
『君と私とIF』第39話「球技大会」
──球技大会当日──
<大体育館>
──ピーッ!
「ナイスー! 大原ー!」
クラスの応援が湧く。
バスケ部門トーナメント準々決勝。
桜澤からパスを受けた大原の
ジャンプシュートが決まった。
(これで79対46か)
残り時間7分。
桜澤
「こっからだぞ!」
センターの桜澤が声を張る。
コート上の全員が、
相手チームの選手を見据える。
そこへ、
三浦
「お、勝ってんな」
勇人
「おう、三浦」
サッカー部門で試合に出てた
三浦が合流した。
勇人
「そっちは負けたって?」
三浦
「おう。
最初に言ったけど、
ありゃ無理だ」
苦笑いの三浦。
なんでも、
サッカー部エース率いる
3ーEと初戦で当たったらしい。
武田
「それでも俺ら、
2対1の1点差
だったけどな!」
武田が割って入ってきた。
勇人
「まぁ、
頑張ったんじゃね?」
武田
「まーな!
相手、優勝候補だったし、
事実上の決勝戦だったんじゃねぇ?」
(また適当な・・・)
その時、
三浦
「なんか、翔のヤツ。
去年と違うな」
勇人
「ああ」
そうなのだ。
桜澤の動きが、
去年と明らかに違うのだ。
(そもそも、
あいつがセンターってな・・・)
去年の球技大会では、
あいつの上手さに
みんなが頼りっきりだった。
自身も周りはお構いなしで、
1人で点を取りに行っていた桜澤。
(準決勝で、
上級生のバスケ部チームと
当たって負けたんだよな)
周りもついていけないし、
桜澤は大原すら頼らず、
一人相撲で突っ込んで
封じ込められていた。
(それが今年は・・・)
桜澤がセンターで止める。
大原がボールを運ぶ。
追いついた桜澤が、
大原と一緒に
パスワークで敵を崩す、
自ら切り込む。
インでボールを呼んだと思ったら、
守る相手チームを
2人も3人も引き付けて、
シュートのフェイクから
味方へアシストパス。
もちろん、
桜澤と大原以外はバスケの素人。
ミスも出るし、
思うようにシュートが入らない。
(でもあいつ・・・笑ってるんだよな)
他のチームメイトも笑ってる。
それでいて、
去年も大体同じスコアだった気がする。
(うん、何かいいな・・・)
──ブーッ!
試合終了のブザーが鳴った。
「おっしゃー! ナイスー!」
スコアは85対48。
勝ち上がりに、
クラスの応援が湧き上がる。
整列して礼を終えて
戻ってくる5人を、
歓声が迎える。
三浦
「翔! 颯斗!
ナイス!」
桜澤
「おう! そっちはどうだ?」
三浦
「聞くな・・・。
朝、言った通りだよ・・・」
大原
「お疲れ様。
応援頼むぜ?」
三浦
「おう。
後は任せた!」
そう言って
両手を開いて掲げる三浦。
桜澤と大原が、
それぞれハイタッチを返す。
(なんか・・・青春だ・・・)
ともあれ、
男子は準決勝に進出した。
(さて、女子はどうだ・・・?)
女子は小体育館で、
ちょうど試合中のはず。
(つーか、
タイミング
被るなよなぁ・・・)
そう言えば葵は、
試合に出るのを
陽葵から止められたらしく、
スコア係をやってるはずだ。
(まぁ、
あれ以来ずっと
ボーッとしてるしな・・・)
(よし、
ちょっくらのぞいてくるか)
勇人
「ちょっと、
女子の方見てこようぜ」
小林
「うん、そうだね」
武田
「お、俺も行くわ」
コートを引き上げる男どもに断り、
3人で小体育館に向かった。
<小体育館・ミニバスコート>
勇人
「おー、やってるやってる」
武田
「負けてるみたいだな・・・」
小林
「そだね・・・」
勇人
「38対44か・・・」
武田
「オラー! 七海がんばれー!」
陽葵を中心に、
うちの女子達が奮闘している。
(委員長も出てんのか)
戦況を確認しつつ、
うちのクラスの奥側のベンチに
目をやると・・・。
(お、いたいた)
葵がベンチの端で、
ノートを抱えて
声を出してる。
勇人
「とりあえずベンチ行こうぜ」
武田
「んだな」
小林も頷き、
3人でベンチに向かう。
武田
「いよーっす」
「あ、武田──」
武田がベンチの女子に話しかけた。
その隙に、
葵の方をチラリとうかがう俺。
(んー・・・。
試合に集中は
してるみたいだが)
小林
「早坂さん、左! 左!」
小林の声が飛び、
委員長が気づいたのか
左サイドの高橋にパスを出す。
そのままドリブルで攻め込む高橋。
陽葵がフリーになろうと
激しく動くが、
敵のマークも執拗に張り付く。
「あーっ──」
高橋が攻めあぐねてるうちに、
後ろからボールを奪われた。
敵のパスが前に飛ぶ。
(あ、ヤバい・・・)
相手選手が速攻で走って、
ゴール近くでパスを受ける。
その前に委員長が立ちはだかったが、
もう1人走った選手にパスが渡り、
ゴールを許した。
(強いな3ーF・・・)
陽葵
「はい、ボールちょうだい!」
声が飛び、
陽葵が下がってボールを受ける。
ふと気になって、
横に目をやった。
その俺の視線の先に、
葵の視線がぶつかる。
──目が合った。
(ヤベッ・・・)
お互い慌てて、
お互い思わず視線を外す。
(いや・・・、
別にヤバくは
ないんだが・・・)
(俯いちまったな、葵・・・)
横目で見ると、
完全に下を向いて
固まってらっしゃる。
(どうしたもんか・・・)
ここのところ、
葵の態度が
どんどんよそよそしく
なってきてるような。
(気のせい・・・、
じゃないよなぁ・・・)
心当たりは・・・。
(やっぱ、文化祭が
終わってからだよな・・・)
──よろしい。許します。──
あの日の帰り道、
夕日を浴びながらそう言って
笑顔を向けた彼女。
(綺麗だったな・・・)
──・・・と
(んー・・・、
どうやって
話しかけてたんだっけ・・・?)
──・・・うと
(つーか、しばらく
葵としゃべってないな・・・)
「勇人──」
(おわっ?!)
勇人
「・・・あ? 小林?
どうした?」
小林
「もう試合終わったよ。
大丈夫・・・?」
(マジか・・・)
勇人
「おお、悪りぃ・・・
で、どうなった?」
陽葵
「なぁに?
中っち見てなかったのぉ?」
(うげ・・・)
タオルで汗を拭きながら
陽葵さん登場である。
勇人
「悪りぃ・・・、
ちょっと考え事をな・・・」
「・・・で、どうだった?」
陽葵
「ったく・・・。
うちらの負けよ。
さすが優勝候補だわ」
「男子はどうなった?」
勇人
「男子は勝ち上がったぜ。
な、小林?」
小林
「うん。
次は3試合後だね」
陽葵
「お、やるじゃん」
「で、中っち。
あんた、いったい
何悩んでたのよ?」
ニヤニヤする陽葵さん。
勇人
「あー・・・、
まぁ大したことじゃ・・・」
陽葵
「ふうん?」
何やら意味深に
ワルい顔をする陽葵をよそに、
女子達と一緒に大体育館に向かった。
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