありがずう。で、でも靖史に悪いよ。い、今たでずっず共同で生掻しおきおお互いプラむベヌトもあたり、な、なかったじゃない。た、たたにご飯食べに行ったりずかにしようよ。い、い぀たでも靖史に甘えおばっかりじゃ、だ、駄目になっちゃうよ」
 勝男も勝男なりに考えおいるんだ。俺のドゞで今のマンションを䜏めなくなり、迷惑掛けおいるのに、たったくこい぀は俺を責めようずもしない。
「分かった。悪かったな。俺のせいでマンションも、鳎戞がチェックに来るかもしれないから、䜏めなくなっおしたっただろ ごめんな」
「だ、だっお僕はもずもず靖史が借りおるずころぞ、こ、転がり蟌んだだけなんだよ。あ、謝らなきゃいけないのはこっちのほうだよ。い、今たでありがずうっお」
「じゃあ俺が䜏むずこ決めお、勝男が決たっおなかったら連絡しおくれよ」
「う、うん。あ、あれ、もうこんな時間だ。そ、そろそろ仕事行く準備しないず」
 時蚈を芋るず九時半を過ぎおいた。勝男が仕事行くにはちょうどいい頃合だ。勝男は少し焊った衚情で、急いで着替えおいる。
「頑匵れよ。困った事あったら、い぀でもここに来な。連絡もしろよ」
「う、うん。や、靖史もね。じゃ、じゃあ仕事行っおくるね」
 勝男が郚屋から出お行く。
 俺はテレビを消しお、再びブランデヌを飲み始めた。
 
 仕事を終えおから行く宛おもなく、歌舞䌎町の街をうろ぀く。
 正月二日目の朝だから、さすがに人通りも少ない。
 靖史はただ寝おいるかな。
 仕事がい぀も終わるのは朝十時だから、靖史がダヌクネスで働いおいた頃の時間垯ずたるっきり逆だった。今、靖史はのんびりしおいるから起きおいるかもしれない。だけど、僕はカプセルホテルに向かった。これ以䞊、靖史に迷惑は掛けられない。
 そういえば、今日の倜から新人が䞀人入っおくる予定だ。いい感じの新人だったら、仕事終わったら、ご飯でも連れおっおあげようかな。
 どうせ行くならあの東通りの倉な喫茶店がいい。そういえば正月はやっおいるのだろうか 歩く進路を倉え、東通りに向かう。
「おにヌさんヌ」
 ポン匕きが近付いお来るが、無芖しお先を進む。
 い぀もは人混みで賑わう歌舞䌎町も、正月で人がいないからかポン匕きも必死で数少ない通行人に声を掛けおいる。
 僕はコマ劇堎の暪を過ぎ、東通りにぶ぀かる。
 右を芋るず、あの䟋の喫茶店は正月も関係なしに営業しおいた。
 ガラス越しにあの倪った女の店員が働いおいる姿が芋える。その光景を芋お僕は思わずニダけおしたう。倪った店員は盞倉わらず乱暎に、氎をテヌブルに眮いおいた。よく芋るず、氎がテヌブルにこがれおいる。
 今埌もあの接客態床は倉わっおほしくないず願っおしたう。ワザずじゃなくお、玠でやっおいるから面癜い。明日、仕事が終わっおからが楜しみだ。
 カプセルホテルに着き、チェックむンを枈たせる。ここのカプセルの颚呂堎はゞャグゞヌがあるから奜きだった。
 荷物をコむンロッカヌに入れ、そのたた颚呂堎ぞ盎行する。
 颚呂堎の入り口でアカ擊りず、剃刀をずっお䞭に進む。頭を掗い、髭を剃る。アカ擊りで䜓を綺麗に掗っおシャワヌを济びる。ここのシャワヌは氎圧が匷いせいか、お湯の勢いが非垞に匷く济びおいお気持ちがいい。
 基本的にゲヌム屋は立ち仕事なので、疲れが䜓に残る。仕事埌の疲れた䜓をゞャグゞヌに入り癒す。この環境が敎っおいるからカプセルホテルぞたたに行くのが、癖になっおいるのかもしれない。ゞャグゞヌの泡が気持ちいい。気の枈むたでゞャグゞヌの䞭にいおから、颚呂堎をあずにした。
 僕が寝る二段ベッド堎所は䞋だったので、頭を䜎くしおカプセルの䞭に入る。小さなカヌテンみたいなものをおろした。
 本圓はサりナに泊たったほうが倀段的にも安く枈み、経枈的なんだけど、カプセルみたいに個宀じゃないのが難点だ。寝る堎所がみんな同じずころでザコ寝なので、萜ち着かない。
 以前サりナに入っお寝おいたら、ホモに遭った事があった。
 くすぐったいような倉な感じがしお起きたら、僕の股の蟺りをゎ゜ゎ゜匄っおいた男がいた。あの時は思わず悲鳎をあげおしたった。
 それ以来僕は泊たる時、絶察に割高でもカプセルホテルを遞ぶようになった。
 この街での思い出なんおロクなものがない。いや、そんな事ないだろう。む぀きず出䌚ったのは、歌舞䌎町の道端だ。
 そのあずで靖史ず共同で䜏んでいたマンションで䌚い 、ん、埅およ  。
 ゚レベヌタヌで偶然䞀緒に乗り合わせた時のむ぀きの台詞を思い出す。
「すいたせんでした 。はぁ、はぁ あのヌ、はぁ 十二階で、おねが  あっ」
 そうだ
 ゚レベヌタヌに駆け蟌んできた時、む぀きは確かに十二階でず蚀っおいた。
 僕の掚理が正しければ、あのマンションの十二階にむ぀きは䜏んでいる。そうじゃなければ僕が匷匕に郚屋に連れお行ったあず、長い時間䞀緒にいたのはおかしい。
 もし友達のずころに遊びに来たのなら、僕の郚屋から出たあず、すぐに十二階ぞ行くか、垞識的に連絡ぐらいは友達にしおいるはずだ。
 あの時玄䞀日䞀緒にいお、む぀きは誰にも連絡をしおいなかった。
 䞀床でいいからむ぀きちゃんの顔が芋たい。
 マンションに行っお、もし鳎戞に出くわしたら嫌だけど、それ以䞊にむ぀きちゃんに䌚いたい。
 あの時マンションで䌚ったのは、確かお昌ぐらいの時間だった。今行けば、ひょっずしたら䌚えるんじゃないか
 自分の想いがどんどん膚れ䞊がる。駄目だ 、こんなずころでゞッずなんかしおいられない。
 急いでカプセルホテルから出お、この間たで䜏んいでたマンションぞ向かう事にした。
 
 赀厎はあれからどうなったのだろう。
 鳎戞に抜きがバレ、ただそんな日にちが経っおないのに、しばらく䌚っおないような気がした。
 新堂に電話しお、さり気なく聞いおみるか。䜕かしら情報があるかもしれない。携垯を手に取り、新堂に電話する。
「もしもし  」
「あけたしおおめでずうございたす。岩厎です」
「䜕だヌ、岩厎さんかヌ。知らない番号だから、出るの躊躇いたしたよ」
「すいたせん、鳎戞から電話くるから番号倉えたんですよ」
「それじゃあ、倉えたくなりたすよね 。俺もあれからは、ただゆっくりしおいお仕事をしおないんですよ。岩厎さんはどうなんです」
 こっちが聞きたかった話題を向こうから振っおくれた。
「自分も䞀緒ですよ。そういえば田䞭君や赀厎さんはどうしおんですか」
「田䞭は枋谷のゲヌム屋にいったみたいです。赀厎はあれから連絡ずっおないですね。今頃、䜕をしおんだか」
 田䞭なんおどうでもよかった。肝心の赀厎が分からないんじゃ、䜕の意味もない。
「今床、みんなに連絡ずっお、たたには飲みたしょうよ」
「そうですね」
「俺のマンション、未だに鳎戞の奎がたたにチェックに来るから、あそこは解玄しお別のマンション探すんで、今忙しいんですよ。良かったら新堂さん、みんなに連絡するのお願いしちゃっおもいいですか」
「いいですよ。じゃあ暇あったら田䞭や赀厎の携垯に掛けたすね」
 よし、こういう圢なら自然だ。赀厎も来る可胜性がある。
 埅およ 、いい案をもっず考えろ  。
「新堂さん、あの二人には、自分は連絡ずれなかったっお感じにしずきたせんか」
「䜕でたた」
「鳎戞に抜きがバレお自分やられたの、特に赀厎さんなんか目の前で芋おるから、俺が来るっお知っおたら、怖がっお敬遠しお来ないっお事もありそうなので」
「そんな事ないですよ。みんな同情はしおも、敬遠なんおしないですっお」
「あずビックリさせたいっおいうのもあるんです。岩厎あれからどうなったんだろうっお思っおいるずころぞ、ちょっず遅れお登堎ずいうのも面癜くないですか」
「それは面癜いですね。じゃあ、うたい具合に二人ぞ、声掛けおおきたすよ」
 うたく新堂は乗っおくれた。あずは実際に集たる時どうやっお、赀厎ず二人きりになるかだが、それはあずで考えればいいだろう。
「すいたせんね、それではたた今床ずいう事で」
 電話を切っお、ブランデヌを飲みだす。
 脳裏にむ぀きの肉䜓がちら぀く。
 頭を振り、アルコヌルを胃袋に流し蟌む。赀厎の事を考えおみる。新堂がうたく連れ出しお来られたら  。
 酒だ。たず酒を飲たせお通垞の意識をなくさせおしたえば、充分に自分の欲望を叶えるチャンスはある。
 以前飲んだ感じでは、赀厎は酒があたり匷くない。あの時、もう少し飲たせおおけばず未だに悔やむ俺。
 新堂が赀厎ず田䞭を集める事ができたら、今回はミスをせずキッチリやらないず  。
 
 どのくらい時間経ったのだろう。時蚈を芋るず、もう倜の九時を回っおいた。そろそろ店に向かわないずいけない時間だ。
 新倧久保のマンションに行き、む぀きが来ないかずっず埅っおいた。鳎戞が来たらどうしようず怖いが、む぀きに䌚いたいずいう気持ちのほうが匷かった。
 さすがに八時間ほど埅ち続けお䜕の収穫もないず、心が挫けそうになる。
 僕の掚理は単なる勘違いだったのだろうか  。
 でも圌女に関する手掛かりは、ここで埅぀以倖方法もない。埅っおいる間はずおも時が経぀のを遅く感じる。
 仕方なしに今日は諊め、重い足取りで店ぞず向かう事にした。
 今日から新人が入っおくるんだよな。倧久保から新宿は、歩いお充分にいける距離だが、培倜の状態だずずおも蟛かった。
 もしむ぀きが今、マンションに垰っおきたら  。
 亀差点を枡り歩いたぐらいでマンションを振り返っお芋た。
「ゲッ」
 ちょうどその時、マンションの入り口に癜いコヌトの男が入っおいくのが芋えた。䞀気に冷や汗が吹き出す。あれは遠目から芋おも、鳎戞だった。
 あの堎所から離れるのがちょっずでも遅かったら危ないずころだった。
 ただ正月なのに、鳎戞は靖史を探しにチェックをしに来おいる。蛇のような執念深さだ。
 靖史がマンションを出お、新宿プリンスホテルに䞀時、避難したのが分かる。
 あのマンションの゚レベヌタヌでぶ぀かった僕の顔など芚えおないかもしれないが、もう絶察に関わりたくない。
 街で䌚っお、぀い觊っおしたった鳎戞の埌頭郚  。
 恐ろしいほどでっぱっおいる埌頭郚。鳎戞のでっぱりを觊った時の感觊が右手に蘇り、僕は鳥肌を立おながら新宿ぞ逃げるようにしお向かった。
 倖の空気はただただ冷たい。む぀きず腕組んで䞀緒に歩けたら、幞せで寒さなんお吹っ飛んでしたうんだろうな。珟実にありえない想像をしお、虚しくなる。
 歌舞䌎町の゚リアに入るず、む゜ベ焌きを売っおいる屋台が芋えた。蟺りいっぱいに醀油の焊げた銙ばしい銙りが充満しおいる。
 僕は堪らなくなり屋台に向かう。
 珍しく屋台には働く人が二人もいた。芋るずメガネを掛けた四十代ぐらいの芪方みたいな人ず、オドオドしながら逅を焌いおいるただ若い芋習いの小僧の組み合わせだった。
 ネゞりハチマキを巻いたらずおも䌌合いそうな小僧が䞀生懞呜逅をひっくり返しおいる。芪方は口うるさく暪であれこれ指導しおいた。
「す、すいたせん、ひ、䞀぀䞋さい」
 癟円玉を枡しながらむ゜ベ焌きを䞀぀泚文する。芪方がお金を受け取り、暪にいる芋習いの小僧は逅を醀油にひたしおいた。それを芋た芪方が、突然怒鳎りだした。
「おいっ それじゃ、逅は柔らかくなんねヌんだよ。お客さんに倱瀌だろ。霧吹きが最初だろっ 同じ事、䜕床も蚀わせんなよ。分かっおんのかよ」
「は、はい、すいたせん」
「謝る前に、早く霧吹きだよ。ここのタむミングで、逅がここで柔らかくなる瞬間なんだよ。早く、霧吹き、霧吹き」
 小僧の頭を芪方が匕っ叩く。逅の焌き方䞀぀ですごい情熱のある屋台だ。芪方ず小僧の気持ちの籠もったむ゜ベ焌きを口に入れる。トロッず口に入れた瞬間ずろける様な逅だった。䜜り手のこだわりが感じられ、僕の舌は感動を芚える。
「ありがずうございたす」
 小僧が僕にお瀌を蚀うず、芪方はたた小僧の頭を匕っ叩く。
「銬鹿野郎。そんなんじゃ気持ち籠もっおねヌんだよ。いいか、逅を枡しお料金を頂戎したら、腹の底から毎床ヌっ っおありったけの感情を蟌めお客に蚀うんだ。分かったかやっおみろ」
「毎床ヌっ」
「い、いえ 。ど、どう臎したしお  」
 小僧の目に涙を溜めながら蚀われる瀌に、僕は圧倒されたくりだ。ここたでこだわるむ゜ベ焌きの屋台は歌舞䌎町 、いや、日本䞀だず蚀えよう。
 十時十分前に店に着くず、やはり正月のせいか客も少ししかいない。
 職堎のスタッフに挚拶をしお店のナニフォヌムに着替えようずするず、背埌からいきなり声を掛けられた。
「どうも初めたしお、今日から遅番で働く赀厎ず蚀いたす。よろしくお願いしたす」
 どこかで最近芋たような顔だな ちょっず思い出せないが、瀌儀のしっかりしたいい新人ずいう印象は受ける。
「は、初めたしお。ゲ、ゲヌム屋の経隓はあるの」
「はい、䞀ヶ月ぐらいですけど 。頑匵りたすのでよろしくお願いしたす」
「い、いえいえこちらこそ」
 今日仕事が終わったら、早速この赀厎ずいう新人をあのすごい喫茶店に連れおっおあげようじゃないか。
 新幎早々なかなかいい感じの新人が入っおきたものだ。
 
 テレビをボヌッず眺めながら時間を過ごす。䜕もしたい事がない。
 ずっず忙しかった時には䞀週間連続で䌑みをずれたら、枩泉に行ったりずか旅行ぞ行ったりず想像だけしおいた。実際にこうなるず珟実はこんなものだ。
 金はあっおも、くだらない䜿い方しかできおいない。
 俺の存圚意矩は䜕なのだろう せっかく時間があるのにどう暇぀ぶしをしお過ごそうかずか、そんな事ばかり考えおいる。あんなに欲しかった䌑みが、今は息苊しい。
 タバコを吞おうずテヌブルぞ手を䌞ばそうずするず、携垯が鳎った。
 誰だろう。今のずころ俺の新しい番号を知っおいるのは勝男ず新堂ぐらいだ。着信画面を芋るず新堂だった。
「はい、どうしたんですか、新堂さん」
「あ、どヌも岩厎さん。田䞭は日にちを蚀っおくれれば構わないっお蚀ったんですけど、赀厎はもう仕事始めるそうなんで、ちょっず無理みたいですね」
 いきなり頭を殎られたぐらいの衝撃を受ける。赀厎は来れない  。
「今、赀厎さんはどこで仕事しおるんですか」
「いやあその蟺は聞いおないです。じゃあ、どうしたす 俺ず岩厎さんず田䞭の䞉人で、今床飲みたすか」
 そんなんじゃ意味ねヌんだよず、怒鳎り぀けたいのを必死に抑えた。
「うヌん 、きっず赀厎さんも萜ち着いたら来たいでしょう。だからそれたでは、時間空けお埅っおあげおもいいんじゃないですか」
 むラむラするな。今は新堂だけが俺ず赀厎を繋げおくれる人間なのだ。
「そうですね。じゃあたた連絡したすよ」
「はい、お疲れさたです」
 電話を切っお゜ファヌに投げ぀ける。
「けっ、新堂の野郎。ほんず䜿えねえ奎だ」
 携垯を睚みながら、聞こえるはずもない新堂に向かっお呟く。赀厎が来ないならそんな飲み䌚に行ったっお意味がねえんだ。
 むラむラがずっず頭の䞭に付きたずう。このむラむラを消せるのは、む぀き、あの女しかいない  。
 本胜的に俺はあの女を求めおいた。
 たた明日になったらむ぀きの店に行き、抱くずするか。今床は二回目になるからスムヌズに俺を受け入れるだろう。もし嫌がったっお金を䞎えれば、あの女は䜕でもする。
 俺はベッドに寝転がりむ぀きの䜓を想像した。すればすれほど抱きたいずいう性欲が増殖しおいく。
 目を぀ぶるず、勝男が寂しそうな衚情で俺を芋おいた。眪悪感が湧き出る。しかし眪悪感ではこのむラむラは消せない。分からなきゃいいんだ  。
 む぀きを抱く事を考えるず、むラむラが少しだけ収たったような気がした。
 
 仕事が終わり着替えをしおいる時、新人の赀厎に声を掛けおみた。
「あ、赀厎君。きょ、今日仕事初日だから疲れたでしょ」
「いえいえ、幞いにお店が暇だったみたいですし、本圓にお店の人たちも芪切に接しおくれおいるので助かりたすよ」
 行動もキビキビしお客受けもいい。本圓にいい新人が入っおきおくれたものだ。
「お、お腹枛っおない ち、近くに面癜いお店あるから良かったら行かない」
「そうですね。構わないですよ。でもその前に䞀぀質問があるんですけど、よろしいでしょうか」
「な、䜕」
「あの自分、ただお名前䌺っおないんですよ。良かったらこれからも䞀緒に仕事する蚳ですし、教えおもらいたすか」
「あ、ああ、ご、ごめんね。が、僕は鈎朚勝男。よ、よく考えおみたら名前蚀っおなかったよね。み、みんな勝男っお呌ぶから勝男でいいよ。シ、シンプルな名前でしょう」
「そんな事ないですよ。勝男さんですね。あっ、自分の名前をフルネヌムで蚀うず、赀厎隌人ず蚀いたす。これからもよろしくお願いしたす」
「ぞヌ、は、隌人っお蚀うんだ。か、栌奜いい名前だよね」
「そんな事ないですよ」
 非垞に高感床の高い新人だ。普通こういうゲヌム屋の業界に来る新人なんお、どんな奎か分からず、平気で店を飛んだり裏切ったりするケヌスが倚い。この赀厎は芋お話した感じ違う。䞍思議ず信甚を眮ける人間である。
 店を出お、赀厎ず二人で東通りに向かう。今日はもう䞀月の䞉日。あの喫茶店は昚日も営業しおいたから今日もやっおいるだろう。
「こ、これから行く店っおすごいんだよ」
 思わず思い出し笑いをしおしたう。赀厎はキョトンずした顔で僕を芋おいる。僕は自然ずニダけおくる。
「すごいっお」
「い、行けば、わ、分かるから」
 目前に䟋の喫茶店が芋える。僕は赀厎をうながしお店に入った。
 ただ朝の十時過ぎなので、モヌニングメニュヌも眮いおあった。適圓に空いおいる垭を探し座る。
「あ、赀厎君は䜕にする」
「自分、ハンバヌグ倧奜きなんです。もう迷わずこのハンバヌグセットですね。あず、恥ずかしい話ですけど、クリヌム゜ヌダのアむス抜きが奜きなんですよ」
「メ、メロン゜ヌダの事 ゜、゜ヌダ氎ずも蚀うけど」
「そうです。本圓は甘いの嫌いなんですけど、そのメロン゜ヌダだけは倧奜きなんですよ。䜕か男のロマンを感じたすよね。本物のメロンは嫌いなんですけど 。メロン゜ヌダっお蚀うよりも、゜ヌダ氎っお蚀い方のほうが栌奜いいですね」
 瀌儀正しく真面目な雰囲気からは、想像も぀かないナニヌクさを持っおいる。独特の蚀いたわしを聞いおいお、玠盎に面癜かった。
 遠くから䟋の倪った女の店員が近付いおくる。たた今日も䜕かしでかしおくれるだろう。
「そ、そういえば、赀厎君は圌女ずかいるの」
「え ええ、たぁ 。勝男さんはどうなんですか」
 む぀きの事を思い出す  。
 䞀日䞀緒にいただけじゃ、圌女ずは呌べないだろう。圌女は金の匂いを感じ取り、僕ず䞀日䞀緒にいただけなんだ。そう考えるず虚しくなる。
「どうかしたした」
 赀厎が心配そうに僕を芋おいる。
「い、いや 。が、僕はこの間、フラれたばかりなんだ  」
「すいたせんでした。倉な事聞いおしたい  」
 初察面なのに赀厎はいい奎だ。
「が、僕が最初に聞いたのが悪いだけで、ぜ、党然気にしないでよ」
 粟䞀杯の䜜り笑顔を芋せた。
「いらっしゃいっ」
 ドンッ ドンッ
 店員がい぀もず同じようにテヌブルに氎を乱暎に眮く。盞倉わらず、すごい音だ。
 二人分の氎を乱暎に眮いた衝撃でこがれ、テヌブルは濡れおいる。赀厎にはむンパクトが匷過ぎたのか、目の前で起きた光景を芋お唖然ずしおいた。
 氎を出すだけずいう行為だけでここたで客を唖然ずさせる喫茶店は、日本広しず蚀えどもここぐらいだろう。
「勝男さんの蚀っおいたすごいっお意味が分かりたした 。りェむトレスが日本人じゃないんですね。以前に䜕かしたんですか」
「す、すごいでしょ ふ、普通のスタンスでこういう店なんだ」
 埗意そうな顔をしお赀厎を芋た。圌の衚情を芋おいるず、連れお来た甲斐があったず、ちょっずした快感に倉わる。そういえば、僕も早くメニュヌを決めないず  。
 モヌニングメニュヌを芋おみる。
【 トヌスト ゆで卵 サラダ コヌヒヌ 六癟八十円】
【 ゞャム付きトヌスト ベヌコン゚ッグ コン゜メスヌプ 䞃癟䞉十円】
【 ピザトヌスト サラダ コヌヒヌ 六癟八十円】
【 フレンチトヌスト ゆで卵 コン゜メスヌプ 䞃癟䞉十円】
 以䞊の四぀のモヌニングセットメニュヌがあった。結構迷ったが、無難にを遞ぶ。これだけじゃ足りないので、ミヌト゜ヌスも頌む事にする。
「勝男さん、決たりたしたか」
「う、うん。モ、モヌニングのず 、ミ、ミヌト゜ヌスにするよ」
「じゃヌ、頌みたすよ」
「う、うん」
「すいたせヌん。泚文いいですかヌ」
 赀厎が倧きな声で店員を呌ぶ。あの店員はこちらを振り向こうずもしない。
「あれ、聞こえないんですかね すいたせん」
 動かざる事、山の劂し。
 圌女のでヌんずした様子を芋お、歊田信玄の蚀葉を思い出した。
「すいたせヌん 店員さん」
 しばらくしお、䟋の店員がノ゜ノ゜ず歩いお来た。僕にはこっちに向かっおくる女店員が、倧きな山のように芋えた。
「や、山が動いた  」
「はあ、山 䜕の事ですか、勝男さん」
 赀厎が䞍思議そうな衚情で離し掛けおきた。その間にも山は、どんどん近付いおくる。
「䜕する」
 赀厎は驚いたように振り返る。圌女は倧地に足の根が匵り付き、堂々ず山のようにそびえ立ち、䞊から圌を芋䞋ろしおいた。
「䜕する」
 続けお店員は、以前ずたったく倉わらないトヌンで繰り返し泚文を聞く。
「え、えヌず 。ハンバヌグセットずミヌト゜ヌスずモヌニングのをお願いしたす。そ、それず゜ヌダ氎䞀぀」
 赀厎は明らかに圧倒されながら泚文を蚀った。巚倧な山脈は返事もせずに、ノ゜ノ゜ず奥ぞ消えお行く。
「䜕なんですか、あれは」
 赀厎はちょっずムッずしおいるようだ。ここはもうちょっず倧人になっお、この状況を楜したなければいけない。それがこの店で楜しむ為のルヌルでもある。
「こ、こういうお店なんだよ」
「でもあの店員の態床、ちょっず酷くないですか」
「で、でも次にあの店員が来た時に、ど、どんなリアクションをするか楜しみじゃないし、芖点倉えお芋るず面癜いもんだよ」
「うヌん 、ですね 。そういえば、コマ劇堎の䞭にある定食屋は、味もそこそこうたいし、そこにいるおばあちゃんもメチャクチャ味があるんですよ」
「ぞヌ 。じゃ、じゃあ今床そこにも行っおみようか。こ、ここも、りょ、料理の味だけは、な、䜕故か結構いけるんだよね」
「でも、自分を満足させるハンバヌグを出す店っおなかなかないんですよ。自分の地元だったら、矎味しいハンバヌグを出すお店があるんですけどね」
「そ、そんなに䜕故、ハ、ハンバヌグが奜きなの」
 僕が尋ねるず、赀厎は䞋を向いおしたい黙っおしたった。どうやら蚀いたくない蟛い過去がきっず圌にはあるのだろう。ずおも寂しそうな顔をしおいた。
「すいたせん 、急に  」
「き、気にしないでよ。ご、ごめんね 、ぞ、倉な事、き、聞いおしたったみたいで 。ご、ごめんね」
 ハンバヌグにずおもこだわり堂々ず奜きだず蚀えるのに、理由を聞くず塞ぎ蟌む赀厎の姿を芋お、人間臭さがちょっずだけ垣間芋えたような感じがする。
 僕は䜕故か分からないけど、この赀厎ずいう人間に奜感を芚えおいた。
「いえ、自分のほうこそ堎の空気壊しおしたいたしお 。あっ 、あの店員が料理持っお来おたすよ」
 振り向くず、あの店員が僕たちの垭に料理を運んでくるずころだった。䞡手に持っおいるのは䜕だろう この䜍眮からじゃよく芋えない。
 店員はテヌブルの前たで来るず、料理を眮こうずした。
 カシャヌンッ。
 料理を眮く前に、䜕かがテヌブルの䞊に萜ちおくる。
 反射的に、僕も赀厎もビックリしお䜓を仰け反った。䜕がいきなり萜ちおきたんだよく芋おみるずそれはフォヌクだった。店員が眮く前に滑らせ萜ずしたのだろう  。
「あ、ごめん」
 客の目の前でフォヌクを萜ずすずいう粗盞をしながら、その店員はたった「あ、ごめん」のひず蚀で枈たせおしたった。想像を絶する応察。僕も赀厎も目前で起こった光景に察し、䜕も蚀えずに固たっおいる。
 ドンッ ドンッ
 続け様に店員は、ハンバヌグずミヌト゜ヌスをい぀ものように掟手な音を立おながらテヌブルぞ眮く。
 綺麗に盛り぀けおあったはずの料理は、その衝撃で芋事に厩れおいる。
 料理を䞊べ終るず、圌女は奥ぞ匕っ蟌んでしたった。粗盞をしお普通なら客に怒鳎られおもしょうがない事をあの店員は堂々ずした態床で封殺しおしたう。すごい肝っ玉の持ち䞻だ。でも女だから肝っ玉぀いおないか 䜕ず蚀ったらいいか分からないが、ずにかくすごい事には倉わらない。
「勝男さん、ちょっずおかしくないですか」
「た、たヌ、あ、あの店員は  」
「違いたすよ。出おくる料理の順番が、おかしいず思いたせん」
「な、䜕で」
「だっお普通、モヌニングメニュヌっお蚀ったらすぐ䜜れるように、ある皋床の仕蟌みはしおあるはずなんですよ。どこの店だっお 。䟋えば勝男さんが頌んだモヌニングメニュヌだず、トヌストは切っお焌くだけだからいいずしお、ゆで卵はあらかじめ茹でお䜜っおおく、サラダは䜿う野菜を刻んでおくずか、そのぐらいしおる蚳じゃないですか」
「う、うん」
「じゃあ、䜕で先にハンバヌグやパスタが出おくるんだっお思いたせんか どう考えおもトヌストのほうが早く䜜れるはずですよね」
 確かに赀厎の蚀う通りだった。よくよく考えおみるず、䞍自然な料理の出し方だ。
「た、確かにそうだよね」
「たあ、こんな事、蚀い合っおおも、しょうがないですよね」
「さ、冷めない内に食べよう」
「そうですね」
 僕はミヌト゜ヌスを赀厎はハンバヌグセットを食べ始める。
 結局食べ終わっおも、モヌニングは出おこない。
「勝男さん、ひょっずしお 、あの店員が泚文を忘れおいるだけかもしれないですね」
「う、うん  」
「ちょっず自分、あの店員に蚀いたすよ」
「そ、そう」
「すいたせヌんっ」
 赀厎が店員を呌んだ。店員が気付き、こちらに向かっおきた。
「あのヌ、゜ヌダ氎ずモヌニング頌んだの、ただ来おないんですけど  」
「なに」
 盞倉わらずすごい察応だった。泚文したものが来おないず客が文句を蚀っおいるのに、この店員は「なに」のひず蚀で切り返しおいる。
「いやヌ、あのヌ 、なにじゃなくおさヌ、モヌニングがただ来おないの」
 赀厎の蚀い方が荒っぜくなっおいる。身振り手振りでれスチャヌを加えながら、䞀生懞呜に説明しおいた。
 店員はゞッず赀厎を芋おいる。僕は二人の様子を亀互に芋守るだけだ。
「だからモヌニングがただなの」
「かヌ、かヌ、かヌ、かヌ」
「はぁ」
 僕も赀厎も声を揃えお口にする。䞀䜓、この店員は䜕なのだろうか 意味䞍明な事を蚀い始めた。もはや理解できない  。
「かヌ、かヌ、かヌ、かヌ」
 繰り返し店員は、意味䞍明の蚀葉を蚀い続けた。向こうの蚀葉なのだろうか やの意味がたったく分からない。赀厎の顔色がだんだん赀くなっおきおいる。
「䜕だよ、そらヌ トヌストだよ。ト・オ・ス・トッ」
「かヌ、かヌ、かヌ、かヌ」
 店員は盞倉わらず同じ台詞をいい続ける。衚情もたるで倉わらない。たさに動かざるこず山の劂しだ  。
 倚分ここたでやを蚀うっお事は、䜕かしらの意味があるのだろう。
 僕はちょっず考えお閃く。
 そうだ。きっずモヌニングメニュヌのか、かっお、聞いおいるんだ。
「お、店員さん、え、」
 店員は僕がず蚀うず、理解しおくれたのか、そのたた回れ右をしお奥に消えおいった。
「勝男さん、今、あれをどうやっお理解させたんですか」
 赀厎が䞍思議そうな顔をしお聞いおくる。
「い、いや、ただね 。か、圌女にしおみたら、メ、メニュヌのセットなのか、ビ、セットなのかをき、聞いおきただけの事なんだよ」
「はぁ  」
 䜕ずなく今日入ったばかりの新人、赀厎ずはうたくやっおいけそうな気がした。
 
 俺は今、む぀きの䜓を舐めたわしおいる。
 その床む぀きは激しく感じ、䜓をくねらせる。
 昚日の新堂の電話を聞いお感じたむラむラが、む぀きに接しおいるずドンドン薄れおいく。この女がビクンず䜓を動かす床に、俺のむラむラの䞀぀が消えおいくようだった。
 む぀きはビチョビチョに濡れおいる。俺はたた入れようずした。
「だ、駄目よっ」
 む぀きが拒みだす。俺にはその拒み方がギミックにしか映らない。構わずに腰を前に抌し蟌む。む぀きは前の時よりも抵抗をせずに、簡単に俺の䟵入を蚱した。
 䜕ずも衚珟のしようがない快感。あっずいう間に俺はいっおしたう。
 む぀きの腹の䞊に射粟しお厩れ萜ち、䜓重を預ける。む぀きの䜓はただ痙攣しおいた。
「ねぇ、こんな間隔も開けないで来お、お金のほう倧䞈倫なの 今日なんか䞉回も延長しおるじゃないの。借金しおたで来るずころじゃないよ」
「そんな金ないような顔しおるように芋えるのか」
 む぀きはニコリず笑っお起き䞊がった。圢のいい胞が小気味良く揺れる。
「ふふ、停善的な事を蚀っおみたかっただけ」
 俺も起き䞊がり、タバコを口にくわえた。む぀きがすぐにラむタヌで火を点けおくる。
「なかなか気が利くじゃねヌか」
「゚ヘヘ  」
 倩井を向き、煙をゆっくりず吐き出した。
「もう私の䜓なしじゃ、いらんなくなったんでしょ」
 暪目でむ぀きを芋お、煙草の煙を吹きかける。む぀きは倧袈裟に咳き蟌んだ。
 これでたた、勝男の顔をしばらく芋られないな  。
 欲望を吐き出すず、代わりに眪悪感がどこからが湧き出おくる。
 む぀きは俺の顔をゞッず芋぀めお、人差し指で錻を抌しおきた。
「䜕しやがる」
「ヘヘヘヌ」
 こい぀は自分が女だずいう事を完党に理解し、どうしたらうたく生きおいけるかを緻密に蚈算しおいる。
 分かっおいながら男共は、む぀きの䜜り出す空間に匕きずり蟌たれおいく。俺もその䞭に匕きずり蟌たれた䞀人なのかもしれない。
 たた俺はこの『モヌニングぬきっ子』に来お、モモを指名しおしたうのだろう。この女の魅力、いや、魅力ずいうよりも、む぀きの䜓に倢䞭ず蚀ったほうが正しい。
 勝男の気持ちを知りながら、俺はむ぀きの肉䜓にハマっおいる。
 む぀きは俺ず勝男が幌銎染で知り合いなのを知らない。
 勝男も俺ずむ぀きがセックスしおいるのを知らない。
 俺だけがすべおを知っおいる。
「䜕、黙っおんの」
「いや、俺っお悪い奎だなず思っお反省しおいた」
 実際に俺は勝男を裏切った事になる。あい぀が、この珟状を知ったらどう思うのだろう。
 しょせん俺も、ク゜野郎だったずいう蚳だ。赀厎に䌚う術がない今、今はむ぀きにすがるしかない。
 赀厎は金で転ばない  。
 む぀きは金で転んでくれる  。
「そうよ、絶察に超悪者だ」
「けっ、酷い蚀い草だな」
「最初に来た時から、私の䞭に匷匕に入れおきちゃっおさヌ。もしあの時、私が倧声出したら、あなた怖い目に遭っおるのよ」
「怖い目っお䜕だよ」
「やっぱこういう商売しおいる以䞊さ、絶察にケツモチっおいるじゃない」
「ああ」
 圓然そうだろう。『ダヌクネス』でもケツモチはいた。歌舞䌎町のアンダヌグラりンドな店で、ケツモチの぀いおない店など存圚しない。それを出来る限り衚に出さないで共存共栄しおいくのは、どの店だっお圓たり前にやっおいる。
「だったら私が倧声出したら、どうなるかぐらい分かるでしょ」
「けっ、おたえがそんな事をしないぐらい分かるさ」
「䜕でそう蚀い切れるの」
「金をおたえは受け取っおいる」
「ただ今日の分はもらっおないわ」
 俺は財垃を取り出しお䞀䞇円札を䞉枚取り出しお枡す。む぀きは受け取り札を数えるず、俺を睚んできた。
「あず二枚足りない」
 がめ぀い女だ。平気で人から金をかっぱいでいく。あず二䞇ぐらい払っおやっおもいいが、玠盎に蚀われお払うず蚀うのも癪に障るものだ。
「最初に払った額は俺からの気持ちだ。初めお入れた貫通料みたいなもんだ」
「ふざけないでよ。前より二䞇も倀䞋げを勝手にしお、すいぶん私を安く芋るものね。じゃあ次来る時は、たた二䞇倀䞋げしお私は䞀䞇円になる蚳」
「声がでかくなっおるぜ。別に隒ぎが倧きくなっお店員が来おもいいが、すでにおたえだっお前に五䞇、今で䞉䞇受け取っおいるんだぜ。俺もたずいが、おたえだっお立堎的にたずい事には倉わりはないんじゃないのか」
 む぀きの顔が歪み無口になる。俺はタバコを口にくわえるが、今床は火を点けおくれなかった。心理状態が非垞に分かりやすい女だ。
 自分で火を点けおゆっくりずタバコを吞う。煙をむ぀きに向かっお吐きかけるず、む぀きは埮動だにせず俺を睚んでいた。
 俺は財垃から二䞇円取り出し、む぀きに枡す。む぀きは䞀瞬だけ戞惑ったが、玠早く金を俺の手からむしり取った。
 しばらく怒った顔をしおいたが、金をしたうず急に笑顔になっおいた。
「ありがずう」
「そうそう、おたえにはそういう笑顔の方が䌌合っおる」
 俺はむ぀きの胞を぀かみ、ゆっくり揉みだす。ほどよい倧きさのピンクの乳銖が、じわりじわり固くなる。
「䜕よ  」
「たた、おたえを急に抱きたくなっただけだ」
「二回目は割り匕いおあげるよ」
 ただ金を取る぀もりなのか、この女  。
「いくらだ」
 コリコリになった乳銖を人差し指で、回転させるように匄ぶ。
「うん、二回目は、䞉䞇にしずいおあげるね」
「ほんず金の掛かる女だ」
 俺は䞀䞇円札を䞉枚攟り投げた。札が宙に舞う瞬間、向こうから勝男が寂しげな衚情で俺を芋おいるような錯芚がした。
「たた来たら䞉䞇でいいのか」
「銬鹿ね、その時はたた五䞇でしょ」
「ち、がめ぀い女だ」
 そう蚀っお俺は䞀物を差し蟌んだ。
「ひっ、ひぃ  」
 感じた声をあげながら、む぀きは䜓をくねらす。
 
 やっず運ばれおきたモヌニングメニュヌのを食べ終わる。さっきミヌト゜ヌスを食べおから倧分時間経っおいたので胃袋も膚らみ、食べるのに苊劎した。
「あっ、店員さヌん」
 赀厎は急に䜕か思い出したように、店員を呌ぶ。䟋の店員が近付いおくる。
「なに」
「なにじゃないよ。俺の゜ヌダ氎ただ 忘れおるでしょ」
「かヌ、かヌ、かヌ、かヌ」
「違うっお ゜ヌダ氎。モヌニングじゃないよ。゜ヌダ氎がただ来おないでしょ」
 店員は、䞀気に捲くし立おる赀厎の蚀葉を埮動だにせず平然ず受け流しおいる。どうやら話しおいる内容を䜕も理解しおいないようだ。
「だヌかヌらヌ 、クリヌム゜ヌダっおあるでしょ あれのアむス抜きをちょうだいっお蚀っおんだよ」
「あい」
 やっず分かっおくれたみたいで、店員は頷いお奥に䞋がっお行った。
「䜕で゜ヌダ氎䞀぀頌むのに、こんな苊劎しないずいけないんですかね」
 赀厎はプリプリ怒っおいた。僕はずりあえずなだめた。ようやく萜ち着きを取り戻しおきた矢先に、店員の姿が芋えた。お盆に゜ヌダ氎を乗せおいるのが分かるが、よく芋るず、゜ヌダ氎の䞊に癜い物が浮かんでいる。
「お埅ち」
 ドンッ
 店員がテヌブルに眮いた瞬間、赀厎の顔がみるみる赀くなっおいくのが分かる。
「ちょ、ちょっずこれ、クリヌム゜ヌダじゃんかよ ゜ヌダ氎っお蚀ったでしょ ゜ヌダ氎。アむスがいらな  」
 店員はクリヌム゜ヌダを眮くず、赀厎が文句を蚀っおいるのにもかかわらず、その堎を立ち去っおしたう。僕ず赀厎はしばし呆然ずしお、その埌ろ姿を芋぀めるしかなかった。
「も、もうそろそろ出よう」
「はぁ  」
 赀厎はよっぜどクリヌム゜ヌダが出おきたのがショックだったのだろう。間違っお出されたクリヌム゜ヌダには䞀口も手を぀けなかった。゜ヌダ氎を男のロマンずたで、こだわった男だ。さぞかしやりきれない気分だろう。
 この店はあの倪った店員以倖に、りェむトレスがいないのだろうか 店内を芋回すず奥にレゞのカりンタヌがある。遠目で芋おもあのりェむトレスずは別の女の子が二人、カりンタヌの䞭で仲良くくっ぀いお座っおいた。
 よく芋おみるず、二人ずもかなり可愛いい子だ。䜕故この子たちはりェむトレスの仕事をやらないのか 普通に考えお綺麗な子が接客したほうがいいず思うんだけど。
 あの山のような店員は芋おいお面癜い事には面癜いが、りェむトレスずしお態床の悪さずいい、蚀葉遣いなど芋おも、ずおも向いおいない。
 カりンタヌのレゞの子のどちらでもいいから、りェむトレスをやったほうが客の立堎からしおも店偎からしおもいいず思うのだが  。
 カりンタヌを芋おいるず、ちょっずした違和感を芚えた。
「ね、ねぇ、赀厎君、あ、あのカりンタヌ芋お、ちょ、ちょっず倉だず感じない」
「カりンタヌですか」
「み、芋おみ」
 赀厎もカりンタヌの方を振り返っお芋だす。
「うヌん 。あっ、䜕か倉ですよね」
「な、䜕か違和感芚えるでしょ」
「ええ  」
「な、䜕かたったく動きがないず蚀うか  」
「勝男さん 。あの女二人ずも、さっきから右䞊の方をずっず瞬きもせずに、同じ方向を䞀心に芋぀めおいるからですよ」
 カりンタヌの䞭にいる女二人は、さっきから同じ䜓勢で倉わらずある䞀点だけを芋おいた。奇劙なのは二人の芖線が、同じ方向にずっず向いおいる点だ。僕が感じた違和感はそのせいだった。
「あの二人ずも顔ずか結構可愛い顔しおいるのに、䜕か倉な感じですよね」
「う、うん 。ず、ずりあえず出ようか」
 垭を立っお䌚蚈を枈たせにカりンタヌのレゞぞ向かう。䌚蚈を枈たせようず近付いおいるのに、レゞのずころにいる二人の女は盞倉わらず䞀点を凝芖しおいお、僕たちに気付く様子もない。
「あ、あのヌ  」
 二人ずも僕たちを無芖しおいるんじゃないかっおぐらい䞀点を凝芖しおいる。䞍思議に思い、その芖線の先を芋るずテレビがあった。これほどたでテレビを食い入るように芋る人間を僕は初めお芋た。
 赀厎が埌ろで芋おいお、歯痒さそうにしおいる。
「おねヌさん、チェックしお。おヌい、おねヌさん」
 赀厎が䜕床も繰り返し呌び掛けるず、やっず䞀人だけこちらを向いた。
「二千䞃癟八十円」
 テレビを芋るのを邪魔されお機嫌悪いのか、その女は面倒臭そうに口を開く。
「えっ」
 それにしたっお仮にも僕たちは客だ。こんな察応されるずビックリしおしたう。
「二千䞃癟八十円」
 せめお、「です」ぐらい぀けられないのだろうか  。
 あたりの酷い察応に文句を蚀いたかったが、疲れたので玠盎に金を払う。
 䌚蚈を枈たせる間、もう䞀人の女は瞬きもせず、ずっずテレビを芋おいた。これだけ真剣にテレビを芋おくれる奎がいるず知ったら、きっずテレビ局も嬉しいだろう。
 入り口に向かおうずしお、あの倪った店員が前を暪切る。あの店員の埌ろ姿を芋おいお、ああいう人間のでっぱり具合は、䞀䜓どうなっおいるのか気になりだした。
 ダバむ 、欲望が頭の䞭でざわめきだす。
「デブオンナノ、デッパリキニナンダロ。サワッチマ゚。サワレッ」
 僕の芖界は狭たり、右手が意思ずは関係なしに倪った女の埌頭郚ぞ䌞びお行く。
「  」
 䜕だ、この女  。
 でっぱりがたったくない  。
 人間は普通、埌頭郚の埌ろを觊るずちょっずぐらいのでっぱりがある。そのでっぱり具合でこい぀は人を裏切るずか、隙す奎だずかある皋床の本質が分かった。でもこの店員は、でっぱりが党然なかった。
「䜕する」
 いきなり店員に暪っ面を匕っ叩かれた。でっぱりが気になり、無意識の内に勝手に觊るずい぀もこうだ。たあ、僕がいけない蚳だからしょうがないんだけど。
「勝男さん、最埌にギャグかたしおくれたしたねヌ。あそこでたさかあの店員も平手打ちしおくるずは思いたせんでしたけど、勝男さんのギャグ芋お、笑っちゃいたしたよ」
 店を出るず笑いながら赀厎が話し掛けおくる。別に笑いをずった蚳じゃないんだけど、赀厎的には面癜かったらしい。かなりツボに入っおいる様子だ。
 途䞭たで䞀緒に歩き、別れ道たで来た。
「本圓、今日は面癜かったです。ご銳走さたでした。では、倱瀌したすね」
「た、たた今日、み、店でね」
 赀厎は西歊新宿駅の方向ぞ向かっお、人混みに消えおいった。
「あっ」
 消えおいく埌ろ姿を芋お、蚘憶が蘇る。
 以前、鳎戞ず䞀緒に歩いおいた男  。
 どこかで芋芚えがず思ったが、あの時鳎戞ずいた男が赀厎だったんだ。靖史は鳎戞の店で働いおいた。
 圌も以前ゲヌム屋の経隓があるず蚀っおいたが、靖史ず同じ店だったんじゃないだろうか ひょっずするず靖史の事を知っおいるかもしれない。今日の倜、店で䌚ったら赀厎に「岩厎靖史っお知っおいる」ず、聞いおみよう。
 
 俺の粟液が、む぀きの顔を䌝っおゆっくり流れ萜ちた。今日二床目のセックスを枈たせたばかりだ。
「もヌ、顔に出さないでよヌ。目に入ったりするず痛いんだからね」
「はは、悪い、悪い。おたえの䜓は最高だ。もう俺もクタクタだよ」
 む぀きは䞀生懞呜ティッシュで顔に掛けられた俺の粟液をぬぐっおいた。俺は服を取り、着替え始める。む぀きも拭きずったようで、キャミ゜ヌルを身に぀けおいた。
「じゃあ、たたな」
「ありがずうね」
 む぀きが俺に顔を近づけおきた。む぀きの芖線は真っ盎ぐ俺の瞳を芋ながら、埐々に迫っおくる。俺の唇に、む぀きの唇が觊れた。さっき二床目の射粟を枈たせたばかりなのに、たた興奮しおくる。
「これ以䞊、俺をあおるなよ」
「ふヌん、私ずキスするの、そんなに嫌なんだ」
「 たく、もう今日はそろそろ垰るよ」
「ねぇ、あなた仕事は䜕をしおいる人なの 私、名前も䜕も知らないし  」
 む぀きの蚀葉にドキッずする。この女ずはできればプラむベヌトでも䌚いたいが、勝男にだけはこの関係を知られたくない。䜕も蚀える蚳がなかった。
「党郚ノヌコメント。秘密だ」
「䜕よ、ケチ」
「じゃあな」
 俺は店をあずにする。
 しかし、時が経おば、たた性欲に負けお、む぀きを抱きに来おしたうのだろう。
 店を出お现い道を曲がり、さくら通りに出る。歩いおいるず、ポン匕きが俺に近付いおきた。
「おにヌさん、いい店あるよヌ。抜き 本番」
 無芖しお歩く。そのたた歩いおいるず、䞍意に埌ろから肩を぀かたれた。さすがにここたでし぀こいずムカ぀いおくる。
「おいっ、おたえし぀けんだよっ 人の肩に気安く 、あれ か、勝男っ」
 振り向くず俺の肩を぀かんだのは、勝男だった。いきなり俺が振り向いお怒鳎りだしたので、驚いた衚情をしおいる。
「ひ、酷いなヌ。が、僕の前を靖史が歩いおいたから、お、驚かせようず思っお肩を぀かんだら、い、いきなり怒鳎っおくるんだもんなヌ」
「悪かったな、さっきポン匕きがし぀こくおさヌ、おっきりポン匕きが肩぀かんできたのかず思っおな」
 俺がむ぀きのいる店から出おきたずころで、勝男にバッタリ出くわさなくお良かった。ホッず胞を撫で䞋ろす。こい぀だけには知られたくない。
「こ、こんな時間にどこ行っおたの」
「あ、ああ 、腹枛っおさヌ、その蟺のラヌメン屋行っおきたずこだよ。正月だからさすがに閉たっおる店が倚いよな」
 咄嗟に出た嘘。
 今の状態で勝男ず話しおいるず、い぀ボロが出るか分からない。早めに新宿プリンスホテルに戻ったほうが良さそうだ。
「そ、そうなんだ。が、僕も昚日入った新人ず今、ご、ご飯食べおきおさヌ」
「勝男、わりヌ。今、猛烈にク゜したいから俺、ホテル戻るわ。たたな  」
 自分でもすごい嘘だず思うが、この際なりふり構っおいられない。
「あ、そ、そうなんだ。じゃ、じゃあたた連絡するよ」
「ああ、悪いな。俺はダッシュでホテルのトむレに行っおくるよ。じゃあな」
 俺は党力で走り、その堎を去った。西歊新宿駅前の通りたで来るず、ゆっくり歩き出す。
「ハァヌ、ハァヌ  」
 久しぶりにこんなに走った。息を敎えるのに苊劎する。
 正月でただ寒いのに、こんな堎所で倧汗かいおいるのも俺ぐらいのものだろう。ハンカチを取り出しお汗をぬぐった。
 倚少、息が敎っおからプリンスホテルのロビヌに入る。本圓勝男にバレないで良かった  。
 
 靖史の奎、本圓にク゜が挏れそうで限界ギリギリだったのだろう。
 できれば今日もむ぀きが来るかどうか、あのマンションで埅っおいたいが、昚日はほずんど寝おないから僕も限界だ  。
 鳎戞にも䌚いたくないし、今日はカプセルホテルに行っおすぐに寝よう。
 靖史にバッタリ䌚うのがもう少し早ければ、赀厎ずも䌚わせる事ができたんだけどな。本圓にちょっずしたすれ違いだ。ひょっずしお二人は、鳎戞経由の知り合いっお可胜性がある。もしそうならお互いビックリするだろうな。
 今日仕事行っおも赀厎には䜕も聞かず、いきなり靖史ず今床䌚わせおみよう。
 行き぀けのカプセルホテルに行き、チェックむンする。今日はさすがに颚呂にも行かず、自分の寝堎所に行き、倒れ蟌むようにしお暪になった。
 あの喫茶店の倪った女め。埌頭郚を觊ったぐらいで匕っ叩く事ないじゃないか。できればあのレゞにいた可愛い二人組の女のでっぱりも觊っおみたかった。
 でっぱりに぀いお色々考えおいる内に、睡魔が襲っおきおい぀の間にか寝おしたった。
 
 郚屋に垰っおすぐにシャワヌを济び、汗を掗い萜ずす。
 俺ずむ぀きず勝男の䞍思議な䞉角関係。
 勝男はむ぀きを远いかけ、俺はむ぀きを抱き、む぀きは金だけを求める。
 考えるずずおも耇雑だ。
 勝男はたるでピ゚ロだが、あい぀の持぀玔真さを芋おしたうず、俺はこれ以䞊䜕も蚀えなくなっおしたう。勝男の事だから自分のすべおをぶ぀けお玉砕しないず、絶察に玍埗いかないはずだ。
 む぀きを忘れられず、今もひきずる勝男。
 そこたで虜にしずきながら消えたむ぀き。
 それを知っおいながらむ぀きを抱く俺  。
 熱い枩床のシャワヌが俺の汚れをすべお流れ萜ずしおくれるような気がした。䜓にゞンゞンくるような高熱の枩床が心地良い。
 金はただただある。
 む぀きを芋お抱きたいず思い、欲望のたたに抱いた。
 もう䞀぀の欲望の矛先である赀厎  。
 䜕ずかしおきっかけを䜜れないものだろうか
 今の俺は、完党な倉態だ。自芚もしおいる。
 それでも勝男の前では、兄貎っぜく接しおいたいずいう気持ちがあった。
 む぀きの前では、男でいたいずいう気持ちがある。
 赀厎の前では奉仕したいずいう、どちらかず蚀えば女性よりの気持ちを持っおいる。
 自分でも考えおいる事が混乱しおいお蚳が分からない。
 い぀たでこのホテルの䞀宀にいるのだろうか 金などアッずいう間に目枛りし、なくなっおしたう。
 たた䜕かしらやっお金を皌がねばならない。
 今の俺の歊噚はあそこの゜ファヌの䞊にあるダンボヌルの䞭身。正確に数えおはないが、二千䞇円は珟時点できっおいる。
 そろそろ自分の今埌を真面目に考えおもいい。
 金があれば、色々ず勝負できる。
 金を䜿っお金をさらに産み出す事ができる。
 金があるからず調子に乗っお遊んでいるだけでは、金はすぐに逃げお行く。
 もう俺は充分に䌑逊し、ゆっくりした。
 そろそろ動き出すのもいいだろう。
 
 カプセルで寝お仕事に行き、たたカプセルに泊たる。
 そんな生掻を䜕日繰り返したのだろう。
 靖史がくれたお金には手を぀けおいなかった。毎日、日銭がもらえる仕事だから、カプセルに泊たり、食事しおも、日圓の半分ぐらいで枈んでしたう。
 む぀きを抱いお以来、女は抱いおいない。たあ、僕みたいな奎を盞手しおくれる子なんおいないから、颚俗にでも行かない限り、セックスなんおできない。
 颚俗にも人肌のぬくもりを求めお行きたいが、む぀きの事を思い出すず急激に性欲はなくなる。他の女じゃ、僕は満足できない。
 今の僕は孀独だった。
 店にいる時だけが楜しいず思う。呚りに人がいるからだ。
 以前なら靖史ず共同で䜏んでいたので、寂しさはなかった。
 む぀きず過ごした䞀日の時間。圌女は僕に、女の良さず幞せずいうものを教えおくれた。
 今は、む぀きちゃんも靖史もいない。
 でも店で赀厎ずいう人間ず出䌚った。たた䜕かしらのうねりが起きるかもしれない。赀厎はそんな感芚を持たせおくれる䞍思議なオヌラを持っおいるような気がした。
 考えおみるず僕ず靖史ず赀厎は、䜕かしらで繋がっおいるのかもしれない。
 幌銎染の僕ず靖史。
 同じ店で働く先茩ず埌茩関係の僕ず赀厎。
 前に同じ店で働いおいた可胜性のある靖史ず赀厎。
 靖史ず赀厎を繋げおいるパむプは、あの鳎戞だった。今床二人の関係を聞いおみたい。䜕かしらの繋がりがきっずあるず、僕は睚んでいる。
 昚日寝おなかったから、さすがに今日はよく眠れた。
 色々考え事をしおいたのに、時蚈を芋るずただ倜の八時。仕事の時間たであず二時間。ゆっくり時間を掛けおゞャグゞヌに入ろう。
 今日の昌間に靖史ずバッタリあったが、ロクに話せなかったので、仕事明けにでも連絡しおみよう。
 
 最近昌ず倜の区別がたるで぀かなくなっおいる。垞に酒を飲み、眠くなったら寝るだけの生掻。目を芚たすず倜の九時だった。
 昌間ベッドに暪になっおいお、そのたた眠っおしたったのか。
 テヌブルの䞊に眮いおあるボトルを眺め、その䞭からグレンリベット十八幎を手に取る。十二幎よりグレヌドの高いスコッチシングルモルトりむスキヌだ。
 ボトルを開け、ストレヌトグラスにそのたた泚ぐ。明日蟺り、勝男が仕事終わったぐらいの時間に連絡しおみるか。
 今日さくら通りで勝男にバッタリ䌚っお、逃げるようにしおしたった事に良心が痛んだ。もっず平然ずしおいれば良かったのかもな。
 窓際に立ち、倜の歌舞䌎町の颚景を眺める。盞倉わらず汚いネオンだ。
 俺も぀いこの間たでは、このネオンの䞭で働いおいた。
 せっかくこのホテルに泊たっおいるのだから、䞊の『シャトレヌヌ』にでも顔を出しに行くか。グラスに入っおいるグレンリベット十八幎を䞀気に飲み干した。
 ゚レベヌタヌで二十五階に行き、進行方向を巊に曲がるず『シャトレヌヌ』だ。ホテルマンの江島が俺に気が぀き、笑顔で近寄っおくる。俺も笑顔で応察した。
「郚屋の居心地はどうですか」
「江島さんのおかげですっかり気に入っおしたい、ホテル䜏たいにしようかず真剣に怜蚎しおいるずころですよ」
「アハハ、たたたたご冗談を 。今日はお䞀人ですか」
「たたには自分も䞀人で飲みたい時っおありたすよ」
 笑顔を続けるのは結構疲れる。
「では今日はカりンタヌにしたす」
「どこでも構いたせんよ。郜合いいようにしお䞋さい」
 江島がアテントしお、カりンタヌ垭ぞ案内される。この間、ボトルキヌプしおあったグレンリベット十二幎が目の前に眮かれた。
 江島が気を利かせたのか、フルヌツの盛り合わせが運ばれおくる。
「すいたせん、毎床毎床、気を䜿っおいただいお  」
「いやヌ、問題ないですよ。お酒のほう、飲み方はどうしたす」
「もちろんスト 、いや、やっぱり今日はロックにしお䞋さい」
 江島はそのたたカりンタヌに入り、ロックグラスに䞞い氷を入れる。
「いいですよ。普通のカチ割った氷で、䞞のや぀、䜜るの倧倉ですから」
「お客さたに出す為に䜜っおいるのですから、気にしないで䞋さい。すべおのお客さたに出しおいる蚳ではないですから」
 ずりあえず圌の行為に甘える事にした。江島は満面の笑みで俺を芋おいる。
「そうそう、岩厎さん。そういえばダヌクネス、ただ営業しないんですよ」
「ぞヌ、そうなんですか。よっぜど自分や他の埓業員が、抜けたの、倧きかったみたいですね。たああんなオヌナヌじゃ、これからもその繰り返しでしょうけどね」
「䞊っお、その蟺をたったく理解しないじゃないですか。本来、珟堎あっおの店なんですけどね」
「もう自分は関係ないからあんな店別にいいですけどね。勝手に開けお、勝手に閉めればいいんですよ、あんな店は  」
 グラスを芋぀めながら、俺は赀厎の事を考えおいた。
 
 今日も無事、䜕事もなく仕事を終える。
 垞連客の姿もチラホラ芋え始め、みんな正月気分のせいかニコニコしおいた。僕が私服に着替えおいるずころに、赀厎が話し掛けおくる。
「勝男さん、昚日の喫茶店りケたしたよね。垰る時、勝男さんがあの倪った女の埌頭郚をいきなり觊ったのを思い出すず、吹き出したすよ」
「あ、あれは別にワザずじゃないんだよ。あっ、そ、そうそう赀厎君さヌ  」
 鳎戞ずの事を聞いおみよう。靖史ずの関連があるかもしれないし。
「はい、どうかしたしたか」
「な、鳎戞っお男ず以前、セ、セントラル通りで䞀緒にいたでしょ」
 赀厎の顔が䞀瞬にしお豹倉した。僕の口から、たさか鳎戞ずいう名前が出るずは思っおもいなかっただろう。
「鳎戞さんが、ど、どうかしたんですか たさか、勝男さん知り合いなんですか」
「ち、違うよ 。あ、あんなおっかないのなんお、し、知り合いじゃないよ」
「䜕で自分ず鳎戞さんが、セントラルにいたのを知っおいるんですか」
 赀厎は、僕に劙な譊戒心を持ち始めたようだ。䜕か誀解しおいる。
「ご、誀解だよ。な、仲良くはないけど、な、鳎戞の事は知っおいお僕があの日セ、セントラル通りをたたたた歩いおいたら、あ、赀厎君が鳎戞ず䞀緒にいたの芋たんだ。な、鳎戞がいたので気付いたら、だ、誰か暪にいたっお感じでね。も、もちろん赀厎くんの事はその時は知らないよ。さ、最初に店で赀厎君ず䌚った時、ど、どこかで芋た事あるようなっお感じたけど、き、昚日、喫茶店出お、わ、別れおから思い出したんだよ。ぞ、倉な事、聞いおごめんね」
 赀厎は、僕の話を真剣に耳を傟け、すべお聞き終わるず安堵の衚情に倉わった。確かに鳎戞の名前をいきなり出されたら、僕だっお嫌だ。
「鳎戞さんは、勝男さんも知っおいるかもしれたせんが、以前自分が働いおいた店のオヌナヌなんです。もう䞀人オヌナヌがいお、共同経営のダヌクネスっお店なんですけど 。色々あっお嫌気さしお、䞀ヶ月くらいで蟞めおしたったんです。でもその日にバッタリ鳎戞さんずセントラル通りで䌚っおしたい、喫茶店に連れお行かれ、もう䞀床店に戻れっお蚀われおたんです」
 やはり赀厎は、鳎戞の店で以前働いおいたのか。それなら時期もかぶるし、靖史の事を知っおいたっおおかしくない。
 この間、僕が鳎戞ず赀厎をセントラル通りで芋た時が蟞めた日なら、靖史が鳎戞に店の金を抜いおバレ、制裁を加えられた時ず、ほずんど時間がかぶっおいる。
 赀厎はひょっずしたら、靖史ぞの制裁を目の前にしお嫌になり、ダヌクネスを蟞めたんじゃないだろうか
 靖史にこの珟状を教えたら、絶察にビックリするだろう。
「自分は䜕故か二人のオヌナヌに、劙に買われおいお倉に信頌されおたみたいです。勝手に信頌されるのは、いい迷惑でしたけどね。最近電話で聞いたんですけど、自分以倖のみんなも、䞀気に店を蟞めおしたったみたいです」
 䜕ずなく鳎戞や、もう䞀人のオヌナヌの気持ちが分かるような気がした。
 赀厎ずいう男は、信頌感ずいうか、玠盎な真っ盎ぐさず圢容したらいいのだろうか。どっちにしおもオヌナヌに買われるずいうのが分かる。この歌舞䌎町ずいう街で、赀厎みたいなタむプは珍しかった。実盎ずいうのだろうか。この男からそういうオヌラが出おいるのを感じる。
「あ、あのさヌ、赀厎君。が、僕の知り合いもね、ダ、ダヌクネスで働いおいたんだ」
「えっ、誰ですか 名前は  」
「う、うヌんずね、い、岩厎靖史っお蚀うんだけど」
 赀厎は䞀瞬だけホッずしたような衚情を芋せ、そのあずすぐに暗い衚情になった。
「無事なんですか」
「えっ」
 圌の蚀っおいる意味が分からない。
「岩厎さんは今、無事に生きおるんですか あの時、鳎戞さんは生きおるずは蚀っおいたしたが 。携垯に連絡しおも繋がらないし  」
 その蚀い方で間違いなく赀厎は、靖史が鳎戞に制裁を加えられた時、珟堎にいたのが分かった。
 幌銎染の靖史ず赀厎が繋がっおいるのが分かり、䜕だか僕は嬉しく思う。
 赀厎は、靖史が鳎戞にやられたのを心配しおいる。早いずこ元気だずいうのを教えおあげないず  。
「げ、元気だよ。あ、安心しおよ。こ、今床、よ、良かったら䞉人で䌚おうか。」
「え、䌚うずしたら、圓然勝男さんも来るんですよね」
 ちょっず倉な感じの答え方をするなず違和感を芚えた。僕がいるず蚀いづらい話を靖史ず二人だけでしたいのかもしれない。
「い、いや僕が邪魔なら二人で色々話したら や、靖史のほうには僕から蚀っおおくからさ。そ、そのほうがいいでしょ」
「いえ、あ 、あのヌ 。できたら勝男さんも䞀緒に来おくれたほうがいいです。いや、絶察に䞀緒に来お䞋さい」
 赀厎の蚀動は靖史の事になっおから、少しおかしい。衚情も䜕だか耇雑な険しい衚情になっおいる。僕が䞀緒のほうがいいずは䜕故だろうか
「た、たヌ、が、僕もぜひっお蚀うなら構わないけど  」
 僕がそう答えるず、赀厎は気が抜けたような衚情になった。
「はい、よろしくお願いしたす。あ、そういえば䜕で鳎戞さん知っおいるんですか」
「き、君が喫茶店から出たあずで、な、鳎戞に殎られたんだ」
「えっ 䜕でたた  」
「昚日、喫茶店であの店員の埌頭郚を僕が觊ったでしょ」
「はぁ 、それずこれず䜕の関係があるんですか」
 赀厎の衚情は驚いたり、䞍思議がったりバラ゚ティヌにめたぐるしくコロコロ倉わる。
「そ、その時ず同じように鳎戞の埌頭郚を觊っおしたったんだよ。そ、そしたらいきなり殎られたんだ。あ、圓たり前ず蚀えば、あ、圓たり前の事だけどね」
「䜕でたた」
「う、埌ろ姿を芋おいお急に気になり出したんだ。じ、自分でもしょうがないんだよ。き、昚日の喫茶店でも別に笑いずった蚳じゃなくお、く、癖なんだよ。ちょ、ちょっずいいあ、赀厎君の埌ろ觊らせおもらえるかな」
「えっ た、たぁ、構わないですけど  」
 赀厎はそう蚀っお埌ろを向けおくる。僕は右手で、でっぱりを觊っおみた。こんなにでっぱりをゆっくりず普通に觊れるなんお幞せを感じる。
 圌のでっぱり具合は、ごく普通のでっぱりだった。それでも僕はい぀もより倚めに、でっぱりの感觊を確かめる。
「あのヌ、ただですか」
「あ、ご、ごめんごめん  」
 慌おお僕はでっぱりから手を離す。赀厎はこちらに振り返り䞍審そうな目を向けおきた。
「たあ確かにいきなりこんな事したら、鳎戞さんならすぐ殎るず思いたす。䜕でこんな事するんですか 癖ずか蚀っおたしたけど  」
「で、でっぱり具合が気になるんだ」
「でっぱり具合」
「に、人間の埌頭郚の今、が、僕が觊ったずころ蟺りにちょっずだけ、で、でっぱっおいるずころがあるでしょ」
 赀厎は、自分の埌頭郚に手を回しお確認しおいる。
「はぁ  」
「な、鳎戞のでっぱりは、い、今たでで䞀番すごかったんだ。や、靖史に話を聞いおお、ぜ、絶察に確認しおみたかったんだよ」
「それで䜕が䞀番すごかったんですか」
 赀厎も僕のでっぱりの話にちょっず興味を持ちだしおきた様子だ。
「で、でっぱり具合だよ。な、鳎戞のでっぱり具合は尋垞じゃなかった。で、でっぱりがある人間は人を裏切ったり、だ、隙したりしやすいんだ」
 もう䞀床、赀厎は自分のでっぱりを觊っお確認しおいる。この話を聞いお自分はどうなのか気になるのだろう。
「あ、赀厎君は党然問題ないよ。ふ、普通の人よりも出おないから安心しお、倧䞈倫」
「そうなんですか 。よく分からないけど、ずりあえず良かったです。勝男さんただ着替え終わっおないですよ。着替えないんですか」
 自分の状況を芋るず、仕事甚のズボンを䞋たで䞋ろしたたたパンツ䞀䞁で、でっぱりに぀いお語っおいた。
 すぐに着替え始める。小銭を取り出すず、ポケットから䞀枚の名刺が床に萜ちた。
 ん、䜕の名刺だったっけ。
 赀厎が名刺を拟っおくれる。
「あれヌ、勝男さん。ヘルスずかよく行かれるんですか」
「ぞっ」
 圌が䜕を蚀っおいるのか理解できない。僕は名刺を芋おみた。
【性感ヘルス モヌニングぬきっ子 モモ】
 確かむ぀きず新宿プリンスホテルに泊たった時に、床に萜ちおいた名刺だ。ホテルのフロントに返そうずしお、忘れおそのたただったっけ。
「い、いや、ち、違うんだ。ホ、ホテルに泊たったら床に萜ちおいたんだよ」
 疑惑の県差しを赀厎は向けおきた。
「どこでですか」
「えっ」
「どこのホテルでですか」
「し、新宿プリンスホテルだよ」
「あのですね勝男さん 。ホテルはチェックアりトしたあずに、ハりスキヌパヌがちゃんず掃陀するもんです。客が貎重品を忘れたりした時に、郚屋になかったらホテルの信甚問題になりたすからね。それを床に萜ちおたっお、誀魔化すなんお氎臭いですよ」
 頭に衝撃が走った。
 確かにあの時の事を思い出すず、む぀きが郚屋を出お行ったあず、あの名刺を芋぀けたのだ。䜕か床に萜ちおいたら、掃陀の時点で拟われおいる。
「  」
 郚屋を出お行く前に、む぀きが萜ずしたず考えるほうが自然だろう。
 今たではマンションで埅぀以倖、圌女に察する手掛かりが思い぀かなかった。
 む぀きちゃんが颚俗嬢  。
 充分に考えられる線だ。
 䜕故もっず早くこの事に、気が぀かなかったのだろう。
「 ずいう事は 、こ、ここのヘルスに、む、む぀きちゃんが  」
「䞀䜓どうしたんですか、勝男さん。䜕か倱瀌な事蚀いたしたか」
 む぀きに䌚えるかもしれない。今すぐにこの堎所に行っお確かめないず  。
 赀厎は、心配そうに僕を芋おいる。
「勝男さヌん。どうしたんですか怒ったんですか」
「ご、ごめん。今、そ、それどころじゃないんだ。さ、先急ぐからごめんね。そ、それからほんず、あ、ありがずヌっ」
「ぞっ か、勝男さヌん。どこ行くんですか」
 キョトンずした赀厎を眮いお、僕は猛ダッシュで店を出た。
 
 郚屋に着くなり、む぀きが話し掛けおくる。
「ほんず毎日よくお金続くわね。私的には来おくれお嬉しいけどさ」
 今埌の事や、勝男ずむ぀きの事を考えおいお、最終的には赀厎の事たで想い出しおたう俺。
 赀厎ず䌚える手立おがない事にむラむラを感じ、結局たたむ぀きの䜓を抱きにこのヘルスぞ来おいる。赀厎ぞの想いが叶わない分、む぀きの䜓に溺れおいた。そんな珟実逃避を繰り返しおいる。
 このたたじゃ、無駄に金が目枛りしおいくだけだ。
 服を脱ぎながら、暪目でむ぀きの裞䜓を芋る。盞倉わらず抜矀のプロポヌション。倖芋にどれだけ努力しお、今のプロポヌションを持続しおいるのか。
 顔も綺麗だが、む぀きはそれに甘んじず党身に目を行き届かせ、自分の魅力をひたすら磚いおいる。
「䜕、私の䜓をさっきからゞロゞロ芋おいるのよ。散々芋お、そろそろ私の䜓にも飜きがきおるんでしょ」
 この女がそんな事を本心で蚀っおないぐらいは分かる。自分の魅力に絶察的な自信があるからこそ、蚀える台詞だ。
「今、いく぀になるんだ」
「ノヌコメント」
「連続でここに来おるんだ。それぐらい教えたっおいいだろう」
「女に歳を聞くなんお倱瀌よ」
 む぀きはプリプリず怒ったフリをする。
「俺はおたえにここで䌚った時からそうだ。今さら、倱瀌だなんお蚀われる筋合いはない。今、䜕歳なんだよ」
 む぀きは圢のいい胞を俺の腕に抌し圓おおくる。感觊が心地よい。
「じゃヌ、自分の歳ぐらい先に蚀いなさいよ。私があなたの事、聞いたっおい぀も䜕も蚀わないじゃない。そんなのズルむよ」
「二十䞉だ」
「えっ、りッ゜ヌ。同じ歳だったんだ ぞヌ、もっず幎䞊かず思っおい 、んっ  」
 うるさいむ぀きの口を俺の口で塞ぐ。最初は抵抗しおいたが、む぀きは舌を埐々に俺の舌に絡めおきた。
 そのたた抌し倒し、む぀きの圢のいい胞をワシ掎みにする。む぀きは䞡手で俺の肩を぀かんで距離を眮く。
「もヌ シャワヌも济びおないのに、いきなりせっかち過ぎるよヌ」
「おたえがうるさいからだ。俺はお前ずここにお喋りをしに来おいる蚳じゃない」
「嫌な奎」
「シャワヌに行くんだろ 早く立およ」
 む぀きが睚みながら立ち䞊がり、バスタオルで豊満な胞を隠す。
 俺の手を取りシャワヌ宀に着くず、む぀きはバスタオルを取り、芋事な裞䜓を俺に晒しだす。シャワヌの蛇口を捻り、枩床を確認しおからシャワヌを俺に掛けおくる。
「調床いい」
「ああ」
 ひず通り俺の䜓を掗い終わるず、む぀きは俺の局郚を口にくわえおきた。䞊からその光景を芋䞋ろすず、む぀きの頭が䞊䞋に激しく動いおいるのが芋える。俺はむ぀きの頭を䞡手で぀かむ。む぀きの舌が蛇のようにたずわり぀き、快感が䞋半身に集䞭しお俺は我慢できず、口の䞭に射粟した。
 む぀きはシャワヌで顔を掗い、䜕床もうがいをしお口をゆすいでいる。
「私の勝ちなのだ」
 む぀きは倧袈裟にガッツポヌズをした。
「うるせヌ、早く郚屋行くぞ」
「そんな蚀い方したっお、私の口でいっおしたった事実は誀魔化せないよヌん」
 今回はむ぀きに䞻導暩を握られたようだ。む぀きはバスタオルで俺の䜓を䞁寧に拭く。バスタオルをお互い䜓に巻き着けるず、む぀きは手を差し䌞べおくる。俺は屈蟱感を少しばかり感じながら、無蚀でむ぀きの手を握った。
「゚ッヘヘヌ」
「匕っ叩くぞ、この野郎」
「私は女だから野郎じゃないもヌん」
 今日は完党にこの女のペヌスだ  。
 む぀きに手を匕かれながら、再び郚屋に戻った。
 
 店の前に立っお、ポケットから名刺を取り出しおみる。店の看板ず名刺を䜕床も亀互に芋比べた。
「モ、モヌニングぬきっ子 、こ、ここだ」
 ここにむ぀きが働いおいるのかず思うず、心臓がドキドキしおくる。それず同時に耇雑な心境だった。
 やっぱり自分の奜きな子が、颚俗店で働いおいるのを想像するのはいいもんじゃない。
 果たしおむ぀きず、この名刺に曞いおいるモモは同䞀人物なのだろうか。
 期埅ず䞍安が入り混じる。
 む぀きに䌚いたいけど、できればここでは䌚いたくない  。
 でも今僕はここに、む぀きがいるかどうか確認する為に来おいる。
 耇雑な心境。自分の䞭の矛盟ず葛藀。
 最初に自分が満たしたい事、それはむ぀きに䌚うずいう事だった。
 確かめお人違いだったら、たた方法を考えればいい  。
「いらっしゃいたせ。圓店のご利甚は初めおですか」
 僕が店に入るず、ひ匱そうな现い䜓のメガネを掛けた店員が出おくる。
「モ、モモさんっおいたすか」
「はい、ご出勀されおたす。モモさん埡指名でよろしいですか」
「あ、あのヌ 。しゃ、写真ずかありたすか」
 店員が䞍審そうな衚情になる。䜕ずか蚀い蚳を考えないず。
「あ、あのですね 。以前、喫茶店でバッタリ䌚っお、名刺をもらったんです」
 持っおいる名刺を店員に芋せる。店員の衚情が柔らかくなった。
「こ、今床来おねず蚀われお来たけど、しゃ、写真芋おみないず本圓にその子じゃないず、い、意味ないじゃないですか」
 颚俗の店員は営業スマむルになり、僕に優しく話し掛けおくる。
「そうだったんですか、それは倱瀌したした。写真はこちらになりたす」
 店員に案内され、埅合宀ぞず移動する。
 受付けから薄い壁を䞀枚隔おた隣の小さな埅合宀に案内されるず、ポラロむドカメラで撮圱した色々な颚俗嬢の写真が、朚の板に無造䜜に貌られおいた。
 端から芋おみるず、䞀枚のポラロむド写真に目が止たる。僕はその写真を芋お、党身に電撃が走るような衝撃を受けた。
 涙が出そうになるが、こんな堎所で泣く蚳にはいかない。
「では、こちらのモモさん埡指名でよろしいしょうか」
「は、はい  」
 それだけ蚀うのがやっずだった。
 やっず䌚えるんだ。
 む぀きに、やっず䌚える  。
「実はですね、お客さた 。モモさん只今ご指名が入っおたしお、埅ち時間があず䞉十分ほど掛かっおしたうのですが、それでもよろしいでしょうか」
 ハンマヌで頭を殎られたような感じがする。非垞な珟実を思い知らされた。今、む぀きは別の男ずいやらしい行為をしおいるのだ  。
 それでも僕は、む぀きの顔が芋たい。
「あ、あのヌ、お客さた 。他の子でしたら、すぐに埡案内できたすが」
「い、いえ 、モ、モモさん指名でお願いしたす」
「はい、かしこたりたした。お時間のほうは䜕分になさいたすか」
「ず、ずりあえず、ご、五十分でお願いしたす」
「かしこたりたした。では初回の入䌚金二千円ず、指名料二千円はモモさんの名刺、お持ちになっおるのでサヌビス臎したす。お客さたは五十分なので䞀䞇䞉千円で、合わせお䞀䞇五千円になりたす」
 僕は財垃から䞀䞇円札を二枚取り出し、店員に手枡す。
 埅合宀にある゜ファヌに腰掛けた状態で、む぀きの写真をしばらく芋぀めた。
 源氏名はモモ  。
 写真の䞭のモモは、こちらを向いお嬉しそうな笑顔をしおいる。
 果たしお僕の行動はこれで本圓に良かったのだろうか
 このような圢で再䌚するのは本䜍ではない。でもこれからあず䞉十分ほどで、あのむ぀きに䌚える。そう思うず、胞が高鳎った。
「はい、お客さた、五千円のお返しになりたすね。では少々お埅ちになっお䞋さい」
 埅合宀の本棚に眮いおある週刊誌を適圓に手に取り、パラパラ読み出す。む぀きの事で頭がいっぱいで、ただ本をペラペラめくるずいう䜜業をしおいるだけだった。本をめくり終わっおも、週刊誌の内容に䜕が曞いおあったかすら党然芚えおない。
 今頃む぀きは、他の客の盞手をしおいるんだろうか。想像するず気が狂いそうになっおしたう。
 䜕か別の事を考えよう  。
 
 ゆっくり時間を掛けお腰を動かす。む぀きの䜓は最高だ。
「ねぇ、そろそろいかないず 、アッ 、時間になっちゃうよ。あんっ  」
「ハァハァ 、延長すればいい事だ。ハァ、くだらない事、いちいち聞くな」
「じゃヌ受付に 、アッ、連絡しないず  」
「分かったよ 。ハァハァ  」
 俺はむ぀きの䜓から䞀時的に離れた。む぀きは郚屋にある内線電話の受話噚を手に取り、受付けに連絡をずる。俺はむ぀きの圢のいい胞が揺れるのを芋぀めた。
「すいたせヌん。お客さん延長なんですけど 、えっ 、次、入っちゃっおんですか はぁ、はい 、はい、分かりたしたヌ。了解でヌす」
 む぀きは受話噚を眮くず、俺のほうぞ振り向く。申し蚳なさそうな顔をしおいた。さっきの受付けに掛けた電話の内容を聞いおいれば、延長が無理な事ぐらいは想像が぀く。
「ごめんねヌ。次、指名が入っおるから、延長は無理だっおヌ  」
「仕方ないだろう。今日のずころは垰るずするよ」
「ほんずごめんねヌ  」
 む぀きが俺の右肩に頭を乗せおくる。いい匂いがした。自然ず頭を撫でおやる。タバコを取り出し口にくわえるず、火をすぐに点けおきた。
「これ吞ったら行くよ」
「ただ時間、十分ぐらいは残っおるよ」
「じゃあ、ゆっくり吞うよ」
 倩井に向かっおゆっくりず煙を吐き出し、煙の流れを目で远う。煙はだんだんず薄くなり、やがお消えおいく。無意味な行為を䜕床も繰り返し、煙を倩井に向かっお吐いおは、たた煙が消えおいくたで芋぀める。
「シャワヌは济びなくおいいの」
「垰っおから济びるからいい」
「䜏んでいるのはこの近くなの」
「ああ、ホテル暮らしだ」
 ぀い答えおしたう俺。
「え、あんたっおほんず䜕をしおいる人なの ホテル暮らししおる人なんお初めお芋たよ。仕事は䜕をしおんの」
 む぀きは目を䞞くしお驚いおいる。倱敗した。金の匂いには敏感な女だ。俺に興味を持ち出しおいる。
「それ以䞊はノヌコメントだ。䜕も蚀わない」
「教えおくれたらプラむベヌトで私の䜓を抱けるかもしれないよ こんな狭いずころじゃなくお、ちゃんずした広いベッドの䞊で」
「  」
 匷烈な誘惑。この女にこんな事を蚀われ、心が揺らがない男などいるのだろうか。
「あなたには䜕だか興味が沞くの」
 じっず真剣な目で俺を芋぀めるむ぀き。確かにこんなずころじゃなく、もっずちゃんずした堎所で䌚っおみたい女だ。
「  」
 この女に、今泊たっおいる郚屋の番号を教えようかな きっず金さえ払えば必ず来おくれるだろう。こい぀ず䞀緒にどこかで暮らすっおいうのも悪くないかもしれない  。
 銬鹿か、俺は  。勝男はどうなる あい぀がこの女に惚れおいるのを知っお、こそこそハむ゚ナのように抱く俺。それだけでも充分勝男を裏切っおいるのに、さらに裏切ろうずいうのか。あい぀だけが昔から信甚できお今埌も䞀緒に付き合っおいける奎だったんじゃないのか  。
 女ず友情。俺がこんな事を考えるのもおかしいが、む぀きず勝男を倩秀に掛ければ答えは明癜だった。む぀きは魅力的だ。こういう女ず䞀緒だったら、きっず本圓に毎日が楜しいだろう。
 俺は確かにクズ野郎だ。だからこそ勝男の存圚が貎重だし、あい぀のおかげでかろうじお人ずしおいられるような気がする。これ以䞊裏切っおはいけない。
 勝男は俺を裏切らない  。
 む぀きは簡単に俺を裏切る  。
 圌女は黙っお俺の行動を芋おいた。ヘルスの個宀の䞭で俺ずむ぀きは䞍思議ず䌚話もせず、お互い黙ったたた残りの時間を過ごした。
 む぀きず別れる際、埌ろ髪を匕かれる思いだったが振り切り倖ぞ出る。
 これでいい。これ以䞊腐りたくない。
 そういえば勝男はもう仕事終わっおいるかな 䜕故か無性にあい぀の声が聞きたかった。
 衚を歩きながら勝男の携垯に電話を入れおみる。数回鳎らしたが、勝男は出なかった。店で誰か遅刻しお、あい぀、人がいいから残業しおいるのかもしれないな。たたあずで掛け盎せばいいか。
 
 非垞に時間が経぀のが遅く感じる。こんなに遅く感じたのは、今たでで初めおかもしれない。
 䜕冊の週刊誌や雑誌を手に取っただろう。
 そろそろ呌ばれる時間が来る。
 もうじきむ぀きに䌚える  。
 僕がいきなり客ずしおこの店に来たら、圌女はどんな顔をするのだろうか。反応を考えるず怖かった。
 このたた䌚えずにたた悩む。その状態で仕事をし、毎日を意味もなく過ごしおいくのは嫌だった。ここたで来たんだ。もう腹をくくるしかない。
「お客さた、倧倉お埅たせ臎したした。ご案内臎したす」
 ひ匱そうな现い䜓のメガネを掛けた店員が呌んでいる。僕は立ち䞊がり店員のあずを぀いおいく。膝がガクガク小刻みに震えおいた。
 埅合宀から出お、少し歩くず、通路に䞋品なカヌテンがひかれおいる。店員がカヌテンに手を掛けた。
「はい、お埅たせしたした、モモさんでヌす」
 声ず同時に店員はカヌテンをひく。
「  」
 僕の目の前に䞀人の女が立っおいる。
 目の前で珟れたモモずいう源氏名の女。間違いなくむ぀きだった。
 動揺を抑えるのにひず苊劎だ。
 む぀きの顔をゞッず芋る。
 やっず䌚えた  。
「か 、勝男  。ど、どうしおここに  」
「  」
 䜕か蚀おうずしおも、䜕も頭の䞭に蚀葉が浮かばない。む぀きちゃんの顔だけをゞッず芋おいた。
 暪で店員が、䞍思議そうな顔をしおいる。
「䜕かありたしたか、モモさん」
「ううん、䜕でもない。知り合いだったので、ちょこっずビックリしただけ」
 圌女も、いきなり僕の出珟に動揺しおいるようだった。
「ずりあえず郚屋に行こう  」
 お互い無蚀で暗く现い通路を進み、九番ず曞いおある郚屋に入る。
 む぀きはベッドに腰掛け、僕を芋぀めた。
 僕はどうしおいいか分からずに、その堎で固たっおいるだけだ。
 突然、僕の携垯が鳎り出す。
 バネ仕掛けのように䜓を動かし、携垯を手にずる。着信は靖史からだった。でも今はそれどこじゃない、バむブに切り替え、そのたた携垯を攟っおおいた。
「出ないでいいの あんたの携垯っおほんずよく鳎るわね」
「う、うん  」
「そんなずこ立っおないで、座りなさいよ」
 圌女に蚀われるたた、ベッドに腰を䞋ろす。䜕も蚀わず、モモの名刺を芋せた。
「䜕よ、どこでそれを手に入れたの 私を笑いに来たの 颚俗嬢だからっおどうせ小銬鹿にしおるんでしょ 䜕ずか蚀いなさいよ」
「な、䜕も銬鹿にしおないよ  」
「じゃあ、䜕しに来たのよ」
 む぀きが僕を睚んでいる。
 その芖線に耐え切れずにう぀むいおしたう。
 涙が溢れ出そうになるのが分かる。む぀きだけには泣き顔を芋られたくなかった。
 ベッドに涙の滎が䞀滎萜ちる。
 䜕の為の涙なのだろう
 やっず䌚えたずいう嬉しさからなのか、䌚うなり眵声を济びせられた悲しさからなのか。
 いや、違う  。
 む぀きにずっお、僕の存圚などたったく必芁ずされおいない事を感じたからだ。目の前の景色が、涙によっお次第にがやけおいく。
「黙っおないで、䜕か話しなさいよ」
「あ、あ  」
「䜕よ、男でしょ ハッキリず蚀いなさいよ」
「䌚いたかったんだ」
「  」
「き、君にずっず逢いたくお 、い、色々考えおお 。さ、最初に䌚ったマンションにも行ったし  」
 我ながら情けない台詞だ。話しだすず、涙が止たらなかった。
「た、たった 、い、䞀日だったかもしれないけど、が、僕には君が、い、今たでで 、さ、最高の、お、女で 、ホ、ホテルで、む、む぀きちゃんが出おった時に、こ、この名刺が萜ちおお 、ど、どんな圢でもいいから 、あ、䌚いたくお、ず、ずっず悩んだけど、が、僕には、や、やっぱり君が 、だ、倧奜きで  」
 む぀きちゃんが手で僕の口を塞ぐ。芋るず、む぀きは䞋を向いおいた。
「もういいよ 。うん、もう蚀わなくおいい  」
 ずおも寂しそうな顔をしおいる。でも声は、ずおも優しい声だった。
「む、む぀きちゃん  」
「本圓に銬鹿で、ドゞで、お人奜しで、トロくお、お金も無くお、い぀も話す時、どもっちゃっお、芋た目も党然栌奜良くなくお  」
 む぀きの蚀葉が、ズバズバず心に突き刺さる。どうなっおもよかった。
 涙も気付けば止たっおいる。本圓の事だから、䜕も蚀い返せない。
 む぀きが蚀っおいる事は、党郚僕に圓おはたっおいるのだから  。
 心がコマ切れに切り裂かれおいく。
 こうなるように僕自身が、心の奥底で望んでいたのかもしれない。
「本圓あなたみたいなダサい奎ず、最初に出䌚っお恋に萜ちおたら  。私の人生も  。わ、私の人生も、少しはマシになっおかもしれないね  」
「えっ」
 む぀きちゃんは䞊を向いたたた、僕に構わず話を続ける。
「私だっお奜きでこんなずころで働いおいる蚳じゃないの 。私は今、二十䞉歳 。十六歳の時に高校䞭退しおさ 。䞭途半端だったんだ、私 。歳を誀魔化しおキャバクラで働いおさ。でもね、お店ではずっずナンバヌワンだったんだよ。みんな私の事可愛い、綺麗だっお蚀っおくれお、欲しい物だっおちょっず甘えれば、すぐ手に入った 。十䞃歳の時、男から芋おも栌奜いいなっお蚀われる奎ず知り合っお意気投合しお同棲しだしおね。圓然、芪にも勘圓されたわ 。でも私は構わず圌に倢䞭になっお尜くしお貢いだわ。銬鹿な女だっお蚀われるかもしれないけど、それでも私は幞せだったし、満足だった。十八歳の時、その圌の子を劊嚠しお  。私ね 、こう芋えおも四歳の可愛い嚘がいるんだ 。子䟛を生んだっお、圌は籍を党然入れおくれなくお、しおくれた事ず蚀ったら結局、䞉千䞇の借金を私に抌し付けお 、嚘を残しおさ 。気が付いたら私ず嚘の前から消えちゃった 。もう借金の远い蟌みが凄くお、私、嚘にご飯も満足に食べさせおあげられなかったんだ。私は今たで、䞭途半端にチャランポランに生きおきちゃったから、女のクセに料理も、党然䜜れない 。䞉幎前、実家に頌り、芪に頭䞋げに行ったんだ。でも私っお勘圓されおいるでしょ」
 む぀きは淡々ず自分の事を語り続けおいる。
「  」
「おたえみたいな奎に子育おは無理だ。嚘だけは面倒芋るっお、取り䞊げられちゃっお 。家から攟り出されちゃった  。それから䜕回も連絡しお、䌚うだけでもいいからっおお願いしおも、結局䞀床も䌚わせおもらえなかった 。そんな私は、颚俗でお金を皌ぐしかなかった 。金、金っお汚い女かもしれないけど 、それでも早く借金を返しお、嚘の顔だっお芋たかった。䞀日でも早くあの子ず䞀緒に暮らしたいんだ 。電話しおもすぐに切られおしたい、嚘の声すら聞けないし 。最初は䞉千䞇だったけど凄い利息が぀いちゃっお、なかなか借金も枛らないし 。勝男に䌚った時のお金芋お、ずるいけどあのダンボヌルのお金があれば、䞀気に借金返せるかなっお思っちゃったんだ。私は嚘に䌚いたい䞀心で、䜕お蚀われようずお金を皌ぐしかないの 私は女だから、それを歊噚にするしかなかった 。やっぱり私は最䜎な女だけど、それでもお腹を痛めた子だから、せめお䞀緒にいたいんだ 。私、嚘が䞀歳の時から顔すら芋おないんだもん 。でも 、そのせいで勝男の事、随分ず傷぀けちゃったんだよね ごめんなさい 。ほんずにごめんね 。いくら謝ったっお駄目だよね  」
 む぀きちゃんは話し終わっおも、ずっず䞊を向いたたただった。
 僕の目から倧粒の涙が倧粒のように流れ萜ちる。䜕お声を掛けおいいか、䜕も考え぀かない。
「  」
 い぀だっお僕は、栌奜悪いキャラクタヌだ。
「私にできる 、勝男にしおあげられる事っお蚀ったら、この䜓ぐらいしかない 。勝男の奜きにしおいいよ  」
 無意識に僕の右手が動いた。
 パシンッ
 生たれお初めお女の子を平手ずはいえ、殎っおしたった。
「む、む  」
 声がうたく出ない。
 僕は自分の顔面めがけお思いっきりパンチで殎った。気が治たらずに二発、䞉発ず思い切り殎った。痛みで気が遠くなりそうだった。錻血が出おくるのが分かる  。
「叩いおしたい、ごめん 。生たれお初めお女の子を殎っおしたった。が、僕が  」
 もう䞀発自分の顔面にパンチを入れた。
「  」
 今だけは、どもりながら話をしたくなかった。自分のパンチは痛かった。でもこれで、どもらずにしゃべれる  。
 む぀きちゃんは䞋を向き、肩を震わせおいた。
 深呌吞をしようずしおも、錻血のせいでうたく呌吞ができない。僕は倧きく口を開け、蟺りの空気をゆっくり吞い蟌んだ。
「僕がむ぀きちゃんをそんな状態なのに抱きたいっお思っおいるず、本圓にそう思っお蚀っおいるのか 銬鹿にするなよ 僕は君がそんな状態なのに、䜕にも蚀っおやる事すらできない情けない男だよ でもね、む぀きちゃんの悲しみをちょっずは理解しおいる぀もりなんだ お願いだから、自分をそんな粗末にしないでよ。僕は君が倧奜きなんだ。そんな君を芋るのは絶察に嫌だ。笑顔のほうが絶察に䌌合う。借金、あずどれくらいか分からないけど、僕の貯金癟䞃十䞇くらいあるから䜿いなよ。色々事情を聞いちゃっお、こんな事蚀うのも倉だけどさ。それでも僕は、君が奜きだから 。できればずっず君ず䞀緒にいたい 。それに力になりたいんだ」
 どもらずに、こんなにハッキリず話せたのは生たれお初めおだった。
 気が぀けば、む぀きは僕をゞッず芋おいた。意思の匷い目。でも、その目の䞭に倩䜿のような優しい光が宿っおいる。
「あ、ありがずう 。すごく嬉しい 。ほんずに嬉しい  」
「た、倧倉かもしれないけどさヌ、が、僕ず䞀緒に  」
 話しおいる最䞭に、む぀きちゃんが僕の錻血をぬぐっおくれる。それから顔を近付け、優しくキスをしおくれた。
 党身が痺れるような゜フトなキスだった。
 しばらくその状態でいたが、やがおむ぀きちゃんから離れた。
 顔をゆっくりず芋䞊げる。圌女の綺麗な顔に、僕の薄汚い錻血が぀いおいた。
「む、む぀きちゃん、か、顔に僕の錻血が  」
「ありがずう。元気出たよ」
 ニッコリず埮笑んでいるむ぀き  。
 たるで倩䜿が埮笑んでいるように芋える。
「む、む぀きちゃん  」
「勝男の気持ち、本圓に嬉しい。でもね 、私は甘えちゃいけないんだ  」
「が、僕がいいっお蚀っおるんだから、き、気にしないで倧䞈倫だよ」
 嘘停りのない本心だった。
 自分が蚀った台詞で、これから倧倉な苊劎が埅ち受けおいるのも承知の䞊だった。でもむ぀きがそばにいおくれるなら、い぀だっお僕はきっず頑匵れる。
「私がね 、自分でしちゃった事なの。だからね、自分でケリを぀けないずいけないの。もうちょっず勝男には、早く出䌚いたかったな 。でもね 、嚘の事が私には第䞀にどうしたっお考えおしたうの。今は勝男もそう蚀っおくれるけど、そういうのっお絶察に堪えられないものなの  」
「が、僕は絶察に堪えおみせる」
 む぀きちゃんは優しく銖を暪に振る。目を閉じながら  。
「蚀ったでしょ 私は嚘の事を第䞀に考えるっお 。本圓にあなたは優しくお、暖かくお 、私を包み蟌んでくれた。勝男に䌚えお幞せっお、今はハッキリ蚀えるよ。私なんかよりも 、もっず倧事な、ううん 、もっず玠敵な子がこれから絶察に珟れるよ」
 僕は玍埗できなかった。む぀きちゃんの蚀っおいる意味が理解できない。
「が、僕は君が 、き、君がいいんだ  」
「私はこんな女だけど、これでも母芪なんだ 。最䜎の母芪かもしれないけど、あの子の事しか考えられないの 。最初に颚俗ずいう職業に入った時は、お客さんのおチンチンをどうしおも抵抗があっお、口に入れられなくおね 。毎日毎日仕事終わっおから泣いおたな 。でもね、あの子の事を考えるず、母芪だから匷くならないずっお思っお 、お金の為に割り切っお、その内この環境に慣れおきお 。ハッキリ蚀っお、今の私なんお自分でも倧嫌いだよ。でもあの子ず出来る限り早く、私ず䞀緒に暮らせるようにっお思うず、䜕でも平気になるの。女は母芪になるず匷くなるっお蚀うでしょ あれ、ほんずなんだよ」
 涙が止たらなかった。僕はベッドに突っ䌏しお思い切り泣いた。
 僕の頭をむ぀きちゃんが優しく撫でおくれる。
 ずおも心地良かった  。
 自分が小さいの頃、よく母芪にこうやっお撫でられたっけ。
 子䟛の頃に返ったような気がした。
「あなたは他人の事を思いやっお涙を流せる人。優しくお、玠晎らしい人なんだから 。これからだっお、絶察に頑匵っおいけるよ 。私が保蚌する」
 泣きっ面のたた、顔をあげた。
 む぀きちゃんは力こぶを䜜っおガッツポヌズを取り、優しそうな笑顔で僕を芋おいる。僕ずは居堎所が違い過ぎるのを痛感した。
 もうちょっず、自分に力があったら  。
 自分に察しお、ずおも悔しかった。
「ひ、䞀぀、聞きたい事があるんだ」
「なヌに」
「も、もしもだよ。む、む぀きちゃんが子䟛産んでなかったら、母芪じゃなかったら 。が、僕ず付き合っおくれたかい」
 む぀きちゃんは意地悪そうに笑うず、真剣に僕を芋぀めおくる。
「人生にね 。もしもは 、ないの  」
「そ、そんなのは分かっおる。で、でも聞きたいんだ。が、僕が入り蟌む隙間がないのは分かった 。だ、だからその蚀葉を聞いお、こ、今埌の生きる糧にしたい」
「銬鹿っ 、私みたいな女にそんな事、蚀わせないで 。今の私には、勝男ず出䌚えお良かったずしか 、蚀えないんだ 。ごめんね」
「じゅ、充分だよ。ありがずう。これ  」
 僕はモモず名前の入った名刺をむ぀きに手枡した。
 圌女ず僕を繋いでいた䞀枚の名刺。
 もうこれで、圌女に䌚う事はないだろうず本胜的に感じおいた。
 自分自身にケゞメを぀けないず駄目なんだ。
 本圓に倧奜きだったむ぀きず、終止笊を打぀事になるなんお  。
 悲しみず枅々しい気持ちが、頭の䞭でグチャグチャに入り混じる。
「ほ、ほんずに 、ありがず う  」
 ヘルスのプレむ時間が来るたで、僕はモヌニングぬきっ子の䞭にあるモモの郚屋で、思い切り泣いた 。
 
 新宿プリンスホテルの自分の郚屋に戻り、熱いシャワヌを党身に济びる。
 今日は延長する぀もりでいたから、䞭途半端な感じだ。しかし今の俺には金がある。この䞍完党燃焌さは、明日にでもむ぀きのずころぞ行き、たた抱けば枈む。
 シャワヌから出お䜓を拭くず、髪の毛をドラむダヌで手早く也かした。
 郚屋に戻るず、ベッドに攟り投げおあった携垯が芖界に入る。そうだ、勝男から連絡があったかもしれない。しかし、携垯を芋おも着信履歎はなかった。
 あい぀、昌なのに䜕しおんだ この時間だし、こっちから電話しおもただ起きおいるだろう。
 たた電話を掛けおみる。今床は、ワンコヌルで勝男は電話に出た。
「も、もしもし 。ご、ごめんね、靖史。店で話しおお、遅くなっちゃったよ。ちゃ、着信あったのを今、み、芋たから連絡しようず思っおたんだ」
「そうだったんだ。ただご飯食べおないだろ これから䞀緒に喰うか」
「そ、そうだね、あっ そ、そうそう。や、靖史さヌ、あ、赀厎君っお知っおる」
 勝男の口から赀厎の名前がいきなり出お面食らっおしたう。
 赀厎ず今、勝男は確かにハッキリ蚀った  。
 あの赀厎の事を蚀っおいるのだろうか
 心臓の錓動が早くなるのを感じる。
 萜ち着け 、萜ち着くんだ  。
「あ 、あ、赀厎」
「う、うん。や、靖史の店で前に、い、䞀緒に働いおたんでしょ」
 頭が混乱しおいる。
 あれだけ赀厎に䌚う術を考えおいたのに、たさかこんな圢でくるずは思いもよらなかった。
 俺は軜く深呌吞をしお、頭の䞭をゆっくり敎理した。
「あ、ああ 。だけど、䜕故圌が勝男ず知り合いになんだ」
「し、新人で僕のずころに入っおきたのが、か、圌なんだ。や、靖史の事、ず、ずおも心配しおたよ。ちゃ、ちゃんず僕がもう元気だよっお蚀っおおいたけどね。こ、今床、が、僕も䞀緒に行くから、さ、䞉人で飯でも食おうよ」
「  」
 興奮でどうにかなりそうだった。
 胞が高鳎る。
 勝男には心の底から本圓に感謝したいが、それを玠盎に出しおはいけない。
 これは俺だけにしか分からない感情だ。自我を抑えるのに必死だった。
 む぀きずの関係、赀厎ぞの想い  。
 どれもこれも幌銎染である勝男に察しおだけは、口が裂けおも蚀えない事ばかりだ。
「や、靖史 も、もしもし 。あ、あれヌ」
「どうした、勝男」
「そ、そんなにビックリした」
「ああ、そりゃヌビックリするさ 。ず、ずころで元気なのか」
「も、もちろん。が、僕はい぀も通り元気だよ  」
「違うっお、赀厎の事だよ」
「う、うん。か、圌も、げ、元気だよ」
「ずりあえず今から俺の郚屋来いよ。話もあるし、腹も枛っおいるだろう」
「じゃ、じゃあ、い、今から向かうよ」
 電話を切り、ベッドに寝転がる。思い切り子䟛のように足をバタバタさせた。
 今の俺はガキのように無邪気にただはしゃいでいる。足の぀た先から頭のおっぺんたで興奮しおいた。
 赀厎が俺の事を心配しおくれおいたずいう事実。
 その蟺を材料にしお、勝男にはうたく協力しおもらう。
 たずは赀厎ず䌚えるようなセッティングをしおもらわないずいけない。
 早く赀厎に䌚いたい  。
 敎理しろ。考えろ  。
 これから勝男が来るから、早速、明日にでも仕事垰りに䌚えるよう、䜕ずか持っおいけないだろうか  。
 それでうたく行ったら、俺に察する赀厎の譊戒心を埐々になくさせよう。
 ゆっくり時間掛けお飲みに連れお行ければ、こっちのものだ。
 完党に蚈画を立おお、実行しなくおはならない。
 明日もむ぀きのずころ行こうず思っおいたが、すでにあい぀は抱いおいる。
 赀厎を優先させるのは圓たり前の事だ。
 いや、む぀きなど赀厎に比べれば、ク゜みたいなものだ。
 もうじき勝男がここに来る。それたでに、赀厎の件をどうするのが理想か考えないずいけない。俺は脳みそをフル回転させた。
 
 靖史も今たでずっず仕事、仕事できお、急に仕事なくなったから暇を持お䜙しおいるのだろう。
 僕も今さっき、む぀きぞの想いをぶ぀けお、䞀぀の圢が終わったばかりだから、誰かず話しでもしながら気を玛らわせたかった。
 タむミング良く、靖史からの誘いの電話があったのは、ずおもありがたかった。
 む぀きず腹を割っお話しお頭で理解した぀もりでも、やはり蟛い。
 圌女の䞭では嚘を取り戻す為に、完党に誰も寄せ付けない孀独な䞖界でやっおいかなくおはいけないのだ。
 む぀きの 、母芪ずしおの意識は執念を感じるが、どうしおもせ぀なさず悲しさが付きたずう。だけど僕には䜕の手助けも、いや 、できたずしおも、絶察に圌女は受付けおくれない。あれほどの決意を持った女の心を、䞀䜓誰が厩せるずいうのだろうか。
 考え事をしながら歩いおいるず、もう目の前は新宿プリンスホテルだった。赀いレンガの壁を芋おいるず、む぀きずこの堎所を通った事を思い出し、胞がせ぀なくなる。わずか数日前の出来事なのに、遥か昔のように感じた。
 ず曞かれた自動扉の入り口の前に立぀ず、僕はゆっくり深呌吞をしお、ホテルに入った。
 僕ぱレベヌタヌに乗り蟌み、真っ盎ぐに靖史の郚屋ぞず向かう。ベルを鳎らすず、すぐに靖史はドアを開けおくれた。
「お疲れ、仕事どうだった」
「い、いやヌボチボチだね。そ、それよりも、も、もうお腹ペコペコだよ」
「䜕が食いたい 奜きなもの奢っおやるよ」
「えヌ、い、いいよヌ。い、い぀も䞖話になっおるから、が、僕が出すよ」
「いいよ、俺はただ金あるしさ」
「ダ、ダヌメ。き、今日ぐらいは僕に出させおくれよ、お、お願いだよ」
「䜕かあったのか、勝男」
 靖史は盞倉わらず鋭い。
 たさか僕がむ぀きず再び䌚ったずたでは分からないだろうけど、この事は圌女の過去もあるから心に秘めおおかないずいけない。でも、む぀きず再び䌚えた事ぐらいは靖史に䌝えおおきたかった。
「おい、勝男  」
 靖史が僕を心配そうに芗き蟌む。やっぱりむ぀きずの事は䌏せおおこう。
「い、いや 、し、仕事で嫌な事があっただけなんだ。や、やっぱゲヌム屋っお嫌な客が、り、理䞍尜にゎネたりするじゃん。い、今の責任者も、け、結構、い、嫌味ばかり蚀うしね  」
「そうか」
「そ、それより、お、面癜い喫茶店を芋぀けたんだ。あ、赀厎君も䞀床そこぞ連れお行ったけど、か、かなり気に入った様子なんだ」
 靖史をあそこに連れおいっお反応を芋おみたい。いや、今の僕には玔粋に笑いが欲しいだけなのかもしれない。
「じゃあ、そこでいいよ。どの皋床のもんか、勝男の面癜いっおや぀を芋極めおやる」
「や、靖史、は、早く着替えちゃいなよ。パ、パンツ䞀䞁じゃ衚を歩けないだろ」
 靖史は颚呂䞊りだったのか、パンツ䞀䞁のたただった。
「すぐ着替えるよ。堎所はどこら蟺にあんの」
「コ、コマ劇堎暪の道を真っ盎ぐ行くず、あ、東通りに突き圓たるでしょ そ、そこを右に曲がった字路の角なんだけどね」
「あヌあヌ、あの昔からあるずこだろ」
「そ、そうみたいだね。あっ そ、そうそう 、あ、赀厎君ず、こ、今床、ご、ご飯食べに行く」
「あれから䌚っおないもんなヌ。じゃあさ、勝男 。明日の仕事明けにさヌ  」
「な、䜕」
「俺ず䌚うのを圌にはわざず秘密にしおさ 、勝男が赀厎を誘っおみれば」
「な、䜕でそんな事を」
「堎所だけ決めずいおさ。俺がそこであらかじめ、いるようにするんだよ。偶然を装っおね。絶察、赀厎はいい意味でビックリするだろ」
「な、なるほどね。あ、赀厎君をビックリさせようっお事だね」
「面癜くねえか」
 靖史は意地悪そうな衚情で、僕を芋おニダニダしおいる。昔からたたにこういうずころがあるんだよな。でも赀厎ず靖史を黙っお䌚わせるのは、案倖面癜いかもしれない。
「そ、そうだね」
 僕は゜ファヌの䞊に腰掛けようずするず、暪にダンボヌルが眮いおあるのに気が付く。靖史は、あの倧金をあれから郚屋にずっず眮きっ攟しだったのか。この金があればむ぀きは  。
「䜕だよ。ダンボヌルなんかゞッず芋お 。䜕か悪い事、䌁んでんだろ」
「あ、あのダンボヌルのお金、こ、ここに眮きっ攟しだずよくないから、ちょ、貯金でもしおきなよ。しょ、正月の䞉が日も過ぎお、も、もう銀行もやっおいるでしょ」
 靖史は腕を組んで考えおいる。じゃないず僕はこの金を持っおむ぀きの元ぞ行っおしたいそうだ。
「そうだな、鳎戞に最悪ここにいるの芋぀かった時、排萜にならないもんな 。勝男さ、その喫茶店ぞ先行っおおよ。俺は着替えお貯金しおから行くからさ」
「じゃあ僕、先に喫茶店ぞ行っおるよ。䜕か泚文しおおく」
「銀行で時間掛かっお料理が頌冷めんのも嫌だから、俺は行っおから泚文するよ」
「わ、分かったよ。た、たたあずでね」
「あいよヌ」
 靖史は私服に着替えながら答える。
 僕はホテルの倖ぞ出お、䞀人で先に喫茶店ぞ向かう事にした。
 靖史があの店でずいうよりも、あの店員にどんな反応を瀺すか楜しみだ。思い出し笑いしながら歩いおいるず、通行人が気味悪そうに僕を芋おいた。
 
 赀厎ず明日、䌚える可胜性が䞀気に高たった。
 いや、可胜性じゃない。䌚えるんだ  。
 あの時、勝男がこの堎所にいなかったら、飛び跳ねおしたったかもしれないぐらい、りキりキしおいた。
 着替えを手早く枈たせお、貯金しに行かないずな。そしお明日は勝男にうたく誘い出しおもらわないず  。
 気分は䞊々だった。党身の现胞が歓喜の叫び声をあげおいるようだ。
 今日はむ぀きずのセックスが、他の指名客のせいで䞭途半端で悶々ずしおいた。
 そのあず勝男からの赀厎の情報を聞き、䞀気に気分が良くなった。明日䌚えるかもしれないのだ。
 もし明日、赀厎に䌚っおも絶察に焊っおはいけない。冷静にクヌルに  。
 今の心境では難しい泚文かもしれない。
 だっお赀厎の事を想うだけで、俺の䞋半身はこんなに固くなっおいる。
 俺はギンギンにたぎった䞀物を右手でこすりながら、郚屋の窓ぞ䜕床も射粟した。
 さお勝男が先に喫茶店で埅っおいるから、急ぐずするか。
 ホテルの倖ぞ出る。この金を貯金しずかないずな。
 西歊新宿駅前の道を枡ろうずする。ダンボヌルを持っおいるので前が芋えず、さすがに歩きづらい。
 あれだけ射粟したのに、ただ頭の䞭は赀厎の事でいっぱいだった。
「パヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
 掟手なクラクションを鳎らす銬鹿な車。
「うるせぇなぁ  」
 今の俺は、機嫌がいい。ちょっずの事じゃ、むラむラしないだろう。
「パヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
 間髪入れず、たたクラクションが鳎る。
「䜕床も䜕床もうるせヌなあ」
 ぶ぀ぶ぀独り蚀を呟きながら歩いおいるず、突然、䜓がものすごい衝撃を受けた。
「あれっ」
 目の前の景色がグルグル回っおいる。ものすごいスピヌドで回っおいた。
 いや、俺の䜓がすごいスピヌドで回転しおいるのか
 通行人がみんな、俺に泚目しおいた。
 蟺り䞀垯に䞀䞇円札が乱れ飛んでいる。尋垞じゃない数の金だった。
 䜕でこんなずころに金が
 突然火花が散り、䜕かの衝撃ず共に目の前が真っ暗になった。
 䞀䜓、どうなっおいるんだ
 銖を動かそうずしたが、たったく動かない。
 他の郚分を動かそうずしおも、党然動かない。
 䞀䜓どうなっおんだ
 目の前が埐々に芋えおきた。
「  」
 おかしい  。
 芖界が明らかにおかしい。
 よく芋慣れたアスファルト 。その道路が至近距離に映っおいる。それずは別に西歊新宿駅の二階ぞ昇る゚スカレヌタヌの入り口も映っおいた。
 䜕だ、この景色は
 分かった。い぀もず颚景が逆さたなんだ。
「キャヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
「うわっ」
「ギャヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌッ」
 たったく䜓が動かない俺の耳元に、ものすごい数の悲鳎が聞こえおきた。
 目玉すらいくら意識しおも、動いおくれない。
 ちゃんず景色は芋えおいるのになあ  。
 ありゃ、地面に、䞀䞇円札が䜕枚もヒラヒラしながら萜ちおくるぞ
 䜕がどうなっおんだ
「ギャヌ 」
「ャヌ  」
「  」
 あれだけうるさかった悲鳎が、ドンドン小さくなっおいる。
 目の前の䞀䞇円札の色が擊れお芋えた。
 目の前の景色が埐々に暗くなっおいく。
 あれ、ただ昌頃だよな
 倜でもないのにおかしいな  。
 いくら冬だず蚀っおも、こんなに早く日が暮れる蚳がない。
 あれ 、完党に目の前が真っ暗になった。
 どうなっおんだ
 遠くで勝男が笑いながら、手を振っおいた。
 䜕やっおんだ、あい぀は  。
 む぀きが裞で立っおこっちを芋おいた。
 盞倉わらず゚ロい䜓をしおやがる  。
 赀厎の埌ろ姿が芋えた。
「おヌい。おヌい  」
 俺がいくら叫んでも、赀厎はどんどん先ぞ進んでいく。
 振り返っおもくれやしない。
「おヌい」
 赀厎の姿は豆粒くらいになり、やがお芋えなくなった。
 いくら䜕でもそれはねえだろ  。
 そこたで俺を毛嫌いするのかよ  。
「チクショりヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌヌ」
 そんなに俺が気持ち悪いのかよ  。
「答えやがれ、赀厎っ」
 
 テヌブルの䞊が氎で濡れおいる。たた䟋の倪った女店員が、乱暎に氎を眮いたからだ。靖史の奎、早く来ないかな。
「䜕する」
 靖史にあのハンバヌグサンドを芋せおみたいし  。
 うヌん、モヌニングメニュヌが時間的に終わっおいるのが、非垞に残念だ。
 あの「ヌかヌ、―かヌ  」をぜひ聞かせたかったのにな。
 そうか、明日もここに赀厎連れおくれば、時間垯的にモヌニングメニュヌがある。その時でもそれはいいか  。
「䜕する」
 店員は僕に早く遞べずいう感じで、い぀もの劂くマむペヌスな接客をしおいる。
「ず、ずりあえず、コ、コヌヒヌ䞀぀」
「あい」
 お腹がペコペコだが、靖史が来るたで我慢しないず倱瀌だ。
 早く来ないかなヌ。
 空腹感は、い぀も呑気な僕ですらむラむラさせる。
「お、遅いなあ」
 携垯を取り出しお、靖史の携垯に掛けた。
 プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルプルルルル 、ルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルル 、プルルルプルルルル 、ル 、プルルルル 、プルルルル  。
 䞀䜓、䜕をしおるんだ、靖史は  。
 空腹感がむラむラを䜙蚈に掻きたおる。バむブにでもしおいるのか
 これだけ鳎らしおいるんだから、早く出おくれよ  。
「お埅ちっ」
 ガシャッ
 倪った店員がコヌヒヌを乱暎にテヌブルの䞊に眮く。
 あヌあヌ  。
 コヌヒヌがこがれおちゃっおるよ。靖史にこういうシヌンを芋せたいのにな  。
 僕はもう䞀床携垯を手に取り、靖史に電話をした。
 プルルルル 、プルルルル  。

―了― 

題名「でっぱり」 新宿クレッシェンド第二匟ずしお執筆 䜜者 岩䞊智䞀郎
執筆期間 幎月日幎月日 原皿甚玙枚
掚敲 幎月日日 原皿甚玙枚
再掚敲 幎月日幎月日 原皿甚玙枚
再々掚敲 幎月日 原皿甚玙枚


いいなず思ったら応揎しよう