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聖アントニオを巡るいく぀かの詊考 (1) | 創䜜倧賞2026 | ファンタゞヌ小説郚門

    あらすじ

    遠未来のブラゞル。聖アントニオ修道院では「元気ですか」「この道を行けば」ずいうアントニオ猪朚の蚀葉が聖なる詩篇ずしお詠唱されおいた。修道士たちが修道院の地䞋に開いた「裂け目」ぞず降りおいくず、そこには叀いマッキントッシュがあり、オむラヌの公匏eiπ=−1e^{i\pi} = -1が䞖界の真理ずしお提瀺される。そしおその地䞋氎脈は、珟代の日本・熊本ぞず繋がっおいく。奔攟な母、䞍噚甚な姉効、そしお二人のアントニオず呌ばれる男たち。日垞の泥臭い愛憎劇や、血の柱のような蚘憶が、プロレス史や数孊的真理ず亀差し、䞀぀の巚倧な神話を玡ぎ出す。論理ず狂気が入り亀じる、マゞックリアリズム・ファンタゞヌ。党13話。



    聖アントニオを巡るいく぀かの詊考

    ゜りスキヌ



    Cum in limine desperationis steteris,
    Dominus non apparens loquitur.
    Sanctus Antonius in foro ad populum clare dixit:
    "Genki esne?"
    — Poema Sagrado de Inoki, Livro 7:14

    絶望の淵にたたずむずき、䞻はお姿を芋せずに問い掛けおくるのです
    聖アントニオ様は広堎に集たる人たちに端的にお䌝えされたす
    "元気ですか?"
    ず
    —聖アントニオ詩篇 第7章14節



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    Chapter 1: 聖アントニオ修道院 I


    半透明に茝く修道服は、突然䞭庭に珟れた裂け目からの颚を受けお、ヒラヒラず舞い、深刻そうなたなざしで芋぀め合う修道士たちの衚情ずは裏腹に、䜕かを祝犏する祭兞の始たりのような華やかさを瀺しおいた。
    はじめに口を開いたのはマサト・サむトゥスで、
    元気ですか?
    でも、䜕かの予兆かもしれないわね、今日は6月13日だったかしら?
    そうじゃないわね、
    そこたで蚀っお、口を぀ぐんだ。
    裂け目を挟んで向かいにいるタツノ・フゞナミアはその問いかけには答えずに、いきなり取り出したハサミで前髪を数センチだけ切り萜ずし、裂け目の䞭に切られた前髪が吞い蟌たれおいくのを芋぀めおいた。
    フゞナミアにずっおは、裂け目がどこたで続いおいるのか確かめるために最良の方法のように思われたが、サむトゥスにずっおは到底受け入れられない奇異な行動であり、フゞナミアずは芖線も合わせずただ、元気ですか?、ず小さく詠唱するずフゞナミアの持぀ハサミを取り䞊げ静かに懐に収めた。

    今日が6月13日であれば良いのに。
    切り揃えられおいた盎線的な前髪を倱い、斜めになったそれでも癜く茝く矎しい額をのぞかせ、フゞナミアは现くしなやか腕で招き入れるように裂け目に腕を䌞ばし、手を合わせ、「ダラセテク・ダサむモりナン・ネンツヅクカ」ず叀語を甚いた詠唱に぀づけた。

    その日は残念ながら6月13日ではなかった。
    ブラゞルではこの日は聖アントニオの日であり、愛の日であり、この日でさえあれば音もなく倧地が裂かれたこの䞭庭の異倉も吉兆であるず結論づけられたであろうに。

    サむトゥスは改めお裂け目の淵を芗き蟌んだ。
    入り口自䜓は狭い。おそらく现身のフゞナミアであればしなやかな躯䜓をくねらせ、穎の䞭に入るこずもできるだろが、修道士ずしおは䞍釣り合いな豊満な肉䜓を持぀サむトゥスでは、腰は抜けおも胞で぀っかえおしたいそうだった。だが、フゞナミアもこの裂け目に足を螏み入れる気はさらさらなかった。

    青かったからだ。
    入り口の小ささに比しお、淵の奥はずおも深く感じられる。倧地に開く穎の䞭に光源はないので、原理的にはそこに色はなく挆黒のはずだった。ただ、サむトゥスだけでなく、フゞナミアにも、そしおおそらく他の門埒達にもその闇は青く芋えた。

    タツノ・フゞナミアが芖線を䞊げるず、裂け目が開いおいる以倖は、䜕の倉哲 もない穏やかな正午が広がっおいた。
    挆喰を塗り盎したばかりの石積みの壁が光に照らされ、屋根の圢をなぞる圱が、たっすぐに萜ちおいた。

    穎だけが青い。
    䜕かの鉱物の色なのかしら。口にこそ出さないが、サむトゥスはもう䞀床、裂け目に向かっお手を䌞ばし小指ず人差し指だけを立おる、りィ、のサむンを圢づくっお祈りを捧げた。

    祈りの埌、ふず顔を䞊げるず、コティス・ダマモチがテラスの方から、手にロヌプず登山甚の道具をいく぀か抱きかかえおこちらにやっお来おいた。
    サむトゥスやフゞナミアは、詩篇やいく぀かのサむンを甚いお、突然珟れた"裂け目"ずいう異垞な状態に察凊しようずはしおいた。極めお詩的に、聖アントニオに仕えるものずしお極めお誠実に。
    ただ、実際に最も聖アントニオ的なアプロヌチを取れたのはコティスだったのかもしれない。
    コティスはすでに、装食的でキラキラず茝く修道服を傍らに脱ぎ捚お、黒のタむトなパンツの䞊には、詩篇が曞かれたTシャツ1枚ずなっおいた。銖には祭瀌甚の赀いタオルが巻かれおいる。小さいがよくしたった小麊色の䜓からは既に汗が噎き出しおいる。
    コティスは県鏡越しに皆ず同じように裂け目の深淵を芗き蟌むが、そこは既に挠然ずした青の青さではなく、探求すべき情報ずしお幟局もの違う皮類の青さが芋えおいた。
    実際に壁面にはびっしりず青い詩篇が刻たれおいる。そしおそれはどこたでも奥深く続いおいるように芋えた。

    この道を行けばどうなるものか。
    正午を過ぎた光が、裂け目の内壁を斜めに照らし始めた。最初にフゞナミアの目に飛び蟌んできた䞀節は、コティスのTシャツの胞に印された、あの代衚的な詩篇ずたったく同じ蚀葉だった。
    この道を行けばどうなるものか。
    コティスがロヌプを固定するために敷石ぞアンカヌを打ち぀ける音だけが、午埌の䞭庭に響いおいた。

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    倖資系認蚌機関で機械安党ずAIなどの先端テクノロゞヌに関わる䌚瀟員。 2025幎、15幎ぶりに小説執筆を再開。 AIを壁打ち盞手ずした小説ず、その制䜜ドキュメンタリヌを公開しおいたす。 創䜜倧賞2026 ファンタゞヌ小説郚門 オヌルカテゎリ郚門 に応募しおいたす。

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