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『水曜どうでしょう』初めてのグッズは、なぜファンの「証」になったのか|第83夜

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    前回の第82夜では、「北海道212市町村カントリーサインの旅Ⅱ」第三夜を通して、大泉さんへのいたずらが、なぜ嫌がらせではなく笑いとして成立したのかを考えました。驚かす3人と、それを分かりながら本気で驚く大泉さん。違う役割で同じ遊びに参加する関係が、長い移動時間を番組の見せ場へ変えていました。

    カントリーサインの旅Ⅱが放送された翌年の1998年、『水曜どうでしょう』には新しい動きが生まれます。番組として初めて、オリジナルグッズが登場したのです。

    現在では、Tシャツやステッカー、フィギュア、文房具など、数え切れないほどのグッズが作られています。しかし、その始まりは放送開始から約2年後に販売された、一つのワンショルダーバッグでした。

    なぜ、この最初のグッズは単なる記念品ではなく、ファンにとって『水曜どうでしょう』を好きであることを示す「証」になっていったのでしょうか。


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    1998年に登場した水曜どうでしょう初グッズ、ワンショルダーバッグ
    (※メルカリ等でたまにお目にかかります)

    最初のグッズは、ワンショルダーバッグだった

    『水曜どうでしょう』で初めて販売されたグッズは、ワンショルダーバッグでした。1998年7月、札幌芸術の森で開催されたHTB開局30周年記念イベントで、初めてファンの前に登場しています。

    意外なのは、最初の商品が番組のポスターや写真集ではなく、日常で使うバッグだったことです。番組を見た記念として家に飾るものではなく、身につけて外へ持ち出すことができました。

    その後、ワンショルダーバッグは定番商品となり、福助の模様を使ったものなど、デザインや素材を変えながら4代目まで販売されます。2018年には、ヨーロッパ企画で使われたデザインを再現した「EURO21」も登場しました。

    一つの商品が長い期間をかけて形を変え、番組の歴史と結びついていく。最初のワンショルダーバッグには、その後のどうでしょうグッズのあり方が、すでに表れていたのかもしれません。

    番組の外へ持ち出せるものが生まれた

    放送開始当初の『水曜どうでしょう』は、北海道でしか見ることのできない深夜番組でした。ファンがどれほど番組を好きでも、その気持ちは自宅でテレビを見ているだけでは、外から見えません。

    しかし、ワンショルダーバッグを持って街へ出れば、その人が『水曜どうでしょう』を見ていることが、同じ番組を知る人には伝わります。直接会話をしなくても、同じバッグを見つけるだけで、「この人も見ている」と気づくことができました。

    ここでグッズは、番組のロゴが入った商品以上の役割を持ち始めます。それまで見えなかったファン同士を、街の中で見つけるための目印になったのです。

    全国で知られた人気番組のグッズとは少し意味が違います。まだ北海道の一部で静かに熱を帯び始めていた番組だからこそ、グッズを持つことには、「自分はこの番組を知っている」という特別な感覚があったのでしょう。

    「分かる人だけが分かる」が商品になった

    その後、どうでしょうグッズには、番組を見ていなければ意味が分からないものが次々と登場します。

    たとえば、大泉さんの傲慢な発言のたびに画面へ出ていた「カチッ」という文字は、ステンレスプレートやアルミカードケース、オイルライターに使われました。ステンレスプレートは使い道がほとんどなく、価格も1,500円と高価だったため、長く在庫が残ったとされています。

    それでも、最終的には売り切れました。便利だから欲しいのではなく、「カチッ」の意味を知っているから欲しくなる。商品そのものよりも、その背景にある場面や言葉を手元に置くことに価値がありました。

    2000年には、大泉さんが先生に扮し、onちゃんとミスターをモデルに撮影した「onちゃんカレンダー」も2,000部限定で販売されます。番組内の企画が、そのままファンの自宅へ持ち帰れる商品になっていきました。

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    「カチッ」のステンレスプレート

    車に貼られたロゴが、仲間の目印になった

    初期のグッズの中でも、特に大きな広がりを見せたのが、『水曜どうでしょう』のロゴを使ったカッティングシートです。2000年に初めて登場し、車の後部ガラスなどへ貼れる商品として販売されました。

    誌面に掲載されたグッズ年表では、2011年の時点で総販売数が10万枚を超えていると紹介されています。現在まで販売が続く、番組を代表するグッズの一つです。

    このカッティングシートは、グッズの役割をさらに変えました。バッグは持ち歩く日だけに見えるものですが、車に貼ったロゴは、街や道路を走るたびに多くの人の目に入ります。

    前を走る車に『水曜どうでしょう』のロゴを見つける。駐車場に止まっている車の後部ガラスで見つける。その瞬間、顔も名前も知らない相手に、少し親しみを感じたファンは多かったのではないでしょうか。

    ロゴは大きく番組を宣伝するものではありません。知っている人だけが反応し、同じ記憶を持っていることを確認する小さな合図でした。

    グッズには、4人と過ごした記憶が入っていた

    一般的なキャラクターグッズは、その人物やキャラクターの姿そのものに価値があります。しかし、どうでしょうグッズの多くは、物だけを見ても意味が分かりません。

    「カチッ」と書かれたプレートも、木札のチョーカーも、番組を見ていない人にとっては不思議な商品です。ところがファンが見れば、そこから大泉さんの言葉や4人の笑い声、旅の風景まで思い出すことができます。

    グッズの中に番組の映像が入っているわけではありません。それでも、目にした人の記憶によって、一つの場面がよみがえります。

    だからファンが買っていたのは、バッグやステッカーだけではなかったのでしょう。番組を見ながら笑った時間や、4人と一緒に旅をしたように感じた記憶を、自分の日常へ持ち帰っていたのだと思います。


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    車に貼ることで広がり番組を代表する商品になった
    ロゴカッティングシート

    4人だけの世界と、ファンの日常をつないだ

    藤村Dは、『水曜どうでしょう』を4人だけの閉じた世界として作っていたと振り返っています。視聴者を頻繁に番組へ登場させるのではなく、大泉さん、ミスター、藤村D、嬉野Dの価値観だけで旅を続けました。

    一方で、番組の外には、その4人の世界を愛するファンが増えていました。グッズは、閉じた番組の世界を壊すことなく、ファンとつなぐ役割を果たしたのではないでしょうか。

    視聴者が4人の旅へ直接入る必要はありません。ワンショルダーバッグを持ち、車にロゴを貼り、番組の言葉が入った商品を日常で使う。それだけで、自分もどうでしょうの世界とつながっていると感じられます。

    そして同じグッズを持つ人を見つければ、相手も同じ場面で笑い、同じ4人の旅を見てきたことが分かります。グッズは、ファン同士が共有する記憶を目に見える形へ変えていました。

    「好き」が見えることで、番組は文化になった

    最初のワンショルダーバッグから、カッティングシート、カレンダー、番組の言葉を使った商品へ。人気が高まるにつれて、グッズは北海道外の百貨店や量販店でも扱われ、発売時には行列ができるまでになりました。

    番組の放送が終われば、その時間は消えてしまいます。しかしグッズが残れば、ファンは放送のない日にも『水曜どうでしょう』を思い出すことができます。

    さらに、グッズを持つ人が街に増えることで、番組の人気は数字ではなく、目に見える風景として現れます。テレビの中にいた4人が、バッグやステッカーを通して、ファンの日常へ広がっていったのです。

    『水曜どうでしょう』初のグッズがファンの「証」になったのは、高価だったからでも、デザインが洗練されていたからでもありません。

    そのグッズを見れば、同じ番組を愛し、同じ場面で笑ってきたことが分かったからです。

    4人だけで始まった小さな旅は、グッズを手にしたファンの日常へ移り、やがてテレビ番組の枠を超えた文化へ変わっていきました。


    (※記事中の画像は、作品紹介および考察を目的として、解像度を下げて引用しています。著作権は各権利者に帰属します。)


    次回、第84夜では、「『水曜どうでしょう』の笑いを支えた『音』は、どのように生まれたのか――工藤哲也さんが語る番組の裏側」について考えます。

    この連載は、これからも『水曜どうでしょう』の魅力を一つずつ読み解いていきます。「❤️スキ」「👤フォロー」で応援いただけると励みになります。


    📌今回の内容を踏まえて、皆さんは……

    A:好きな作品は、自分の中で静かに楽しみたい
    B:グッズを持ち、「好き」という気持ちを形にしたい

    どちらに近いでしょうか。理由もあればぜひコメントで教えてください。
    (コメントには必ずご返信させていただきます)
    今後の『水曜どうでしょう』考察の参考にさせていただきます。


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    ■運営者(ユウナ)について

    このnoteでは『水曜どうでしょう』をテーマに執筆しています。以下の別アカウントでは、普通の会社員だった私が、FIREを達成するまでの資産形成の実体験を記録しています。

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