
ぬかお #4|ぬか床、発酵を始める
■あらすじ
ぬか床を始めてから2週間。
どうやら、発酵は始まっているらしい。
ただし、それは僕が想像していた姿とは、少し違った。
ぬか床から漂うのは、香ばしい発酵の香りではなく、“納豆臭”。
今回は、この2週間で何が起きたのか。
そして、なぜこうなったのかを、反省を込めて書いていきたい。
■ 振り返りの前に
そもそも、ぬか床の正しいメンテナンスとは何か。
調べてみると、答えはシンプルだった。
毎日、底からしっかり混ぜること。
理想は朝晩1回ずつ混ぜるらしい。
ぬか床は空気を嫌う菌と、空気を好む菌が共存している。
混ぜることで酸素が入り、菌のバランスが保たれる。
さらに、温度管理。
直射日光を避け、できるだけ涼しい場所に置く。
たったそれだけ。
たったそれだけなのに。
■ Day1~
あの頃はまだ気持ちがノっていた。
仕事終わりにフタを開ける。
ぬかの香りを確かめる。
底から返すようにしっかり混ぜる。
「育てている」という実感があった。
手に残るぬかの感触も、少し誇らしかった。
ただ初日から1日1回しか混ぜてはいなかった。
■ Day3~
まだ真面目だった。
香りに大きな変化はないけれど、毎日1回は混ぜていた。
捨て野菜(白菜)と昆布も取り出した。
取り出すときは、野菜に含まれている水分をしっかり絞る。

こういう細かい作業をしっかりとやっていた。
ちゃんと育てている。
そんな小さな誇りがあった。
■ Day7~
混ぜたり混ぜなかったりしだした。
1日飛ばしても、見た目は変わらない。
香りも、まだ大丈夫。
「意外と手がかからないじゃないか」
そんなことを思い始めていた。
■ Day10~
3連休がきた。
旅行に行った。
ぬか床を忘れて楽しんだ。

■ 帰宅、そして
身体は疲れていた。
普通ならソファに倒れ込んでビールを開けるところだけど、
僕は台所へ向かった。
今さら言っても信じてもらえないかもしれないけれど、
正直、気にはしていた。 ぬか床のことを。
フタを開ける。
見た目は変わっていない。
ただ、発酵している気配はある。
でも、なんか違う。
「く さ い」。
納豆臭だ。
■ 反省
旅行に行かなければよかった、なんてタラレバを言うつもりはない。
ぬかおだって、たまには旅行に行きたい。
問題はそこじゃない。
ぬか床への愛情が、少しずつ薄れていたことだと思う。
付き合い始めのころは、毎日ちゃんと向き合っていた。
手で混ぜて、少しの変化にも気づいてあげようと努力していた。
でも、いつの間にか相手を思いやる気持ちが欠けていった。
「今日は疲れたから明日でいいか」
「3日くらい放っておいても変わらない」
そうやって少しずつ距離ができていく。
すれ違う。
気づいたときには、もう前と同じ関係ではなくなっている。
ぬか床は生き物だ。
放っておけば、当然バランスは崩れる。
つまりこれは——
完全に僕の慢心である。
さて。
納豆臭をまとった、このぬか床。
ここから立て直すことはできるのか。
次回 #5
「vs 納豆臭 前編」