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CpとCpkの違い——偏りがある工程でどちらを見るべきか

    「工程能力はCpkで見ろ」「1.33以上あれば合格」。品質管理の現場で、CpとCpkという言葉は頻繁に出てきます。でも、「この2つは何が違うの?」「どっちを見ればいいの?」と聞かれると、はっきり答えられない人は意外と多いものです。

    結論から言うと、CpとCpkの違いは「工程の偏り(かたより)を考えるかどうか」にあります。そして、現場で合否の判断に使うのはCpkです。

    この記事では、同じ規格・同じばらつきの工程で、平均だけを動かすとCpとCpkがどう変わるかを、数字で見ていきます。

    まず確認:工程能力指数とは

    CpもCpkも、「工程能力指数」と呼ばれるものです。工程が、規格の中に入る製品を作り続けられるかを、1つの数字で表します。

    同じ条件で作っても、製品の寸法はばらつきます。そのばらつきが、規格の幅に対してどれだけ小さいか(余裕があるか)を示すのが工程能力指数です。

    目安としては、多くの会社で1.33以上が「十分」とされています。ただし、客先によってはもっと高い値を求められることもあるので、客先の要求を先に確かめてください。1.33がなぜ目安になっているかは、こちらで書いています。

    ▼ 工程能力指数(Cp・Cpk)の計算と判断基準——1.33はなぜ合格ラインか

    Cp——「ばらつきの大きさ」だけを見る

    計算式

    Cp =(規格上限 − 規格下限)÷(6 × 標準偏差σ)

    ざっくり言うと、「規格の幅の中に、ばらつき(6σ分)がいくつ入るか」です。Cpが大きいほど、ばらつきが規格に対して小さく、余裕があることを意味します。

    Cpの弱点:平均の位置を見ていない

    Cpの式には、平均が出てきません。つまり、工程の平均が規格の真ん中からずれていても、Cpの値は変わりません。

    ここが、Cpだけで判断してはいけない理由です。

    Cpk——「ばらつき+中心のずれ」を見る

    計算式

    Cpkは、平均から規格の上限・下限までの距離のうち、近いほう(危ないほう)で計算します。

    Cpk = 次の2つのうち小さいほう
       (規格上限 − 平均)÷(3σ)
       (平均 − 規格下限)÷(3σ)

    平均が偏っていると、片側の余裕が小さくなります。Cpkはその危ないほうの余裕で評価するので、偏りがそのまま数字に出ます。

    CpとCpkの関係

    ▪ 平均が規格の真ん中にある → Cp = Cpk
    ▪ 平均が真ん中からずれている → Cpk < Cp(ずれるほど小さくなる)
    ▪ 平均が規格の外に出てしまっている → Cpkはマイナスになる

    Cpkは、必ずCp以下になります。CpとCpkの差を見れば、工程がどれだけ偏っているかもわかります。

    日本の教科書では、偏りの度合いを表す係数kを使って、次のように書くこともあります。

    k = |規格の中心 − 平均| ÷(規格の幅 ÷ 2)
    Cpk =(1 − k)× Cp

    どちらの式で計算しても、同じ値になります。

    数字で比べる:平均だけを動かしてみる

    規格が 50.00 ± 0.30 mm、ばらつき(標準偏差)がどれも 0.05 mm の工程で、平均だけを変えてみます。

                 平均        Cp     Cpk    規格外になる割合(計算上)
    工程A        50.00 mm    2.00   2.00   ほぼ0
    工程B        50.10 mm    2.00   1.33   約0.003%
    工程C        50.25 mm    2.00   0.33   約16%

    3つの工程は、Cpがすべて2.00で同じです。Cpだけを見ていると、「どれも十分な工程」に見えます。

    ところが工程Cは、平均が規格の上限(50.30)まで0.05 mm、つまりσ1つ分しか離れていません。計算上、約6個に1個が規格の上限を超えます。Cpkは0.33で、この危なさがはっきり数字に出ています。

    「Cpが2.00あるから大丈夫」と報告していたら、実際には不良が大量に出ていた。Cpだけで判断すると、こういうことが起こります。

    Cpkの値ごとに、どのくらい不良が出る計算になるかは、換算表にまとめています。

    ▼ 不良率とCpkの換算表——Cpk1.0だと不良率は何%か

    片側だけの規格では、Cpは出せない

    「1.0 mm以上」「50 N以下」のように、片側だけに規格がある場合があります。この場合、規格の幅が決まらないので、Cpは計算できません。

    使うのは、規格がある側だけのCpkです。

    下限だけの規格(○○以上) Cpk =(平均 − 規格下限)÷(3σ)
    上限だけの規格(○○以下) Cpk =(規格上限 − 平均)÷(3σ)

    「Cpを出してください」と言われても、片側規格ならCpkで答えるのが正解です。

    だから現場で見るのは「Cpk」

    実際の工程には、必ず多少の偏りがあります。合否の判断に使うのはCpkです。

    ただし、CpとCpkを並べて見ると、改善の方向までわかります。

    状態                     読み取れること              打ち手
    Cp も Cpk も高い          ばらつき小・偏りなし        今の条件を維持する
    Cp は高いが Cpk が低い    ばらつきは小さいが偏っている  平均を規格の中心に寄せる
    Cp も Cpk も低い          ばらつきそのものが大きい     ばらつきの原因を減らす

    特に「Cpは高いのにCpkが低い」場合は、改善の見込みが立てやすい状態です。ばらつきは十分小さいので、平均を規格の中心に寄せれば、Cpkは大きく上がります。

    ただし、「寄せるだけ」で済むかどうかは、その寸法を何が決めているかによります。

    ▪ 刃物の位置や設定値で決まる寸法:設定を調整すれば、その日のうちに動かせることが多い
    ▪ 金型や治具の寸法で決まる寸法:型や治具の修正が必要で、時間と費用がかかる

    中心を寄せる前に、何を変えれば平均が動くのかを確かめておきます。Cpkが低いときの進め方は、こちらに順番をまとめています。

    ▼ Cpkが低いときの改善手順——1.33未満で最初にやるべきことと優先順位

    もう1つの注意:データの取り方で値が変わる

    Cp・Cpkの値は、標準偏差σをどのデータから求めたかで変わります。

    ▪ 短い期間・同じ条件で取ったデータ → ばらつきは小さく出る
    ▪ 何日にもわたり、材料ロットや作業者が変わるデータ → ばらつきは大きく出る

    長い期間のばらつきで計算したものを、Ppk(工程性能指数)と呼んで分けることがあります。客先に数字を出すときは、「いつ、何個、どう取ったデータか」を必ず添えてください。

    ▼ PpkとCpkの違い——同じデータなのに1.04と1.46に分かれる理由

    まとめ

              Cp                   Cpk
    見るもの  ばらつきの大きさ      ばらつき+中心のずれ
    偏り      考えない             考える(危ないほうの余裕で計算)
    大小      Cpk以上              Cp以下(規格外に平均があるとマイナス)
    片側規格  計算できない         規格がある側だけで計算する
    使い方    偏りの大きさを知る    合否の判断に使う

    ▪ CpとCpkの違いは、偏りを考えるかどうか
    ▪ Cpが同じ2.00でも、平均がずれればCpkは0.33まで下がり、約16%が規格外になることもある
    ▪ 合否の判断はCpk。CpとCpkの差で、「ばらつきの問題か、偏りの問題か」がわかる
    ▪ 平均を寄せるときは、何を変えれば平均が動くかを先に確かめる

    手元に工程能力の報告書があれば、CpとCpkの両方が書かれているか、差がどのくらいあるかを1枚確かめてみてください。


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