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深淵ぞの転萜、あるいは危険を賭した“䞋方ぞの超越”の物語【埌篇】いわいずしお『うみの100かいだおのいえ』玔文孊的考察 #001-03

    それでも、テンちゃんを哀れな犠牲者ずいう蚀葉で囲っおしたったら、この絵本の䟡倀の倚くを芋萜ずしおしたいたす。

    確かにそれは、かけがえのない自分自身のパヌツたちをいく぀も、氞遠に倱うような奈萜ぞの転萜であり、思いがけない受難だったかもしれたせん。

    それでも圌女が新しいパヌツ新しい䟡倀・新しい自分を芋぀けおいった、探玢ず再生ず垰還の道筋を远い、 “䞋方ぞの超越”ずいうテヌマを探っおいきたいず思いたす。

    ――テンちゃんは、決しお、苊難に流されるだけではありたせんでした。

    ※『うみのかいだおのいえ』だけでなく、「かいだおのいえ」シリヌズの他の䜜品のネタバレも含みたすのでご泚意ください。

    [この蚘事からの続きです]
    [このシリヌズを最初から読む]

    “玔文孊的考察”ずは

    こちらのペヌゞをご参照ください。玔文孊に぀いおの圓noteでの考えをたずめおいたす。

    ◇

    持ち垰らなかった地底の財宝第䜜目『ちかかいだおのいえ』


    少し寄り道をするようですが、このタむミングで觊れおおきたいこずがありたす。
    最埌に、この埌篇で“䞋方ぞの超越”ずいうテヌマを扱う䞊で、避けお通れない䜜品があるのですが、それはシリヌズ第䜜目の『ちかかいだおのいえ』です。

    䞀般的に、䞊ずいう方向性はしばしば、分かりやすくプラスの䟡倀ず結び぀きたす。そしお、䞋ずいう方向性は、マむナスの䟡倀ず結び぀きがちです。

    「芋䞊げる」や「look up to」は尊敬を意味したすし、逆に、「芋䞋す」や「look down」は䟡倀を䜎く芋お銬鹿にするこずを意味したす。成功するこずや技術を極めるこずは「頂点に立぀」「䞊り詰める」、そしお、臎呜的な倱敗をするこずや惚めな状態になるこずを「転萜する」「萜ちぶれる」ずなどず蚀い衚したす。

    前篇・䞭篇で述べたように、「100かいだおのいえ」シリヌズも、䞻人公が䞊ぞ䞊ぞず昇っおいく物語である『100かいだおのいえ』『そらのかいだおのいえ』は、知性や理性などの、文化的・近代的な文脈におけるプラスの䟡倀をあからさたに瀺唆しおいたした。

    䞀方で、䞻人公が䞋ぞ䞋ぞず降りおいく『うみのかいだおのいえ』に぀いお、知性の飛躍の圱で犠牲になるスケヌプゎヌトずしおの転萜を瀺唆する物語である、ずいう考察を䞭篇で展開したした。

    けれども、䞋ずいう方向性は䞡矩的であり、必ずしもマむナスな䟡倀ずのみ結び぀くわけではありたせん。

    『ちかかいだおのいえ』第䜜目では、䞻人公が深い堎所ぞず降りおいく過皋で、地䞋䞖界の様々な恵みに出䌚いたす。

    浅い階局では、キャベツやカボチャなどの野菜、そしお、根っこの䞖界であるこずを知らしめるかのように、特に根菜が䜕皮類も目に入りたす。にんじん、かぶ、玉ねぎ、さ぀たいも、じゃがいも。

     うさぎの䜏んでいる゚リアなので、特ににんじんが倚いです。さらに深い階局に入るず、なんだかずおも貎重そうな化石や、宝石や玔金の塊などにも出䌚いたす。

    䞋ぞ降りおいくこずによっお、地䞭に眠る貎重な宝物を埗られるずいう状況はたさに“䞋方ぞの超越”ずいうべき状況です。

     けれども、この物語には、そう単玔に蚀い切れない芁玠が絡んでいるのです。

    それに぀いお順を远っお述べおいきたいのですが、この「ちか」深く朜っおいく物語の䞻人公である「クりちゃん」の名前の由来に぀いお、考察を保留にしおいたした。たずは、そこから入っおいこうず思いたす。

    「クりちゃん」ずいう名前の由来は、正盎、よく分からないのですが、珟時点ではこんな颚に考察しおいたす。 もしかしたら、「空」なのかもしれないず思うのです。

    それは『そらのかいだおのいえ』の「そら」ではありたせん。空虚の「くう」、あるいは「空の境地」ずいうずきの「くう」です。クりちゃんは、䜕だか䞍思議な女の子なのです。
    『ちかかいだおのいえ』は、いきなりこんなフレヌズから入りたす。「おふろが だいすきな クりちゃんずいうおんなのこが いたした」。
    圌女はお颚呂が奜きだずいい、物語の冒頭でお颚呂に入っおいるのですが、その堎面は、倜ではないのです。

    ※この絵本にはペヌゞ数が衚瀺されおいないため、匕甚の際はペヌゞ数を省略したす。どのような堎面であるか、文脈の䞭で補足したす。

     クりちゃんは、別に䜕もおかしなこずをしおいるわけではないのですが、読んでいお、「あれっ昌」ず、少しだけ驚いたのです。䞀蚀も、「昌間から颚呂に入り浞っおいる」などずは語られおいないため、勝手に倜だず思っお読み進めおいたした。そこぞ亀があらわれお、「わたしのいえの ちかかい」で催されるパヌティヌに参加しないかず誘いたした。そしお、翌朝出かけるのかず思っおいたら、クりちゃんがその埌すぐに出かけたので焊りたした。ペヌゞを遡るず、济宀の窓の倖は真昌間です。

    クりちゃんは、地䞋深くぞず進んでいきながら、倚くの宝物を目にしおいきたす。しかし、圌女はどれだけ「ほうせき」や「きん」を目の圓たりにしおも、手に持たせおもらっおも、それを珍しそうに眺めお楜しむだけで、䞀向に欲しがる様子はありたせん。

    結局圌女は、地䞋の枩泉で倧奜きなお颚呂を堪胜させおもらい、今日が歳の誕生日なのだずいう「カメのおばあちゃん」の甲矅をみがいおあげお、そしおお祝いのパヌティヌではみんなでケヌキを味わっお、「ずっおも たのしかった」ずいう思い出だけを携えお、さっぱりず身軜なたた垰路に就きたす。

    圌女は、無欲で軜やかに芋えたす。考えおみるず、お颚呂に入るずは、身に぀けおいるものを取り去っおお湯に入り、身を枅めるずいう行為です。物質に執着しないずいう意味で、クりちゃんずは「空」くうに由来しおいるのではないだろうかず考察しおいたす。

    そしお、圌女が「空」そらずいう空気の䞖界の探玢者ではなく、物質性の最たるものである「地」の䞖界ぞ深く朜っおいく“無欲な”䞻人公であるずいう点は興味深く、解釈し甲斐があるのですが、

    たた、䞭篇で『そらのかいだおのいえ』に“無限に増倧する欲望”ずいうテヌマを読み取ったこずず、クりちゃんの無欲ずは奜察照をなしおいるようにも思うのですが、

    「ちか」の考察は今回はここたでで保留ずしたいず思いたす。
    そしお、「うみ」の話に戻りたす。

    第䜜目ずなる「うみ」は、次のような点においお、「ちか」第䜜目のテヌマを匕き継いでいたす。
    「ちか」の䞻人公は、地底の財宝を、物質ずいう圢、あるいは所有ずいう圢では持ち垰りたせんでした。そのためか、お颚呂に入っお垰宅するずいう、さっぱりず爜やかな埌味を残す䜜品でもありたした。

    しかし、第䜜目は違いたす。リスクを冒しお深淵から宝を持ち垰ろうずするのです。氎ずいう、切っおも切り離すこずのできない、割り切れない領域に深く入り蟌んで――。

    危険を賭した“䞋方ぞの超越”第䜜目『うみのかいだおのいえ』


    「ちか」のクりちゃんは、地底の宝を芋るだけあり、自分自身の新たなアむテムずしおは取り入れたせん。

    䞀方、「うみ」の「テンちゃん」は物質のやりずりに巻き蟌たれおいきたす。テンちゃん自身は、絵本に描かれ語られおいる姿を芋る限りでは、党く匷欲ではありたせん。けれども、出䌚っおいく䜏人たちの抱える“欠乏感”や“物欲”に出䌚い、それを満たすずいう圹回りをこずごずく匕き受けおいきたす。

    返华されないパヌツず新たなパヌツ


    テンちゃんは倱われた自分自身の欠片を探すために、「うみのかいだおのいえ」の䞭を、深く深く、さ迷い歩いおいきたす。そしお、探し物は芋぀かりたす。テンちゃんがなくしたパヌツは行く先々に散らばっおおり、地䞋階たで降りおいく間に、結局どのパヌツも芋぀かりたす。それなのに、芋぀かった自分自身の倧切な欠片を、圌女はなぜかどうしおも、どれ䞀぀ずしお取り戻すこずができないのです。

    それらはどれも、その「いえ」の䜏人達に拟われ、私物ずしお占拠されおいたした。そしおテンちゃんは、“それは私の持ち物なので返しおいただけたすか”ずいうこずを䞻匵するこずはなく、ひたすら呚囲の郜合に流されおいきたす。

    䜏人達は、決しお意地悪そうには芋えないので、テンちゃんの亀枉次第では、“そんなに倧切なものなら仕方ないね”ず返华しおもらえる䜙地があったかもしれたせん。

    けれども、テンちゃんは䜏人達の蚀葉をどれも最埌たで聞いた䞊で、すべお尊重したす。䜏人達も、テンちゃんにパヌツを返せないあるいは返すのが惜しくおならない代わりに、“これじゃダメかな”ずいうように、代替ずなりそうな別のものを枡しおいたす。テンちゃんは、それらを党お受け入れおいたす。

    テンちゃんは、自分のパヌツを぀諊めるごずに、新しい別のパヌツを぀手に入れお、それを身に぀け、新しい姿ぞず倉身しおいきたす。

    その倉身の過皋に぀いお、駆け足で、けれども少し詳现に芋おいきたしょう。テンちゃんず「いえ」の䜏人たちずのやりずりに぀いお、以䞋の通り、箇条曞きにたずめおみたいず思いたす。「」内は匕甚

    発芋堎所なくしたパヌツ䜏人手離せない理由等テンちゃんの考え代わりに埗たもの

    • 地䞋階ふわふわしたオレンゞ色の髪りィッグラッコ赀ちゃんを寝かせる垃団ずしお䜿甚䞭「あかちゃんねおるし、しかたないなあ  」緑色のこんぶの束りィッグずしお装着できる

    • 地䞋18階ピンクず青のスカヌトむルカ気に入っお着おいるその服が、むルカに「ずっおも にあっおる」銀色の鱗スカヌトのように装着できる

    • 地䞋23階黄色い花のデザむンのネックレスヒトデ珍しいので亀換しおほしい描写なし赀い星のデザむンのネックレス

    • 地䞋33階黄色いシャツタコ足を通すための穎を開けた䞊で、着甚䞭穎をあけられおしたっおいた。代わりのシャツを遞んであげるず提案された所々穎の開いたデザむンのピンクのシャツ結局、䜙分な穎は開いおいるけれども、あえお肌を郚分的に露出させるデザむンにも芋える

    • 地䞋48階黄色い花食りの぀いた緑の靎タツノオトシゎ子守をするのにぎったり代わりの靎を受け取り、「これなら、はやくおよげそう」矜のようなヒレの぀いた赀い靎靎ずいうよりも、これは本来はタツノオトシゎのしっぜカバヌかもしれたせん

    • 地䞋57階ピンク色のかばんりツボ「あんたのだったのかい」子どものりツボが䞭に入っおいる子どものりツボを芋お埮笑むホタテ貝の殻のかばん

    • 地䞋68階赀い䞊着クラゲ服を亀換しないかずテンちゃんに提案「すおき うみのおひめさたに なったきぶん」クラゲのようなデザむンで、シヌスルヌ生地のように透き通っおいる「ずうめいマント」

    • 地䞋78階赀いリボンカニの海賊の䞀味の矎容垫さん蝶ネクタむずしお着甚「リボンのおれいに」ず蚀っおいるので、気に入ったので譲っお欲しいず申し出たのかもしれない「ありがずう わたしも きょうから かいぞくね」海賊マヌクの髪食り

    • 地䞋84階緑の葉を連ねたデザむンのブレスレットチョりチンアンコり「このブレスレット さいこうざたす」「うわあ、すっごく ひかっおる」発光するブレスレット

    • 地䞋100階ピンクのリボンの麊わら垜子倧きなダドカリ子どものダドカリが䞭に䜏み付いおしたい「ごめんなさい  。このこが きにいっおしたっお はなさないの」「そうだったの。いいわ、あげる だいじに぀かっおね。」垜子のように被るこずのできる「きれいな かいがら」

    テンちゃんの持ち物を占拠しおいた䜏人たちは党員、持ち䞻がいるず知らずに拟っお䜿っおいた様子です。玠敵だず思っお気に入っおいるか、あるいは、圹に立぀グッズずしお掻甚しおいたす。

    テンちゃんは、なくしおしたった持ち物たちを、ずおも気に入っおいたした「テンちゃんは、おんなのこがえらんでくれるようふくや アクセサリヌが ずおも きにいっおいたした」。

    そのため、それらを取り戻したいず願っおいたす。「うみのかいだおのいえ」の地䞋階に入った段階で、「わたしの ふくや かみのけ みなかった」ずラッコに質問しおいたす。「さっき なにか したぞ おちおいったよ」ず聞いたので、地䞋ぞ地䞋ぞず進んでいるのです。

    それにもかかわらず、テンちゃんは、取り戻すのを諊めおしたいたす。その理由に぀いお、䞭で赀ちゃんが寝おいるから仕方ない、ずいうように合理的に理由を぀けおいる堎合もあるのですが、特にはっきりずした理由もなく物々亀換に応じおいる堎面の方が倚く芋られたした。

    特に、ヒトデ、クラゲ、カニ、チョりチンアンコりは、テンちゃんの持ち物だったものを、芋たこずもない玠敵なファッションアむテムに出䌚えたず思っお、そのデザむンをずおも気に入っおいるような様子です。
    なんだかテンちゃんは、自分の持ち物だったものが圹に立ったり愛されたりしおいる状況を芋お、どこか玍埗したり仕方ないず思ったりしおいる様子です。

    そこたで気に入っおくれたのなら 。ず思っおしたい、匷く蚀えない ずいうのもあるず思うのですが、どこか、

    “そんなに気に入ったものに出䌚えおよかったね”、

    “せっかく気に入ったものを手攟さなくおはいけないのは蟛いよね”、

    “そうだよね、これっおやっぱり玠敵だよね”ず、

    自分のこずのように喜んだり、気持ちを想像したり、玠敵ず思う感芚を共有できお嬉しくなったりしおいるのではないでしょうか。テンちゃんの気持ちを勝手に決め぀けるわけにはいかないのですが、絵ず文を味わっおいお、なんだかそういう印象を受けたのです。

    自分の服を着おいるむルカに「にあっおる」ず称賛の声をかけたり、自分のかばんの䞭に入り蟌んでいる小さなりツボを優しい衚情で芋぀めおいたりしたす。テンちゃんが、持ち物を取り戻したい自分の気持ちよりも、新しいお気に入りのアむテムを手に入れた盞手の喜びの方に意識を寄り添わせおいるのが明らかです。

    テンちゃんは、自分の気持ちず圌らの気持ちをきっぱり分けお感じたり考えたりするのではなく、どこか、自分のこずのように深く共感を瀺しおいるのです。
    この物語では、䜏人達もお返しに玠敵なアむテムをテンちゃんに枡しおいるので、ハッピヌ゚ンドぞず繋がっおいきたす。
    けれども、テンちゃんの性質は、次のような危険性ず隣り合わせであるようにも思いたす。

    物語や䌝承などの䞭で、生莄スケヌプゎヌトに捧げられるのは、しばしば無垢ずされる存圚、そしお、物蚀わぬ存圚です。幌い子どもや乙女、花、人圢 。

    身近な珟実䞖界の䞭にも、圢を倉えお、生莄のような存圚は発生したす。もしかしお 。私たちが今芋おきたような、テンちゃんのような、自他をきっぱりず割り切れないあるいは、あえお割り切らない性質ゆえの優しさ。さらに蚀えば、倩性の共感胜力の高さや、豊かすぎる想像力に基づいおいるず思われる優しさ。このような優しさを持぀存圚達が、その優しさに付け蟌たれ、たるで郜合のいい資源のように搟取されたり、“嫌だず䞻匵しおこないから”ずいう理由でスケヌプゎヌトにされおしたう厄介事を抌し付けられおしたう、犠牲にされおしたうこずが起こりたす。

    以䞋数行は、珟時点で考えおいるこずに぀いお曞き蚘した、ちょっずした構想メモのようなものです。

    ◇

    [MEMO]
    ギリシャ神話には様々な神が登堎したすが、もしかしお、テンちゃんのような優しさを持ち、そしおそれゆえ深く傷぀いおきた、優しく繊现な存圚達にずっおの王のような存圚が、ディオニュ゜スずいう神だったりするのではないだろうか ず。
    圌が神話の䞭で具䜓的にどのように描写されおきたのか、今埌の読曞の䞭で泚目しおいきたいず思っおいたす。

    ◇

    旅の果おに手に入れた新しい䟡倀


    『うみのかいだおのいえ』に぀いお考察しおきたしたが、最埌に、ずおも重芁な点に぀いお述べたいず思いたす。
    この蚘事の冒頭では、次のように述べたした。

    それでも、テンちゃんを哀れな犠牲者ずいう蚀葉で囲っおしたったら、この絵本の䟡倀の倚くを芋萜ずしおしたいたす。

    確かにそれは、かけがえのない自分自身のパヌツたちをいく぀も、氞遠に倱うような奈萜ぞの転萜であり、思いがけない受難だったかもしれたせん。

    それでも圌女が新しいパヌツ新しい䟡倀・新しい自分を芋぀けおいった、探玢ず再生ず垰還の道筋を远い、 “䞋方ぞの超越”ずいうテヌマを探っおいきたいず思いたす。

    ――テンちゃんは、決しお、苊難に流されるだけではありたせんでした。

    テンちゃんが芋぀けた新しい䟡倀ずは、やはり“このこず”だず思うのです。それは 

    テンちゃんが䜏人たちに共感し、情や状況に流されおいる䞭で、偶然出䌚った新しいアむテムたち。その䞭でも、受け取ったものを特に気に入っおいるような堎面がいく぀かありたした。䞭でも特筆すべきは、この぀です。

    ――お姫様ず海賊。

    地䞋68階でクラゲから受け取ったマントを身に぀け、テンちゃんは「すおき うみのおひめさたに なったきぶん」ず声を匟たせたす。

    そしお、カニの海賊たちの䜏む゚リアに䜍眮する、地䞋78階では、海賊たち専属の矎容垫ず思われるカニから、海賊マヌクの髪食りを受け取っおいたした。この時テンちゃんは、「ありがずう わたしも きょうから かいぞくね」ず、意倖にも海賊気分を楜しんでいたす。

    「おひめさたに なったきぶん」ずいう華やかで特暩的な気分の“玠敵”ず、「わたしも きょうから かいぞくね」ずいう、ちょっずアりトロヌな気分の“玠敵”に思いがけず出䌚っお、テンちゃんはずおも楜しんでいる様子です。

    そしお、テンちゃんは受け取ったものを党お身に぀けおいるので、テンちゃんのコヌディネヌトの䞭で、「うみの おひめさた」ず「かいぞく」が偶然に出䌚っおいたす。銀の鱗のスカヌトや、ヒレの぀いた靎もはいおいるので、たるで人魚姫の海賊です。

    お姫様ず海賊ずいう組み合わせから、私は、Vivianne Westwoodに぀いお語る嶜本野ばらの゚ッセむを連想しおしたいたした。ちょっず匕甚しおみたいず思いたす。

    真のロマンチシズムずは甘矎な倢を゜リッドな粟神で纏うこずなのです。時に安易なヒュヌマニズムも倫理も蹂躙し、オブゞェず物語ぞの滑皜なたでの憧憬を残酷な意志で肯定するこずこそが、ロマンチストに䞎えられた䜿呜です はすっぱな高貎さは正統な高貎よりも尚矎しい。「テヌマはお姫様ず海賊よ」――このキヌワヌドを解する者だけが二十䞖玀を野蛮だず軜蔑し぀぀二十䞖玀を愉しめるのかもしれたせん」

    「ノバラン、り゚ストりッドを語る」『それいぬ 正しい乙女になるために』
    文藝春秋、文春文庫PLUS、2001幎3月p.150

    ※匕甚に぀きたしおは、こちらのペヌゞの「匕甚の凡䟋」をご参照䞋さい。

    たた、少女の甘やかさず゚レガンスに海賊の無頌な粟神をミックスさせるずいったコンセプトを持぀ファッションずいうこずであれば、ロリヌタファッションのお掋服「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」の姉効シリヌズである「ALICE and the PIRATES」のお掋服たち2004幎に登堎のこずも想起したす。野ばらさんずALICE and the PIRATESのコラボレヌションのアむテムが登堎したこずもありたした。

    ひょっずしお、テンちゃんも、今挙げたような゚ッセむやファッションに通じる矎意識の傟向を秘めおいたりするのかもしれたせん。

    そしお、垰っおきたテンちゃんを芋お「テンちゃん、ずっおも すおきになっおる」ず喜んだ持ち䞻の少女も。

    テンちゃんは、本圓に倧倉身を遂げたのです。それなのに、少女はそれがテンちゃんであるずすぐに気づきたした。それは仲良しだからでしょうか それずも、圌女は芳察力に長けおいるのでしょうか

    “子ども向けの絵本なのだから现かいこずは気にせずに読めばいい”ずいう考え方もあるかもしれないのですが、私は、もしかしおこういうこずなのではないのかず思うのです。テンちゃんず少女は分身のような関係であり、テンちゃんの倉身は、少女の願う理想の倉身でもあったのではないか――

    少女は、カモメに逌をあげようずしお、うっかりずテンちゃんを萜ずしおしたいたした。
    それを、䞭篇では『そらのかいだおのいえ』ず照らし合わせながら「科孊ず創造性の圱」ずいう切り口で考察したした。

    けれども、同時に別の解釈も成り立぀ように思うのです。

    少女が自分の倢や理想を明確にむメヌゞ化しお、さらには、それを具珟化したいず願うこずのメタファヌ。そのように解釈すれば、次のような物語が芋えおきたす。

    ただ曖昧で、けれども重力䞖の䞭の垞識に逆らっお宙理想ぞず飛躍しようずしおいる、自分の空想力や矎意識鳥。その矎意識が高く矜ばたいおいくために、゚ネルギヌ逌を䞎えたいず願う時、鳥が逌を埗お䞊昇するず同時に、テンちゃんは深淵に萜ちおいった。

    鳥が、少女の叶えたい倢や理想を衚わしおいるなら、海の深淵はそれを具珟化するためのリスクを衚わしおいお、䞡者は衚裏䞀䜓なのである、ず。

    女の子は、船の䞊にいお傷぀くこずはありたせん。けれども、その女の子の受けるはずだった危険を肩代わりするかのように、テンちゃんは海の深郚ぞ沈んでいきたした。でも玠敵になっお戻っおきたした。

    それは、なりたい自分になるずいうこずの光ず圱に぀いお、テンちゃんが持ち䞻の少女に芋せおくれたデモンストレヌションだったのかもしれたせん。

    テンちゃんが旅の果おに手に入れた新しい䟡倀、すなわち、新しい「すおき」なテンちゃんの䞭に、海賊ずいうアりトロヌなモチヌフが含たれおいるこずはずおも瀺唆的です。

    䞋ずいう方向性は䞡矩的であるず述べたしたが、自分の奜みや理想、興味関心など、䜕かを深く“掘り䞋げる”こずは、専門的な䞖界、前衛的な䞖界、あるいはずおもマニアックな䞖界ぞ深入りするこずでもありたす。

    それは、専門家ずしおの掻躍の堎が開けたり、倩才的なアむディアであるず認められおメゞャヌな䟡倀芳の䞭に䜍眮づく堎合もありたすが、既存の䟡倀芳に察しお、倚かれ少なかれ距離が生じたす。倉人や異分子ず芋られるこずもありえたすし、日垞䞖界の秩序から倖れた異端の存圚ずみられるリスクを負う堎合もありたす。

    先ほど、野ばらさんの゚ッセむを匕甚したしたが、以䞋の補足では、圌の小説をいく぀か玹介し぀぀、このテヌマに぀いお曎に掘り䞋げおみたいず思いたす。

    補足

    嶜本野ばらの小説居堎所のない少女が出䌚った、矎しくもマむナヌなファッションの䞖界


    嶜本野ばらの小説には、倧人しくお呚囲に振り回されお生きおいたり、あるいは、自分の居堎所がどこにもないずいう息苊しさや違和感を感じおいたりする少女が、倧奜きな䟡倀芳ロリヌタ系ファッションやVivianne Westwoodのように、前衛的で確固ずした矎意識・䞖界芳を持぀お掋服に出䌚っお人生が倉わり、お掋服ぞの熱烈な愛を通じお、自分自身に矎意識や矜持を持っお生きられるようになるもしくは、もずもず持っおいたそれらが匷化されおいくずいうストヌリヌの䜜品が耇数ありたす。

    比范的明るい䜜品ずしおは、『䞋劻物語』や、「ミシン」『ミシン』に収録を挙げるこずができたす。
    『䞋劻物語』は、ロリヌタファッションを愛する少女・竜ヶ厎桃子が䞻人公です。圌女は、「そんな目立぀、倉な恰奜をしなければ、普通にお友達も出来るし、男子にもモテるのに  ずいうような忠告をされればされる皋、私のロリ魂は燃焌し、もっずロリを極める決心は固たりたす」ず語りたす嶜本野ばら『䞋劻物語』小孊通、2002幎10月 p.8。

    䞀方で、傷口を抉り、深淵に觊れるような痛みを描き぀぀も、矜持を持っお生きようずする魂の痛々しいたでの茝きがみられる䜜品ずしおは、「゚ミリヌ」『゚ミリヌ』に収録や「䞖界の終わりずいう名の雑貚店」『ミシン』に収録を掚したいず思いたす 。この䜜は、䜜品の䞀郚に男女の性描写を含みたす。それはどこか、ある特別な瞬間における䞀皮の奇蹟・䞀皮の儀匏のように描かれおはいるのですが、苊手な方はご泚意ください。たた、「゚ミリヌ」には、幌い女性の性的被害の描写が含たれおいたす。

    決しお、いわゆるハッピヌ゚ンドではない䜜品なのですが、「䞖界の終わりずいう名の雑貚店」に登堎する少女は、語り手である「私」の芖点から、次のような人物であるず衚珟されおいたす。少し長くなりたすが、匕甚しおみたいず思いたす。

    圌らの厚かたしさや、心ない芁求、芋圓違いの優しさや厳しさの䞭で、それに耐えきれぬずは知り぀぀も、そういいだすこずが出来ぬたたに、䞀人で静かに壊れおいっおしたったのです。 君は䜕時だっお倧䞈倫だず埮笑んできたのですね。本圓は もう死んでしたうのではないかず思うくらいに拒吊の為の動悞が激しく鳎り響いおいるずいうのに 圌らはいうのですよ。君がちゃんず䞻匵しなかったから、自分達のやり方に君を善意で取り蟌んできたのだず。君は䞻匵しない蚳ではありたせんでした。しかしそれは少々、小さな声だったのです。圌らはい぀も 喧噪の䞭に暮らしおいるものですから、君の声を聞くこずが難しかった。 君は少し静かになっおからもう䞀床、自分の䞻匵をしようず思いたす。でも 今曎自分が意にそぐわないず䞻匵すれば、圌らはきっず怒るに違いない、困るに違いない、笑うに違いない、悲しむに違いない  。君はそう思い、諊めるのです。そしお䞀人、居心地の悪い垭に仕方なく座り続け、皀に意味なくがさ぀に肩を叩かれお、淋しげな笑みを浮かべるのです。高貎な魂を有するが故に、卑屈になるしか術を持たなかった君よ。自分を眰するこずでしか生きる意味を芋出せなかった君よ。

    嶜本野ばら「䞖界の終わりずいう名の雑貚店」
    『ミシン』小孊通、2000幎11月pp.37-38

    おそろしく繊现な人物描写です 。「君」がいかに繊现で高貎で、諊念ず共に卑屈に生きおきたのかずいう暪顔が克明に描かれおいたす。
    共感力が高いずいう蚀葉では語られないのですが、描写を芋ればそれは䞀目瞭然です。どんなに厚かたしく心ない芁求をするような鈍感な盞手に察しおも、「君」はずおも気を遣い、自分が盞手からどのように思われるか、盞手にどのような圱響をもたらしおしたうかずいうこずを想像し、そしおずおも思慮深く遠慮がちに振舞っおいたす。
    䞻人公は、このあたりにも繊现な少女「君」の苊悩や傷に共鳎し぀぀も、病んでいるずいう枠組みでは捉えたせん。圌女があたりにも「健党」であるがゆえに、病み切ったどうしようもない䞖界の䞭で苊悩しおいるのである、ずいうように認識しおいたす。

    僕は君の魂の健党さを嘆かずにはおられたせん。垞識ずいう名の病んだ魂は、厚顔無恥、ずうずうしく即物的な芁求だけを掲げ、ヒステリックに今もこの䞖界を闊歩しおいたす。

    嶜本野ばら「䞖界の終わりずいう名の雑貚店」
    『ミシン』小孊通、2000幎11月pp.7-8

    くどいようですが、この小説は決しお、すっきりず割り切れるハッピヌ゚ンドずは皋遠い結末を迎えたす。
    䞊に匕甚した蚀葉たちも、「君」を守れなかったず告癜する語り手の「私」のモノロヌグの䞀郚です。
    けれども、それを差し匕いたずしおも、圌女がある日突然倧奜きなお掋服に出䌚っお人生が倉わった瞬間の茝かしさが枛るわけではありたせん。そう思えるほどに、たばゆい瞬間が、「君」自身が語る蚀葉「僕」に向けた手蚘の䞭で、次のように衚珟されおいたす。

    私はずっず、ママがスヌパヌで買っおきたお掋服を文句も蚀わず着おいたした。 熱病に冒されたような気持ちのたたふらふらず、 トル゜ヌに着せられおいたラブゞャケットずミニクリニを詊着するこずになりたした。孊校垰りだから私はセヌラヌ服姿です。どっから芋たっおダサ山ダサ子です。おたけに䞡手には䞁皚矊矹を思いきり抱えおいたす。それなのに私は詊着宀で詊着を始めたした。たるで宇宙人にコントロヌルされ、自分の意志ずは関係なしに身䜓が動かされおいるような感じでした。Vivienneの䞊䞋を着た私は、鏡の䞭の自分の姿に驚愕を憶えたした。これは私が着なければならない服なのだず思いたした。 私は詊着宀でVivienneのお掋服を脱ぎながら、ぜろぜろず涙を流したした。涙は埌から埌から流れおたいりたす。 䞍釣り合いでも、人から眵詈雑蚀を济びせられようが、私はもう平気でした。Vivienneのお掋服が私を守っおくれるのです。私はこの服を着る為に生たれおきたのです。䞖間の人が倧笑いしようず、私はこの服を着なければならないのです

    嶜本野ばら「䞖界の終わりずいう名の雑貚店」
    『ミシン』小孊通、2000幎11月pp.50-51

    『うみのかいだおのいえ』のテンちゃんは、海に萜ずされ、なくした持ち物を探し歩き、䜏人たちの抱える“欠乏感”や“物欲”に出䌚い、持ち物を取り戻す代わりに物々亀換に応じる䞭で、偶然、お気に入りのアむテムに出䌚い、「すおき」に倉身しおいきたした。

    この小説の「君」の堎合は、父の機嫌を取らなくおはならないずいう必芁性に駆られお、父の奜物を買いに行った先の癟貚店で、偶然にVivienne Westwoodのお掋服に出䌚いたした。

    人によっおは、そうした出䌚いは、必ずしもお掋服ではないかもしれたせん。出䌚う䟡倀芳の圢はずおも倚様であるず思いたす。けれども、それがどのような圢であれ、テンちゃんのように優しくお共感力が高く、そしおその反面、自分の茪郭をきっぱりず線匕きするこずが決しお埗意ではない存圚が、䜕か特別に倧奜きな䟡倀芳に出䌚っお衝撃を受け、心の底から歓喜する出来事があるのだずすれば、それは本圓に玠晎らしいこずだず思うのです。

    い぀も誰かのために自分を埌回しにしおしたうような存圚が、これは自分のためにあるず思うほどに䜕かを本気で愛し、それを遞ぶ自分自身の䟡倀芳に察しお絶察的な矜持を持おるずいうこずは、バラバラに匕き裂かれお殺されたディオニュ゜スがよみがえったこずず同じくらい玠晎らしいこずであり、その倉身は、魂の埩掻であり再生なのではないかず思うのです。

    幌少期、八぀裂きにされたディオニュ゜スはその埌埩掻するのですが、バラバラになった圌を拟い集めた存圚がいたした。それは誰なのか これたでの蚘事の䞭に、その名前が既に登堎しおいたす。

    今でも「アポロン的ディオニュ゜ス的」ずいう衚珟は察立する蚀葉ずしおよく䜿われおいたす。 このふた぀の蚀葉は19䞖玀の哲孊者ニヌチェが䞖に広めたものですが、確かに理性のアポロンず狂気のディオニュ゜スは盞反し、険悪な仲のように思えたす。しかし、叀代ギリシャ人はこの人が仲が悪いずは思わず、むしろその逆だず考えおいたした。ずいうのも、アポロンは冬の間はバカンスでギリシャから極北の地に行っおしたいたすが、その間、圌は自分の最倧の聖域であり䞖界の䞭心でもあったデルフォむの神域をディオニュ゜スに預けたす。神域内における二神の地䜍にも䞊䞋関係はなく、完党に等しい存圚でした。今ではどの芳光ガむドブックを芋おも、「䞖界遺産のデルフォむはアポロンの神域である」ず曞かれおしたいたすが、本圓はその半分はディオニュ゜スの神域だったのです。理性、秩序、光明のアポロンず、狂気、混沌、忘我のディオニュ゜ス。この䞀芋盞反する二神が䞖界の䞭心の神殿をシェアしおいた

    藀村シシン『叀代ギリシャのリアル』実業之日本瀟、2015幎10月pp.200-201


    迫害を受けおいた子䟛のころのディオニュ゜スが巚人族の眠にかかっおバラバラにされたが、その散り散りになった手足を拟い集めおお墓を぀くっおあげたのはアポロンである

    藀村シシン『叀代ギリシャのリアル』実業之日本瀟、2015幎10月p.200泚釈

    バラバラになったディオニュ゜スの手足を拟い集めたのは、アポロンでした。

    以䞊に匕甚した箇所を読みながら、もしかしお至高の芞術性ずは、アポロン的な矎意識ずディオニュ゜ス的な矎意識が喧嘩せずに芪しみあうこずなのではないかず、そんな颚に思いたした。今、ニヌチェの『悲劇の誕生』を読み終え、確信を持っおそのように捉えおいたす。今埌、この本に぀いおも読曞゚ッセむを曞いおみたいず思っおいたす。

    先ほど匕甚した野ばらさんの゚ッセむに、「真のロマンチシズムずは甘矎な倢を゜リッドな粟神で纏うこず」ずありたした。これも遠からず、そういうこずを蚀っおいるのではないでしょうか。぀たり、狂気的なたでに深く矎しい、陶酔的な芞術性を、理性によっお歊装するハヌドボむルドな粟神で衚珟する時、それは至高であるずいう意味で、たるで、二神の芞術性が共挔しおいるかのようです。葡萄は、蔓性の暹朚であり、人が手を入れずに攟眮しおしたうず地面を這っおしたいたす。けれども、葡萄棚を蚭眮するこずによっお、必芁な支えを埗お、矎しく葡萄を実らせたす。 これっおなんだか、深い芞術性ず、優雅で合理的な構造矎の融合のメタファヌのように思えたす。

    そしお、「䞖界の終わりずいう名の雑貚店」の少女がディオニュ゜スだずすれば、圌女の魂を支え、その茝きを最倧限に匕き出しおくれる矎しい葡萄棚のような存圚が、圌女にずっおは、Vivienneのお掋服だったのではないでしょうか。

    「䞖界の終わりずいう名の雑貚店」をそしお「゚ミリヌ」をぜひ読んでくださいずお䌝えしたいずころなのですが、ハッピヌ゚ンドでないず困るずいう堎合に぀きたしおは、先述の通り、野ばらさんの描く䜜品の䞭では私の読曞の限りにおいおですが『䞋劻物語』が、特に手攟しでおすすめしたい䜜品です。
    明晰な知性で歊装された、深く繊现な感性を䜓珟するような玠敵な䞻人公が登堎したす。お掋服ぞの愛は超䞀流であり、知芋も深く、党䜓的にコミカルなタッチでもあり、終始明るい気分になれる䜜品です。続線もあるので䜵せおおすすめなのですが、劥協せず、なりたい自分になるずいう芚悟ず、䞖の䞭に居堎所を䜜るずいうこずの葛藀に぀いおも掘り䞋げられおいたす。

    最埌にテンちゃんの名前に぀いお


    最埌に、もう䞀床『うみのかいだおのいえ』に芖点を戻しながら、この䞀点に぀いお補足しおおきたいず思いたす。
    前回の蚘事䞭篇では、テンちゃんずいう名前の由来に぀いお、このように述べたした。

    もしかしたら「倩䜿のように優しい」の「倩」なのかもしれないず思いたした。それずも――たさかずは思うのですが、「転萜」の「転」だったりするのでしょうか 。そんなふうにも思いたした。

    テンちゃんは、物語の䞻人公であるどころか、実は、そもそも䞻人公ずは䜕かずいう本質に觊れおいるような存圚でもありたす。

    英語の「ヒヌロヌHero」の語源であるギリシャ語の「ぞロスHeros」も、元は「ヘラHera」の男性圢「ヘラに捧げられる男」であるず考えられおおり、ヘラにがっ぀りむビられおいるほうが、むしろ偉倧な英雄の蚌明であるずも蚀える。

    藀村シシン「『ヒヌロヌ』の語源になった結婚の女神」
    『叀代ギリシャのリアル』実業之日本瀟、2015幎10月p.85

    heroは「英雄」ずも蚳されたすが、䞻人公ずも蚳される蚀葉であるずいう点に目を向けるず、苊難する䞻人公であるテンちゃんは、たさに䞻人公の䞭の䞻人公であるず蚀えたす。
    前回の蚘事䞭篇で、ディオニュ゜スがいかにヘラから迫害されおきたかずいう点に泚目したしたが、その迫害も、偉倧な英雄の蚌であるず解釈できそうです。

    そしお、海に萜ちた盎埌の、たるでクッキヌのゞンゞャヌマンのように痛々しい、匕き裂かれた姿から出発しお、最埌、玠敵な人魚姫の海賊ずなっお埩掻を遂げたテンちゃんに぀いお、このように、蚀葉を改めたいず思いたす。――テンちゃんの「テン」は、「転生」の「転」なのではないか、ず。

    ◇

    優しくお繊现な感性を持ち、思いがけない受難に遭っおきた貎方。その受難は、ずおも䞍公平なこずで、あっおはならないこずでした。

    それでも、その経歎を持぀貎方だからこそ出䌚えるはずの新しい䟡倀、そしお新しい貎方に、きっず䌚えたすように。もし、既に出䌚えおいるのであれば、それは、本圓に玠晎らしいこずです 

    どうか、貎方の魂が攟぀茝きを、もっずもっず、ご自身の矎意識においお誇りに思えたすように ♪

    ◇

    最埌の最埌に
    ふせったヌに、メむドむンアビスの感想を曞いおいたす。
    たさに、危険を賭した“䞋方ぞの超越”ずいうテヌマをこの䜜品に芋出しお、関心をもっお少しず぀芖聎しおいるずころです。
    ネタバレ泚意ですし、非垞に、非垞に重いテヌマを扱っおいる䜜品なので、「もしよろしければどうぞ」ず気軜にお薊めしにくいのですが、ご興味を持っおくださった方は、充分なご泚意の䞊、ご芧ください。




    [完]


    曞誌情報

    ※免責事項ず甚語の解説に぀きたしおは、こちらのペヌゞをご参照䞋さい。

    䜿甚テクスト

    • いわいずしお岩井俊雄『ちかかいだおのいえ』偕成瀟、2009幎11月

    ISBN:978-4-03-331660-4
    NDC: 726.6
    類芞術・矎術72絵画726挫画・挿絵・児童画726.6絵本

    • いわいずしお岩井俊雄『うみのかいだおのいえ』偕成瀟、2014幎7月

     ISBN: 978-4-03-332200-1
     NDC: 726.6
    類芞術・矎術72絵画726挫画・挿絵・児童画726.6絵本

    初出・初刊

    • いわいずしお岩井俊雄『ちかかいだおのいえ』偕成瀟、2009幎11月

    • いわいずしお岩井俊雄『うみのかいだおのいえ』偕成瀟、2014幎7月

    参考文献

    • いわいずしお岩井俊雄『かいだおのいえ』偕成瀟、2008幎7月

    • いわいずしお岩井俊雄『そらのかいだおのいえ』偕成瀟、2017幎8月

    • いわいずしお岩井俊雄『もりのかいだおのいえ』偕成瀟、2021幎6月

    • いわいずしお岩井俊雄『ぬたのかいだおのいえ』偕成瀟、2023幎10月

    • 嶜本野ばら『それいぬ 正しい乙女になるために』文藝春秋、文春文庫PLUS、2001幎3月

    • 嶜本野ばら『ミシン』小孊通、2000幎11月

    • 嶜本野ばら『䞋劻物語』小孊通、2002幎10月

    • 藀村シシン『叀代ギリシャのリアル』実業之日本瀟、2015幎10月

    ◇

    ※ヘッダヌ画像は、フリヌ玠材を芏玄の範囲内でお借りしおいたす。
    photo by カズキヒロ様


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    元図曞通員、定本眺芋さだもず・ななみが遞定する、「矎ず絶望の暙本箱」。あるいは「圢を持たない愛ず執着、名づけられない関係性に぀いおの芳枬蚘録」。月倜の幻想の閲芧宀から、貎方の「䜙癜」に向けお差し出された読曞案内です。気高い心に鮮やかな枯葉を積もらせる、繊现な感受性ぞ捧げたす。

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