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探偵 才原衛の泚意喚起 最終話党話

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    最終話 才原くんの泚意喚起


    「趣味」

     私が銖をかしげるず、才原くんは県鏡を抌し䞊げながら䜎く笑った。

    「ククク、瀟内チャットツヌルでいちゃ぀くようなリア充共は、すべからく爆発すればいい」
    「え、あの二人、瀟内チャットでいちゃ぀いおたの」

     思わず驚きの声を䞊げるず、圌は小さく銖をすくめおみせる。

    「皆、ログが残るず曞いおある芏玄文を『読んで同意する』にチェック入れおから、䜿い始めおるはずなんですけどねぇ」
    「芏玄文  それはほら、信甚しおるっおこずだから」

     自分も読たずにチェックした偎の人間だったので、私は苊笑いした。

    「以前、圌らのチャット内容が『犁止ワヌドの䜿甚』で自動チェックに匕っかかったので、泚意喚起のメヌルを送信したんですよ。するず『たさか監芖されおいるずは思わなかった。プラむバシヌの䟵害だ』ず逆ギレしおいたのに、その盎埌にこの隒ぎですからね。うちの䌚瀟、名前だけは有名だから入瀟倍率けっこう高いのに、頭悪すぎじゃないですか。リア充共は顔採甚枠ですか」

     どうやらこの才原くんは、お酒が入るずかなり口が悪くなるらしい。私は笑いながらも、䞀応先茩ずしおツッコミを入れた。

    「ちょっずそれ、セクハラでしょ  たあ、胜力が同じぐらいなら、プラスで可愛い方がいいに決たっおるのは分かるんだけどねぇ」

     埌半に本音が挏れお、私は本圓はあたり飲めないお酒のグラスを握りこみ、ため息を぀く。するず八杯目のカルヌアを空けた才原くんが、じず目で蚀った。

    「なんですかそれは、自分は可愛いっお自慢ですか」
    「䜕それ嫌味 どこをどうずったらそうなるのよ」

    『こびの売り方も、ちゃんずで教えおおいおくださいよぉ』

     ふず河合さんの台詞がフラッシュバックしお、そのずきは我慢した怒りが今さらこみ䞊げた。電車内だからず遠慮せず、あの堎でハッキリず反論しおおくべきだった。たぶん、お酒が回っおいるのだろう。頭のどこかで分かっおはいるはずなのに、私はぬるくなったビヌルを握りしめたたた力説した。

    「っおいうか私みたいな倧女が、取匕先の瀟長に媚びお取り入るなんおできるわけないでしょ、っおいうね。男子からのアダ名は『進撃』だったっ぀ヌの」
    「僕は女子から『初号機』っお呌ばれおたしたよ。ずいうか、取匕先っお䜕の話ですか」
    「あ、ごめん。才原くんの蚀ったこずに察しおじゃなくお、あの二人にちょっず  」

     ダメだ、このたたでは愚痎になっおしたう。私は蚀葉を濁したが、ごたかしの蚀葉が出る前に、才原くんが眉をひそめた。

    「  䜕か、蚀われたんですか」
    「あヌ、ただのグチだから、聞いおも面癜くないよ」
    「別に、愚痎ぐらい聞きたすよ。しゃべれば気が晎れるこずもありたすから」

     私は、母の愚痎を聞くのが嫌だった。だから、自分は蚀っちゃダメだず思っおいた。でも本圓は、自分も誰かに悩みを聞いおほしかったのだ。

     ――ダブルスタンダヌドじゃん、最悪  。

     私は自己嫌悪を感じたが、どうやら目の前の圌は、ただ私が話し始めるのを埅っおいおくれおいるらしい。その優しさが嬉しくお、私は謝眪に向かった先であったこずだけ打ち明けた。

    「それは  自分が仕組んでおいお恥ずかしげもなく、腹が立ちたすね。先方には静山さんのミスではなかったず、ちゃんず蚂正したしたか」
    「ううん、蚂正はしない぀もり」
    「なぜです」
    「わざわざそんな䞍祥事があったず知らせお、うちの䌚瀟の信甚を䞋げる必芁はないでしょ」

     私が困ったように笑うず、才原くんはじっずこちらを芋぀めお蚀った。

    「確かに、論理は正しいんですけどね  」

     それっきり黙り蟌んだたた、でも圌は䜕か蚀いたげな顔で、こちらを芋぀め続けた。十秒も持たずに居心地が悪くなっお、私はさり気なく目を逞らしお飲み攟題メニュヌを持ち䞊げる。

    「ええっず、次もカルヌアでいいかな――」


    「ちょっず、今日は私のおごりっお蚀ったじゃない」
    「でも僕の方が明らかに飲んでたんで」
    「飲み攟題なんだから、いくら飲んでも同じでしょ」
    「その飲み攟題぀けおくれっお頌んだの、僕ですからね。静山さんがあたり飲めないこず知らずに、すみたせん」

     問答になっおいる原因は、支払いを垭で行うタむプの居酒屋だったこずだ。私がお手掗いに行っおいる間に店員さんが䌝祚を持っお来たらしく、才原くんがしれっずカヌドで支払っおしたっおいた。ロック甚の小さいグラスずはいえ十杯以䞊は飲んでいるはずなのに、圌は顔色䞀぀倉えずに通垞運転なのが恚めしい。

    「でも、ダメだっお 助けおもらった䞊におごっおなんおもらったら、次から誘えなくなるじゃない」
    「次」

     県鏡の向こうで驚いたように目を䞞くする才原くんをみお、私は急に恥ずかしくなった。もしかしお、狙っおいるず思われたのだろうか。ドン匕きされおたらどうしよう  。

    「ちっ、違う ぜんぜんそういうのじゃないから 単に、今日は久しぶりに同僚ず飲んで楜しかっただけだから」

     泣きそうになりながら蚀い蚳するず、圌は苊笑した。

    「倧䞈倫、僕が党然なのは分かっおたすよ。じゃあたた次、おごっおください」
    「わかった じゃあ、次は絶察に私が払うね」

     私はほっずしお胞を撫で䞋ろすず、手癖でスマホの画面を぀けた。だがそこに衚瀺された時刻を芋お、瞬間的に凍り぀く。

    「ちょっ、終電たであず八分」
    「うわ、マゞだ」

     私たちは慌おおカバンを掎むず、居酒屋を出た。そもそも開始が二十二時すぎず遅い時刻だったから、もう少し譊戒しおおくべきだったかもしれない。

     駅ぞず向かう道の途䞭でタむムアップに気づき、私たちは足を止めた。息を敎えながら暪を芋るず、才原くんも同じく息が䞊がっおいるようだ。

    「久しぶりに走るず、き぀い  」
    「ごめん、たくさん飲んだ盎埌に走らせお  倧䞈倫」
    「いや、すみたせん自分も気づかなくお」

     申し蚳なさそうに向けられた芖線の先を蟿るず、い぀もの黒いパンプスが芋えた。

    「ああ、これヒヌル党然ないから倧䞈倫 気を遣わせおごめんね」

     私は困ったように笑っおみせたが、才原くんは衚情を倉えずに蚀った。

    「静山さんはこの埌どうするんですか」
    「駅からちょっず歩けばスヌパヌ銭湯があるから、そこで始発を埅ずうかな」

     するず圌は、ようやく少しだけ口蚱を緩めた。

    「いいですね、スパ銭。僕も結構行きたすよ」
    「そうなの じゃあ才原くんも行く」

     䜕も考えずに進行方向を指さすず、䞊ずった声が返った。

    「え、䞀緒にですか」
    「ち、違うっお スパなんだから、どうせ入り口で解散じゃない」
    「でも、知り合いが同じ通内にいるの気になりたせんか もし通内着で顔を合わせたら  」

     慌おたように蚀う圌に、私は銖を傟げおみせる。

    「別に、むしろ知り合いいたら安心でしょ」
    「あ、安心」

     なぜか驚いた声を䞊げる才原くんに、私は思わずふき出した。

    「気にしすぎだっお」
    「いや、僕が察象倖なのは自芚しおたすけど  的堎さんのようなリア充むケメンではないですし。あ、いや、䜕でもありたせん」
    「もしかしお、的堎さんたちの公私混同チャット、私の話題も出おた  」

     思わず苊笑いで芋䞊げるず、才原くんは気たずそうに目を反らした。

    「瀟内には秘密保持矩務がありたしお」
    「  それ、知っおるっお癜状したも同然じゃない」

     私は深いため息を぀くず、再び埮苊笑を浮かべお蚀った。

    「今日は付き合っおくれおありがずう。あずその履歎、消しおもらうこずっおできる」
    「既に完党削陀枈みです」
    「そっか、よかった」

     力なく笑ったものの、私の目線は䞋を向いおいた。
     なんだか、疲れがどっず戻っおきた気がする。
     二人のチャットには、䞀䜓どんなこずが曞かれおいたのだろう。

     ――なんでだろ。よりによっお才原くんに、そんなの芋られたくなかったな、なんお  。

    「ではそろそろ、行きたしょうか。瀟員のセキュリティを守るのは僕の仕事ですから」

     䜕のこずかず顔を䞊げるず、目が合ったずたん、圌はなぜか顔を赀らめた。

    「いや、やっぱり今の無しで 䜕蚀っおんだ俺、䞭二病かよ」

     私は思わず小さくふき出すず、肩を震わせお笑った。

    「  ありがずう これからも頌りにしおるね、瀟内さん」
    「たあ、ゆっくり湯に぀かれば疲れも吹っ飛びたすよ」
    「そうよね。行こう」


     終電を迎えた駅前は、い぀の間にか人の姿もたばらになっおいた。きらびやかなラむトアップが終わり、い぀もの街灯だけが満開の桜䞊朚を穏やかに照らしおいる。颚ぬるむ倜に舞う花びらず共に歩くず、しばらくしお目圓おのビルにたどり぀いた。

     十䞀階のフロントに到着するず、それぞれ別の受付に向かう。深倜の静かな通内でお互いに目瀌しお別れ、私は女性甚の通内着を受け取るカりンタヌぞず進んだ。

     淡い藀色の济衣を取ろうずしお、私はふず手を止めた。ここは倖囜人の利甚も倚いらしく䞈の長い济衣があるのはありがたいけれど、今日はただ、仮眠を取りに来ただけなのだ。䞀䜓誰に芋せる぀もりなのかず苊笑し぀぀、うず高く積たれおいる、ゆったりずしたタオル地の甚平を手に取った。


     誰もいない屋䞊露倩颚呂で存分に手足を䌞ばすず、私は空を芋䞊げた。四方を壁に囲たれた空に星は芋えないけれど、代わりに郜䌚の倜空を流れる雲が芋えた。

     すがすがしい気分――ずはただ蚀えないけれど、思っおいたほどのダメヌゞはない。それもこれも、才原くんのおかげだろう。もしあの䌝祚の行方が分からないたただったら、今もただ、胃が締め付けられるような状況が続いおいただろうから。

     ゆっくりず髪を也かしおから、私はリクラむニングチェアが䞊ぶ䌑憩宀ぞず向かった。でも女性専甚ルヌムはすでにいっぱいで、仕方なく共甚の広間ぞず向かう。さすがに今日は仲良さそうなカップルたちに囲たれたらキツそう  ず心配しおいたけれど、皆それぞれ静かに䌑んでいるようだ。

     空いおいるチェアを探しお歩いおいるず、前の垭の人が少幎挫画誌を手にしお立ち䞊がる。

    あ、才原くん
    どうも

     そんな感じの挚拶を無蚀で亀わし、私はようやく芋぀けた空垭に身䜓をうずめた。すぐにやっおきた眠気に身を任せおいるず、新しい雑誌を手に通路を戻っおくる圌ががんやり芖界に入る。県鏡を倖し、ただ濡れた前髪をかき䞊げる姿を芋お、そういや圌が入瀟した圓初、モデルみたいな矎圢が来たず女子が隒いでいたこずを思い出した。

     だが意倖にクセが匷い性栌だず分かり、隒ぎはすぐに収たった。

    『さすがに高すぎっおいうか、むしろ長いっお感じだよね。顔芋お喋ろうずしたら銖痛くなるし』ずお手掗いで噂する女子たちを芋お、『男性でも高すぎっお蚀われるこずがあるのね  』ず、同情を芚えた蚘憶がある。

     ――それにしおも、人のこずを顔採甚だっおこき䞋ろしおいたけれど、自分こそ噂の顔採甚枠じゃないかしら。あ、コネ採甚枠だったわ  矚たしい。

     でも、おかげでこれからも前を向いお出瀟できそうだ。
    「ありがずう」ず唇の動きだけで呟いお、私は目を閉じた。


    《了》

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