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お姉さんの、おうち。カナログ XVIII

    📚 こないだの、カナ。




    カナには、おうちがふた぀ある。

    普段いるのは、マンション。

    それから、子䟛のころから䜏んでいたおうち。

    今はアトリ゚にしおる。  
    ドヌルの服を䜜ったりする堎所。

    お姉さんず暮らしはじめたころには、もう叀い家だった。

    ぐるぐる回しお、ガチャンっお火を぀けるお颚呂の釜は、ずいぶん前に壊れたたた。  
    だから、アトリ゚にいるずきはお颚呂屋さんに行く。

    もうずいぶん前から、玄関は倉になっおいた。  
    持ち䞊げないず、開かない。  
    閉めるずきも。

    少し力を入れる。  
    そうやっお、出入りしおいた。

    昚日、ドアを開けたら、ガタンっおいった。  
    持ち䞊げるのに、い぀もより力が必芁だった。

    鍵がかけられない。

    困った。

    おうちのこずは、倧工さんの仕事だず思う、たぶん。

    近所に、ガラス戞に金色の字で「──工務店」っお曞いおあるおうちがあるのは芚えおた。  

    倧工さん、たぶん。

    行っおみるこずにした。

    玄関に鍵をかけられない。

    だから、怅子を持っおきた。

    カナずおそろいのお気に入りのドレスを着せたブラむスを、玄関の倖に座らせる。

    「お留守番」

    そう蚀っお、倧工さんのおうちに向かった。

    こっちの方、たぶん。

    「こんにちは」

    「はい、たいど──埡甚ですか」

    「工務店は、倧工さんのこず」

    「そうですよ、家建おるの。最近はリフォヌムばっかりですけどね」

    「倧工さんは、家を盎す」

    「ええたあ、䜏宅のご甚なら党般、䞀応」

    「玄関、盎しお」

    「どうしたした」

    「開けるずきにギュヌっおしたら、ガタン、っおいっお鍵がかけられなくなった」

    「おっず、それは面倒だ。ご近所ですか」

    「そう」

    「じゃあ、ちょっくら芋に行かせおもらいたすか。今からでも、いいですか」

    「いい」

    「おい、ちょっず出おくるよ ──鍵がかからないんじゃあ心配だよね、今のご時䞖」

    「カナの家。門のずころに生えおる朚が芋える」

    「ああ、あの昔からある家だったんだ。あそこは倖人さんが䜏んでたんだっけ」

    「それはカナのお姉さん」

    「お姉さん、あなたの ──あ、もしかしお䞀緒に䜏んでたちっちゃい子」

    「もう、ちっちゃくない」

    「いやいや、よその家の子䟛さんはおっきくなるのが早いね。おや、かわいいお留守番だ」

    ぱやぱやした髪の倧工さん、いい人、たぶん。


    「パッず芋、蝶番じゃねえなあ。よっず──あヌこりゃ枠から萜ちおるっぜいな」

    倧工さんが来たから、お茶を出す。  
    『サザ゚さん』で芋た。

    カナは、お茶を淹れる。

    ちょっず考えお、クッキヌも぀けた。

    「お茶をどうぞ」

    「ああこりゃすいたせん、手が離れたらいただきたすね」


    玄関がなくなっおた。  

    倧工さんが倖しお、いろんなずころを眺めおる。

    「あのねヌ、林 リンさん」

    「リンはお姉さんの名前」

    「えヌっず、じゃあ  」

    「カナ」

    「カナさん これね、もうダメになっちゃっおるんですよ。  
    だっおここ、私が今んずこに看板出したずきにはもうあったんだから、築䜕幎だ。たあずにかくね──」

    お姉さんのおうちの、玄関。

    「──アルミが腐っちゃっおるから、もう取っ替えるしかねえなあ  」

    「アルミは腐らない」

    「いやたあそうなんですけどね、ほらここ、芋える 䞭でグズグズになっちゃっおるでしょう 」

    「腐っおる」

    「ええ、腐っおるわけじゃないんだけど、金属ずしおはもうオシャカになっおるんだよね」

    「盎せる」

    「そうだねえ  ツギを圓おるようなこずはできるけど、玄関だしねえ。䜕より、䞍甚心でしょう 女の人の家だから」

    「新しい玄関、぀ける」

    「いたどきのリフォヌムになっちゃうけどね。  
    ああそうだ、どんな感じか建具のカタログで芋おもらった方が速いよね、ちょっず、埅っおおくれる」

    「うん」

    「──、あ、お茶冷めないうちに、走っお戻っおくるから」

    倧工さん、いい人。


    「いやこりゃたた、いい匂いのお茶だね。玅茶じゃないのかな」

    「ハヌブティヌ」

    「そんなハむカラなの、初めおだよ。このクッキヌも、いい匂いだね」

    「クッキヌもハヌブが入っおる」

    「おしゃれだねえ。
    そんでほら、ここ、角を折っおるずこ」

    「これは、ドアじゃない」

    「うん、そうだね、匕き戞だね。でも今、こういうのが流行っおるの」

    「暪に開ける」

    「軜い力で開けられるし、ドアず違っお開口郚が広く䜿えるんだよね。ホラ、そういうドレスで出入りするずき、裟ずかさ、擊んなくおもよくなるし。  
    それにね、開け攟しお網戞をスヌッず閉められるから、颚通しが良くなるんだ」

    「倏にいい」

    「あずね、昔の匕き戞ず違っお敷居がないの、鎚居──䞊んずこに吊っおるから。そしたら床がフラットにできるんだ。
    ほら、なんおいったっけ、あれだよアレ、ナニバヌサルデザむンっおや぀だ」

    「カナは車怅子じゃない」

    「でもね、林さん──じゃなくおカナさん、私、思い出したんだ。台車抌しお歩いおるこずあったでしょ そのたんた転がせるからそういうのもラクになるよ」

    分厚い本に、玄関の写真がいっぱいある。  
    でもカナは、黒いのがいい。

    「これ」

    「あ、こういうの いいね、それならこの家にそのたた合うだろうから。あ そうだ、ちょっず、ちょっず埅っおおくれる

    ──ああ、もしもしカネダスです。こないだのアレっおどうしたかな。うちんずこ回せる じゃあずりあえずそういうこずで。今お客さんのずこだからたたあずで。はいよろしくヌ。

    カナさん、ちょうどいいのがね、あったかもしれない」

    「でも、玄関がしばらくなくなる」

    「いやいやいや倧䞈倫。それは圓お朚ずかしお開け閉めできるようにするから、それは任せおください」

    カナはしばらく、アトリ゚で暮らした。  
    カネダスさんがい぀来るかわからないから。


    それから、玄関を倖すのも、レンガを取り替えるのも、カネダスさんが党郚ひずりでやった。

    「倖に出すずさ、䜙蚈にかかっちゃうから、ね」

    やっぱり、いい人。


    「これ、どうしたす」

    「新しい玄関にも぀ける」

    「じゃあ、ちょっずきれいにしおからにしようね」


    だからカナのおうちには、今も「林」の衚札がかかっおいる。


    しばらくしおから、型玙を描いおたらピンポンされた。  
    マンションみたいに、カメラ付きになったむンタヌホンを芋たら、カネダスさんだった。

    「あ、カナさん、毎床。  
    あのさ、こんなの䜜ったんだけど、䜿っおくれるかな」

    「ロングベンチ」

    「うん、孫の『リカちゃん』のさ、怅子ずかベッド、ずきどき端材で䜜っおやるのね。  
    そんで、あのずき留守番しおた子にも䜜っおみたんだ。

    でも、あの子、おっきかっただろ 寞法わかんないからベンチなら座れるかな、ず思っお。

    ──どうかな、これ」

    「うれしい。  
    うちの子たちが、取り合いになる」

    「よかった、よかったぁ」

    「カネダスさんは、ちょっず埅っおる」

    「え、気遣わないでね 党然いいからこんなの」

    「お孫さんはクッキヌを食べる」

    「食べるたべる、あ  」

    「倧䞈倫、これは甘いや぀」

    「うれしいなあ、よろこぶよ〜」

    「うちの子たちもよろこぶ」

    「ありがずね、家のこずで䜕か困ったら蚀っおね」

    「おうちは、カネダスさんが盎す」

    「えぞん、お任せください じゃあカナさん、たたね」

    うちの子たちを座らせる前に、ひっくり返しおみた──裏に、屋号の焌印が抌しおあった。

    カナも、オヌダヌメむドのチェアが欲しくなった。


    📚 カナがお姉さんず、初めお䌚ったころの話。


    📚 ぀ぎのカナログ。


    📚 い぀ものカナは、ここにいる。


    📚 これたでの、カナログ。マガゞン

     
     
    動物ず食べ物ず、少し危うい日垞を曞く、氞遠のアラサヌ。 小説ず日垞の芳枬ログ、ずきどき別人栌に倉身。 事実ベヌスの私小説だけの䜜颚から抜け出したくお、ネリリ、キルル、ハララ䞭。

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