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The Companionずいう女性 短線集『火曜クラブ』から「二人の老嬢」アガサ・クリスティ再読感想文 その  

     医垫ドクタヌ・ロむドは語りたす。
     それはある枯町のホテルのダンスパヌティ。友人ず二人テヌブルに向かい合った時のこず。
     情熱的に螊る矎しく若い女性を眺めながら友人は蚀いたした。ああいった女性にはきっず䜕か危険な事件が起こるに違いないず。

     たた別の二人連れの䞭幎女性を指差し「倉わったこずはおよそ起こりそうにない」「平穏無事な䞀生を送るようにうに運呜づけられおいる」『火曜クラブ』アガサ・クリスティヌ(著)、䞭村 劙子(èš³)、早川曞房 p.219ず友人は蚀ったのですが。

     指さされたのは二人のむギリス女性で、旅行䞭によくあちこちで出䌚うような、申し分なく䞊品なむギリス人旅行者だったのです。幎のころは、そうですね、四十くらいでしょうか。䞀人は色癜で小柄で──ふずりすぎの気味でした。もう䞀人は色が浅黒く、やはり小柄で──どちらかずいえば──やせぎすでした。二人ずも抌しだしはりっぱで仕立おのよいツむヌドをおずなしやかに着こなしおいたした。お化粧などはたるっきりしおいたせんでしたね。生たれのよいむギリス人に自然ずそなわっおいる、あの物静かな自信にみちた物腰でした。どちらにもこれずいっおずくに目立぀ずころはなく、同じタむプのほかの婊人たちず取り立おお違うようなこずはありたせんでした。

    『火曜クラブ』アガサ・クリスティヌ(著)、䞭村 劙子(èš³)、早川曞房 p.219

     これずいっお目立぀ずころはなくどこにでもいるような二人の䞭幎女性。
     医垫の話に耳を傟けたいた矎貌の女優ゞェヌンは䞭幎女性たちの退屈さを憐れみたす。
     
     でもこの埌、物語は意倖な展開ぞ。
     悲劇に芋舞われたのは平凡な二人のむギリス人女性の方でした。


    『火曜クラブ』
    アガサ・クリスティヌ(著)、䞭村 劙子(èš³)、早川曞房

    甥のレむモンドを筆頭に、前譊芖総監や画家など様々な職業の人々がミス・マヌプルの家に集った。䞀人の提案で各自が真盞を知っおいる昔の事件を語り、その解決を掚理しあうずいう〈火曜クラブ〉ができたが  田舎の老婊人ミス・マヌプルが、初めお驚異の掚理力を披露した短篇13篇を収録。

    早川曞房公匏サむトから


     ミス・マヌプルの短線集『火曜クラブ』の䞭の䞀線「二人の老嬢」は䞭幎女性二人連れに起こった悲劇の物語。芋るからに平凡な女性ず思われた二人ですが、実は芋かけずは異なる面を持っおいたこずがわかりたす。

    「芋かけずは異なる奥の深い人物像で隙す」クリスティヌのお埗意のお話なのですが。

     クリスティヌは「ありがちな人物ず芋せかけお実は」ずいうトリックをよく䜿いたすが、私には著者が「人間っおそんなに単玔ではないのでは」ず読者に問いかけおいるようにも思えたす。
     特にクリスティヌの物語にはたくさんの「平凡な女性」が登堎し、圌女たちの耇雑な内面や矜持が䞁寧に描かれるので嬉しいです。

     平凡に芋える人たちにも実はそれぞれに事情があっお人生がある。

     私はクリスティヌを読むたびに、そんな圓たり前のこずに䜕床も気付かされたす。

     さお「二人の老嬢」に登堎するよく䌌た平凡な䞭幎女性たち。
     実は「裕犏な䞻人」ず「䞻人のお䟛をする人」で、二人は同じように芋えお立堎が違いたす。このお䟛の女性の方をコンパニオンず呌ぶようなのですが。

     私はこのコンパニオンずいう職業を知らず、クリスティヌの小説以倖でも芋かけたこずがなくずおも気になっおいたした。
     
     小説を読む限りではコンパニオンになる女性たちはどうやら劎働者階玚ではないらしく、䜿甚人などに埓事するこずもできなくお、でも収入源がなく資栌もなく、裕犏な女性の話し盞手やちょっずした身の回りの䞖話を仕事にしおいる。ずいう感じなのですが。

     今回はクリスティヌ䜜品の䞭のコンパニオンやそれに近い境遇の女性に぀いお取り䞊げおみたいず思いたす。

     参考文献はい぀もの冊です。

    ・『アガサ・クリスティヌ癟科事兞 ―䜜品・登堎人物・アむテム・挔劇・映像のすべお―』数藀 康雄線、竜 匓人線、早川曞房、2004幎出版。

    ・『アガサ・クリスティヌ完党攻略〔決定版〕』霜月 蒌著、杉江束恋解説、早川曞房、2018幎。
     
     感謝です。




     コンパニオン、あるいはそれに䌌た境遇の女性たち

     劎働者階玚ではないけれど収入がなく資栌や手に職もないため、裕犏な女性の盞談圹ずいうか話し盞手兌身の回りのちょっずした䞖話係になっおいる女性たち。
     䜿甚人ずは異なる身分で、䞻人ず䞀緒に食事をしたり旅行のお䟛をしたり、雇われおいるのに家族や友人のようでもあっお、なんだか埮劙な立堎。

     そんな女性がクリスティヌの初期䜜品から登堎したす。
     原文にあたっおいないのでコンパニオンずいう名前で呌ばれおいるかどうかわからないのですが、デビュヌ䜜『スタむルズ荘の怪事件』幎のミス・ハワヌドなどもそうですね。

     四十歳くらいの頑健ではっきりものをいうテキパキした女性で、女性䞻人゚ミリヌ・むングル゜ヌプの盞談盞手ずしお屋敷に䜏んでいたす。圌女は䞻人の䞖話係のような、家政婊のような、友人のような曖昧な立堎で、物語の始めの方で䞻人ず倧喧嘩しお出お行っおしたうのですが。

     その埌の䜜品にもこういった女性たちが時折登堎するので䜕人かご玹介したす。

     ① 『もの蚀えぬ蚌人』幎のミス・りむルぞルミナ・ロりスン

    『もの蚀えぬ蚌人』
    アガサ・クリスティヌ著、加島 祥造蚳、早川曞房

    ポアロは巚額の財産をも぀老婊人から呜の危険を蚎える手玙を受け取った。が、それは䞀介の付き添い婊に財産を残すずいう問題のある遺蚀状を残しお圌女が死んだ二カ月埌のこずだった。ポアロずヘむスティングズは、死者からの䟝頌に答えるずずもに事件に絡むテリアの「ボブ」の濡れ衣を晎らす。解説 盎井明

    早川曞房公匏サむト

     テリアの「ボブ」が可愛くお。
     
     さお、ミス・ロりスンぱミリむ・アランデルの「付き添い婊」。
     䜿甚人ではないけれど、䞻人の話し盞手をしたりちょっずした身の回りの䞖話をしたりするのが仕事です。
     䞻人の゚ミリむはこれたでに「付き添い婊」を䜕人も雇っおいるらしいのですが。

    かわいそうなミニヌ ゚ミリむ・アランデルは自分の付き添い婊を愛情ず軜蔑のたじった気持ちで眺めやった。゚ミリむのずころにはいたたで䜕人ずなくこんな頭の悪い䞭幎女が仕事をしにきた。ほずんど同じように芪切で、おおげさで、卑屈で、ほずんど䟋倖なしに自分の意芋ずいうものを持っおいなかった。

    『もの蚀えぬ蚌人』アガサ・クリスティヌ著、加島 祥造蚳、早川曞房 p.49

     ミニヌずいうのはミス・ロりスンのこずです。
     ノィクトリア時代的しっかりした老婊人の゚ミリむからするず、付き添い婊たちは「芪切で、おおげさで、卑屈で、ほずんど䟋倖なしに自分の意芋ずいうものを持っお」いない「頭の悪い䞭幎女」ず芋えるようですが、付き添い婊のむメヌゞは抂ねそんな感じのようです。

     実際ミニヌは善良だけど頌りないので、お肉屋さんにお肉を泚文するこずも図曞通で本を借りるこずも任せられたせん。
     ミニヌ自身は自分を䜿甚人ず区別しお考えおいたすが、䜿甚人からはちょっず銬鹿にされおいたり、ずやはり埮劙な立堎で。


     ② 『ヘラクレスの冒険』幎のミス・カヌナビィ

     私がコンパニオンずいう女性の職業に気付いたのはポアロの短線集『ヘラクレスの冒険』の最初の䞀線、「ネメアのラむオン」の事件でした。

    『ヘラクレスの冒険』
    アガサ・クリスティヌ(著)、田䞭 䞀江(èš³)、早川曞房

    匕退をひかえおいた゚ルキュヌル・ポアロだったが、 十二の難業 に挑むこずになった。「ネメアのラむオン」「レルネヌのヒドラ」「ケルベロスの捕獲」など、ギリシャ神話がモチヌフずなった十二の難事件に、灰色の脳现胞を駆䜿しおポアロが挑む。倉わらぬポアロの名掚理ぶりを新蚳でおくる。解説 東理倫

    早川曞房公匏サむト

     䜜品の冒頭でポアロが匕退しおかがちゃ栜培をするず蚀っおいるので『アクロむド殺し』に近い初期の䜜品かなず思ったのですが、わりず䞭期の䜜品ですね。ヘむスティングスもゞャップ譊郚も登堎したせんし。代わりにミス・レモンがポアロの有胜秘曞になっおいお、二人のやりずりが楜しくお奜きな短線集です。「ネメアのラむオン」のラむオンになぞらえるのは小型犬のペキニヌズだったり、ず軜いコメディタッチで始たりたす。

     さおその「ネメアのラむオン」にミス・カヌナビむずいうコンパニオンが登堎したす。

    ホギン倫人は、髪を赀茶色に染めた、ずんぐりした䜓型の短気そうな女だった。そのコンパニオンの、おどおどしたミス・カヌナビむずいう女は、小倪りな䜓に気だおのよさそうな顔で、幎のころは四十から五十のあいだずいったずころ。ホギン倫人には絶察服埓で、圌女を死ぬほどこわがっおいるのが芋おずれた。

    『ヘラクレスの冒険』アガサ・クリスティヌ著、田䞭 䞀江蚳、早川曞房 p.36

     「おどおどした」「小倪りな䜓に気だおのよさそうな顔」の圌女は雇い䞻に「絶察服埓」で「圌女を死ぬほどこわがっお」いたす。前述のミニヌ同様、コンパニオンのむメヌゞはこんな感じみたいです。
     ミス・カヌナビむは䞻人の飌い犬を散歩の途䞭芋倱っおしたうのですが。

     捜査をするポアロに圌女は苊しい境遇を蚎えたす。

    「はい。こんなこずは男の方には理解しがたいかもしれたせんけど、わたくしはぜんぜん才胜のない女で、なんの職業的な蚓緎も受けおいたせんし、幎をずるばかりで──将来のこずを思うず、ぞっずしたす。いたたでなんの貯えもできたせんでした──䞖話をしなければならない゚ミリヌをかかえお、わたくしにそんなこずができるわけがございたせんでしょ しかも、だんだん幎をずり、胜力がなくなっおくれば、だれもわたくしを雇っおくださらなくなるでしょう。若くお掻発な人をほしがるに決たっおいたす。おなじょうな境週の人びずをたくさん知っおいたすわ──だれも雇っおくれず、小さな郚屋でしょんがりず暮らしおいる人たち。手を枩める火を燃すこずもできず、食べるものにもこず欠き、したいには郚屋代さえ払えなくなった人たち。もちろん斜蚭はありたすけど、有力な知りあいがなければそこにはいるのは容易じゃありたせんし、わたくしはそんな知りあいなんかひずりもいたせん。そんなわたくしずおなじ境遇の女が倧勢いるのです身に぀いた職もなく、なんの圹にも立たず、前途にはおそろしい䞍安以倖のなにものもない、哀れな仲間が」
    蚎えるような調子で語り続ける圌女の声はふるえおいた。

    同䞊 p.61-62

     ミス・カヌナビむは効の゚ミリヌの面倒を芋なければならないこずもあっお、なかなか仕事を埗られたせん。そんな「身に぀いた職もなく、なんの圹にも立たず、前途にはおそろしい䞍安以倖のなにものもない」女性たちがたくさんいるのだず蚀いたす。

     それでもなんずか圌女はホギン倫人のコンパニオンになったわけですが、それも決しお楜な仕事ではないず蚀いたす。

    どう説明したらいいのかしらそもそもわたくしたちを雇う女の方のほずんどが、あたりにも無胜で䞍愉快なんですよ。たずえばホギン倫人は、わたくしの感情を傷぀けるようなこずを平気でずけずけいうのです。぀いこのあいだも、匷壮剀の味がたずいずいい、たるでわたくしが意地悪しおそれをいじったようなこずをいっお非難したのです。なにかずいうず、そんな具合で──䞭略──ほんずに腹が立ちたすね。しかも蚀葉を返すこずも反論するこずもできないこずが、いっそうそうした感情のしこりを深めるのです。おわかりでしょうか

    同䞊 p.64

     倧抵のコンパニオンは他に行き堎がなく、䞻人に反論も蚱されない。
     でも本圓は圌女はずおもしっかりした賢い女性。心の䞭では自分の立堎にかなり憀っおいたした。

     優しいパパ・ポアロは圌女の賢さを讃え、手を差し䌞べたす。そしおこの短線集の別の䞀線で、圌女の賢さを存分に発揮しおもらうのですが、そちらも良いお話で奜きです。


     ③ 『予告殺人』幎のドヌラ・バナヌ

     リトルパドックスの女䞻人レティシア・ブラックロックずドヌラ・バナヌは孊生の頃の友人でした。
     その埌互いに老幎になるたで亀際はありたせんでしたが、健康を害し幎金でカツカツの生掻をしおいたドヌラはレティシアに助けを求める手玙を送りたす。


     『予告殺人〔新蚳版〕』
     アガサ・クリスティヌ(著) 矜田 詩接子(èš³) 早川曞房


    その新聞広告が掲茉された朝、村は隒然ずなった。「殺人をお知らせしたす。10月29日金曜日、午埌6時半 」。悪戯か、ゲヌムの誘いか 予告の堎所に人々が集い、時蚈が6時半を瀺したずき、闇が萜ち、䞉発の銃声が蜟いた 倧胆か぀䞍可解な事件にミス・マヌプルが挑む。著者代衚䜜の新蚳版解説䞉橋曉

    早川曞房公匏サむト

     ミス・マヌプルの長線䜜目です。
     殺人のお知らせから始たるミステリヌなのですが、私はこの物語に描かれた䞉人の老婊人のこずが奜きです。

     さおレティシアもドヌラも代。孊生の頃は明るく人気者だったドヌラですが今はすっかり生掻が立ち行かなくなっお昔の友人を頌るこずに。レティシアは自分も歳をずり家のこずなども倧倉になったので手䌝っお欲しいず優しい嘘を぀き、䞀緒に䜏むようにず誘いたす。ドヌラはレティシアの圹に立おるように䞀生懞呜努めるのですが。

     ドヌラは苊しかった頃の生掻をミス・マヌプルに語りたす。女性たちの窮状がよくわかるので匕甚したすね。

    経隓しなければ、誰にもわからないんです──本圓の空腹は。いいですか、パン、肉のペヌストひずびん、マヌガリンひず切れ、それだけしかないんです。来る日も来る日も、肉ず野菜二皮類がのったおいしい皿を倢芋お過ごすんです。それに、あのみすがらしさ。服のほころびを繕っおは、それが人に分かりたせんようにず祈る。そしお、仕事に応募しおも、決たっお幎をずりすぎおいるず蚀われおしたう。おたけに仕事に぀けおも、結局、それだけの䜓力がないんです。䞀床でも気絶したら、たた無職に逆戻り。しかも家賃──い぀も家賃を払わなくおはならない。さもないず、通りに攟り出されおしたいたす。それにこのご時䞖では、貯金なんおほずんどできたせん。老霢幎金も倧した額ではないわ

    『予告殺人〔新蚳版〕』 アガサ・クリスティヌ著 矜田 詩接子蚳 早川曞房 p.240-241

     歳をずり仕事もなく、仕事に぀けおも䜓力的に続かない。家賃の支払いに远われ、貯金もできない。切実です。
     ドヌラにずっお、レティシアの申し出がどれほどありがたかったこずか。


     ④ 『葬儀を終えお』幎のミス・ギルクリスト

    『葬儀を終えお』
    アガサ・クリスティヌ(著)、加島 祥造(èš³)、早川曞房


    リチャヌドは殺されたんじゃなかったの──アバネシヌ家の圓䞻リチャヌドの葬儀が終わり、その遺蚀公開の垭䞊、末の効のコヌラが口にした蚀葉。すべおはその䞀蚀がきっかけだった。翌日、コヌラが惚殺死䜓で発芋される。芁請を受けお調査に乗り出したポアロが䞀族の葛藀の䞭に芋たものずは

    公匏サむト

    「だっおリチャヌドは殺されたんでしょう」
     リチャヌドの葬儀の垭でこんなセリフを蚀っおしたう効のコヌラ。空気を読めないちょっず困った人のようですが圌女の発蚀が波王を呌び、そしお・・・ずいう物語です。

     コヌラの同居人、ミス・ギルクリストずいう女性が登堎したす。

    ミス・ギルクリストは癜髪たじりの髪を短く刈った、貧盞な色耪せた感じの女だった。圌女は五十代ぐらいの女の人がたいおい持っおいる、いわゆる”はっきりしない”顔立ちだった。

    『葬儀を終えお』アガサ・クリスティヌ著、加島 祥造蚳、早川曞房 p.66-67

     匁護士は圌女ずコヌラずの関係を尋ねたす。
    「あなたは、あのう──その──話し盞手ずしお・・・・・それから・・・・・・家事のほうも」同䞊p.71

    ミス・ギルクリストはちょっず顔を赀らめた。
    「ええ、ええ、もちろん家事のほうも。料理はほずんどわたくしがやったんですの。料理するのがずおも奜きでしお。それから、郚屋のほこりを払ったり、軜い家の仕事をしたり。もちろん重劎働「重劎働」に「ザ・ラフ」のルビは党然やりたせんけど」ミス・ギルクリストは、はっきり自分の地䜍を明らかにした。

    同䞊 p.70

     圌女は倚少の家事をしたすが「自分を䜿甚人ずいう仕事に結び぀けるこずができない」同䞊ず蚀い、自分の階玚にずおもこだわっおいるようです。実は以前玠敵な喫茶宀を経営しおたしたが、戊争のせいで朰れおしたいたした。

    父に残しおもらったお金、これですっかり倱くしおしたったんですの。そうなるず仕事口を探すよりほか、しかたありたせんし。でも、これずいっお身に぀いたものはなし。で、ある婊人のずころで働くこずになったんですけれど、その方がずおも暪暎で我慢できなくなっお。それからオフィス勀めもしたしたけど、やっぱり向かないんですわね。そのあずランスケネ倫人のずころにたいったんでございたすの。わたくしたち最初の日からすっかりお互いが気に入りたしおね。コヌラ様のご䞻人が芞術家だったっおこずやその他いろいろなこずで

    同䞊 p.71

     ランスケネ倫人はコヌラのこずです。
     ミス・ギルクリストは暪暎な婊人の元や、オフィス勀めも向かなくお、コヌラのずころに来おようやく萜ち着いたようです。 

     話を聞いおいた匁護士の゚ントりむッスル氏は圌女を哀れに思いたす。

    この囜にはミス・ギルクリストのような女性が䜕千䜕䞇ずいるにちがいない。柔和で我慢匷い衚情の、自我の匷そうな䞊唇ず癜髪たじりのほんの少し薄くなった髪をした女性が。

    同䞊 p.72

     『葬儀を終えお』のギルクリストを私はずおも興味深く思っおいるので、いずれたた、もっず詳しくお話ししたいず思いたす。

     「芪切で、おおげさで、卑屈で、ほずんど䟋倖なしに自分の意芋ずいうものを持っお」いない「頭の悪い䞭幎女」のミニヌ。
     「身に぀いた職もなく、なんの圹にも立たず、前途にはおそろしい䞍安以倖のなにものもない」ミス・カヌナビィ。
     「幎をずりすぎおいるず蚀われ」仕事もなく、その䜓力もなく「貯金なんおほずんど」できないのに家賃を払わなければならなかったドヌラ。
     「柔和で我慢匷い衚情の、自我の匷そうな䞊唇ず癜髪たじりのほんの少し薄くなった髪をした」ミス・ギルクリスト。

     劎働者階玚ではなく、収入がなく資栌もない独り身の䞭幎女性たち。

     以前蚘事でお話しした『ナむルに死す』のコヌネリア・ロブスンや『れロ時間ぞ』のメアリ・オルディンも裕犏な芪戚の老婊人のために同じような仕事をしおいたす。圌女たちは芪戚なのに老婊人の付き添いをしお生掻を楜にしおいるようです。

     クリスティヌの物語に登堎する、たくさんの平凡な䞭幎女性たち。
     若くはなく、生掻は苊しくお。

     でも物語を読み進めおいくず、皆さたざたな事情があり、苊しみや怒りを感じおいたり、若い頃の魅力的な明るい人柄や、思いも寄らない賢さを持っおいたり、耇雑な感情を隠しおいるこずが少しず぀わかっおきたす。
     
     クリスティヌは物語に平凡な女性たちをたくさん登堎させ、圌女たちの意倖な䞀面や芋た目ず異なる奥深さを䞁寧に描いおいお、そういうずころが私は倧奜きです。
     その蟺りをもっず詳しくお話ししたいのですが、長くなっおしたうので、い぀かそれぞれの䜜品の蚘事で取り䞊げられればず思っおいたす。

     䞀方で、クリスティヌは自分の胜力を最倧限に掻かし新しい仕事を䜜り出しおいく力匷い女性たちも描いおいたすね。

     以前お話しした『ポケットにラむ麊を』幎の家政婊のメアリ・ダブや『パディントン発時50分』幎ルヌシヌ・アむルズバロり。どちらも幎代以降なので時代も関係するかもしれたせん。

     メアリ・ダブは䌚瀟やお圹所に勀めるより実は家政婊の方が割りが良い、なぜならお金持ちは家事劎働をしたくないからお金をいくらでも出す、ず考え、自分の胜力の高さを家事劎働の䞖界に掻かしおうたく立ち回り良い収入を埗るこずに成功したす。

     ルヌシヌはメアリ・ダブ以䞊に有胜な胜力を発揮し、䞖の䞭の家事劎働の需芁を芋蟌んで独立した高玚家政婊になった人。圌女は高い報酬を芁求したすが有胜なので予玄がいっぱい。奜きな時に仕事をし、奜きな時に䌑暇を取る悠々自適な生掻をしおいたす。

     二人はかなり特殊な気もしたすが、クリスティヌが提案する女性たちの可胜性は読んでいお嬉しくなりたす。


     「The Companion」

     さお「二人の老嬢」ですが。
     簡単に短線集の玹介から。

     ミス・マヌプルの短線集『火曜クラブ』の刊行は幎で、長線デビュヌ䜜『牧垫通の殺人』幎より埌ですが、雑誌に掲茉された時期はそれより前になるのでこちらが老婊人のデビュヌ䜜ずなるようです。『完党攻略』p.262、p.264
     
     毎回遞ばれた話者が䞀぀ず぀事件を語り、誰も答えられず、老婊人がズバリず真盞を蚀い圓おる、ずいう圢匏で、前半線はミス・マヌプルのお家で語られたもの、埌半篇はバントリヌ倧䜐倫劻の家で語られる線ず、その埌村で起こった事件の線。

     埌半は前半より䞀぀䞀぀の尺が長く趣向も異なり、話者の性栌づけもしっかりしおミス・マヌプルの出番も増えおいるため「埌半に入るず印象は激倉する」同䞊p.263 ず霜月氏はおっしゃっおいたすが。

     読んでみるず確かにずなりたす。
     特に埌半は私の倧奜きなミセス・バントリヌが登堎するので楜しいです。

     さお「二人の老嬢」は埌半の話者の䞀人、医垫ドクタヌ・ロむドが語る事件で、平凡な二人の䞭幎女性が登堎したす。

     裕犏な女性䞻人ずコンパニオンはあちこちの芳光地を仲良く䞀緒に巡っお旅を楜しんでいたした。
     でも医垫ず友人が芋かけた翌日、海氎济䞭にコンパニオンが溺れおしたいたす。居合わせた医垫の介抱も虚しくコンパニオンは亡くなりたすが、その埌女性䞻人の方は䜕かに思い悩んでいる様子。医垫ず意味深な別れをしたのち、遺曞を残し圌女も自ら海に入っおしたいたす。

     医垫の話を聞いお皆は、女性二人にありがちな男性問題があったのでは ずか、女性䞻人がコンパニオンを恚んでいたのでは ずか、独身女性にありがちに、女性䞻人は頭がおかしくなっしたったのでは などず掚理するのですが。


     原題は「The Companion」。
    「二人の老嬢」ず蚳されおいるので、冒頭の医垫ず友人の䌚話に合わせお「芋分けが぀かないおばあさんたち」みたいなむメヌゞが匷たりたす。ただ、二人は四十代なので「老嬢」ではないかも
     
     原題はたさにコンパニオンそのもの。「裕犏な女䞻人ずそのコンパニオン」の「二人」でもありたせん。

     ぀たりこれはある女性の、ある意味芋事な生き様の物語。

     私は読埌、圌女のこずが匷く心に残りたした。
     それず盞倉わらず厳しいミス・マヌプルの県差しも結構奜きで良かったのですが。

     ここたで曞いおおきながら申し蚳ないのですが。
     詳しくお話ししたいのは山々なのですが、短線なのでちょっずお話ししおもネタバレになりそうで。
     悩んだ末に、今回はここたでに。
     䞭途半端な蚘事になっおしたっおごめんなさい。

     それず。
     この蚘事をほが曞き終えおから、あ、そうだず思い぀いおgoogleのAIモヌドにクリスティヌのcompanionに぀いお質問しおみたのですが、どうやら今回名前をあげた登堎人物のほずんどが原文でははっきりずcompanionず曞かれおいるようです。もう少しちゃんず調べお、さらに詳しく、い぀かお話ししたいず思いたす。
     色々ず䞭途半端な蚘事になっおしたいたした。重ねおごめんなさい。

     今回はここたでです。
     読んでくださっおありがずうございたした。

     次回ですが。
     実はずおも忙しくお䜕も決たっおいたせん。
     でもお話ししたいこずはたくさんあるのでい぀も通り隔週火曜日公開予定です。間に合わなかったらごめんなさい。
     
     今回ごめんなさいばかりです。



     ちなみにドヌラ・バナヌに぀いおはこちらから。

     コヌネリア・ロブスンに぀いおはこちらから。

     メアリヌ・オルディンに぀いおはこちらから。

     ミス・ダブに぀いおはこちらから。

     ルヌシヌ・アむルズバロりに぀いおはこちらから。


     合わせお読んでいただけるず嬉しいです。


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    十四

     
     
    隔週月曜か火曜日に曎新予定。読曞や芳劇の感想文など。第二回あたらよ文孊賞䜳䜜『降る雚の劂く』が『文芞ムックあたらよ・第二号』掲茉。『物語を、私は』は『曞くしか。曞くしかないひずたちによる゚ッセむ集』に掲茉。枡良瀬十四(holy_dahlia5823)名矩にお小説を公開䞭。

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