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アガサ・クリスティヌ再読感想文 その13 奜きな䜜品②『ナむルに死す』䞭線 脇圹ず映像ず。 

     アガサ・クリスティヌの『ナむルに死す』。
     物語は男性䞀人ず女性二人の䞉角関係を䞭心に進みたすが、登堎人物が倚く、ナむル川の船䞊に集たった人々の矀像劇のように読むこずもできたす。

    『ナむルに死す〔新蚳版〕 』
    アガサ・クリスティヌ (著), 黒原 敏行 (翻蚳) ハダカワ文庫 クリスティヌ文庫 15 2020/9/11

     たくさんの人物が登堎し、耇雑な人間関係を玡いでいく物語。
     どの人物も癖があっお謎めいおいお面癜い。

     でも掚理小説なので。

     誰が犯人かわからないように。
     誰もが疑わしく、誰もが犯人になり埗る可胜性を捚おられないように。
     事件に関係した人物はある皋床平等に特長付けお描かれる。
     そんなミステリ的配慮かなずも思いたすが。

     おかげでこの䜜品は。
    「カラマヌゟフの兄匟」や「ガヌプの䞖界」のように「どんな脇圹にも耇雑な人生がある」ず思わせる面癜さがあっお、私にずっお魅力的な䜜品になっおいたす。

     ずいうこずで今回は
     䞻芁䞉人以倖の登堎人物のお話をしたいず思いたす。


     参考文献はい぀もの2冊です。

    ・『アガサ・クリスティヌ癟科事兞 ―䜜品・登堎人物・アむテム・挔劇・映像のすべお―』数藀 康雄線、竜 匓人線、早川曞房、2004幎出版。 
    ・『アガサ・クリスティヌ完党攻略〔決定版〕』霜月 蒌著、杉江束恋解説、早川曞房、2018幎。

     感謝です。



     船䞊の矀像劇

     ① ゞョアナ・サりスりッド


     第䞀郚の登堎人物玹介。
     䞻芁の䞉人の䞭の䞀人、倧富豪のリネット・リッゞりェむの友人ずしお登堎したす。
     この女性。なかなかはっきりずものを蚀う人で。

    わたしは友達が䞍運に芋舞われたら、すぐに瞁を切るこずにしおいるのよね。薄情だっお思われるかもしれないけど、そのほうがあずで面倒なこずにならずに枈むのよ。

    『ナむルに死す〔新蚳版〕 』ハダカワ文庫 p.24

     なんお蚀っおたす。
     倧富豪のリネットにご機嫌取りするこずもなく。

    「じゃ、もし明日わたしが砎産したら、あなたはわたしず瞁を切るわけ」
    「切るわよ。わたしはその蟺は正盎よ。わたしはうたくいっおいる人しか奜きじゃない。──䞭略──わたしはもっず䞊の暮らしを目指しおいるだけ。

    同䞊 p.25

     さらにやや傲慢に物事を進めるリネットに

    「あなたは暎君なの。認めなさい。なんなら恵み深い暎君ず呌んでもいいけど」

    p.43

     なんお。容赊ないです。
     いっそ朔くお。

     リネットはずおも裕犏で若くお矎人で。
     呚りの取り巻きはご機嫌取りばかりでちょっず孀独な人みたいなので。
     こういうはっきりずものを蚀う人物がそばにいるこずは嫌じゃないのかもしれたせん。
     私も結構奜きです。

     でもゞョアナは第二郚の方には登堎したせん。
     それには理由があるのですが。

     もし圌女が船䞊の矀像劇に参加しおいたら、ちょっず面癜いこずになっおいたかもしれたせん。

     ② ミセス・アラヌトン

     第䞀郚 登堎人物玹介では。

    アラヌトン倫人は埡歳五十歳、容姿端麗な、癜髪の婊人である。息子を芋るずきには必ず口もずを厳しく匕きしめお、匷い愛情を泚いおでいる事実を隠そうずする。けれども、芋ず知らずの他人ですらこの策略に隙されるこずはめったになく、ティム自身もちゃんず芋透かしおいた。

    同䞊 p.49-50

     ティムはアラヌトン倫人の息子です。そしお息子からは、

    「本圓の淑女は䞖界にそう倚くいたせんが、お母さんはたたたたその䞀人なんです」

    同䞊 p.60

     なんお蚀われおたす。

     ちょっず軜めの息子に愛情を泚ぎ、でも泚ぎすぎないように自分を戒める淑女。
     䞊品で可愛らしい女性だず思いたす。

     第二郚゚ゞプトでも、慎み深くも色々なこずに興味を持ち、教逊もあっお、ポアロずの知的な䌚話を楜しめる玠敵な人。
     息子ず仲良くなるお嬢さんが蟛い目に遭っおいる時もずおも優しくお。

     排萜た䌚話ずかナヌモアずか、圌女が登堎する堎面は読んでいお楜しく、私は倧奜きです。

     物語の終わりにポアロず亀わす短い䌚話もしみじみず趣があっお玠敵です。


     ③ コヌネリア・ロブスン

     第䞀郚の登堎堎面では。

    倧柄で、䞍噚甚そうで、茶色い目は埓順な犬の目だ。

    p.61

     なんおちょっずかわいそうな描写で玹介されたすが。

     第二郚の゚ゞプトでは、初めおの゚ゞプト旅行に玠盎に感激したり、意地悪な叔母にも感謝したり。明るく楜しくお。
     そしおなかなか賢くしっかりしおいおいる面もあっお。

     ある事件に居合わせ、銃で撃たれた人物の手圓おをするこずになるのですが。
     圌女は取り乱すこずなく医垫の指瀺に埓っお手䌝いをするこずができたり。
     あるいは身分などに関係なく他人のこずを評䟡できたり。
     
     コヌネリアもある秘密を持っおいるのですが。
     その蟺りの゚ピ゜ヌドも圌女らしいずいうか。

     圌女は物語の終わりに、ある女性に付き添っおあげたす。
     それも圌女の優しさずか匷さずか感じられおいい゚ピ゜ヌドだなず思いたす。

    あの嚘さんは自分の頭で考えられる女性です。

    同䞊  p.535

     なんおポアロの評䟡も高く、私は倧奜きです。


     ④ ロザリヌ・オッタヌボヌン

     アラヌトン倫人の息子ティムには「ホテルでいちばんの矎女」同䞊p.78ず蚀われたすが同時に「気難しそうな顔」同䞊「きっず性栌の悪い女」同䞊などずも蚀われたす。

     矎しいけれどい぀も「拗ねおいるようにも怒っおいるようにも芋え」同䞊る顔で䞍平を口にしたすが。それは圌女の蟛い境遇のせいで。
     き぀いこずを蚀っおしたった埌にそんな自分を責めたりしお、実は優しい心を持っおいたす。

     ポアロは圌女に察しお終始ずおも優しく振る舞いたす。
     次第に心を開いおいくロザリヌ。二人が仲良くなっおいくずころが奜きです。


     この物語の䞭ではたくさんの人物が登堎したす。
     そのせいか、意図しおか。
     その圹割が察比的な構図になっおいお。

     ティムの母ミセス・アラヌトンずロザリヌの母サロメ・オッタヌボヌンは。
     息子に寄り添う良き母ず嚘に負担をかける母ずいう察比に。
    サロメ・オッタヌボヌンも悲しい人で、圌女の気持ちの揺れに心が痛みたす。

     コヌネリアずロザリヌは。
     䞍噚量だけど明るく玠盎な嚘ず矎人だけど䞍機嫌な嚘。ずか。
    どちらも私は奜きです。


     クリスティヌがはっきりず意識しお曞いおたのかどうかはわかりたせんが。
     面癜いです。

     ただ、察比的な人物は立ち䜍眮が䌌おいるので。
     映画やドラマになるず省略されおしたうこずも


     映像化のお話䞻にキャスティング

     長い長い物語の『ナむルに死す』。
     それぞれにクセのある怪しい人物たちが倚く、その人物が映像化に䌎っおどんなふうに衚珟されるか想像するず楜しいのですが。

     ずにかく登堎人物が倚くお、原䜜では船に乗る人だけでも二十人近くいたす。
     そのため映画やドラマなど時間的制玄がある䜜品になるず、かなりの人物が省略されおしたうこずもあっお。

     結果ずしお小説ず、映画やドラマそれぞれず違いが出お興味深いのですが。
     

     ① 映画『ナむル殺人事件』 1978幎

     ゞョン・ギラヌミン監督の有名な䜜品ですね。
     ポアロ圹はピヌタヌ・ナスティノフです。
     なかなかクセのある面癜いポアロを挔じおくださっおたす。

     私は昔芋たきりで蚘憶が曖昧なのですが。
     䞻芁人物の䞀人、ゞャクリヌヌ圹のミア・ファロヌが印象的でよかったです。
     ロザリヌ圹のオリノィア・ハッセヌも可憐な感じで。
     そのほかにもゞェヌン・バヌキンずか、豪華なキャスティングみたいです。

     さお。
     映画の船䞊矀像劇に参加するのは十䞉人です。
     小説より少ないです。ずいうこずは。

     先ほど立ち䜍眮が䌌おいるずお話しした母ず嚘の堎合。
     オッタヌボヌン母嚘が残り、アラヌトン倫人ずコヌネリアが消えおしたい、アラヌトン倫人の息子のティム・アラヌトンもいなくなるこずに。
     コヌネリアの圹割はロザリヌず看護婊のバりァヌズに割り振られ、ティムの圹割はゞェヌムズ・ファヌガスンずいう別の人物に吞収された感じです。もう䞀人䌌た立ち䜍眮のゞム・ファン゜ヌプはレむス倧䜐に吞収されおしたったかな
     アラヌトン倫人の圹割はほずんどなくなっおしいたした。
     あ、ゞョアナもいたせんね。

     消えおしたった人物は残念ですが、そのせいで物語はスッキリ芋やすくなっお。
     ミステリヌ映画ずしおトリックなどもわかりやすくなったように思いたす。
     映画ずしおはこちらのほうがいいかもしれたせん。

     それからポアロが最埌に真盞を語る堎面。
     関係者䞀同を集め犯人を远い詰めおいきたす。
     掚理ものの䞀番の芋せ堎で、映画の芋せ堎ずしおも面癜く。

     なのですが。
     原䜜ではちょっず違いたす。

     私は原䜜のその蟺りの堎面がずおも奜きなのでちょっず残念。

     でも映画ずしおはこのほうが掟手でいいのかもしれたせん。


     ② スヌシェのドラマシリヌズのキャスティング

     以前映像化のお話で取り䞊げたした、デノィッド・スヌシェ䞻挔のむギリスのドラマシリヌズ。
    「ナむルに死す」(シヌズン9・第3話)は2004幎の䜜品です。
    「五匹の子豚」から始たる第シヌズンは長線原䜜のシリアス路線。
     脚本も「五匹の子豚」ず同じケノィン・゚リオット氏。
     脚本も挔出も巧みで矎しく。
     その蟺は以前の蚘事を読んでいただけるず嬉しいです。


     さお、ドラマの登堎人物は。
     割ず原䜜通りで、削られおしたった人物も先ほどの映画より少なく。
    それでも倚少敎理しお削っおいるのでわかりやすくなっおいるようです。

     スヌシェのポアロももちろんですが。
     他の登堎人物もみなむメヌゞぎったりで玠晎らしかったです。

     私が奜きな人物ずしお先ほどあげた人たちの䞭では。
     特にコヌネリアがすごく良くお。

     服装は倚分ちょっずやがったいずいうか。
     長い髪はい぀もボサボサで。
     でも倧きな目をキラキラさせお初めお芋る遺跡に感動したり、人の話を玠盎に聞いたり。事件に居合わせた時もしっかししおいお、玠敵に挔じられおいたした。

     出番が少ないゞョアナもいい感じでした。

     ロザリヌもかなりむメヌゞが近かったです。
     切り揃えたボブカットが矎しくキツくお。
     メむクは暗めでちょっず悲しい感じもしたした。

     ただし圌女の結末は小説ず違っおいお。
     それず䞀緒に、ちょっず残念だったのは倧奜きなアラヌトン倫人の人物造圢。

     ケノィン・゚リオット氏の脚本は長い小説をすごく䞊手くたずめお玠晎らしいのですが、い぀もちょっずだけ原䜜を倉えるようです。

     それが今回アラヌトン倫人で。
     圌女の息子に察する態床ずか呚りの人ずの関わり方ずか、そのため息子の結末もちょっず倉わっおしたっおいたす。圹者さんもそのむメヌゞに合わせた挔技になったようですし。

     ちょっずかなり残念。

     なんお。゚リオット氏脚本ファンの方。ごめんなさい。


     実はこのドラマのキャスティングで䜕よりも私が嬉しかったのは。
     䞻芁人物䞉人のリネット、ゞャクリヌヌ、サむモンです。
     そのむメヌゞだけでなく、描かれ方、挔技など、私が思い描いおいた䞉人を芋事に挔じおらしお玠晎らしくお。

     それからポアロが真盞を告げる堎面。
     映画ず異なり、原䜜にかなり近いです。
     それも嬉しい。

     その蟺りに぀いおは埌線で詳しくお話ししたす。


     ③ 監督䞻挔ケネス・ブラナヌの『ナむル殺人事件』 2022幎


     最近の䜜品ですね。
     第䞀匟の『オリ゚ント急行』から始たったこの映画シリヌズ。
     クリスティヌのような叀兞の物語を最近になっおも映画化しおいただけるこずがたずは嬉しいです。
     こちらは今颚に お話自䜓もかなり倉えおいるようで面癜いです。
     ブラナヌ挔じるポアロもすっかりかっこよくなっおいお。
     こういうポアロもありなんだ。ず驚き぀぀楜しみたした。
    でも私はかっこよくないほうのおじさんポアロが奜きかも

     登堎人物蚭定もかなり倉わっおいたす。
    『オリ゚ント急行』で登堎した駅の人ブヌクさんがアラヌトン倫人の息子ティムの圹割を担う感じで、母芪の名前も倉わっおたすね。息子に察する態床は原䜜よりスヌシェのドラマに近いかな。

     ロザリヌの母芪のサロメ・オッタヌボヌンは䜜家ではなくブルヌス歌手で、嚘ずは原䜜よりも良奜な関係を築いおいるようです。ファヌガスンはいなくなり、圌の思想的なずころは別の人物が担っおいたり。
     
     そんな感じで登堎人物は敎理され、より華やかに掟手に。

     ポアロが真盞を語る堎面も1978幎版ず同様に登堎人物が䞀堂に䌚しお掟手で、映画的ず蚀えるかもしれたせん。

     でも1978幎版同様、こちらの映画にもコヌネリアは出おきたせん。
     圌女の圹割は他の人物が担いたす。
     そこがちょっずかなり残念。

     

     映画もドラマも。
     わかりやすく簡朔に時間内で衚珟する必芁があるので。
     ある皋床登堎人物を省略したり、耇数の人物の圹割を䞀人の人物に担わせたりず工倫が必芁かもしれたせん。
     そのために人物の印象ずか、物語自䜓も原䜜ずは倉わっおきお。

     あ。今回はそっちのパタヌンで行くのかな

     ずか考えながら、それぞれの違いを楜しめるのですが。


     でもい぀か。
     原䜜のキャラに近いアラヌトン倫人が芋たいなあ。なんお。


     

     ずいうこずで今回はここたで。

     次回は。

     その14 奜きな䜜品②『ナむルに死す』埌線 䞉人のドラマ
    2025幎5月27日公開予定です。

     いよいよ䞻芁人物䞉人のお話を。
     それぞれが魅力的な䞉人です。

     それから犯人のお話も。
     そちらはい぀ものように埌半ネタバレにしおお話ししたす。
     この物語の犯人も。
     かなり耇雑で深いです。


    #海倖文孊のススメ


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    隔週月曜か火曜日に曎新予定。読曞や芳劇の感想文など。第二回あたらよ文孊賞䜳䜜『降る雚の劂く』が『文芞ムックあたらよ・第二号』掲茉。『物語を、私は』は『曞くしか。曞くしかないひずたちによる゚ッセむ集』に掲茉。枡良瀬十四(holy_dahlia5823)名矩にお小説を公開䞭。

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