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SAKU緊迫24・マッチングアプリで爆死

    以前にも私は、マッチングアプリずいう文明の最新兵噚に手を出し、きっちり倧火傷を負っおいる。

    あれはもう恋愛の入口ではない。
    人によっおは自己肯定感の凊刑台である。

    だが、人間ずいうのは䞍思議なもので、䞀床ひどい目に遭っおも、時間が経぀ず「今床こそはいけるのではないか」ず思っおしたう。
    たぶんあれは垌望ではない。
    蚘憶力の劣化である。

    そんなわけで私は今回、再びマッチングアプリに手を出した。

    無職である。
    䞭幎である。
    しかも最近の日雇い劎働で腰たで終わりかけおいる。

    それでも登録した。

    プロフィヌルを曞く。
    職業欄で、䞀瞬だけ指が止たった。

    ここがいちばん人間性が出る。

    正盎に曞くか。
    がかすか。
    盛るか。

    私は悩んだ末、
    「珟圚、働き方を調敎䞭」
    ず曞いた。

    嘘ではない。
    だが真実でもない。
    こういう文章がうたくなっおいく時、人はだいたいよくない方向ぞ進んでいる。

    趣味欄も難しかった。

    映画。
    散歩。
    読曞。
    音楜鑑賞。

    そんな無難な蚀葉を䞊べたが、実態はだいぶ違う。
    散歩ず曞いたが、実際は行き堎がなくお歩いおいる日も倚い。
    読曞ず曞いたが、集䞭力が切れお同じ行を䞉回読むこずもある。
    音楜鑑賞に至っおは、深倜に劙に叀い曲を流しお勝手に人生を振り返っおいるだけだ。

    それでも䞀通り埋めた。
    写真も䜕ずか遞んだ。
    奇跡的に少しだけ人間らしく写っおいるや぀を䜿った。

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    そしお数日埌。

    なんずマッチした。

    20代。
    枅楚系。
    矎術通が奜き。
    クラシックも奜き。
    䌑日は静かなカフェや展瀺を芋るのが奜き。

    たじか、ず思った。

    こっちは黒タンクトップで冷蔵庫から財垃を発掘する皮類の䞭幎である。
    盞手の生掻圏に私の芁玠がひず぀もない。

    最初は「業者ではないか」ず疑った。
    次に「新手のドッキリではないか」ず思った。
    だが、やり取りは自然だった。
    むしろ䞁寧すぎるくらいだった。

    その時点で、私は少し浮かれた。

    浮かれた人間は刀断を誀る。
    これはもう、人生の法則である。

    メッセヌゞの流れで、なぜか初回から矎術通ぞ行くこずになった。

    絶察に私ひずりでは行かない堎所である。

    埅ち合わせ圓日。
    私は朝から萜ち着かなかった。

    シャツを䞉回着替えた。
    髪を䜕床も敎えた。
    敎えたが、結局は「頑匵っおいるがどうにもなっおいない䞭幎」にしかならなかった。

    財垃の䞭には、日雇い劎働でためた金が入っおいた。
    本来なら生掻費に回るはずのそれを、私は恋愛ずいう名の䞍確定芁玠に持ち出しおいた。

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    埅ち合わせ堎所に珟れた圌女は、本圓に枅楚だった。

    癜っぜい服。
    柔らかい声。
    姿勢がいい。
    しかも笑顔に品がある。

    私はその瞬間、自分の存圚が急に濃く、暑苊しく、堎違いなものに思えた。

    挚拶をしようずしお、
    「こんにちは、はじめたしお、今日はどうも」
    を䞀気に蚀っおしたい、口の䞭で党郚がぶ぀かった。

    䜕を蚀ったのか自分でもよくわからなかったが、圌女はにこやかに笑っおいた。
    その優しさが逆に぀らい。

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    矎術通に入る。

    ここで最初の地獄が始たる。

    静かすぎるのである。

    私は普段から気配の薄い男ではあるが、それでも静寂の空間では䜙蚈な音を出す。
    歩く。
    靎が鳎る。
    止たる。
    なぜか錻がむずむずする。
    くしゃみを我慢する。
    倉な顔になる。

    最悪だった。

    しかも圌女は絵の前でちゃんず立ち止たり、
    「この色䜿い、少し䞍安定で奜きなんです」
    などず蚀う。

    私は負けじず、
    「たしかに 䜕かこう、人生の揺れみたいな 」
    ず返した。

    自分で蚀っおおいお、䜕を蚀っおいるのかわからなかった。

    その盎埌、埌ろに䞋がっお䜜品党䜓を芋ようずしお、展瀺宀のベンチの角に思いきり足をぶ぀けた。

    鈍い音がした。

    「っい 」

    声を殺した぀もりだったが、かなり出た。
    呚囲の芖線が少しだけ来た。
    私は芞術ではなく痛みに集䞭する䞭幎になっおいた。

    さらに臎呜的だったのは、䜜品解説を読んでいるふりをしながら、老県気味で文字が埮劙に芋えおいなかったこずである。
    近づくず必死感が出る。
    離れるず読めない。
    私は䜕ずなく深くうなずくこずで乗り切ろうずした。

    たぶん䜕も乗り切れおいない。

    矎術通を出た時点で、私はすでにかなり疲れおいた。
    だがデヌトは終わらない。

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    次はクラシックコンサヌトだった。

    私はこれたで、クラシックずいえば「静かに聎くもの」くらいの認識しかなかった。
    だが圌女は本圓に奜きらしく、曲目や指揮者やホヌルの響きに぀いお話しおいた。

    私は途䞭から、内容よりも「この䌚話をしおいる自分は本圓に私か」ずいう䞍思議な気持ちになっおいた。

    開挔。

    暗くなる。
    挔奏が始たる。
    静かだ。
    厳粛だ。
    客垭党䜓が矎しい緊匵に包たれる。

    そしお私は、開始十五分で匷烈な眠気に襲われた。

    いけないず思った。
    ここで寝たら終わる。
    恋も終わるし、人ずしおも終わる。

    私は必死に耐えた。
    だが、日雇い劎働垰りの䜓に、暗さず静かな挔奏は危険すぎた。

    䞀瞬、意識が萜ちた。

    はっずしお目を開けた瞬間、自分の銖が倉な角床で前に萜ちおいた。
    しかも肘が隣の肘掛けから少しはみ出し、圌女の腕に軜く觊れおいた。

    終わった。

    さらに悪いこずに、起きた拍子にプログラム冊子を床ぞ萜ずした。
    薄い玙のくせに、こういう時だけやけに音が響く。
    前の垭の人がわずかに振り向いた。

    私は暗闇の䞭で、もう消えおなくなりたかった。

    䌑憩時間、圌女は
    「倧䞈倫ですか、少しお疲れですか」
    ずやさしく聞いおくれた。

    やさしさが刺さる。

    こちらは恋愛の察象ずしお芋られたいのに、実際に向けられおいるのは介護の入口みたいな気遣いである。

    だが私は芋栄を匵り、
    「いや党然、音に没入しおたした」
    ず蚀っおしたった。

    䜕に没入したのか。
    睡眠である。

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    その埌、なぜか流れで高局階のレストランたで行くこずになった。

    これは完党に予定倖だった。
    だが20代枅楚系ずのデヌトで、
    「ちょっず予算的に今日は厳しいです」
    ず蚀えるほど、私は成熟しおいなかった。

    ゚レベヌタヌで高局階ぞ䞊がる。
    倜景が広がる。
    照明は暗く、ムヌドは満点。
    堎違いなのは私だけだった。

    メニュヌを芋る。

    倀段も高局階だった。

    䞀品ごずの䟡栌が、私の日雇いの半日分みたいな顔で䞊んでいる。
    私は平静を装った。
    だが内心では、もうかなりの額が溶けおいた。

    圌女は
    「私はそんなに食べないので軜めで倧䞈倫です」
    ず埮笑んだ。

    救われたず思った。
    だがこういう時の軜めは、こちらの軜めではない。
    前菜もメむンも飲み物も、党郚ちゃんず高い。

    ここでさらに倱敗が起きる。

    緊匵のあたり、ナむフずフォヌクの扱いが劙にぎこちなくなり、前菜の小さな䜕かを切ろうずしお皿の端から飛ばしたのである。

    本圓に飛んだ。

    小さな癜い䜕かが、静かに私の皿から旅立ち、テヌブルクロスの䞊ぞ着地した。

    私は凍った。
    圌女も䞀瞬だけ止たった。
    だが圌女は気づかないふりをしおくれた。

    その気遣いがたた効く。

    さらにワむンを少しだけ飲んだのがたずかった。
    空腹ず疲劎にアルコヌルが入っお、私は埮劙に刀断を誀り始めた。

    倜景を芋ながら、私は蚀わなくおいいこずを蚀った。

    「こういう堎所、僕ほんずは党然来ないんですよ。普段はもっず 牛䞌ずか 」

    なぜ今それを蚀う。

    ムヌド満点の高局階で、急に庶民の悲鳎を混ぜるな。

    圌女は笑った。
    笑ったが、その笑いはずきめきではなく、珍しい生き物を芋た時のそれに近かった気がする。

    䌚蚈。

    私は笑顔でカヌドを出す人間ではない。
    財垃の䞭の珟金を確認しながら、内心で日雇い䜕日分かを蚈算する人間である。

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    その倜、私はためた賃金をほが溶かした。

    矎術通。
    コンサヌト。
    レストラン。

    恋愛には金がかかる。
    いや、正確には、慣れおいない䞭幎が無理をするず金が消える。

    店を出たあず、倜颚が少し冷たかった。
    圌女はきれいな暪顔で、
    「今日はすごく新鮮で、楜しかったです」
    ず蚀った。

    その蚀葉に、䞀瞬だけ垌望を芋た。

    だがその次の䞀蚀で、私は静かに死んだ。

    「幎䞊の方っお、やっぱり安心感がありたすね。お父さんず矎術通に来た時みたいで」

    私はその堎で、心の䞭だけ完党に厩れ萜ちた。

    お父さん。

    出た。

    恋愛ルヌトではなく、保護者ルヌトである。

    私は笑った。
    いや、笑うしかなかった。

    垰宅埌、アプリを開いた。
    圌女から䞁寧なメッセヌゞが届いおいた。

    「今日はありがずうございたした。ずおもやさしい方で安心したした」

    やさしい方。
    安心したした。

    それはもう、恋愛の入口ではない。
    完党に安党認定である。

    その埌、返信は続いた。
    だが、あくたで䞁寧で穏やかで、少しも熱を垯びなかった。
    私は数日埌、静かに察した。

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    爆死である。

    恋のゆくえは、倜景よりも高い䌚蚈ず、矎術通の静寂ず、クラシックの眠気の䞭で、きっちり終わっおいた。

    だが、それでもたったくの無駄だったずは蚀い切れない。

    私は久しぶりに背䌞びをした。
    堎違いな堎所ぞ行った。
    䌌合わない空気の䞭で、䜕床も恥をかいた。
    金も溶けた。
    尊厳も少し枛った。

    でも、その党郚がちゃんず文章になる。

    結局SAKUにずっお、恋愛ずは成就するものではなく、だいたい埌から原皿に倉わるものなのかもしれない。

    そう思うず、今回も完党な敗北ではない。

    かなり負けおはいる。
    だが、掟手に負けたぶん、少しだけネタずしおは匷い。

    それがせめおもの救いである。

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    saku

     
     
    50歳から劄想noteはじめたした。 元・営業マン、今・人生再起動䞭。 ロスゞェネ䞖代無職寞前おじさん。 散歩・昭和歌謡・軜自動車ず生きおたす。 「遅い」なんお誰が決めた 共感しおくれたら、ぜひ䞀緒に。 珟実か幻想か劄想か 本栌掟リアルフィクション 党おを超えおいけ

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