
ExcelでCp・Cpkを自動計算するシートの作り方(STDEV.S関数)
「Cp・Cpkは計算できるけど、毎回セルの数式を組み直している」——検査データが変わるたびに、AVERAGE・STDEV.S・Cpkの式を書き直していないでしょうか。
一度だけ「型」を作っておけば、次からはデータを貼り替えるだけでCp・Cpk・合否判定まで自動で出るようになります。今回は、そのシートの作り方を手順で解説します。
この記事で作るもの
データを貼るだけでCp・Cpkが自動計算されるシート
判定基準に応じて「十分・やや不足・不足」を自動で色分け表示するシート
規格(USL・LSL)を変えるだけで、他の測定項目にも使い回せるシート
STDEV.SとSTDEV.Pの違い、Cp・Cpkの計算式そのものについては、姉妹記事「標準偏差と3σとは?」「工程能力指数(Cp・Cpk)の計算と判断基準」で解説済みなので、この記事では「シートの組み方」に絞ります。
シートのレイアウト設計
まず、セルの役割を分けます。ここを最初にきちんと決めておくと、後で他の測定項目に使い回すときに迷いません。
A B
1 規格上限USL 5.015
2 規格下限LSL 4.985
3
4 測定値(30個をA5から下に入力)
5 5.0055
6 5.0054
7 5.0056
...
34 5.0024
35
36 平均値 =AVERAGE(A5:A34)
37 標準偏差 =STDEV.S(A5:A34)
38 Cp =(B1-B2)/(6*B37)
39 Cpu =(B1-B36)/(3*B37)
40 Cpl =(B36-B2)/(3*B37)
41 Cpk =MIN(B39,B40)
42 判定 =IF(B41>=1.33,"十分",IF(B41>=1,"やや不足","不足(要対策)"))ポイントは、規格(USL・LSL)とデータ、計算結果を分けて配置することです。B1・B2に規格値を置いておけば、測定項目が変わってもB1・B2を書き換えるだけで、下の計算式は一切触らずに使い回せます。
数式を1つずつ組む
平均値・標準偏差
B36: =AVERAGE(A5:A34)
B37: =STDEV.S(A5:A34)ここでSTDEV.Sを使うのが重要です。Excelには標準偏差の関数が2種類あり、手元のデータが工程全体から抜き取った「サンプル」であればSTDEV.S、データが「全数」であればSTDEV.Pを使います。工程能力の評価は基本的にサンプルの抜き取り検査なので、STDEV.Sで統一してください。STDEV.Pを使うと標準偏差が小さめに出て、Cpkが実力より良く見えてしまいます。
Cp・Cpkの計算
B38: =(B1-B2)/(6*B37) … Cp
B39: =(B1-B36)/(3*B37) … Cpu(上限側の余裕)
B40: =(B36-B2)/(3*B37) … Cpl(下限側の余裕)
B41: =MIN(B39,B40) … Cpk(厳しい方を採用)Cpは規格幅と分布の広がりだけを見た指標で、工程が規格の中心から外れていても数字は変わりません。一方Cpkは、平均が規格の上下どちらに寄っているかを踏まえて、厳しい方の余裕を採用します。だからCpとCpkの2つを両方出しておくと、「ばらつきの問題か、中心のズレの問題か」が数式の時点で切り分けられます。
このあたりの考え方は「CpとCpkの違い」でさらに詳しく解説しています。
判定を自動化する
B42: =IF(B41>=1.33,"十分",IF(B41>=1,"やや不足","不足(要対策)"))工程能力の一般的な判断基準として、Cpk1.33以上を「十分」、1.00〜1.33未満を「やや不足(改善が望ましい)」、1.00未満を「不足(対策が必要)」と3段階にしています。この基準値(1.33や1.00)もセルに置いて数式から参照する形にしておけば、社内基準が変わったときの修正も1箇所で済みます。
実データで動かしてみる
ピン径 φ5.000mm(規格 ±0.015mm、USL=5.015/LSL=4.985)を30個測定したデータで、実際にシートを動かした結果です。
| 項目 | 値 |
| 平均値 | 5.00607 |
| 標準偏差(STDEV.S) | 0.00222 |
| Cp | 2.253 |
| Cpu | 1.342 |
| Cpl | 3.165 |
| Cpk | 1.342 |
| 判定 | 十分 |
CpとCpkを見比べると、Cp=2.253に対してCpk=1.342とかなり差があります。これは平均値5.00607が規格の中心5.000から上側にわずかにずれていて、上限側(Cpu)の余裕が下限側(Cpl)より小さいためです。Cp単独では見えなかった「中心のズレ」が、Cpkを出すことで数字に表れています。
判定はCpk1.342で「十分」でしたが、1.33のラインぎりぎりです。この工程は今は合格でも、平均がもう少し上側にずれれば「やや不足」に落ちる位置にいる——という状態が、色分けで一目でわかるようにしておくと安心です。
色分けで見た目でもわかるようにする
判定セル(B42)に条件付き書式を設定すると、数字を読まなくても状態が一目でわかります。
B42セルを選択 →「ホーム」→「条件付き書式」→「新しいルール」
「指定の値を含むセルだけを書式設定」を選択
以下の3つのルールを追加
| 条件 | 書式 |
| セルの値が「十分」 | 背景を緑 |
| セルの値が「やや不足」 | 背景を黄色 |
| セルの値が「不足(要対策)」 | 背景を赤 |
これで、複数の測定項目を並べて管理表にしたときも、赤いセルだけを追えば「今どこに手を打つべきか」が瞬時にわかります。月次の品質会議の資料にも、そのまま貼り付けて使えます。
使い回すときの注意点
データ数を変えるとき:AVERAGE・STDEV.Sの範囲(A5:A34)を、実際のデータ数に合わせて修正する。テーブル機能(Ctrl+T)でデータ範囲を表にしておくと、行を追加しても自動で範囲が広がるので手間が減ります
片側規格のとき:USLまたはLSLの片方しかない特性(真円度や粗さなど)は、CpuまたはCplの片方だけを見る。両側の式をそのまま使うと誤った判定になるので注意
データが正規分布していないとき:このシートの計算はデータが正規分布していることが前提です。計算の前に必ずヒストグラムで分布の形を確認してください。山が2つある、極端に片側に寄っているなどの場合は、Cp・Cpkの数字自体が意味を持ちません
まとめ
USL・LSLとデータ、計算結果をセルで分けて配置すれば、規格値を変えるだけで他の測定項目に使い回せる
標準偏差はSTDEV.Sで統一する(STDEV.Pだと数値が甘く出る)
Cp・Cpk・判定をIF関数で自動化し、条件付き書式で色分けすれば、数字を読まなくても状態が一目でわかる
一度シートを作れば、次回からはデータを貼るだけで計算が終わる
このシートはあくまで「計算の型」です。実際の現場では、このシートに加えて「データの取り方」「ヒストグラムでの分布確認」「Cpkが低かったときの改善手順」「上司への報告書の書き方」まで一気通貫で必要になります。その一連の流れを実データで最初から最後まで解説した記事も書いています。
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▼ 標準偏差と3σとは?生産技術が検査機の閾値を設定する手順
▼ 工程能力指数(Cp・Cpk)の計算と判断基準——1.33はなぜ合格ラインか
▼ CpとCpkの違い——偏りがある工程でどちらを見るべきか
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この記事は「シートの作り方」でしたが、実際の現場で使うには、データの取り方からヒストグラムでの分布確認、Cpkが低かったときの改善手順、上司に出す報告書の文例、よくある質問への回答まで、一気通貫の流れが必要です。その全工程を実データで解説した完全版を公開しています。
▼ 【実践完全版】標準偏差・Cp・Cpkを現場データで使いこなす——Excel手順から上司への報告書まで
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