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N-ONE RSを18万7,000円引きで契約。値引き交渉と商談の結末 セカンドカー探し⑤

    たまには仕事を忘れて趣味にふける。第12回

    前回までの検討で、ようやく結論にたどり着いた。

    選んだ車は、ホンダ N-ONE RS。色は大いに悩んだ末、「フレームレッド×ブラック」に決めた。

    求めたのは、「青空の下を颯爽と走る、赤いスポーツカー」というイメージである。

    これで車選びに迷いはない。

    ただし、欲しい車が決まったことと、実際に買えることは別の話だ。最大の問題である予算については、まだ何一つ目途が立っていない。

    今回は、N-ONE RS購入を巡るディーラーとの商談のお話である。


    予算という高い壁

    フレームレッド×ブラックには、60,500円(税込)の追加費用がかかる。

    しかし、そんなことは些末な問題だった。

    N-ONE RSは軽自動車でありながら、なかなかの値段がする。フレームレッド×ブラックの場合、車両本体価格だけで2,338,600円。ここへ諸費用やオプションを積み上げれば、あっという間に300万円が見えてくる。

    恥ずかしながら、私にそんな予算はない。

    そこでディーラーへ乗り込む前に、メーカーの公式サイトにある「セルフ見積」でシミュレーションをしてみることにした。

    画像
    ホンダ公式サイトより引用

    ナビは諦め、ディスプレイオーディオで我慢する。あとはフロアマットとドアバイザーを付け、ETCは一応2.0を選ぶ。かなり質素な仕立てである。

    【画像:ホンダ公式サイトのセルフ見積画面】
    ※ホンダ公式サイトより引用

    それでも、出てきた金額は2,678,050円。

    しかも、この価格にはETCのセットアップ費用が含まれていないという。予算に収めるためには、20万円ほど値引きしてもらわなければ、この話は前に進まない。

    とはいえ、N-ONE RSは6速マニュアルという、いささか特殊な車である。売れ筋の車ならともかく、販売台数の限られる車種で大幅な値引きを期待するのは、虫が良すぎるというものだ。

    事前に調べた情報から、車両本体の値引きは8万円程度、オプションからの値引きを加えても、総額15万円あたりが妥当な線だろうと踏んでいた。

    そこから、どこまで20万円に近づけられるか。

    これが今回の課題である。

    そうなると、複数のディーラーを競わせるという、いささか行儀の悪い手段も視野に入れざるを得ない。

    幸い、近所には普段お世話になっているホンダカーズ埼玉H店のほかに、運営会社の異なるホンダカーズ埼玉中S店もある。どちらも正規ディーラーではあるが、立派な競合相手になり得る。

    まずH店で見積もりを取り、その紙を手にS店へ向かう。S店の条件が良ければ、そのまま決めてしまう。不服なら再びH店へ戻り、S店の見積もりをちらつかせながら交渉する。

    我ながら、なかなかあくどい算段である。

    N-ONE RSを手に入れるためなら、多少は悪魔に魂を売る覚悟もできていた。


    娘同伴、日曜の朝にホンダカーズH店へ

    商談の段取りをつけようと土曜日にH店へ電話を入れ、月曜日の予約をお願いした。しかし担当者は、あいにく予定が埋まっているという。しかも、火曜と水曜は店の定休日である。

    すると先方から、

    「明日、日曜日の午前中はいかがでしょうか」

    と提案された。

    その日曜の午前中は妻が用事で留守にしており、私は娘と二人で過ごす予定だった。

    娘を連れてディーラーへ行くことには、少々ためらいがあった。車を買おうとしていること自体、娘にはまだ話していなかったからだ。

    妻には一応、車の購入を検討していることを伝えてある。しかし、どうも乗り気ではないらしい。これでは、家の中で大っぴらに話題にするのも難しいというものである。

    それでも、この先の値引き交渉を考えれば、最初の一手は早い方がいい。ここを逃せば、次は木曜日以降になってしまう。

    私は翌日曜の朝10時、娘を連れてH店へ向かうことにした。

    娘はまだ小学校低学年である。用事が済んだらクレーンゲームへ連れていくという条件を提示し、なんとか同行の承諾を取り付けた。

    もっとも、この時点で伝えていたのは「パパの用事につきあって」ということだけである。行き先が自動車ディーラーだと娘が知ったのは、向かう車の中でのことだった。

    H店に到着すると、新しい担当者のNさんが店から出て迎えてくれた。

    今年4月に担当が替わったばかりで、定期点検はいつも妻に任せていたこともあり、顔を合わせるのはこれが初めてである。

    前任の担当者とは、どうも相性が良くなかった。若く誠実そうなNさんへの交代は、私としてはありがたい話だった。

    商談テーブルへ案内され、飲み物はセルフサービスの自動販売機から自分で注ぐ仕組みだと説明された。

    私はアイスコーヒー、娘はカルピスを手に席へ戻る。コーヒーのカップがどことなく小ぶりに感じられ、こういうところにも経費削減の努力がにじみ出るのだなと、妙な感心をしてしまった。


    娘との攻防戦①「赤はやだ!」

    Nさんはノートパソコンを開き、基本情報を確認しながら見積もりを作り始めた。

    車種を確認し、次にボディカラーを尋ねられる。

    私は迷わず答えた。

    「赤です」

    散々悩んだ末に出した結論である。もう誰にも文句は言わせない。

    そのはずだった。

    ところが横から、娘の声が飛んできた。

    「赤はやだ!」

    まったくの想定外である。

    台本にない乱入者の登場に、私は一瞬でパニックに陥った。

    「赤やだ、赤やだ」

    「いや、赤に決めたの。もう決めたの」

    「やだ」

    「なんで?」

    「なんとなく」

    理由は「なんとなく」だという。

    自分のランドセルは「絶対に赤がいい!」と言って買わせたにもかかわらず、である。

    こちらは散々悩み抜いた末の結論であり、あちらは思いつきのひと言にすぎない。本来なら戦力差は歴然としているはずなのだが、なぜか私の方が旗色は悪い。

    Nさんはパソコンの画面から目を上げ、この親子喧嘩の行方を静かに見守っている。

    「選べるのは、赤、白、黒の3色しかないんだよ」

    私は努めて冷静に、選択肢の少なさを武器に説得を試みた。

    すると娘は、間髪を入れずに答えた。

    「じゃあ黒がいい!」

    こちらの土俵に、あっさり乗り込んできた。

    まずいと思った時にはもう遅い。私の口からは反射的に、

    「黒は柄が悪いからダメ」

    という言葉が飛び出していた。

    言った瞬間、周囲にはほかのお客様が何組もいることを思い出し、血の気が引いた。

    黒い車で来ている客がいないことを、心の中で祈る。

    娘は私の動揺などお構いなしに、次の一手を繰り出した。

    「じゃあ白がいい」

    攻撃の手を緩めるつもりは、一切ないらしい。

    私は即座に反論した。

    近所には、すでに白いN-ONEが3台も止まっている。これ以上増えたら、どれが自分の車か分からなくなってしまう。

    自分でも説明になっているのか分からない返答をすると、娘はすぐさま切り返してきた。

    「どこの家?」

    「お向かいの隣の家だよ」

    「何さんの家?」

    「知らないけど、〇〇さんの隣だよ」

    「それ、〇〇さんの車?」

    「違う。〇〇さんの隣の家の車」

    「じゃあ、何さんの車?」

    「だから知らないんだって」

    「〇〇さんの家の車も白だよ」

    「……」

    気がつけば、車の色について話していたはずが、いつの間にか近所の住民名簿を作る羽目になっていた。

    しかも、一向に結論へ近づかない。話は横道どころか、隣町あたりまで逸れている。

    これでは、どちらが商談に来たのか分からない。

    目の前のNさんは営業スマイルを保っていたが、その口元はかすかに引きつっているように見えた。

    このやり取りに終わりは来ない。

    そう悟った私は、

    「赤でお願いします」

    とNさんに告げ、商談を強制的に前へ進めることにした。

    娘を連れてきたことを、この段階で少しばかり後悔し始めていた。


    娘との攻防戦②「白と黒はダメって言ったじゃん!」

    しかし、休戦はほんの束の間だった。

    続いてNさんが尋ねてきた。

    「ナンバープレートは、どうされますか?」

    そういえば軽自動車には、図柄入りの特別なナンバープレートが用意されている。

    通常の黄色いプレートとは異なり、白地に絵柄が入ったものだ。軽自動車らしさが前面に出る黄色いナンバーを避けたい人には、なかなか人気があるらしい。

    全国版や地方版など、いくつかデザインがあるようだが、今回提示されたのは、白地のプレートの縁だけが黄色くなる全国版だった。


    画像
    全国版図柄入りナンバープレート

    この黄色い縁がどうにも気に入らないと漏らすと、Nさんは、

    「オプションのナンバーフレームを付ければ、縁は隠せますよ」

    と、さらりと勧めてきた。

    これでまた一つ、オプションが増えてしまった。なかなかの商売上手である。

    【画像:全国版図柄入りナンバープレート】
    ※国土交通省ホームページより引用

    絵柄には、カラーとモノクロの二種類があるという。

    目立たず、遠目には無地にも見えるモノクロの方が私の好みだった。

    「白黒でお願いします」

    何の気なしに答えた、その瞬間である。

    「さっき、白と黒はダメって言ったじゃん!」

    隣から放たれた娘の一撃に、思わず言葉に詰まった。

    休戦していたはずの戦線が、まさかナンバープレートを舞台に再燃するとは、私も予想していなかった。

    「さっきと、これとは話が違うでしょ」

    「一緒だよ。白と黒だもん」

    「車の色と、プレートの絵柄は別なの」

    「よく分かんない」

    正直なところ、私自身もこの違いをどう説明すればよいのか、話しているうちに少し怪しくなってきた。

    Nさんは今度こそ堪えきれなかったのか、小さく肩を揺らして苦笑いを浮かべていた。

    この一日で、Nさんの表情筋はずいぶんと鍛えられたに違いない。

    娘を商談に同席させたことで、思いのほか高い授業料を払わされることになった。


    見積書という名の刺客

    そんなやり取りを挟みながら、ひと通りのオプションを決め終えた。

    やがて、Nさんから最初の見積書が差し出された。

    総額、3,256,960円。

    とても正気の沙汰とは思えない金額である。

    オプションだけで637,670円。あらかじめ不要なものは避け、ナビもディスプレイオーディオにとどめたはずなのに、これはさすがにおかしい。

    一体、何が価格を押し上げているのか。

    内訳を確かめると、主な犯人は三つあった。

    まず、パフォーマンスダンパー。車の静粛性や乗り心地を向上させる装置で、133,100円。迷わず外してもらう。

    次に、バックモニターの機能を拡張する「リアカメラ de あんしんプラス4」。付属品込みで55,330円。これも見送った。

    そして、ボディコーティングが188,100円。

    以前、自宅のフリードを購入した際にも同様のオプションを付けたが、あの時は8万円程度だったと記憶している。それが今や倍以上とは、いささか強気な価格設定である。

    自分で手入れをすれば、もっと安く済む。これも外してもらった。

    そのほか、5年分の点検パックと延長保証として171,270円が含まれていた。

    これは今後の維持費を先に支払うようなものだ。物価上昇の激しい昨今、将来の出費をあらかじめ固定しておくのは悪くない。ここだけは残し、車両の購入予算とは別枠で考えることにした。

    不要なオプションを外して再び見積もってもらうと、総額は2,867,340円。

    点検パックと延長保証を除けば、2,696,070円である。

    ようやく、交渉のテーブルに乗せられる金額まで下りてきた。


    伝家の宝刀「予算金額」を早々に明かす

    「どのくらい値引きできますか?」

    この日一番の要件を、ようやく切り出した。

    今日は値引き額を確認し、その見積書を持ち帰るつもりでいた。事前に検討していたスズキやダイハツの候補についても、Nさんには伝えてある。

    N-ONE RSは、あくまで候補の一つ。この場で決める必要はない。

    今回の見積もりを基準に、これから別のディーラーとの値引き競争を始めるつもりだった。

    ところがNさんは、私の予想を上回る提案を持ちかけてきた。

    店舗には月ごとの販売目標があり、今月はかなり厳しい状況にあるという。そのため、店長決裁まで持ち込めば、通常より踏み込んだ値引きができるかもしれない。

    ただし、そのためには、こちらの予算を教えてほしいとのことだった。

    探りを入れるつもりで来ていたので、予算については、それまではぐらかしていた。最初から手の内を明かすのは、交渉の常道からすれば避けるべきことだろう。

    それでもNさんの提案は、決して悪い話ではなかった。目指していた値引き額に届く可能性が、思いがけず見えてきたのである。

    ここは賭けてみることにした。

    「250万円が限界です」

    Nさんは難しい顔をしながら、通常のN-ONEなら車両本体から10万円、6速マニュアルという特殊なグレードのRSでは、8万円程度の値引きが精一杯だと説明した。

    私が事前に予想していた金額と、ぴたりと一致している。

    おそらく、担当者の裁量では総額15万円前後が限界なのだろう。

    それでもNさんは、

    「店長に掛け合ってみます」

    と言って席を立ち、店の奥へ消えていった。

    若い担当者ながら、こちらの予算を見極め、店長決裁へ持ち込む判断は実に鮮やかだった。


    クレーンゲームの収穫と、妻のひと言

    しかし、Nさんはなかなか戻ってこない。

    来店から1時間近くがたち、隣に座る娘はすっかり退屈して、私にじゃれつき始めていた。

    本来なら見積もりを受け取ったら早々に店を出て、娘をクレーンゲームへ連れていく算段だった。

    昼には妻が用事を終えて帰ってくる。駅まで迎えに行かなければならず、それまでの時間をクレーンゲームに充てるつもりだったのだ。

    このままでは、約束を果たす時間がなくなってしまう。

    無理に連れてきた娘が機嫌を損ねるのは、目に見えている。値引き額より、むしろ残り時間の方が気になり始めていた。

    ようやくNさんが、見積書を片手に戻ってきた。

    差し出された紙を見る。

    値引き額、187,000円。

    契約総額は、2,680,340円。

    点検パックと延長保証を別枠と考えれば、実質的な予算オーバーは1万円に満たない。

    これなら十分、許容できる。

    私はその場で、購入することをNさんに伝えた。

    別のディーラーへ見積書を持ち込み、値引き競争を仕掛けるつもりでいたはずが、実にあっけない幕引きである。

    しかし、Nさんの頑張りには感謝しかない。

    おそらくまだ20代であろう若さで、こちらの事情をくみ取り、店長を動かし、交渉の落としどころをきれいにつくってみせた。私はすっかり、この若い営業担当者が気に入ってしまった。

    どうやら、娘も同じだったらしい。

    「あの人、何歳かな」

    そう、こっそり耳打ちしてくる。

    「聞いてあげようか?」

    私が尋ねると、娘は恥ずかしそうに、

    「やめて」

    と拒んだ。

    こういうところは、なかなか可愛いものである。

    やがて店長も出てきて、挨拶をしてくれた。

    最近は定期点検をすっかり妻に任せ、この店にはほとんど顔を出していなかったため、以前にも会ったことのある方なのか思い出せない。おそらく相手も、似たような感覚だったのではないかと思う。

    購入が決まれば、この先は書類仕事である。またしばらく待つことになりそうだった。

    次の予定があることを伝え、手続きは後日に回してもらう。私たちは店をあとにした。

    妻が帰ってくる前に、クレーンゲームへ急がなければならない。

    クレーンゲームでは、景品を詰めたビニール袋がぱんぱんに膨らむほどの大漁となった。

    娘は大満足である。

    長時間つき合わせてしまった分、機嫌よく笑う娘の顔を見て、私も少しほっとした。

    ゲームが一段落した頃、妻から「これから帰る」とメールが届いた。そのまま最寄り駅へ迎えに向かう。

    車に乗り込んだ妻に、娘はまず、クレーンゲームの戦果を得意げに報告した。妻は嬉しそうに耳を傾けている。

    そのあとに続いて、私はおそるおそる切り出した。

    「車、買っちゃった」

    妻の返事は、ひと言だった。

    「マジで……」

    しばらく苦い顔をしていたが、その後はいつも通りの様子に戻った。

    一応、黙認をいただけたものと私は認識している。

    以来、私がこの話題をなるべく持ち出さないよう徹していることは、あえて言うまでもない。

    とにもかくにも、N-ONE RSは私の手に入ることになった。

    別の店と競わせるような小賢しいまねをせずに済んだのは、むしろ幸いだったと思う。

    悪だくみというものは、実行してもしなくても、あまり精神衛生上よろしくないものだから。

    納車までは、2〜3か月ほどかかるという。

    予定では、ちょうど私が55歳の誕生日を迎える頃である。

    自分への誕生日プレゼントということにして、赤い車がやって来る日を楽しみに待とうと思う。

    もっとも、娘と妻がそれを「誕生日プレゼント」と認めてくれるかどうかは、また別の話である。

    そして、この話には後日談がある。

    契約時に外したオプションを後から追加したことで、最げんざい終的な購入総額は、契約時の金額よりさらに膨らむことになった。

    (おわり)


    最後までお読みいただき、ありがとうございました。
    N-ONE RSでの様々な体験を、これからも少しずつ書いていきます。「また読んでみたい」と思っていただけましたら、「スキ」や「コメント」「フォロー」をいただけると大変励みになります。


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    N-ONE RS以外にも、バイクや仕事に関する記事を書いています。
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    建築設備設計を本業に、設計支援ツールの開発・販売のほか、デジタルコンテンツ制作にも取り組んでいます。日常業務や創作活動の記録のほか、息抜きの趣味についてnoteで発信中。 👉 [BOOTH|SIデザインショップ] ( https://si-design.booth.pm/ )

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