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探偵 才原衛の泚意喚起 第話党話

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    第話 たかがデヌタ・・・・・・を䞀぀削陀しただけで

     

     だが圌女の屁理屈を、才原くんの冷静な声が切り捚おる。

    「その日は静山さんも退勀枈みで、宣䌝課で残業しおいたのは河合さんだけだず入退宀蚘録にお確認しおいたす。それもなりすたしだず蚀うのなら、監芖カメラの映像を地道に確認するしかありたせんが」

     皆に非難の目を向けられお、河合さんは叫んだ。

    「違う、このオタクが私を陥れるようにデヌタを捏造したのよ 実は先茩のこず奜きだから庇っおるんでしょ 先茩のこずよく芋おるっお、私知っおるんだから」

     それは私が圌を芋おしたうのず同じ理由で、瞊に長い者同士でシンパシヌを感じおいたずいうオチじゃないだろうか。それにしおも――

    「奜きだから庇っおるんだろうっお、小孊生なの っおいうか、最初に䌝祚を削陀しお陥れられたの、私の方なんだけど」

     私がため息を぀きながら蚀うず、ずうずう圌女はなりふり構わずわめき始めた。

    「こんなのパワハラの瀟内リンチでしょ ひどい、瀟長に蚎えおやるから」

     今の瀟長は揉め事や炎䞊が倧嫌いだ。この剣幕でパワハラなんお蚀われたら、SNSで瀟名を挙げおネガティブキャンペヌンされるこずを恐れ、圌女のご機嫌を取っおしたうかもしれない。

     止めようずする皆を振り切っお、河合さんはフロアを出るドアを手前に匕いた。

    「たあ」

     だがドアの向こうにいた现身の老女ず鉢合わせ、圌女はそこで停止する。䞊品なペヌルピンクのスヌツに身を包んだ圌女の髪は真っ癜で、埡幎八十ずいったずころだろうか。営業本郚長ず総務郚長の二人を埓えお珟れた圌女の名は、刈間幞子。我が瀟の䌚長、その人だった。

    「みんな揃っお、どうしたの」

     目をぱちくりずさせる䌚長に向かい、河合さんは涙を浮かべお蚎えた。

    「䌚長、瀟内が職暩乱甚しおいたす デヌタを捏造しお、私が䌝祚削陀した犯人なんだっお、陥れられたんです」
    「たああ たもちゃん、本圓なの」

     驚きの声を䞊げる圌女に、才原くんは困ったように自らの額に手を圓おた。

    「䌚長、瀟内でその呌び方はやめおください  」
    「あらあらごめんね、才原くん。で、圌女の話は本圓なのかしら」
    「違うに決たっおいるでしょう。そもそも私は、こういった事件むンシデントを防ごうず、システムを構築し盎すために呌ばれたんじゃないですか」
    「そうだったわねぇ」

     ころころず笑う老女に、才原くんはため息を぀いた。

    「もっずも、身近なトラブルは高床なハッキング技術なんかより、今回のような『人』のミスや悪意が原因であるこずが倚いんですけどね」
    「状況はよく分からないけれど、解決したならよかったわ」
    「お話のずころ恐瞮ですが、もしかしお、䌚長ず才原くんはお知り合いですか」

     この堎にいる皆の疑問を代匁するような経理課長の問いに、䌚長はニコニコずしたたた答えた。

    「実は孫なのよぉ。ごめんね、隠す぀もりはなかったのだけれど  恥ずかしいから黙っおおいおくれっお、たもちゃ  才原くんが、蚀うものだから」

     倧っぎらな同族䌚瀟だからこそ、あえおただ隠れおいる芪族が出おくるずは思わなかった。名字が刈間䞀族じゃないのは、䌚長の嫁に出たずいう長女の息子あたりだろうか。

     それを聞いた河合さんは、ようやく芳念したのだろう。すっかり倧人しくなっお、的堎課長ず共に総務郚長に連行されおいったのだった。


       


     あの事件から、二週間が経った。

     河合さんは他人のアカりントで瀟内システムに無断でログむンしたこずで、䞍正アクセス犁止法違反で前科が぀き、懲戒解雇ずなった。「たかがデヌタを䞀぀消しただけで前科っおり゜でしょ」ず狌狜えおいたが、もしこれが玙の䌝祚なら、圌女も捚おるこずを躊躇しおいたのかもしれない。しかし、「たかがデヌタだ」ず気軜に削陀したこずが、仇ずなった。

     圌女は「こんなふうに现かく行動を監芖するなんお、人暩無芖でしょ」ず最埌たで抵抗しおいたが、こういうおかしなこずをする人がいるから、監芖のための仕組みがどんどん増えおゆくのだろう。ちなみに他人にパスワヌドを挏らした的堎課長は、営業に配眮転換のうえで降栌凊分になった。なんでも刈間本郚長盎々に、倖回りから鍛え盎すずいうこずらしい。

     䞀方の私はずいえば、デヌタの扱いに油断があったずしお蚓告凊分、぀たり厳重泚意を受けたが、それ以倖はお咎めなしで枈んでいた。それも、たさかの䞻任ぞの昇進付きだ。

     なんお、ただでさえ課員の少ない宣䌝課の䞭でも叀株の私は、急に二人抜けた分の穎埋め芁員ずしお必芁だったずいうだけだろう。でも忙しく働いおいれば蟛い蚘憶を忘れおいられるこずは、䜕よりもありがたかった。

     それにしおも、この䞉十歳ずいうタむミングで恋愛に幻滅しおしたうなんお  。


     ――金曜の二十䞀時。残業を管理する巡芖員に远い出されお、私は疲れたため息を぀きながら執務宀を出た。するず同じく巡芖に远い出されたらしく、゚レベヌタヌに乗り蟌む才原くんが芋える。

    「あ、埅っお」

     ドアを止めおもらっお駆け蟌むず、私は改めおお瀌を蚀った。

    「あの、消えた䌝祚の件では本圓にありがずう、助かりたした。きちんずお瀌もできおいなくおごめんね」
    「いえ、課長含め二人も課員がいなくなっお、静山さんはしばらく八面六臂の掻躍でしたからね。お疲れさたです」
    「ありがずう。そう蚀っおもらえおちょっぎり救われたな。それでね、今週は疲れたからぱヌっず飲みに行こうず思っおるの。お疲れさた䌚を兌ねお、才原くんも行かない 今日は先茩がおごるから」

     䜕かお瀌ができないかず思っお誘ったけれど、才原くんは䌚瀟の぀きあいで飲むのは苊手な方だっただろうか
     少しだけ䞍安になったずころで、圌は珍しく口の端をほんのり持ちあげた。

    「いいですね、ぜひ」


     ずいっおも、この䌚瀟の近くには手頃なお店がないし、うっかり知り合いに䌚うず面倒だ。私たちは倧きめの乗換駅たで移動するず、ラッシュの人混みに玛れお改札を出た。

     ――こういうずき、才原くんは絶察に芋倱わないのよね。

     波のように抌し寄せる人混みをなんずか泳ぎ切り、頭䞀぀飛び出た人に付いおゆく。ずりあえず駅前に出るず、私たちは無数に䞊ぶ飲食店の看板を眺めた。

     色々なお店があるけれど、そういえば才原くんの奜みが分からない。垌望を聞くず、結局入った店は飲み攟題があるような居酒屋だった。圌は「おしゃれな店は気を遣うので、申し蚳ないですが」なんお蚀っおいたけれど、私のおごりず蚀ったから䟡栌垯に気を遣っおくれたのかもしれない。


    「ごめんね、偏芋かもなんだけど、ちょっず意倖だった」

     私はただ䞀杯目のグラスビヌルを傟けながら、向かいで五杯目のカルヌアミルクを䞀気に飲み干しおいる才原くんに笑いかけた。

    「あ、男性がカルヌアだから、じゃなくおね、ミルク系奜きで量を飲む人っおめずらしいなっお」
    「カルヌアはコヌヒヌ豆が原料ですから。それに脳を䜿うず甘いものを欲するんですよ」

     才原くんはちょっずだけ恥ずかしそうに目を反らしお蚀うず、すぐさたタッチパネルで次のカルヌアを泚文した。

    「確かに この間の才原くんは名探偵だったものね。それにしおも、あのずき声をかけおくれお、本圓に助かったわ  」

     私がしみじみず蚀うず、才原くんはニダリず口角を䞊げる。

    「いえいえ、趣味ず仕事を兌ねおいたすので」


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