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便利屋修行1年生 ①致命的な欠陥 目次 リンク有 連載恋愛小説 全25話 完結済み

     あたらしい職場は、一風変わっている。
     綾が所長室に足を踏み入れると、先客がひとりいた。
     ウチの主力には決定的な欠陥がある、との事前情報が頭をよぎる。この人のことだと、ひとめでわかった。

    「ほかにいないんすか。秋葉とか」
     面倒そうに目を細め、彼はスマホを操作中。
    「ちょうど出払ってんのよー。頼むわ」
     こちらに目もくれず、綾の頭上あたりで会話が展開される。
     試しに自己紹介をはさんでみたが、おもしろいくらい完全にスルーされた。
     所長がほらね、とばかりに苦笑する。優秀な人ほど気難しいこともあるし、気にしないでおこう。

    「データは慶に送ったから、直接聞いてなー」と所長。
     もしかして、今の、依頼書を確認してたってこと? 仕事早すぎないか、沢口慶。とっくに姿が見えないし。
     全速力で追いかけ、バンを確認してから綾は助手席に滑り込んだ。
    「あのー、沢口さん。ご迷惑おかけしないよう努めますので、よ……」
    「言われたことだけやればいいから」
     決意表明をぶったぎる沢口。ここまで歓迎されないのも、逆にすがすがしいな。会話を成立させる意思がなさそうなので、目的地までの車内では好きなだけ観察させてもらうことに。

     見れば見るほど確信する。所長の言う欠陥とは、彼の外見のことだろう。
     印象に残るとまずい職種のはずなのに、沢口慶の風貌は、なんというか群を抜いていた。沈黙に耐えられないという感覚には、不思議とならなかった。
    「本上綾です。特技は玉ねぎのスライスです」
     信号待ちで再トライしてみた。
     無表情で一瞥いちべつした沢口が、心底イヤそうにため息をつく。
    「この仕事で披露する機会なさそうですし、正直なんで採用されたのかギモンなんですけど」
     メンタル……とボソッと聞こえた。反応にはちがいないので、ちょっとうれしくなる。
    「あ、空気読めない自信もありますよ」
     車が動きだし、会話(?)はそこで終了した。

    (つづく)

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    *23年8月に公開していた作品です
    加筆・修正し、分割して再掲します

    #連載小説 #恋愛小説が好き #賑やかし帯 #小説

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