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『君と私とIF』第一章「あの日から」第1話「はじまりの刻」

    第一章 あの日から

    第1話 始まりの刻

    ──12月某日──

    <2ーC教室>


    ──廊下の奥の方から、
        大きな声が聞こえた。


    (あれ? 女の子?)

    (高い声だったけど。)


    教室の騒めきが、一瞬途切れた。


    「・・・何? 今の声・・・」

    「何かあったのかな・・・?」

    クラスの女子達が
    心配そうに囁き合う。


    陽葵ひまり
    「何だろね? 今の」

    親友の陽葵が、
    少し心配顔で
    話しかけてくる。

    葵あおい
    「高い声だったけど、
     女の子じゃなかった
     気はするね。」

    陽葵
    「そんなとこまで分かったの?」

    「あんた、相変わらずね」

    そう言って、少し笑う陽葵。


    そこへ、
    廊下から騒々しく走る足音が
    近づいて来る。


    ──ガラッ!


    大きな音と共に、
    教室の戸が開く。


    「大変!
     うちのクラスの誰かが
     階段から落ちたって!」


    七海ななみだ。


    教室に緊張が走る。


    「ええ・・・、誰・・・?」

    「大丈夫なの・・・?」


    ──空気がザワつく


    七海
    「分かんない・・・」


    「高橋さん、どこの階段?」

    そう言って立ち上がったのは、
    クラス委員の早坂はやさか真琴まことさん。

    七海に真剣な顔を向ける。


    七海
    「校舎奥の階段だって・・・」

    少し青ざめた顔で、
    それだけ言葉を絞り出す七海。


    あそこの階段は、
    普段は男子達が
    溜まり場にしていたはず。

    その為、
    女子生徒は普段、
    あまり近寄らない。


    真琴
    「ありがとう、高橋さん。」

    「私、ちょっと行ってくる。」

    そう言い残して、
    駆け出す早坂さん。


    廊下からは、
    まだ、
    大声が聞こえてくる。


    陽葵
    「大丈夫かねぇ・・・」

    葵
    「どうかな・・・。」


    落ち方によっては、
    かなり危険な事は、
    想像に難くない。

    廊下の騒ぎから察するに、
    結構な大怪我なのかもしれない。


    ──キーンコーンカーンコーン──


    予鈴が鳴った。


    (もうそんな時間か。)


    様子を見に行った
    早坂さんと、
    半数近くの男子達が、
    まだ戻ってこない。


    陽葵
    「まさかあいつら・・・、
     また何かやらかしたの?」

    陽葵が、
    険しい顔で
    つぶやく。


    (・・・)


    そこへ、

    「君達。」

    数学の田中先生が、
    戸が開きっぱなしの
    出入り口から
    顔を出す。


    (あれ?
     次は歴史の時間だけど・・・。)


    田中先生
    「西園寺さいおんじ先生は所用で来れないため、
     次の歴史の時間は自習してください。」


    (・・・結構な大ごと?)


    陽葵
    「絶対ヤバいよね、これ」

    険しい顔のまま、
    そう小さく囁く陽葵。

    葵
    「うん・・・。」


    ──ざわめきが広がってゆく


    「自習かぁ・・・」

    「大丈夫なのかな・・・」

    「委員長、帰ってこないね・・・」


    (この状況じゃ、
     自習どころじゃないよね。)


    ──ガラガラガラ


    出入り口の戸が開き、
    様子見から戻った
    早坂さんが入ってくる。


    「早坂さん、どうだった?」


    誰かが問いかける。


    青ざめた顔で、
    早坂さんが答える。

    真琴
    「うん、それが・・・、
     桜澤さくらざわくんと小林くんが揉めて、
     止めに入った中藤なかふじくんが、
     階段の一番上から
     落ちたみたいで・・・」


    陽葵
    「っ?!
     あいつ・・・!」

    一瞬息を飲み、
    一際険しい顔で、
    鋭くつぶやく陽葵。


    (中藤くん・・・?)

    (桜澤くんと?)


    桜澤くんは、
    バスケ部の2年生エース。

    クラスで1番背が高くて、
    確か185センチ。

    頭1つ分抜けていて、
    私からは見上げるくらい。


    対する中藤くんは、
    私より少し高いくらい。

    小林くんに至っては、
    私ですら、
    見下ろすくらい。


    桜澤くんは、
    クラスの男子の
    リーダー的存在。

    と言っても、
    暴力的で怖いイメージが強く、
    よく他の男子に
    怒鳴ったりしている。


    陽葵とも、
    よく喧嘩してるし。


    (そんな彼に、
     中藤くんが・・・?)


    ちょっと想像がつかない。


    中藤くんと言えば、
    男子同士でよく
    戯れ合ってるイメージ。

    あまり厄介ごとに
    首を突っ込むタイプではなく、
    桜澤くんに逆らうようには
    思えなかった。


    桜澤くんにしても、
    暴力的で怖くはあるけど、
    他人に大怪我をさせる程の
    暴力沙汰を起こした事は
    これまでなかった。


    (・・・)

    (何か・・・。)


    違和感が引っかかる。


    (何か違う気がする・・・。)


    その時、


    ──ピーポーピーポーピーポー──


    突如、救急車のサイレンが鳴り、
    遠ざかってゆくのが
    聞こえてきた。


    「え・・・、救急車?!」

    「ヤバくない?」


    不穏な空気に、
    ざわつきが一層大きくなる。


    陽葵
    「・・・」

    ずっと険しい顔の、陽葵。


    時計に目をやると、
    自習の知らせがあってから、
    15分ほどしか経っていない。


    (すぐ救急車を呼んだとして、
     この迅速さ・・・。)


    (頭部外傷かな・・・。)

    (大した事ないと良いけど・・・。)


    (・・・)


    サイレンが、

    遠く、小さくなって行く。


    (何か起きた・・・?)


    私たちの不安を、置き去りにして。


    ( 第2話「職員室」を読む )

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    ※「この人、誰だっけ?」の迷子防止用です。


     
     
    「もしも、あの時」 誰しもが一度は考えた事があるのでは。 実体験から生まれた、 架空の高校が舞台の群像劇。 そんな"IF"の物語。 ——その先を、覗いてみませんか? ____________ 本編定期更新:火・金20時 (その他、不定期で記事を投稿しています。)

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