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『君と私とIF』第42話「期末試験も徒然に」

    ──夜・期末テスト前日──
    <勇人ゆうと自室>

    ──ごめん。私が悪いの。──

    それ以来、

    葵あおいからのLINEYライニーの

    返信は途絶えた。


    (・・・マズったな)

    1人頭を抱える。


    試験勉強で、

    分からないとこを

    聞くついでに、

    様子をうかがって見たのが

    失敗だった。


    ──もう少し待ってやってよ──

    (陽葵ひまりの言うこと
     聞いときゃよかった・・・)

    ──・・・・・・ん

    (責めるとか
     そういうつもりじゃ
     なかったんだがな・・・)

    ──・・・ちゃん

    (どうすんべ、これ・・・)

    「お兄ちゃん!──」

    勇人
    「おわ?!」

    美月みづき
    「もう! お兄ちゃん! ご飯だよ!」

    勇人
    「なんだ・・・美月か・・・」

    美月
    「なんだとは何よ?」

    勇人
    「なんでもねぇって・・・」


    最近とみに

    口うるさくなってきた妹。


    美月
    「スマホ見ながら頭抱えて、
     どしたの?」

    勇人
    「あ・・・いや、別に・・・」

    美月
    「・・・ははぁ〜ん?
     さては女ね?」

    勇人
    「な・・・バカ!
     そんなんじゃ──」

    美月
    「きゃー! お母さーん。
     お兄ちゃんがー──」

    勇人
    「バカヤロ!
     待てコラ!」


    笑いながら階段を

    駆け下りていく妹を

    慌てて追いかけた。


    ──期末試験・日本史──
    <3ーC教室>

    (っし、こんなもんか)

    時計を見ると、

    残り時間7分。

    (おお・・・。
     間に合うどころか
     余裕ができたぞ・・・)


    ふと、中間試験を思い出す。


    (あの時はヤバかったよな・・・)


    大慌てで範囲を確認して、

    小林にツッコまれ・・・。


    (みんなで図書館行ってな・・・)


    葵に教えてもらいながら、

    みんなでワイワイやって。


    中華食いに行って。


    (財布は軽くなったけどな!)

    (・・・)


    ──・・・・・・・・・コーン──


    (どうしてこうなった・・・)


    ──・・・うと


    (なんか・・・)


    「勇人──」

    勇人
    「おわ?!」

    小林
    「大丈夫・・・?」

    勇人
    「お?」

    西園寺先生
    「中藤くん、どうしたの?
     答案回収よ?」

    勇人
    「すみません! ボーッとしてました!」

    (やべ・・・)


    地歴の西園寺先生に促され、

    小林から答案を受け取って

    慌てて答案を前に送る。

    と──。

    (あ・・・)


    視界の向こうに

    葵の視線があった。


    (一瞬か・・・)

    結局お互い目を逸らす・・・。

    (なんかもう・・・)

    突っ伏す俺。

    (疲れた・・・)


    こうして、

    1学期の期末試験は

    幕を下ろした。


    <金劇横丁・ゲームセンター>

    武田
    「だークソ!」

    小林
    「惜しかったね・・・」


    試験の後、

    俺ら3人はゲーセンに来ていた。


    武田
    「おい、中藤!
     お前もやってみろよ」

    勇人
    「・・・お? おお」

    武田
    「こいつのクレーンが緩くて
     挟んでも落ちんだよ・・・」


    (なるほど?)

    すかさず百円玉を取り出し、

    料金口に差し込む俺。

    (クレーンゲームマスターたる
     この俺の実力を見よ・・・!)


    俺のレバー操作で、

    音楽とともに

    クレーンが移動していく。


    武田
    「あー違うって!
     もっと奥!」


    クレーンが止まった位置を見て、

    武田が叫ぶ。


    勇人
    「まぁ見てろって」


    俺ら3人の目の前で、

    クレーンが降りていく。


    武田
    「ほら、ハズレてんだろ」

    小林
    「ちょっと待って、武田くん」


    開いたアームの先の爪が、

    ぬいぐるみを穴に押し込み──。


    ──ゴロン


    取り出し口に落ちた

    ぬいぐるみを取り出す俺。


    武田
    「おおおおお!?」

    勇人
    「な?」

    小林
    「勇人は昔から上手いよね」

    武田
    「くっそ! 俺ももう1回!」

    勇人
    「はは、頑張れ」


    王者の余裕である。


    やいのやいの盛り上がる武田と、

    それを見守る小林。


    (しかし・・・)

    ふと、

    さっきの答案回収を思い返す。


    (あれは焦った・・・)

    深く考え事をしていると、

    まだ頭がボーッとする。


    (藤田先生はああ言ったけど、
     球技大会NGはガチだったんだな・・・)


    (・・・それに)

    確かに目が合って、

    一瞬でお互い逸らしてしまった。

    (葵・・・)

    (もう・・・戻れねぇのかな・・・)


    武田
    「だー! ダメだ!」

    小林
    「武田くん・・・お金大丈夫?」

    武田
    「五千円溶けた!」

    勇人
    「沼ってんな・・・」

    小林
    「勇人はもうやらないの?」

    勇人
    「んー、俺かぁ?」


    周りを見渡すと、

    (お?)

    隣にある動物マスコットの

    クレーンゲームが目に止まる。


    (黒猫・・・マメタンじゃねぇか)

    何となく気になって、

    百円玉を突っ込む。


    隣の柴犬を巻き込んで、

    黒猫のぬいぐるみが

    クレーンに釣り上げられる。


    (んー・・・何かに似てる?)


    動き出すクレーン。


    (あ、落ちた)


    柴犬を途中で落としながら、

    黒猫が取り出し口に転がった。


    武田
    「なんで一発で取れんだよ!」


    そんな武田のツッコミをよそに、

    黒猫を取り出すと、


    (うん、やっぱ似てるよな)


    妙に葵っぽい。


    (機会があったら葵にやるか)

    (・・・機会があるかは知らんけど!)


    ふと視線を感じ、

    クレーンゲームに目を向けると。


    (何かこいつ・・・さみしそうだな)

    さっきの柴犬が、

    仲間になりたそうにこっちを見ている。


    (しゃーねぇ)

    もう百円突っ込み、

    柴犬も無事に回収する。

    (おし)


    武田
    「だから何で取れんだよ!」

    勇人
    「ふっ・・・。
     クレーンマスターと
     呼びたまえ」


    鞄にぬいぐるみを

    仕舞っていると、

    武田
    「なあ、中藤」

    (ん?)

    妙に神妙な武田の声。


    勇人
    「何だ?」

    武田
    「あのさ・・・。
     平方、最近元気ないじゃん?」

    勇人
    「ああ・・・」

    武田
    「・・・何かあったんかなって」

    勇人
    「んー・・・俺も分からん・・・」

    武田
    「・・・お前は、
     平方のことどう思ってる訳?」

    勇人
    「どうって・・・」


    ちらっと小林に目をやる。


    小林
    「実は・・・僕も気になってて・・・」

    落ち込んだ顔を見せる小林。

    「僕の顔を見ると・・・平方さん、
     俯いて固まっちゃうんだよね・・・」


    勇人
    「そうなんだよな・・・。
     文化祭の後から・・・」

    (ん?)

    バッと、

    武田と同時に

    小林に顔を向ける。


    小林
    「な・・・何?」

    武田
    「まさか美少女メイド?」

    小林
    「な・・・」

    勇人
    「まぁ、大ウケだったしな・・・」

    小林
    「う・・・」


    顔を真っ赤にして俯く小林。


    (でもなぁ・・・)

    どうも、

    それだけじゃない気もする。

    (俺がトドメ刺したしな・・・)

    目が合うとは、

    お互い逸らしてしまう現状。

    (そう言えば、
     前よりよく目が合うような・・・)


    勇人
    「・・・まぁ分からんけど。」

    「また前みたいに、
     普通に話せるように
     なるといいんだけどな」

    武田
    「そうだな・・・」

    何やら、武田の顔が真剣だ。

    武田
    「・・・じゃあ。
     お前は別に、
     平方が好きとかじゃ
     ないんだな?」

    勇人
    「はえ?!」


    変な声が出た。


    武田
    「いやさ。
     俺、前から平方のこと
     気になってんだよ」

    勇人
    「あ、そうゆう・・・」

    (焦った・・・。
     まぁこいつのは
     バレバレというか・・・?)


    武田
    「あいつ、
     1年の頃から
     有名だったじゃん?」


    (葵伝説か・・・)

    100人の男達が

    散っていったという、あの・・・。


    武田
    「2年で同じクラスになって、
     チャンスと思ったらさ」

    「今度は西川のガードで、
     誰も近寄れなくなってさ」


    (それも聞いたな)


    勇人
    「1年の時って、
     そんな凄かったのか?」


    武田
    「お前ら、知らねーの?」

    「俺が告る暇もないくらいだったぞ」


    (告る暇がないとは・・・?)


    武田
    「昼休みも放課後も、
     いつも順番ついてたからな」

    勇人
    「マジで・・・?」

    小林
    「うわぁ・・・」

    武田
    「三浦も行ったらしいぞ?」

    勇人
    「三浦って彼女いるよな?」

    武田
    「彼女はその後だな」

    勇人
    「ふーん?」


    (やっぱ、
     メチャクチャ
     大変だったんだな・・・)


    武田
    「2年になってからは、
     西川が立ちはだかって、
     先輩だろうがお構い無しに
     全部シャットアウトしてたわ」

    小林
    「まるで、子熊を守る母熊だね・・・」


    苦笑いの小林。

    言い得て妙である。


    武田
    「今はそんなこともねぇだろ?」

    勇人
    「まぁな」

    武田
    「でも元気ねぇし、心配でさ。
     俺も迷惑かけたし・・・」


    そう言うと、

    言葉に詰まる武田。


    武田
    「・・・なぁ」

    おずおずと口を開く。

    「本当にお前ら、
     付き合ってねぇの?」


    勇人
    「・・・付き合っては・・・ないな」

    一瞬、ズキンと胸が痛んだ。


    武田
    「・・・そっか、ならよかったよ。
     お前ら仲よさそうだったからさ」

    言葉を切ると目を逸らし、

    何か決意したように

    虚空を見つめた。


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    ※「この人、誰だっけ?」の迷子防止用です。

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    「もしも、あの時」 誰しもが一度は考えた事があるのでは。 実体験から生まれた、 架空の高校が舞台の群像劇。 そんな"IF"の物語。 ——その先を、覗いてみませんか? ____________ 本編定期更新:火・金20時 (その他、不定期で記事を投稿しています。)

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