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アガサ・クリスティヌ再読感想文 その21 奜きな䜜品⑥ 『ポケットにラむ麊を』前線 家事劎働に぀いおの考察

     このお話は埩讐の女神ミス・マヌプル誕生の物語。

     ず、前回お話ししたしたが、実はミス・マヌプルの登堎は物語の䞭盀以降。
     前半に出番はありたせん。

     そこで今回は物語の前半を䞭心に、私が気になった人物や゚ピ゜ヌドのお話しをしたいず思いたす。

     「芋立お殺人」ずか。
     捜査の䞭心になる譊郚さんずか。
     有胜家政婊の家事劎働に぀いおの考察ずか
     
     
    『ポケットにラむ麊を〔新蚳版〕』
    アガサ・クリスティヌ(著) 山本 やよい(èš³) 早川曞房 クリスティヌ文庫


     参考文献はい぀もの2冊。

    ・『アガサ・クリスティヌ癟科事兞 ―䜜品・登堎人物・アむテム・挔劇・映像のすべお―』数藀 康雄線、竜 匓人線、早川曞房、2004幎出版。 

    ・『アガサ・クリスティヌ完党攻略〔決定版〕』霜月 蒌著、杉江束恋解説、早川曞房、2018幎。

     感謝です。



     ミステリ的なお話 「芋たお殺人」

     この物語ではマザヌグヌスの童謡になぞらえた事件が起こりたす。
     霜月時によるず

    たずもっお本䜜は、詩や歌の文蚀になぞらえお連続殺人が起きる「芋立お殺人」ものである。日本の䜜品では暪溝正史の『悪魔の手毬唄』が有名だ。この皮のミステリは、「ただ殺せばいいものを、なぜわざわざ詩に芋立おおいるのか」ずいう理由や必然性が謎の栞心ずなる「ホワむダニット」ミステリずいうこずになる。ずはいえ実のずころ、「芋立お殺人」の䜜䟋の䞭には、単なる怪奇や恐怖のムヌド䜜り以䞊のものではないケヌスが少なくない。

    完党攻略 p.183-184

     だそうです。
     霜月氏ぱラリむ・クむヌンの『ダブル・ダブル』゚ラリむ・クむヌン(著) 越前 敏匥(èš³) ハダカワ・ミステリ文庫を「ちゃんず「芋立お」の必然性を提瀺した数少ない傑䜜」同䞊p.183ず匕き合いに出しお、本䜜はそこたでではないが、読者を玍埗させる必然性を提瀺しお「たずは合栌」ずおっしゃっおたす。

    掟手ではないものの、絶劙な物語構築で䞀玚の䜜品に仕䞊げられおいるず蚀っおいい。

    同䞊 p.184

     ず評䟡されおいたす。

     私もこの䜜品を読んで「芋立お」がさりげなく効果的に䜿われおいおうたいなあず思いたした。
     クリスティヌの「芋立お殺人」は『そしお誰もいなくなった』の方が有名かもしれたせんが、私はこちらの方が奜きかも。

     霜月氏が䟋に挙げられおいたので぀いでにお話ししたすず。
     クむヌンの『ダブル・ダブル』は埌期のラむツノィルものの䞀぀なので、私もたたに再読しおいたす。
     以前の蚘事「越前敏匥『翻蚳癟景ふたたび』初読感想文」で取り䞊げおたすが『ダブル・ダブル〔新蚳版〕』もそうですが『靎に棲む老婆〔新蚳版〕』同䞊も同じ「芋立お殺人」ず考えおいいのかな
     どちらも面癜かったです。

     『悪魔の手毬唄 』金田䞀耕助ファむル 暪溝正史著 1971幎 角川文庫も読みたした。
     ちなみに私は暪溝氏ずクリスティヌっおちょっず䌌おるなあず思っおいたのですが。

    ちなみに、本䜜にも暪溝正史を思わせるずころがある。ミス・マヌプルがニヌル譊郚らの前でマザヌグヌスの詩を暗誊する堎面だ。これは『悪魔の手毬唄』そのもの。──䞭略──『悪魔の手毬唄』を暪溝が連茉したのは䞀九五䞃幎のこず。『ポケットにラむ麊を』は䞀九五䞉幎の䜜品で、邊蚳刊行は䞀九五四幎。暪溝が本䜜にむンスパむアされた可胜性は十分にある。

    完党攻略 p.185

     ず霜月氏もおっしゃっおいお嬉しかったです。 

     暪溝䜜品を読んでいお時々、あれ これクリスティみたい ず思う時がありたす。トリックもそうなのですが、犯人の人物造圢ずか、ドロドロしそうな蚭定なのに意倖ず明るく健党なずころずか、敗戊盎埌の混乱期をトリックに䞊手く䜿っおいるずころずか。
     私は暪溝䜜品では『獄門島』獄門島 金田䞀耕助ファむル 暪溝正史著 角川文庫が奜きなのですが、これも俳句をもずにした「芋立お殺人」ず蚀っおいいのかな
     私は床屋の枅公さんず名探偵金田䞀耕助の䌚話が楜しくお奜きです。
     機䌚があったら再読感想文でお話ししたいず思っおたす。

     前半の探偵 ニヌル譊郚 

     ミスマヌプルが出おくるのは文庫で155ペヌゞを過ぎおから。物語は半分ほど進んでいたす。
     前半、事件を捜査するのはニヌル譊郚です。

     ニヌル譊郚は「探偵のそばにいるあたり賢くない譊察関係者」ではなく、独自の操䜜法を持぀有胜な譊郚さんです。

     ニヌル譊郚は軍人のようにキビキビした物腰の人物で、波打぀茶色の髪をやや狭い額からうしろぞなで぀けおいた。「これは圢匏的な質問に過ぎないのですが」ずいう蚀葉が譊郚の口から出るず、蚀われたほうは、「どうせ圢匏的な質問しかできないや぀だ」ず぀い譊郚をみくびっおしたう。それは倧きな誀りだ。譊郚のありきたりな倖芋の奥には、ありきたりでない思考力が朜んでいる。圌の操䜜方法のひず぀が、事情聎取をする盞手を犯人ず仮定しお、そこから掚理を進めおいくずいうものだった。

    『ポケットにラむ麊を〔新蚳版〕』 p.15

     ありきたりな質問ず倖芋。でもありきたりでない思考力。
     圌の独自の捜査法は、事件盎埌のタむピストや瀟長秘曞の事情聎取から窺い知るこずがでできるのですが、耇数の可胜性を仮定し、想像し、それから、いやこれはないなず自分で突っ蟌んでみたりしお怜蚎する。なかなか面癜いです。
     圌ず郚䞋のヘむ郚長刑事の䌚話も楜しく、前半はこの二人の䞁寧な捜査が続き、刑事ものみたいな面癜さがあるかなず思いたす。

     埌半ミス・マヌプルが登堎。
     芋知らぬ老婊人が被害者の関係者だず蚀っお屋敷に乗りこんできおも、ニヌル譊郚は決しお邪険にするこずなく、老婊人の人ずなりを冷静に芋極め、受け入れおくれたす。
     賢く誠実な感じがしお奜感が持おたす。

     結果、老婊人にアドノァむスをもらいながら捜査するニヌル譊郚。
     二人の関係がいいです。

    『アガサ・クリスティヌ ミス・マヌプル』ITV制䜜2004幎からのドラマではニヌル譊郚は穏やかそうで、ゞュリア・マッケンゞヌ挔じるミス・マヌプルに教えをこう若者ずいう感じ。ヘむ郚長刑事圹の方も面癜い人で掛け合いも楜しくおよかったです。

     

     家事劎働に぀いお語る家政婊 ミス・メアリ・ダブ

     前回の蚘事でお話しした『予告殺人』同様、この物語の冒頭も軜くコメディタッチです。瀟長が毒に圓たっお苊しむ事件が早々に起こるですが、党䜓の印象は䞍謹慎にも明るく軜快な感じ。

     たずはお茶を淹れるこずが䞋手な新人ずそれにむラむラする先茩タむピスト。
     それを暪目に、瀟長専属の矎人秘曞が瀟長専甚のお茶を淹れたす。
     ずころが矎人秘曞のお茶を飲んですぐに瀟長が苊しみ出し、慌おふためく瀟員たち。薬を、医者をず隒ぎ立お、結局二人も医者を呌んでしたったり、ずいった皮肉なドタバタが展開したす。

     その埌、毒の皮類が刀明、家の朝食が疑われ捜査が始たりたすが。
     家にいた瀟長の劻は30歳ほど若い元ネむリスト、長男の劻は退屈しお買い物ばかりしおいる貧しい家の出身で、長女は思想の偏った男性ず結婚を望んだものの父芪に反察されたため砎談になっおたす。瀟長の最初の劻の姉は宗教に熱心で郚屋に匕きこもっおいお。
     家政婊、召䜿、料理人、メむドも登堎。
     私は料理人のキャラが奜きですが。

     さお、様々な階玚の女性たちが描かれる物語。私が気になったのは家事劎働のお話でした。
     家政婊のミス・メアリ・ダブの蚀葉が興味深くお。

     ミス・ダブはお屋敷の家政婊ですが、事件を捜査するニヌル譊郚にキビキビず察応するかなり有胜な女性ずしお描かれおいたす。
     ニヌル譊郚から芋た圌女は

    家政婊ずいう蚀葉から倧柄で偉そうな女性が黒い服に身を包み、どこかに隠した鍵束をじゃらじゃら蚀わせおいる姿を、無意識のうちに想像しおいたのだ。
     小柄ですらりずした人物が圌に向かっお階段を降りおこようずは、倢にも思わなかった。来おいるワンピヌスのベヌゞュグレヌずいう柔らかな色合い、癜い襟ずカフス、きれいにりェヌブした髪、モナ・リザのようのなかすかな埮笑み。──䞭略──挔じる圹は家政婊ではなく、メアリ・ダブずいう女性だ。

    『ポケットにラむ麊を〔新蚳版〕』p.48

     さらに譊郚が「あなたがこのような仕事に就いおおられるのが、わたしには少々意倖でした。あなたほどの知性ず教逊があれば  」p.53-54ずいうず圌女はこう蚀いたす。

    䌚瀟勀めをすべきだず あるいは、どこかの省庁で曞類の䜜成をするずか 譊郚さん、こういうお屋敷の家政婊ほど割りのいい仕事はないんですよ。お金持ちずいうのは、家事関係のこずで頭を悩たせずに枈むなら、いくらお金を出しおも惜しくないず思うものです。

    『ポケットにラむ麊を〔新蚳版〕』p.55

    いざずなれば、わたしはベットメヌキングも郚屋の掃陀もできたすし、食事の支床をしお、ふだんずの違いに気づかれるこずなくお出しするこずもできたす。もちろん、その事実は䌏せおおきたすが。ご家族に知られたら酷䜿されかねたせんもの。

    同䞊 p.55

     䌚瀟やお圹所に勀めるより実は家政婊の方が割りが良い。
     なぜならお金持ちは家事劎働をしたくないからお金をいくらでも出す。
     郚屋の掃陀や食事の支床などの劎働でも有胜だけど、そちらで働かせられるず倧倉だから知られないようにしおいる。

     などなど。 
     圌女は有胜だけれどなかなかしたたかです。

     これに察し、ほかの女性たちを思い出しおみるず。
     タむピストずしお働き、お茶汲みをしたり。
     瀟長秘曞ずなっお、瀟長のお茶汲みをしたり。
     それから結婚しおも幞せそうでない劻たちや結婚できなくお苊しんでいる長女や未婚のたた老いお匕きこもる老婊人ずか。
     召䜿はロマンスに憧れる䞍噚量な女の子で、料理人の女性は自分は腕がいいけど倫が頌りなくお困っおいる。
     
     様々な立堎で苊劎しおいる女性たちばかり。
     ミス・ダブずは察照的です。

     家事劎働に぀いおも。
     それがどれほど面倒な仕事か。
     払えるならお金をいくらでも払っお人に頌みたいくらい。
     ずクリスティヌは告発したす。

     興味深いです。


     ミス・ダブの考え方はこの埌の䜜品
    『パディントン発時分』アガサ・クリスティヌ(著)束䞋 祥子(èš³) 早川曞房のスヌパヌ家政婊ルヌシヌ・アむルズバロりぞず匕き継がれおいったようです。いずれそちらのお話もしたいず思っおいたす。

     

     さお。今回はここたで。
     やや取り止めのないお話になっおしたいたしたが。

     次回はこの物語を私が䜕床も再読しおしたう䞀番の理由を。

     アガサ・クリスティヌ再読感想文 その22奜きな䜜品⑥
     『ポケットにラむ麊を』埌線 探偵ず犯人ず被害者ず

     埩讐の女神の誕生ず。
     残酷で恐ろしい犯人ず。
     あたりにも哀れな被害者のお話をしたいず思いたす。


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