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【始めは処女の如く〜アラサー女子のための孫子の兵法〜】〈終章〉

    序章

    前の話
    〈第13章〉夫れ戦勝攻取して其の功を修めざる者は凶なり


     朝、いつも通りの時間に目を覚ました綾子は、いつも通りの手順で出社する支度を整えた。

     メイクをしながらさりげなく肌の調子を確認する。一年前よりも全体的にハリとツヤが増し、メイクののりもよくなったように感じられる。

     バッグに必要なものが入っているかを軽く見てからいつも通りの時間に家を出る。一歩外に出た瞬間にその寒さに全身を一瞬振るわせるものの、冷たい風の中にほんの少し柔らかさを見つけたため春が近いことを実感した。

     いつも通りの時間に駅に着き、いつも通りの場所で列車が来るのを待ち、定刻通りに来た列車にいつも通り他の人に流されるようにして乗り込んだ。

     混雑した車内で前後左右に気を配りながらバッグの中からスマホを取り出す。なんとなくSNSを開き、とりあえずそこに並んでいた投稿にいいねを押した後は漫画アプリを開いてここ数ヶ月の間読み続けている漫画を読み始める。

     何事もなく列車は定刻通りに目的の駅に到着する。多くの人がその駅で下車するためその流れに押し流されるようにして綾子はいつも通り、他の人と一緒に駅のホームに吐き出された。

     ホームで一瞬立ち止まり、大きく息を吸い込むと新鮮な冷たい空気が体の中に流れ込み、暖房の暖かさのためぼんやりしていた目を覚まさせる。

     しっかりとした足取りで綾子はいつも通り改札を出て自分のオフィスに向かった。

     いつも通り同僚や上司、後輩たちにあいさつをしながら自分のデスクに着き、いつも通りの手順で仕事を始め、いつも通りちょっとしたミスもあれば、ちょっとした達成感もある一日を過ごした。

     退社時間になったため、デスク周りを簡単に片付け、オフィスを後にする。

    「佐藤さん、お疲れ様です」

     外を出たところで背後から鈴木に声をかけられた。

    「あ、鈴木さん。お疲れ様です」

     鈴木は何かを言おうとしたが、すぐに言葉が出ないようだった。はにかみながら一瞬深く息を吸い、改めて綾子を正視して言った。

    「今から一緒に食事でもしませんか?」

    #創作大賞2026 #ビジネス部門


    完結

    目次

    序章
    〈第1章〉彼を知り己を知れば百戦危うからず
    〈第2章〉風林火山
    〈第3章〉進んで名を求めず、退いて罪を避けず
    〈第4章〉敵の意を順詳するに在り
    〈第5章〉夫れ兵の形は水に象る
    〈第6章〉鳥の起つは伏なり
    〈第7章〉百戦百勝は善の善なる者にあらず
    〈第8章〉これを経るに五事を以てし、これを比ぶるに計を以てす
    〈第9章〉必ず人に取りて敵の情を知る者なり
    〈第10章〉積水の千仞の谿に決するがごときは形なり
    〈第11章〉兵は国の大事なり
    〈第12章〉智者の慮は必ず利害に雑う
    〈第13章〉夫れ戦勝攻取して其の功を修めざる者は凶なり
    終章

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