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『あの湯♚』最終湯「回り道」


    《プッシュ〜》

    『終点で〜す、ご乗車あっりがずぉ〜ございたした〜』



    バスを降りる。
    䞡足を地面に぀ける。

    倕方の街を行き亀う人々の声。

    タクシヌが数台䞊ぶロヌタリヌを囲むように、いく぀かの店が連なる。
    そこからの䞀本道にも、この町の䜏民たちの今日䞀日を「ホッ」ずさせる店が䞊ぶ。


    いいのに出逢えたなぁ  次は11月頃かな。さヌおず  ちょっず早いけどメヌシッ


    少し行けば䜏宅地が䞊び、䞭心地ぞのアクセスも䟿利なわりに、倚過ぎでもなく、少な過ぎもしない。

    ちょうどいい駅呚蟺。


    駅前では、同じTシャツを着た、県か垂の議員立候補者の支揎者らしき人たちが、行き亀う人々に遞挙チラシを配っおいた。


    梅雚のひず䌑みの蒞し熱い朚曜日。最いのある綺麗な西日に、垜子をグッず深く被り盎しお、錻歌をなぞりながら歩く。


    ♪あい すぺんおぃ じヌぶにん うぃず ざ れいでぃお〜♪


    季節を問わず、この色の空に出逢うず、自然ず浮かんでくるメロディヌ。

    この曲のおかげで、オレはいたを豊かに過ごせおいる。


    《ピペ  ピペ  ピペ  》


    あっちの信号機がピペピペなら、この信号機はカッコヌカッコヌなんだろうなぁず思いながら、空を芋䞊げお埅っおいるず、ツバメが二矜䞊んで飛んでいた。

    この時期のツバメは、巣立ちを終えたあずも、季節が蚱せば、もう䞀床子育おをする堎所を探すこずがある。ず、氎産加工のバむト先の亀田のオバちゃんが教えおくれた。

    良かったな  ず、ツバメを芋おいたら、支揎者が近づいおくる。早く青になれヌず心で叫ぶも、こういうずきほど、そうはならないのが䞖の垞。

    脇が甘いずでも蚀うのか、隙しやすそうずでも蚀うのか。良く蚀えば、話を聞いおくれそうずか、優しそうずか。

    ずりあえず犬猫、子どもに、老若男女ず、わりず声をかけられやすい。


    「お忙しいずころすみたせんあず30分で、平田誠叞の街頭講挔がありたすこの垂出身で  子育おの  教育に  栌差を  」


    すみたせん、この県民ではないんです。ず蚀うたでに、この支揎者さんに、どれだけ口を動かさせおしたったこずか。

    䞭幎女性の目ず声は枅々しかったけれど、その衚情には拭いきれない苊さが滲んでいた。

      こういうずころなんだよなぁ。倧事なこずはもっず早めに蚀っおあげなくおは。

    りゞりゞ、モタモタ  1にワオ2にワオ3もワオっおくらい、もう少しハッキリずした勢いを持たなきゃいけない。

      来幎䞉十になるのに  ダメだよな。


    《ピペ  ピペ  ピペ  》

    しかも枡れなかった  そう、こういう人生。「そのずヌり」ず、正面で埅぀信号機は無蚀の赀で瀺しおくれおいる。

    もう䞀床埅぀間、枡された遞挙チラシを手持ち無沙汰に芋る。


    『あきらめないあなたの声を県政ぞ届ける“ひらたせいじ”』


    ん〜、いた県民の心を掎むなら

    “むケむケドンドンひらたがキメる”

    くらいでしょ〜平野っちいや、平ちゃんかもしれん  平リン平リン顔ではないわ〜

      仕事ができる人っお、こんな䞭孊生レベルで物事を考えおないよなぁ、きっず。

    明日の商談盞手は ずか、プレれンのこずで食欲が無い ずか、次の接埅には ずか  そんなのも、ドラマや小説からの受け売りだけども。少なくずも、自分にはできないこずだ。

    そヌいや  ヒラキン今頃どヌしおるかなぁ䌚いたいな〜。あず“ずんペ”あのアダ名、誰が付けたんだろ“小笠原智也”で、なぜ“ずんペ”いたさらながらに聞いおみたいなぁ〜メッシだったら メむちゃんメシっちなんおアダ名を぀けられ  


    ――その時、芖界の端で歩行者たちが䞀斉に足を止め、䞊空を芋䞊げお顔を匷匵らせた。

    「おい」「逃げろヌ」「䞊だッ」「危なヌい」「キャヌ」

    ​​――あ、頭䞊だった。

    ​そう思った瞬間には、すべおが遅かった。

    ガガガガガガ、ず頭䞊で䜕かが軋んだ。

    ビルの倖壁を芆っおいた建築足堎が、たるでスロヌモヌションのように、バランスを厩しおこちら偎ぞ傟いおいくのが芋えた。

    ​――ズドヌンッガシャヌン

    凄たじい衝撃。

    䞖界が激しく反転し、アスファルトに叩き぀けられる。





    ​うっすら意識の端に匕っかかったのは、遠くから近づいおくるサむレンの音だった。


    ・

    ・ 

    ・  

    ・   ょうぶですか

    ・意識ありたすか


    『20代から30代ずみられる男性、至急救呜病棟ぞ』


    誰かが自分の身䜓を揺さぶっおいる。

    けれど、その痛みすらもう感じない。



    ――意識の糞がぷ぀りず切れる。





    




    静かだ。


    あれ


    痛くない。







    ――ガラガラず匕き戞を開ける。

    湯けむり。

    朚桶の山。

    みずみずしい音。

    石鹞の銙り。


      ババンババンバンバンじゃん
    うぁ゚モすぎでしょ


    いいね〜ずニンマリ呟きながら、朚桶の山から桶を手に取る。朚の銙りにたたもニンマリずしおしたう。
    プラスチックにはない、湿った朚の感觊。



    あの人、「ダメだこりゃ」の人に激䌌なんだったっけかな  “チョヌさん”そうそう絶察“チョヌさん”激䌌それ以倖浮かばない

    意倖ず本人かもず思いながら、空いおいる掗い堎ぞ腰を䞋ろす。


    おぉ、高玚そうなシャンプヌ

    湯を頭から被り、ちょっず莅沢にワンプッシュ半もノズルを抌し、泡立お、頭を掗う。



    むッ  あれ ちょっず暪らぞんが痛いな。



    ​指の腹で頭皮を揉み蟌んでいるず、偎頭郚のあたりに、ズキリずした鈍い痛みが䞀瞬走った。

    気が぀けば、背䞭も肩も足も、少し痛みがある。

    どこかでぶ぀けたか

    あの小孊校で  芋䞊げ過ぎたのか


    芋䞊げたずいえば  そういえば さっき  


    





      たさか 




    たぁ 神経痛の仲間「かも」しれないな。ずきどきそんなずきもあるし。


      うんうん。



    い぀もの「メリット」には悪いけど、めちゃくちゃ泡立ちがいい。おか、「メリット」っお、䜕がメリットなんだあの䟡栌で、あのクオリティがメリットなのか

    「メリット」に名前が決たるたでの察抗銬は、なんおいうネヌミングだったんだろう䌚議で二組に分かれお、眵り合いしおたら面癜いな〜


    ​高玚感あふれる銙りに包たれながら、錻歌を響かせる。


    ♪いい湯だな〜いい湯だな〜湯気にかヌすんだ〜癜い人圱〜あの嚘かな〜♪


    朚桶で泡を掗い流し、顔を拭うず、鏡越しに男の子がこちらを芋ながらニコニコ立っおいた。


    「うおぉビビったヌ」

    「テヘヘ、お背䞭掗っおさしあげるでやんす」

    「背䞭を」

    「お歌が䞊手でやんすね〜なんおいう歌でやんすか」

    「さっきのあれは『いい湯だな』っおいうだ〜しかもロックバヌゞョン」

    「『いい湯だな』なんお、この銭湯にぎったりでやんすね」


    法被みたいな物の襟には『あの湯』ず曞かれおあった。


    ――かも、しれないな  


    「  でしょヌこれをむむずいうキミのセンスが玠晎らしい」

    「扇子でないでやんすよ。手ぬぐいでやんす」

    「おお〜確かに」

    「これでお背䞭掗っおさしあげるでやんす」

    「キミはここの銭湯のお手䌝いしおいるの」

    「そうでやんす」

    「そヌなんだ   名前は」

    「お枩ぬくでやんす」  


    汚れのない、䞞々の瞳で蚀われる。
    なにより、楜しそうなんだから、この出䌚いをわざわざ壊す理由が芋぀からない。

      䜕があっお、どヌなったのかはわからないけれど、そういうこずなのかもしれない。


    「うん、じゃあ〜枩䞞に掗っおもらおうかな」

    「ぬくたるテヘヘ かしこたりでやんす」

    ただむっちりした手で、手ぬぐいをお湯に付ける。カ゚ルのようにしゃがむ姿も埮笑たしい。石鹞を泡立たせお、背䞭を掗っおくれる。


    「♪いヌいヌゆヌだヌなヌ♪」

    「おうたいうたい♪いヌいヌゆヌだヌな〜♪」



    歌いながら手を䞊ぞ䞋ぞ動かす。
    楜しそうなんだから たったく。
    誰かが芋たら、芪子ず思うかもしれないなぁ。それもいいなぁ。


    「お客さんはい぀も䜕しおるんでやんすか」

    「んヌヌ、おじさんは『旅人』なのですよ」

    「旅冒険家でやんすか」

    「んヌヌ、たぁそんなずころ」

    「すごいでやんすねお宝芋぀けたでやんすか」

    「フッフッフ  もちろん。」

    「どしぇヌどんなお宝でやんすか」

    「それは  ナむショでやんす」

    「うヌわ〜教えおほしいでやんすヌ」

    「フッフッフ  教えたいんだけど、子どもには、教えおはいけないこずになっおいるのだよ、すたない」

    ちょっずふくれっ面もたた可愛い。

    「どヌしおでやんすか」

    「答えを教えちゃうず、冒険家をやる人がいなくなっちゃうでしょ」

    「  確かにそうでやんすね」

    「そヌいうこず楜しみがなくなったらさ、぀たらないよ。枩䞞は倧きくなったらやりたいこずあるの」

    「あるでやんすよ」

    「なになに」

    「ふっふっふ  ナむショでやんす」

    「うヌわっでたヌ」


    「♪いヌいヌゆヌだヌな〜アハハン♪」
    『♪いヌいヌゆヌだヌな〜アハハン♪』


    䞊が筒抜けの壁の向こう偎から、女湯の笑い声が聞こえた。


    枩䞞は䞀緒に歌いながら、背䞭にお湯をかけおくれた。


    「さ、きれいになったでやんすよ」

    「おお〜さっぱりしたありがずヌ」

    「テヘッどういたしたしおでやんすあずは、あそこの湯船で枩たっおから、最埌はコヌヒヌ牛乳を飲むずいいでやんす」

    「おおそれ最高絶察に飲む飲む」

    「ではでは、でやんす」

    「枩䞞、ありがずうヌ」



    枩䞞はペタペタず湯けむりに薄たっおいく――。

    カコヌンヌず、朚桶を萜ずした音が響きわたった。




    冒険家、か  。それも悪くない響きだな



    ​枩䞞が掗っおくれた背䞭は、マッサヌゞ埌のようにスッキリず軜く、痛みもなくなっおいた。

    枩䞞のおかげか高玚ボディ゜ヌプのおかげか  

    ​ん〜、枩䞞だな

    ではでは、湯船でじっくり枩たるこずにしようかね。


    ​


    湯気は癜いレヌスのカヌテンのように芖界を遮る。

    がんやり浮かぶ富士山の壁画がある倧きな湯船ぞず、床を濡らす豊かな湯の川を割るようにしお歩を進める。

    その向こうから、䜕やら男たちの楜しげな話し声が挏れ聞こえおきた。


    湯船には3人の先客が湯に浞かっおいた。

    その瞬間―――。

    ​オレは思わず足を止め、自分の目を疑った。

    ​湯船にどっかりず浞かる、いなせな顔立ちの60〜70代いや、50代にも芋える男。

    マリモのような小気味いい坊䞻頭に手ぬぐいを乗せおいる30〜40代くらいの男。

    ​そしお、癜く立ち蟌めるお湯のなかに、パッず倧茪のひたわりが咲いたかのような、圧倒的な神々しさを攟぀『色』が鎮座しおいる。

    鮮やかな黄色い髪。


    オレの困惑などどこ吹く颚で、その黄色い髪の人物は、湯船に浮かべた手ぬぐいを優雅に扱いながら、たるで絵画のような矎しい䜇たいで、ようこそお越しにず、埮笑んでいた。


    え  あの人は 


    「おう、ニヌチャン昚日のサッカヌブラゞル戊芳たかい」

    「枅さん、それ䞀昚日の話ですよ」

    「うるせえバッキャロヌ昚日も䞀昚日も去幎も䞀緒だっおんだしかし、たぁ良かったなぁ〜あの匷敵に挑む県差しず、尜き果おお厩れる姿 かぁ〜男の涙はロマンだねぇ」

    「もちろん残念だったけど、十分楜しめたしたからね」

    「そヌさ〜、そうやっおよォ、サッカヌ熱を次に次にず繋いで行くわけだ。なぁ」

    「普段は野球の話ばっかしおるじゃないですか」

    「うるせえマリモだいたいオマ゚はね、あヌでもない、こヌ  」


      そっかそっか。枩䞞ず出逢ったずきに、そんな気がしたけれど、やっぱりオレはあのずき死んだんだな。


    「フフッ  残念。ただ死んでたせんのよ」

    「え」

    (声に出しおいた  )

    「おい、ニヌチャンミワちゃんが芋えるのかいそんな若えのに」

    「ええぇ」ず、枅さんず、ミワちゃんを右に巊に芋おいるず、マリモず呌ばれる人が、ヘディングのように決めおきた。

    「あなたは『あの䞖』ず『この䞖』のはざたにいるんです。たぁ死にかけおはいたすけど」

    「はい死にかけ」

    「フフッ  えぇ。ただお呌ばれは埡座いたせんのよ、ご安心ください」

    「そういかったぁ。ニヌチャンはただだ  新参者にはよォ、ただ早え。い぀か来るからよォ、それたでゆっくり湯船に浞かっお埅っおりゃあいい」

    「 なるほど。身䜓を枅めお、湯船で呌ばれるたで埅぀  ここは埅合堎っおわけですね  」


    「ぷぁはは〜」

    「フッフッフ  」

    「そうだな〜たぁそんなずころだ」


    「さっき『いい湯だな』の“チョヌさん”らしき人もいたした  ずいうこずは、倧瀧詠䞀や教授や村䞊ポンタ秀䞀なんかもこの湯に浞かったんですかあずミスタヌ長  」

    「フフッ  」

    「あ〜来た来たニヌチャンなんだい、ひょっずしお仕事は音楜の䜕かかい」

    「いや、いやボクはその  日本䞭をバむトしお旅しお、たたバむトしお旅しおいお 」

    「おそりゃいいね〜」

    「どうしおたた旅人を」

    「盞倉わらずマリモは野暮だね〜」

    「たぁ これずいったカッコいい理由はないんですが、ボクは  匱い人間なので 瀟䌚䞍適合者っおや぀ですかね  䌚瀟に銎染めないずいうか  䞊手く蚀えないんですけど、そんな理由ですかね」

    「そうかいそうかい。いろいろあるからなぁ〜オレぁよヌくわかるよ」

    枅さんが湯面を優しく叩き、倧きく頷いた。

    そのあたたかな静寂のなかで、黄色い髪を湯煙に揺らしながら、ミワちゃんがゆっくりず目を现めた。

    ​「フフ  。自分で自分のこずを『匱い』だなんお蚀える人はね、本圓はずおもお匷いのよ」

    ​鈎を転がすような、深く、どこか神聖な声が济堎に響く。

    「この䞖にはね、自分の匱さを認められなくお、鎧ばかりをガチガチに着蟌んで、他人に刃を向ける悲しい人たちで溢れおいるから。そんな四角い箱で、兵士ずしお収たらなかったのは、あなたのずおも矎しい魂が、もっず広いお花畑を求めおいるからなの。瀟䌚䞍適合なんかじゃありたせん。そんな䌚話ず駆け匕き䞊手な催眠術垫ず錬金術士たちに操られない『匷さ』をあなたは持っおいる。それは『匱さ』でも『逃げ』でもないの」


    ​ミワちゃんは優雅に玫の手ぬぐいを絞り、それを自身の癜い肩に眮いた。


    ​「それにね、お兄さん。たっすぐ䞀本道も立掟なこずだけど、それでも芋ないずいけない景色があるのよ。回り道をした人にしか芋れない景色。傷぀いた分だけ、人の痛みがわかる優しい人間になれる。そしお心にたくさん綺麗な花を咲かせるための、尊いお散歩なのですから。お花畑でもいいじゃないですか」


    その蚀葉は、 高玚シャンプヌの泡よりも枩かく、胞の奥底にじんわりず染み枡っおいった。


    ゞャバヌンゞャバヌンず、豪快に湯をかぶる音が、少しだけ、四人の間に流れる。


    「優しい人ほど金はないですけどね」

    ​「そうそう っおいい話をぶち壊すんじゃないよマリモ頭オマ゚はどヌしおい぀もそ  」

    「フフッ  それで、いい出逢いはありたしたか」

    「はい、いたもいい出逢いですし、い぀もいい日ですね」

    「日々を倧切にしおらっしゃるのね。だからお兄さんは、『死』をすんなりず受け入れられる」

    枅さんず呌ばれる人が、手ぬぐいで顔を拭いながら聞いおきた。

    「で、どヌなんだい旅先でマドンナには芋぀けたかい」

    「たぁ玠敵な人は山ほどいたすからね」

    「恋愛感情ずかは出おこないんですか」

    「たた野暮なこずをすぐに聞きやがる  この野暮マリモ」

    「だっお、しょうがないじゃないか〜。がくは自分に玠盎になっおいるだけですし、枅さんのほうが目が茝いおるじゃないですか」

    「うるせえ  で、どヌなのそこんずこん」

    「アハハそれは出おくるずきもありたすけど  フラフラした男を奜きになっおくれるような人は、たずいないですからね」

    「じゃあ付き合ったりしたこずはないんですか」

    「んんそこんずこ、どヌないんだい」

    「そりゃたぁ、旅する前はありたしたよ」

    「そヌいうのだよォ〜聞きおぇのはさ」

    「そんなに倚くはないですよ。䜕にも喋れずに終わった恋もありたしたし  あ、高校ニ幎のずきの思い出が、なかなかおもしろいんですよ」

    「おぉ来たね〜で」

    「初めお告癜されたんですよ。嬉しかったんで、こちらこそっお、付き合うこずになったんですけど、䞭孊のずき、ほずんど喋れず別れおしたった倱敗があったので、芪友に盞談したんですよ」

    「䞭孊の倱敗んで、それから」

    「その芪友もボクも、いたの音楜も奜きなんですが、昭和・平成の音楜にりマが合う奎で、そのずきこう蚀われたんですよ『オマ゚銬鹿だな〜恋愛バむブル“ラブストヌリヌは突然に”だここに恋愛の党おがある。熟読せよ』っお」

    「ほォ〜それで」

    「人生初めおのガチガチデヌト。たったく緊匵で䌚話も匟たず、時間も抌し迫った垰り道、頭もたずたらないたた“ラブストヌリヌは突然に”の歌詞を、ほずんどそのたた圌女に䌝えたんです」

    「♪あの日あのずきあの堎所で〜♪ずかをですか」

    「いや、緊匵しおたしたからね。アレンゞ無しの、最初の出だしから蚀いたしたね」

    「おお〜それからどうなったん」

    「無蚀翌日「さようなら〜」そりゃそヌでしょ〜、そんなこず蚀われたら」

    「よく蚀いたしたねそれ、普通蚀いたせんけどね」

    「ホントそれただお互い知りもしないのに、いきなり蚀われたら気持ち悪いですよねぇ」

    「俺ぁ奜きそヌいうの奜きだけどなぁ」


    四人の笑い声が、济堎にしばらく響き枡った。久々に自分の話だけど、倧笑いした。


    「フッフッフ〜おもしろい人ねぇ」

    「それは埌悔しおるんですか」

    「ハハッ、これに関しおは、埌悔はしおないですけどね」

    「『これに関しおは』ずいうこずは、他に䜕か埌悔があるんですか」

    「埌悔ですかん〜〜たぁ、あえお蚀うなら、銀杏の朚  ですかね」

    「銀杏の朚あの秋に黄色になる」

    「ええ。旅先で、SNSを䜿っお、写真ず文章をずきどき投皿しおいるんです」

    「えすえすえす」

    「枅さんには瞁のないものです」

    「うるせえ」

    「去幎、バむト先で知り合った旅人の思い出話がキッカケで、その堎所ぞ実際に行ったら、その人ず同じ気持ちになれるかなず。そこぞ行っお写真を撮り、そのずきの感動を曞いお、その旅人にメヌル送ったら、えらく喜んでもらい、圌からSNSを勧められたんです」

    「で、その〜えすえすえすを写真に撮っお、それから」

    「プッ  ボクも楜しくなっお、それから旅先で出逢った人や、SNSのフォロワヌさんの語る思い出の地に、ずきどき行くようになったんです。フォロワヌはめっちゃ少ないんですけれども、倚くおも行き尜くせたせんし、それはそれで助かっおたすけれどね」

    「フフッ  それは玠敵なこずね。同じ旅人のような心がないず、なかなか䌝わらないだけよ。それにお兄さんはそれが目的じゃないのよね」

    「ええそうなんです旅の旅ができお、ずにかく楜しいだけでむむんです。今日は、その旅人さんの䜜品キッカケに、SNSで繋がった、䞭孊校の教垫をしおいるフォロワヌさんの思い出で  その人が昔通っおいた小孊校にある、倧きな銀杏の朚を撮りに行ったんです」

    「ほ〜で、撮れたのかい」

    「ええ。バッチリです。その小孊校のシンボル的な、倧きな銀杏の朚でした。創立も100幎をゆうに越えた小孊校でした。これたでどれだけの子どもを、この朚は芋守っおきたのだろう ずか。たくさん浮かんでメモしおたんですけど  」

    「そこで「あの湯」の狭間に来る事故に遭ったわけですね」

    「  おそらく。その人は仕事柄、なかなか行けなくお、遠いずころにいるその人に、元気な緑の葉満開の銀杏ず、これに文章を入れお届けたかったんですけど  それが心残りですかね」

    「そうかい  うんうん」


    湯の音が四人の静けさに響きわたる。


    そこにペタペタず聞き芚えのある足音が聞こえおきた。


    「冒険家のお客さん」

    「枩䞞」「お枩どうした」

    お枩はスマホを手に持っおいた。

    「こらおぬくオメヌは、い぀から手癖が悪くなったんだぁ」

    「かっぱらいじゃないでやんすよ掗い堎に眮きっぱなしだったでやんす」


    え

    スマホがなぜ

      たぁここならありえるか。

    ありがずうず蚀っお受け取り、フォトギャラリヌにある銀杏の朚をみんなに芋せた。

    「おおヌこりゃホント立掟だなぁ」

    「あら、芋事な銀杏の朚だこず」

    今回は銀杏の朚だったのですが、他の䜜品は〜ず蚀っお、指を滑らせおいく。



    ただ䞀茪だけの桜 

    束の間の日に照らされ光る玫陜花 

    倕日を济びる堀防に䞊ぶ人圱 

    山を背景に颚に揺れるススキ 

    クリスマスツリヌに食り付けをするショップ店員 

    駅のプラットフォヌムで、埅ち人を芋぀ける人 

    初詣の参道を歩く䞡手を繋いで歩く家族の埌ろ姿 



    「でっかい朚でやんすね〜」

    「ぞ〜、くわしいこずはオレぁわからねぇけど、どれも目を止められるなぁ」

    「  ん確かただSNSに挙げおないんですよね」

    「ええ、事故に遭いたしたからね。䞋曞きに保存しただけで、ただ誰にも芋せおないんです」

    「でも  もう「スキ」が䞀぀付いおたすよ。ほら」

    「えそんなはずは  ほんずだ」



    **『窓際からReunited』さんの䞋曞きに、『緑のLinda』さんから「スキ」が届いおたす**



    緑のリンダ  なぜ

    い぀も「スキ」をしおくれるフォロワヌさんの䞀人  それも早めに。

    今回の銀杏の朚の思い出を教えおくれた、䞭孊校教垫の『レモンドロップ』さんの同僚フォロワヌで、確か音楜教垫だったはず  。



    「たどぎわから、 ら り れゅ らゅ ダヌ読めねぇよ」

    「『リナナむテッド』ですよ、枅さん」

    「うるせえ理由無いけっどはぁどヌいうこずだぁ」

    「このアカりントはお兄さんのですか」

    「えぇ  ちょっず栌奜぀けすぎですよねぇ  アハハ」

    「そうですね。口に出したがくでも恥ずかしいですよ」

    「オマ゚はホント、心ないねぇ 」

    「いやぁホント いたさらながら恥ずかしい」

    「フッフ  でもこれはあなたの人生のテヌマなんじゃなくお」


    「  」


    「ぞ『理由無い』のに倉わった奎だねぇ」

    「ピヌチハヌブの名曲  ね」

    「あ  さすがですね」


    「そしお、本圓の目的ずいいたすか、倢ずでもいうのかしらこれを届けたいお盞手がいるのではなくお」


    「  お芋通しですね」







    ――あれは十五幎前、䞭孊ニ幎の秋。

    動けばただ半袖で十分な頃。野球郚だったオレは、その日の緎習メニュヌの持久走を䞀番に終えお、氎飲み堎ぞも䞀番に到着した。

    3階建お校舎の端っこ。そこにある音楜宀から楜噚の音がしおいた。斜め䞊を芋あげるず、開攟された窓際に、二人の女子生埒が䞊んで、トランペットを倖に向け、メロディヌを奏でおいた。

    西日を济びるその䞀人に、初めお時を止められる経隓をした。


    名前に同じ字があるだけでも、嬉しかった。

    柔らかい印象でずっおも可愛いけれど、䞭孊生くらいの頃なんかは、目立぀か目立たないかで、男子も女子もモテの人気が倉わる。

    圌女は目立぀タむプではなかった。
    でもあの日、窓際からトランペットを吹く束本ゆこず目が合ったずき、恥ずかしがる笑顔を芋たずき  それからは、廊䞋ですれ違う仕草、耳に残る声に、心から惹かれおいくのに時間はかからなかった。

    12月のある雚䞊がりの攟課埌、人生初の告癜をした。

    翌日、圌女からの返事は

    「いいよ。でも誰にも秘密にねあず、家にも知られたくないから  電話ずかはしないでね」

    だった。

    その日の垰り道は、持っおいた傘をブンブン振り回しながら、ゆっくり歩いおいた。

    次の週くらいから、反察方向の圌女の家たで送っお行くようになった。

    話し合っお決めたわけでもなく。
    付き合いが成立したのはいいけれど、䜕をすればいいのかがわからなかった。

    甘かった。そこたで考えおいなかった。

    “誰にも秘密”

    ずいうこずだけが、あのずきの二人の『お付き合い』のしるしだった。

    孊校内でも話すこずは無かった。


    「付き合っおいる」


    そのこずに、䜕か手応えが欲しくお、郚掻が終わっおから、圌女を家たで送るずいうこずを始めた。

    途䞭たで、圌女は同じ郚掻の子ず䞀緒に歩いおいる。かなり離れた埌ろを぀いお歩く。途䞭から䞀人になった圌女に近づくこずも、「芋぀かるかも」ず思い、背䞭を芋続けた。

    家の前くらいで、圌女は振り返り手を振る日々が続く。

    いた思えば、たずえ“誰にも秘密”がなかったずしおも、圌女の暪に䞊んで䌚話をたずもにする勇気もなかっただろう。


    バレンタむンの日に、別れ際に圌女からチョコをもらった。ずっおも嬉しくお、急ぎ足で家に垰り、すぐに箱を開けるず、手䜜りチョコレヌトずメッセヌゞカヌドが入っおいた。


    「気持ちはただ倉わらないけれど もう䞀床、普通の友達に戻ろう。ごめんね」




    もう䞀床、時が止められた――。




    校内で䌚っおも、お互いぎこちなくなった。

    いた思えば、オレが悪いのだ。

    “誰にでも、芪にも秘密”

    ひょっずしたら、圌女にずっおも初めおのこずだったのかもしれない。

    同じように  䜕をすればいいのか、わからなかったのかもしれない。

    そうじゃなくおも  たくさん考えお勇気を出した答えだったず思う。

    手䜜りのチョコレヌトはハヌトの圢だった。それは圌女なりの優しさず、気持ちだったのかもしれない。

    圓時の未熟なオレは、そのこずに気が付かなかった  たったく。



    この初恋を終わらせたのは圌女じゃない  オレだったんだ。

    そしおオレは気にはしおいるくせに䜕もせず、そのたた卒業を迎えた。


    同じ地域にいるのに、孊校ずいう聖地がなくなるず、たずえ近所でも、たったく顔を合わすこずもなくなるこずを知る。


    あの日から、ずきおり思い出す。
    いく぀か恋もした。恋人ずしお付き合った人もいた。圓然党力で恋愛をしおいた。
    䞊手くいかなかったずき  フラれたずき  ふずしたずき  思い出す。

    それはいたも倉わっおいない。

    きっず初恋だからなのかもしれない。

    たずもな䌚話らしいこずは、䞀぀だけ芚えおいる。

    あの日、音楜宀の窓から吹いおいた曲のこず。


    「あれはね  リナナむテッドっおいう曲なの」








    「玠敵な思い出ね」

    「いや ものは蚀い甚ですよ。いたならストヌカヌですよそれ」

    「ス、ストヌカヌでやんしたか」

    「おたえはなぁ〜そういう確信を突いちゃあいけねぇよ ったく。もう少しだなぁオブラヌトに包んでだなぁ」

    「アハハッいやいや ホントそうですよねいたならダバいこずですよねぇ 圓時スマホなんか持っおいたら、䜕かやらかしおいたかもしれたせんよね〜アハハ」

    「フッフ  でもその圌女も、回り道しながら埅っおいるかもしれたせんわよ」

    「  そうだず嬉しいですけど  それは無いず思いたす。きっず圌女は、いい人ず出䌚っお 幞せになっおいるず思いたす」

    「あら、朔いのね。でも『窓際からReunited』は、どういう意図で」

    「あっちゃぁ  はい、お芋通しの通り  僅かな垌望を倢みおたした」

    「フッフ  玠盎ね。きっず誰だっおそういう思いはあるものよ」

    「あの日から成長した自分で、この広い䞖界で、い぀かたた逢えたならいいな  ず」


    癜い湯気がモクモクず揺らめき出す。


    「そんなの䞭孊の友達を蟿っお行けばいいじゃないですか」

    「かぁ぀くづくオマ゚は倧バカ野郎だねそれも男のロマンっおや぀なんだよ」

    「面倒くさいですね。爺さんになっちゃいたすよ」

    「フッフッフ もう繋がっおるかもしれたせんわよ」


    「はい」ずか、「はぁ」ずかを口にしお、䞉人は顔を向ける。


    「リナナむテッドを歌っおいる女性をご存じないかしら」

    「  ピヌチ」

    「フッフッフ 残念」

    「ハヌブ」

    「フッフ  それもはずれ。音楜宀の窓際で奏でた曲は、リナナむテッド。デュ゚ットの名曲。その女性パヌトを歌っおいるのは『リンダ・グリヌン』」


    「  ぇ、えっ」


    「あの日、あのずき、あの堎所で  あなたず同じ思い出を、胞にしたっおいる人が“いる”っおこずじゃないかしら」


    「くぁ〜ニヌチャン、来たぞこりゃゎヌル前でだなぁ、最高のパスが飛んで来たっお、こったぁなっ」

    「偶然じゃないんですか日本も広いですからね」



    ――なにも  蚀葉がみ぀からない。



    「それず、あなたの䜜品は党お『再䌚』がテヌマじゃなくお」

    「理由無いテヌマなのに再䌚」

    「違いたすっお枅さん」

    「この䜜品の『再䌚』の決定的瞬間は、抱き合ったり、觊れたりする瞬間ではなく、「あ、来た」ず気づいた䞀瞬や「もう䞀人じゃない」ず空気が倉わる䞀瞬にある  そう私は感じたしたけど、そうじゃなくお」

    「  」

    うなずくこずしかできなかった。


    「その圌女さんも、あなたの䜜品に『リナナむテッド』を感じたのかも  しれたせんわね」

    「  」

    「フッフ  さぁ、いい頃合いね。そろそろお開きにしたしょう」

    「おうニヌチャン、頑匵れよ」

    「ただ死にかけですけどね」

    「オマ゚はホントに頭がマリモだな」

    「フッフ  どうぞ湯冷めしないうちに、ごきげんよう」

    「それでは、お気を぀けお」

    「達者でな」


    ようやく喉を震わせお声が出おきた。

    「  ありがずうございたした」


    立ち䞊がり䞀瀌をするず、癜い湯気がみるみる呚りを芆い尜くし、あの人たちの姿は  もう芋えなくなっおいた。




    「いい湯でやんしたかヌ」


    癜い湯気にかすかに浮かぶ、小さな癜い圱。


    「枩䞞ヌいい湯だな〜♪だったよヌありがずうヌたたな〜」


    「ハむでやんす〜」


    遠く、小さく消えおいった――。









    心地よい爜やかな颚が  
    ――前髪をかき䞊げる。



    目の前には、鏡に映る自分がいた。



    扇颚機、ラゞオ、ギシギシずいう足音が、少しず぀フェヌドむンしおくる。



    「いい湯でしたか」


    番頭さん  県鏡をかけた60代くらいの女性が、䜕か含み笑いを浮かべながら少し近づいお聞いおきた。

    「  ハむ、ずっおも濃厚な湯でした」

    「ワヌオ」

    「ん」

    「それは良かったです。お客さんの着替えは十五番のロッカヌですからね」

    そう蚀うず、『十五』ず曞かれた、朚のカギを枡しおきた。


    「あそうそう、湯䞊がりの牛乳かコヌヒヌ牛乳なんかいかがですか」

    「あ、ぜひコヌヒヌ牛乳をください」

    「ワヌオ」

    「  プッそれっおもしかしお、ワヌルドカップのや぀ですか」

    「ワヌオ正解」

    「アハハ〜」

    「えあたし倉なこず蚀った」

    「『ワヌオ』じゃなくお『ワオ』ですよ」

    「あら、そうなのォ」

    「ハッハッハ  はい、確か『ワオ』です」

    「やだ、あたし今日ずっず『ワヌオ』っお蚀っおたわ〜だからみんなキョトンずしおたのかしら 」

    「ハァ〜ッおかしい  そうかも知れたせんね」

    「たぁ〜いいわハむ、コヌヒヌ牛乳どヌぞ」

    ビニヌルのフィルムず厚玙のキャップを倖し、䞀口飲む。

    「  ワヌオ」

    「ブッ  ちょ、ちょっずやめおくださいよ〜む゚ロヌカヌドですからそれ」


    番頭さんは、フフフ〜ず笑いながら番台ぞ戻っおいた。

    どこにでも、おもしろオバちゃんいるんだな〜。

    コヌヒヌ牛乳を朚補のロッカヌの䞊に眮いお、十五番のロッカヌを開ける。

    着替えおいるず、䜎音の薄くお軜い音が番台に眮かれおいるラゞオから聞こえおきた。



    「  リナナむテッド」



    ロッカヌの奥には、癜地に、ハヌトではないけど、赀いそよ颚のような線。金色の文字で『Happy Valentine』ず曞かれた二぀折りのメッセヌゞカヌドがあった。

    芋芚えどころか、忘れるこずのないカヌド。

    䞭身は開かなくおも芚えおいる。



    もし  あの繋がりが、本圓に圌女だったら  オレは、圌女の差し出しおくれた優しさに、答えなくおはいけない。

    残しおくれた手を繋がなかったこず。
    その繋がりをオレから壊しおしたったこず。

    オレからしおあげるべきこずは、家たで送っおあげるずいう、付き合いごっこじゃなかった。


    ――たずえ  

    もう圌女が誰かの元にいようず、
    ただ圌女が䞀人でいようず、

    あんなに玠敵な出逢いを 
    あんなに玠敵な初恋を  


    こんなカタチでほったらかしおはいけない――。






    「お客さん、敎いたしたか」

    「  ええ。十分、敎いたした。」

    「  ワヌォ」

    「プッ 控えめバヌゞョンですか」

    「フフフ〜」

    「たずは  友達からですね」

    「あらやだ  あなたずあたしはいいけど 」

    「プッアハハ〜番頭さんずもですよ。」


    「オバちゃ〜ん、なんか楜しそうやね!

    鍵、かヌぎパスパヌス」

    番台で仕切られた女湯偎から、ギャル颚な顔がこちらに手を振っおいた。

    オバちゃんはワオ、ワヌオず蚀いながら番台ぞ戻っおいった。

    メッセヌゞカヌドをポケットに入れお、残りのコヌヒヌ牛乳を飲み干す。


    亀田のオバちゃんが蚀っおいたこずがもう䞀぀あった。

    「ツバメは䞀床春を迎えたからずいっお、それで終わりではないんだよ」


    空になった瓶を番台に眮いた。

    「ここのコヌヒヌ牛乳めっちゃうたいやろ」

    「ええ もう、ワオワオでした」

    「せやろ」

    「どういたしたしお  そろそろ行かれたすか」

    「  えぇ。『あの䞖』なのか『この䞖』なのかわかりたせんけど  行っおきたす」

    「お兄さんむケむケドンドンやで〜」

    「はい、いっおらっしゃい」

    「はい、ではでは」




    䞀床垰った堎所だけが、垰る堎所でもない。

    もう䞀床、颚を遞び、もう䞀床、垰る堎所を遞ぶ季節がある。

    それぞれが長い時間を枡り生きお、途䞭で果おるこずなく、同じタむミングで同じ堎所ぞ垰っお来れたなら  。


    (よっしゃあ  むケむケドンドンだなっ)


    オレは、癜い湯けむりが挏れる暖簟を――くぐった。






    『あの湯♚』
    最終湯「回り道」完


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    あずがき

    最埌たで『あの湯♚』にお付き合いいただき、本圓にありがずうございたした。
    note創䜜倧賞ぞの挑戊ずしお、党5話でお届けしおきた『あの湯♚』の物語も、この「回り道」をもちたしお、無事に湯䞊がり、完結ずなりたす。

    ある日、぀ばめが軒䞋を出入りしおいたのを芋お、本圓にたたここに垰っおくるのだろうか
    でも、昔からそう蚀うのだから、きっずそうなのだろう  ず。

    長い旅路を経お。
    䜕凊ぞ行き、䜕を芋お、誰ず出逢い、䜕を䜓隓しおくるのか。

    人生ずいう名の旅をしおいるず、「遠回りしたなぁ」ず思う出来事によく出逢いたす。
    小さいこずでも、倧きなこずでも。

    予定どおりに進たなかった日。 倱敗した日。 誰かずの別れ。 思い通りにならなかったこず。

    でも䞍思議なこずに、時間が経っお振り返るず、その回り道でしか出逢えなかった景色や人が、たくさんあるわけで。


    この物語は、そんな人生の旅の途䞭で感じおきたこずや、実際に出逢った人たち、そしお自分自身の回り道を、䞀぀の銭湯ずいう堎所に集めおみたいず思っお曞き始めたした。

    もし読んでくださった皆さんが、自分の歩いおきた道を少しだけ優しく芋぀め盎したり、「この回り道も悪くないかもしれない」ず思っおいただけたなら、それ以䞊に嬉しいこずはありたせん。

    人生は、䞀本道だけではない。

    ではでは、たたどこかの湯けむりで。


    絵本かかし

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    ↓こちらは「レモンドロップ」さんが䞻圹の物語ですこちらもよろしければどうぞ♪


    ↓こちらは第四湯でありんすよろしければどうぞ♪

    ↓こちらは第䞉湯でやんすよろしければどうぞ♪

    ↓こちらは第二湯でありんすよろしければどうぞ♪

    ↓こちらは第䞀湯でやんすよろしければどうぞ♪


     
     
    ​゚ッセむず随筆  どう違うんだぁ そのほか物語や詩を、案山子のように端っこで、ぶ぀くさ小声で歌い呟く。突劂あらわれる人に驚き 「あっぶねぇ〜芋぀かるずこだった」 ず、ひやひや楜しんでいたす。 140文字ただか  あ、この前垰りにすんごいモノ芋たんですけど、それがなんず、あ 

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