メインコンテンツへスキップ
見出し画像

なぜ彼は、死ぬかもしれない遣唐使を志したのか/漫画『巡礼の印』第6話 唐へ(巻末歴史解説付)

    下永聖高

    奄美大島を経由し、唐へむかう遣唐使船。
    広成は夢の中で遣唐使になろうとした真のきっかけを思い出す。

    そして竜星はDJノエルの指示で、先祖が旅の途中でのこした「巡礼の印」を探すバンドツアーに出発する。

    第6話本編(ビューア)


    次の話(第7話) 


    前の話(第5話)


    はじめから読みたいときは(第1話)


    ビューアが落ちるときは

    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像

    次の話(第7話)



    ⭐︎巻末歴史解説シリーズ
    『巡礼の印』の登場人物で知る古代の豪族たち

    平群、紀、大伴、藤原……。登場人物の名前に付くこれらの「氏」は、家の由緒や朝廷での役割につながっています。今回は、物語の背景にある十の氏族を紹介します。 

    広成たちに共通する祖先・武内宿禰

    画像
    むかしの壱圓札

    平群へぐり・紀き・田口たぐち、そして蘇我そがの各氏は、伝説的な重臣・武内宿禰たけのうちのすくねにつながる系譜を伝えます

    作中で広成・馬主・養年富が同じ「武内宿禰流」(なんについての流派なのかはまだ秘密)を学んでいるのも、この祖先伝承を下敷きにした設定です。

    平群氏へぐりうじ――広成につながる大和の名族

    画像
    平群広成

    現在の奈良県平群町周辺を本拠とした豪族。武内宿禰の子・平群木菟宿禰へぐりのつくのすくねを祖と伝えます。『日本書紀』では真鳥父子の栄華と没落が語られますが、その後も一族は続き、奈良時代には広成らを送り出しました。

    • 平群真鳥へぐりのまとり:大臣として強大な権勢を振るったと伝えられる人物。

    • 平群鮪へぐりのしび:真鳥の子。皇太子(のちの武烈天皇)と影姫をめぐって争った物語で知られます。※

    • 平群広成へぐりのひろなり:本作の主人公。史実でも、漂流と長い旅を経て帰国した遣唐使判官です。

    【影姫の物語】
    5世紀末、皇太子が求婚した物部氏の娘・影姫は平群鮪とすでに恋仲だった。皇太子と豪族の大伴金村は鮪を殺害するだけでなく、父の真鳥をも「日本の王になろうとしている」として討ち、平郡本家を滅亡させた。

    およそ200年後に生まれる平群広成の家系が分家のひとつだったのか、はたまた鮪と影姫の子の末裔なのかは謎。


    紀氏きうじ――海を渡り、歌を残した一族

    画像
    紀馬主(とバガス)

    武内宿禰の子・紀角宿禰きのつののすくねを祖とする氏族。紀伊と深い関わりを持ち、航海や海外との交渉で活躍しました。後の平安時代には、和歌の世界にも大きな足跡を残します。

    • 紀馬主きのうまぬし:広成とともに唐へ渡った判官。作中では短気で兄貴肌の幼馴染。

    • 紀貫之きのつらゆき:『古今和歌集』の撰者で、『土佐日記』の作者。

    • 紀友則きのとものり:貫之とともに『古今和歌集』を編んだ、三十六歌仙の一人。


    田口氏たぐちうじ――蘇我氏につながる官人の家

    画像
    田口養年富

    蘇我氏と同族で、武内宿禰の子孫と伝えられる氏族。大和の田口という土地に氏名の由来を求める伝承があります。知名度は高くありませんが、政争・和歌・遣唐使の記録に、その名が登場します。

    • 田口川堀たぐちのかわほり:蘇我田口川堀とも呼ばれ、飛鳥時代の政争に登場する人物。

    • 田口益人たぐちのますひと:地方赴任の途中に詠んだ歌が『万葉集』に残る官人。

    • 田口養年富たぐちのよねふ:遣唐使判官。作中では広成・馬主の幼馴染で、大柄ながらおとなしい人物。


    藤原氏ふじわらうじ――皇室との結びつきで栄えた一族

    画像
    藤原四兄弟と安宿媛

    中臣鎌足が天智天皇から「藤原」の名を賜ったことに始まります。不比等が政治と皇室との婚姻を通じて基盤を築きました。
    鎌足を百済王子・豊璋ほうしょうとみる関裕二の大胆な異説もあります。

    • 藤原鎌足ふじわらのかまたり:中大兄皇子とともに蘇我入鹿を倒した、藤原氏の始祖。

    • 藤原不比等ふじわらのふひと:律令の編纂に関わり、一族の繁栄の土台を築いた人物。宇合うまかい、武智麻呂むちまろら藤原四兄弟と安宿媛あすかべひめ(光明皇后)の父。

    • 藤原仲麻呂ふじわらのなかまろ:不比等の孫。光明皇后にとりいって政権を握り、吉備真備、大伴古麻呂らと対立。最後は反乱によって敗れました。


    大伴氏おおともうじ――武人と歌人を生んだ名門

    画像
    大伴古麻呂

    古くから朝廷の軍事や警護を担った氏族。奈良時代には、政治や外交に加え、和歌の世界でも活躍しました。

    • 大伴旅人おおとものたびと:大宰府の長官を務めた万葉歌人。

    • 大伴家持おおとものやかもち:旅人の子。『万葉集』の編纂に深く関わったとされます。

    • 大伴古麻呂おおとものこまろ:作中にも登場する青年。後に遣唐副使となり、僧・鑑真の渡航を助けます。

    作中の|大伴首名《おおとものおびとな》は、大伴氏の分家出身で隠密や暗殺を担う一派に属するという設定です。


    秦氏はたうじ――技術と経済力を持つ渡来系氏族

    画像
    秦朝元

    山城の太秦うずまさなどを拠点とし、養蚕・機織や土地の開発で力を発揮した一族。外国とのつながりや技術力が、古代社会を支えました。

    作中の人物:秦朝元はたのちょうげん
    広成たちとともに唐へ向かう遣唐使判官。医学に長けていました。
    作中では謎めいた存在で、陰謀にも関わる人物です。
    留学僧弁正が唐でもうけた子で、いわゆる帰国子女です。

    物部氏もののべうじ――王権を支えた武門の古族

    饒速日命にぎはやひのみことを祖と伝える軍事氏族。蘇我氏と対立し、守屋の敗死で勢力を失いましたが、石上氏などにつながる系統はその後も朝廷で活躍しました。

    代表人物:物部守屋もののべのもりや
    仏教の受容などをめぐって蘇我馬子と対立し、587年の戦いで敗れた人物。

    蘇我氏そがうじ――飛鳥に仏教を根づかせた一族

    武内宿禰につながる系譜を持ち、渡来人との交流や仏教の受容を進めた豪族。645年の乙巳の変いっしのへんで本宗家が滅んだ後も、同族の家々は続きました。

    関連人物:役小角えんのおづぬ
    蘇我氏の一族ではなく、葛城の賀茂系氏族の出身とされる修行者。蘇我氏が育てた仏教から、山々の信仰へと視野を広げると、その姿が見えてきます。後に修験道の開祖として仰がれました。伊豆に流刑にされます。


    多治比氏たじひうじ――皇族につながる外交の名門

    宣化天皇の子孫と伝えられ、皇族系の家々に与えられた真人まひとの姓を持つ氏族。高官や遣唐使の指導者を輩出しました。

    作中の人物:多治比広成たじひのひろなり
    広成たちの使節団を率いる遣唐大使。主人公の平群広成とは、同じ名前を持つ別人です。兄の県守あがたもりも遣唐大使でした。

    中臣氏なかとみうじ――神と朝廷を結ぶ一族

    天児屋根命あめのこやねのみことを祖神とし、朝廷の祭祀を担った氏族。鎌足から藤原氏が生まれた後も、中臣氏はその名と神事の役割を受け継ぎました。

    作中の人物:中臣名代なかとみのなしろ
    多治比広成を補佐する遣唐副使。主人公たちとともに海を渡る、使節団の幹部です。帰国に際しては波乱が待ち受けています。



    参考資料:國學院大學・古代氏族データベース、平群町・人物絵巻、京都市・秦氏、藤原氏、鎌足=豊璋説の参考書籍、役小角、遣唐使の人物研究。


    ☆つづきが気になったらスキやフォローで応援よろしくおねがいします!


    この記事が参加している募集

     
     
     
    作家/デザイナー https://amzn.asia/d/0bk8i5b5 第一回ハヤカワSFコンテスト最終候補作「オニキス 」を含む作品集『オニキス 』(ハヤカワ文庫JA)楽天、Kindleなどで販売中。 小説や漫画などを公開しています。 ぜひフォローをお願いします!

    あなたへのおすすめ